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ひるがえ
ふりがな文庫
“
飜
(
ひるがえ
)” の例文
新字:
翻
一
間
(
けん
)
の余の空間を辷って巻き附くその全く目にも留らぬ廻転と移動とを以てして、
些
(
いささか
)
の裂けも破けも、傷つきも
飜
(
ひるがえ
)
りもしないことだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
私達は腕をくむと、附近の
青天白日旗
(
せいてんはくじょうき
)
の
飜
(
ひるがえ
)
っている、支那公使館のまえのインタナショナル・バーの酒卓へ座ると、盃をかちあわした。
スポールティフな娼婦
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
そうして彼のこの考えは、友人を訪問している最中とか、散歩の折とかに、奇妙にも失恋の反撃のように
飜
(
ひるがえ
)
ってしまうのであった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
この十人ほどの踊りはいろいろに変化したが、間を保たせず、
閃
(
ひら
)
めき変り、
飜
(
ひるがえ
)
ってゆく調子の連続に訓練のこもった妙味があった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
が、また
飜
(
ひるがえ
)
って考えますと、これも御無理がないと思われるくらい、中御門の御姫様と
仰有
(
おっしゃ
)
る方は、御美しかったのでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
そのまま火の出るような眼付きで一同を見まわしていたが、突然にクルリと身を
飜
(
ひるがえ
)
すと、入口の
扉
(
ドア
)
をパタンと閉めて飛び出して行った。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は
両眼
(
りょうがん
)
をカッと見開き、この一見意味のない
台辞
(
せりふ
)
を
嘔
(
は
)
きちらしていたが
軈
(
やが
)
てブルブルと
身震
(
みぶる
)
いをすると、パッと身を
飜
(
ひるがえ
)
して駈け出した。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
牡丹
(
ぼたん
)
たちまち驚いて
飜
(
ひるがえ
)
れば、
花弁
(
はなびら
)
から、はっと分れて、向うへ飛んだは
蝴蝶
(
ちょうちょう
)
のような白い顔、襟の
浅葱
(
あさぎ
)
の
洩
(
も
)
れたのも、空が映って美しい。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
純一がまだ
surprise
(
シュルプリイズ
)
の状態から回復しないうちに、おちゃらは身を
飜
(
ひるがえ
)
して廊下を梯の方へ、足早に去ってしまった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかも
飜
(
ひるがえ
)
って他の一面、古い天然に
倦
(
う
)
まんとする人間の目から見ると、実はまたこれほど
斬新
(
ざんしん
)
奇抜なる取合せはないのである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いかに生の現実性を主張する者も、
飜
(
ひるがえ
)
ってこれを死と比較するとき、生がいかに想像的なものであるかを理解するであろう。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
手に持った手燭を相手の面上に叩きつけると、身を
飜
(
ひるがえ
)
してサッと行燈を蹴飛ばし、真っ暗な闇の中に、怪鳥の如く姿を隠してしまったのです。
銭形平次捕物控:227 怪盗系図
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
弘一君は浴衣の裾を
飜
(
ひるがえ
)
して、変な格好で飛んで見せた。新しい松葉杖の先が地面につく度に、コトコトと淋しい音を立てる。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
可愛いダンスの草履を
穿
(
は
)
いた白足袋の足を
爪立
(
つまだ
)
てて、くるりくるりと身を
飜
(
ひるがえ
)
すと、華やかな長い
袂
(
たもと
)
がひらひらと舞います。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
従来世の中に立つて居つた所の老人が中途で説を
飜
(
ひるがえ
)
したために革命または改良が行はれたといふ事は
殆
(
ほとん
)
どその例がない。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
薊は身を
飜
(
ひるがえ
)
して降り口へ出る、母はあとからすがりつく、お千代も泣きつく。おとよは隣座敷にすすり泣きしている。薊はちょっと
中戻
(
ちゅうもど
)
りしたが
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
あれこれと取り
繕
(
つく
)
ろって、執拗な主任の追求を
飜
(
ひるがえ
)
すようにしていたが、けれども、とうとう力尽きて、語り出した。
闖入者
