麁末そまつ)” の例文
尤も何方が雲かどろかは、其れは見る人の心次第だが、兎に角著しく変った。引越した年の秋、お麁末そまつながら浴室ゆどのや女中部屋を建増した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
左様に候へば、此御まな料、まことに麁末そまつの御事におはしまし候へども、歳末の御祝儀申上まゐらせ候しるしまでにさし上まゐらせ候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
麁末そまつなもの、と重詰の豆府滓とうふがら、……の花をったのに、せん生姜しょうがで小気転を利かせ、酢にした鯷鰯しこいわしで気前を見せたのを一重。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くだんの馬像は、輪廓もっとも麁末そまつながら、表土を去って白堊を露わす故、下の谷から眺むれば、十分馬跳ぬるところと見える。
大「えゝ道具は麁末そまつでござるが、主人が心入れで、自ら隅田川の水底みずそこの水を汲上げ、砂漉すなごしにかけ、水をやわらかにしてい茶を入れましたそうで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼等かれら勞働らうどうから空腹くうふく意識いしきするとき一寸いつすんうごくことの出來できないほどにはか疲勞ひらうかんずることさへある。什麽どんな麁末そまつものでも彼等かれらくちには問題もんだいではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大師と知らずに麁末そまつに取扱ったため、その家が後に非運に陥ったというような話も、いろいろ伝わっている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
えらび突出しの仕着しきせより茶屋々々の暖簾のれんに至る迄も花々敷吉原中大評判おほひやうばんゆゑ突出つきだしの日より晝夜ちうやきやくたえる間なく如何なる老人みにくき男にても麁末そまつに扱はざれば人々皆さき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ありがとうござります、主人喜兵衛はじめ、後家ごけ弓とも、よろしく申しました。承わりますれば、御内室お岩さまが、お産がありましたとやら、お麁末そまつでござりますが」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
身柄いやしとはみえねど。他の二人にくらぶれば。幾分か麁末そまつなるところあるがごとし。少ししまがらのはでに過ぎたるめんめいせんの綿入れも。あかづきたとにはあらねど。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
自然お客様のおこしも御座りませんゆゑ、何分用意とうも致し置きませんやうな次第で、然し、一両日いちりようにち中にはお麁末そまつながら何ぞ差上げまするやうに取計ひまするで御座いますで、どうぞ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
付けて中津川なかつがはより來りし馬二頭ありしを幸ひこれに乘る元より駄馬なれば鞍も麁末そまつに蒲團などもなし宿の主才角さいかくしてうしろより馬の桐油とうゆをかけて我々を包む簑虫の變化ばけものの如し共に一笑してこゝ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
というので麁末そまつな戸の事、その戸を越して彼方かなたに麦畑が見えるというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
清凉紫宸せいりやうししんの玉台に四海の君とかしづかれおはしませし我国の帝の御墓ぞとは、かりそめにも申得たてまつらるべきや、わづかに土を盛り上げたるが上に麁末そまつなる石を三重に畳みなしたるあり。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お勢の親を麁末そまつにするのまでを文三の罪にして難題を言懸ける。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……根からお麁末そまつ御馳走ごちそうを、とろろもなますちまけました。ついお囃子に浮かれいて、お社の神様、さぞお見苦しい事でがんしょとな、はい、はい。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
麁末そまつ棺臺くわんだいすこうづたかつたつちうへかれて、ふたつの白張提灯しらはりちやうちんふたつの花籠はなかごとがそのそばてられた。おしな生來せいらいつちまないはないといつていゝぐらゐであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すなわち月の影を見ても必ずえよ、骨折り賃として硬い骨をかじ麁末そまつな肉をくらうべく、寿命は四十歳と聞いて犬震い上り、そんなに骨折って骨ばかり食えとは難儀極まる。
見て氣のどくにや思ひけん其衣類そのいるゐではさぞかし難儀なんぎなるべし麁末そまつなれども此方の衣服いふくかし申さん其衣類は明朝みやうてうまで竿さをにでも掛てほし玉へとのこる方なき心切なる言葉ことばに吉兵衞はます/\よろこび衣類を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さようおっしゃりましてはお可愧はずかしゅうございます、誠にお麁末そまつで、どうぞ差置かれまし。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頃日このごろ米国禁鉄となってから、一粒の鉄砂も麁末そまつにならぬような話を承る、ふとした事から多大の国益が拡がった例多ければ、妓家の黒壁が邦家の慶事をひらかぬにも限らぬと存じ
すくみといふのはちゞめたまゝかたちたもたれるやうに死體したいしたから荒繩あらなはまはしていて首筋くびすぢところでぎつしりとくゝることである。麁末そまつ松板まついたこしらへた出來合できあひ棺桶くわんをけはみり/\とつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見んとするに浪人者は最早もはや日暮方ひぐれがたなれば徐々そろ/\仕舞しまひて歸る樣子ゆゑ長八はあとつきて行けるに下谷山崎町なる油屋といふ暖簾のれんかゝりうら這入はひりしかば長八も同じくつゞいて這入見るに九尺二間如何にも麁末そまつなる浪宅らうたくなるにぞ長八は内のてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
前垂掛まえだれがけ、昼夜帯、若い世話女房といった形で、その髪のいい、垢抜あかぬけのした白い顔を、神妙に俯向うつむいて、麁末そまつな椅子に掛けて、卓子テエブル凭掛よりかかって、足袋を繕っていましたよ、紺足袋を……
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他部族の男の種を宿さぬよう麁末そまつな手術を仕損じてか、とにかくその頃の婦女にはかようの死様しにざまが実際あったので、現今見るべからざる奇事だから昔の記載は虚構だと断ずるの非なるは先に論じた。
在りきたりの皮は、麁末そまつな麦の香のする田舎饅頭なんですが、その餡の工合ぐあいがまた格別、何とも申されませんうまさ加減、それに幾日いくか置きましても干からびず、味は変りませんのが評判で
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ、これは、お客様、お麁末そまつなことでして。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これは麁末そまつなや。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)