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
あたりはまだ
明
(
あかる
)
いけれどもう日は当っていない。ごたごたした
千束町
(
せんぞくまち
)
の
小売店
(
こうりみせ
)
の
暖簾
(
のれん
)
や旗なぞが激しく
飜
(
ひるがえ
)
っている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こういう種類の劣等なる評をしたではないか、にも
拘
(
かかわ
)
らず一味が極刑に行われると、市民どもは前言を
飜
(
ひるがえ
)
して、各自が急にひそひそ話を始めたのである。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
森木は予審廷に行ってから俄然自白を
飜
(
ひるがえ
)
した。そうして今日も公判廷で陳述したような事実を述べはじめたのだ。
正義
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
彼女は微笑を含んだ
会釈
(
えしゃく
)
で
喝采
(
かっさい
)
に
応
(
こた
)
えると、水色のスカートを
飜
(
ひるがえ
)
しながら、快活にピアノに向って腰を降した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なぜならある意味において彼等の島はラピュタのような大きいそして
飜
(
ひるがえ
)
る他の島にとりかこまれていたから。
金の十字架の呪い
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
若
(
も
)
しこの書き物を読む時があったら、同時に母上の遺書も読んでみるがいい。母上は血の涙を泣きながら、死んでもお前たちに会わない決心を
飜
(
ひるがえ
)
さなかった。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ところが
飜
(
ひるがえ
)
って考えると、およそチェーホフの笑いほどに世の評伝家から不当な取扱いを受けているものも、あまり類例がないと言うこともできそうである。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
私と向い合って、熊本君も坐った。やや後れて少年佐伯が食堂の入口に姿を現したと思うと、いきなり、私のほうに風呂敷包みを投げつけ、身を
飜
(
ひるがえ
)
して逃げた。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
立ち止まるかと思うとかの男は身を
飜
(
ひるがえ
)
して逃げようとするのを、竜之助は
脇差
(
わきざし
)
に手をかけて
手練
(
しゅれん
)
の抜打ち。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一首は、明日香に来て見れば、既に都も遠くに
遷
(
うつ
)
り、都であるなら美しい采女等の袖をも
飜
(
ひるがえ
)
す明日香風も、今は空しく吹いている、というぐらいに取ればいい。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一本ものこさずに抜き取った庭は、がらんとして空あかりばかりが、あふれて
飜
(
ひるがえ
)
った、民さんは言った。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
室の
軒端
(
のきば
)
に
飜
(
ひるがえ
)
っているのは、東海道五十三次の賑わいを、眼前に見る如く、江戸時代以来、伝統の敬神風俗を、この天涯の一角に保存する如く、浮世絵式風景を
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
又
飜
(
ひるがえ
)
って思うに、太祖の遺詔に、果して諸王の入臨を
止
(
とど
)
むるの語ありしや否や。
或
(
あるい
)
は疑う、太祖の人情に通じ、
世故
(
せいこ
)
に熟せる、まさに
是
(
かく
)
の如きの詔を
遺
(
のこ
)
さゞるべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかしてかかる方法は遂に余の発見し得ざる所なり。
飜
(
ひるがえ
)
つて思ふに余は漢籍においてさほど根底ある学力あるにあらず、しかも余は充分これを
味
(
あじわ
)
ひ得るものと自信す。
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
岡の上から見ると中棚鉱泉とした旗が早や谷陰の空に
飜
(
ひるがえ
)
っている。湯場の煙も薄く上りつつある。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
錦旗東京城に
飜
(
ひるがえ
)
ってのちも、福沢の心事は暗く閉じがちであった。「出島」演説の日のごとく昂揚するすぐあとから、子供を坊主にしようかとまでひとりで沈みきった。
福沢諭吉
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
然るに、
飜
(
ひるがえ
)
って我が日本での民衆芸術論者を見るに、此の点に於て果してどれ程の用意があり又覚悟があるか。少なくとも又、果して此の点に考え及んだ事すらあるか。
新しき世界の為めの新しき芸術
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
丁度
(
ちょうど
)
抜きさえすれば
切先
(
きっさき
)
の届く位すれ/\になった
処
(
ところ
)
で、身を
飜
(
ひるがえ
)
して
逃出
(
にげだ
)
したのは誠にエライ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
だが都会人の気の弱いものが、一たん
飜
(
ひるがえ
)
ると思い切った
偽悪者
(
ぎあくしゃ
)
になることも、小初はよく下町で見受けている例である。貝原もそれを
見越
(
みこ
)
して父に安心しているのではないか。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
単于の頤髯を吹き
飜
(
ひるがえ
)
した風は、漢庭の宮女の服装を着ている、王昭君の裾をも飜した。
沙漠の美姫
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
虎は、あわや袁傪に躍りかかるかと見えたが、
忽
(
たちま
)
ち身を
飜
(
ひるがえ
)
して、元の叢に隠れた。叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰返し
呟
(
つぶや
)
くのが聞えた。その声に袁傪は聞き
憶
(
おぼ
)
えがあった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
このことはまたも公債租税の累進に著しい拍車をかけ、フランスの財政は破産に瀕した。かくて特権を享受し得なかった所の小生産者、農民、中小商人資本家は、国王に対し叛旗を
飜
(
ひるがえ
)
して立った。
人口論:00 訳序/凡例/解説/序言/前書
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
「この旗が再び海の上に
飜
(
ひるがえ
)
ることになったのは何年ぶりなの?」
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
二人は思わず顔を見合せると、ほとんど一秒もためらわずに、夏羽織の裾を
飜
(
ひるがえ
)
しながら、つかつかと荒物屋の店へはいりました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その集っている間、手に、裾に、胸に、白浪の
飜
(
ひるがえ
)
るようだった、この繃帯は、欄干に
本
(
もと
)
を
留
(
とど
)
めて、末の方から次第に巻いて寄るのである。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眼前の不可思議
此
(
かく
)
の如し、疑はしくは其刀を棄て、悪心を
飜
(
ひるがえ
)
して仏道に入り、念々に疑はず、刻々に迷はざる
濶達
(
かったつ
)
自在の境界に入り給へ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ピシャリと、柿丘の頬に、
生
(
な
)
まぬるいものが当ると、耳のうしろを
掠
(
かす
)
めて、
手帛
(
ハンカチ
)
らしい一
掴
(
つかみ
)
ほどのものがパッと
飜
(
ひるがえ
)
って落ちた。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こう云って本を
飜
(
ひるがえ
)
しているうちに、巻末に近い Die seele と云う一章が出た。「そこを少し読んで聞かせ給え」と、私は云った。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
覆面の女が仲間の大男と平次の争いを他所に、身を
飜
(
ひるがえ
)
すとお勝手へ飛び込んだのを、咄嗟の間に平次は見て取ったのです。
銭形平次捕物控:227 怪盗系図
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と思った時には、マスクの怪人は、まるで軽業師のように身を
飜
(
ひるがえ
)
して、短剣の
軌道
(
きどう
)
をよけていた。目にも止まらぬ
早業
(
はやわざ
)
だ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さて
飜
(
ひるがえ
)
って東方の海岸にこの種の潟の少ない理由を考えてみるに、第一には潟の下地をなすべき入江または澗が少ない。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして彼女は、踵でクルリと身を
飜
(
ひるがえ
)
して、トン、トン、トンと階段を昇って、屋根裏の部屋へ
駈
(
か
)
け込みました。………
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
常に強者の
横暴
(
おうぼう
)
を極むる事を見て義憤する時、
飜
(
ひるがえ
)
つてこの頼りなき色彩の美を思ひその
中
(
うち
)
に潜める哀訴の
旋律
(
メロディ
)
によりて、暗黒なる過去を再現せしむれば
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
飜
漢検1級
部首:⾶
21画
“飜”を含む語句
飜々
飜然
飜弄
飜筋斗
飜案
飜斗
飜斗返
飜訳者
飜訳
翩飜
飜意
飜譯
飜刻
飜牌
飜訳方
飜訳局
飜訳大監
飜魚
飜覆
飜躍
...