雀躍こおどり)” の例文
それに軽い新しい麻裏草履ぞうりをも穿いた。彼は足に力を入れて、往来の土を踏みしめ踏みしめ、雀躍こおどりしながら若い友達の方へ急いだ。
足袋 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
求めて探しても斯様かような親船は無かろうのに、偶然それを発見し得たことの仕合せを、兵馬は雀躍こおどりしてよろこばないわけにはゆきません。
かくて次の日になりけるに、不思議なるかなえたる足、朱目が言葉に露たがはず、全く癒えて常に異ならねば。黄金丸は雀躍こおどりして喜び。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
もとより士卒たちは、雀躍こおどりしてみなそこに集まった。——だが、それを眺めて、少しぼんやりしている張飛の顔を見ると、何か悪い気がして
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は雀躍こおどりして茲を抜けたが、是で見ると此の関所は十二時でなければ出入りの出来ぬ所だ、秀子が茲を通ったのは真昼の十二時で有ったのか
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
十内雀躍こおどりして、清十郎を引ずるように、仙台へ行ってみると、確かにそうらしいが居なくなっている。近所で聞くと
相馬の仇討 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
と、もう廿分もつと、私が両手に豆捩まめねじを持って雀躍こおどりして喜ぶ顔を、祖母が眺めてほくほくする事になって了う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そうおしえたものでしたら、みんなは大喜おおよろこびで、おとうさんやおかあさんのところへ、雀躍こおどりしながらけてきました。
彼らは雀躍こおどりして喜んでいた。こうむっていた迫害の意趣晴らしを、久しく期待していたのが今得られたのであった。争闘の結果にはまだ思い及ぼしていなかった。
嬉しさに雀躍こおどりをしたんですが、貴僧あなた、そのうちの一人は、まだ母の存命の内に、ひな祭の夜なくなりました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
側にいたる小山が「大原君よろこび給え、中川君がお登和さんの事を承知されたよ。君の本望は達したよ」と聞いて大原立上って雀躍こおどりし「ありがたい、モー病気全快だ」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この体に旅人も首を傾けて見ていたが、やがて年を取ッた方がしずかに幕を取り上げて紋どころをよく見るとこれは実に間違いなく足利あしかがの物なので思わずも雀躍こおどりした,
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
勝五郎は深川へ来て話をきくと雀躍こおどりして喜び、伊之吉もまた大芳のとこへ貰われて来ましたが、実に可愛かあいらしい好児いゝこでげすから、おしゅんさんはちっとも膝をおろしません。
遂にそれは天井に達した。彼は雀躍こおどりせんばかりに喜んで、その空気の抜ける孔の中にいこんだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(来たな!)と主税は雀躍こおどりしたが、相手を身近く引寄せようとして、かえって部屋の隅へ退いた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたしは雀躍こおどりするほどに喜んで、すぐに日日新聞社に入れてくれるように関氏にせがむと、もとより自分の方から知恵をさずけた位であるから、関氏も無論に承知して
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これで空手からてで帰ることにはならない。犬が雀躍こおどりする。わたしも、得々としてからだをゆすぶった。
実に彼のよろこびは一とおりでなかった、彼は理想に達するの門を見付けたように雀躍こおどりしたのである。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
去年の春下谷の伯母を訪ねて、その寡婦やもめ暮しの聞きしにまさる貧しさに驚かされた私は、三崎町の「苦学社」の募集広告を見て、天使の救いにおうたように、雀躍こおどりして喜んだ。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
火の粉を梨地なしじに点じた蒔絵まきえの、瞬時の断間たえまもなくあるいは消え或は輝きて、動いて行く円の内部は一点として活きて動かぬ箇所はない。——「占めた」とシーワルドは手をって雀躍こおどりする。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
例せばタナの王は海賊と棒組ぼうぐみで、インド往きの船に多少の馬を積まぬはないから、馬さえ己に献ずれば他の積み荷は一切汝らに遣ると、結構な仰せに、海賊ども雀躍こおどりして外船を侵掠した。
こう考えると、無限にこの笛が懐かしい、恋しい、うしたらいいだろうかと笛を取上げて彼は雀躍こおどりをした。して割らないようにと念に念を入れて、ただ一つまだ開けない孔を穿り始めた。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、戦慄とか恐怖とか雀躍こおどりとかいうような程度の高度の神経細胞の攪乱かくらんを与えられたことはなかった。そこに、この作者のみならず、恐らく一般探偵小説の一歩前進を期待してやまない。
『心理試験』を読む (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
室香に約束はたがえど大丈夫青雲の志此時このときのぶべしと殊に血気の雀躍こおどりして喜び、米国より欧州に前後七年の長逗留ながとうりゅう、アヽ今頃いまごろ如何どうして居おるか、生れた子は女か、男か、知らぬ顔に、知られぬ顔
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『オヤ、わたしあたま何處どこかへつてしまつたわ』あいちやんは雀躍こおどりしてよろこんだ甲斐かひもなく、そのよろこびはたちまおどろきとへんじました、あいちやんは自分じぶんかた何處どこにもえなくなつたのにがついて、方々はう/″\さがまは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ガラッ八は雀躍こおどりしながら飛んで来ました。その日の昼頃です。
淀君は雀躍こおどりしながら悦ばれたが吉兵衛さんは如才なく
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
しめたと心中雀躍こおどりしながら渡辺はさあらぬ体で云った。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
と言いながら俊夫君は雀躍こおどりするのでありました。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
僕も、チャン君も、雀躍こおどりして、中甲板を飛び廻った。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
すると第一に雀躍こおどりして喜んだのは原田だった。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
不寝番は雀躍こおどりしてバタバタ駆けまわった
動員令 (新字新仮名) / 波立一(著)
大学士はまるで雀躍こおどりして
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
裏道づたいに捨吉は平坦たいらな街道へ出た。そこはもう東海道だ。旅はこれからだ。そう思って、彼は雀躍こおどりして出掛けた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金助は雀躍こおどりをして喜びながら、駈け出して行く途端、たそや行燈の下でふみを読んでいた侍にぶっつかろうとする。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ヤ喜んだの喜ばないのと、それはそれは雀躍こおどりまでして喜んだが、しかし書生と言ッてもこれもまた一苦界ひとくがい
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どの玩弄物おもちゃ欲しい、とわしが問うたでの、さきへ悦喜の雀躍こおどりじゃ、……這奴等しゃつら、騒ぐまい、まだ早い。殿たち名告なのらずば、やがて、ろう、選取よりどりに私がってろう!
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その二つの音楽の移り変わりがあまりに粗暴だったので、クリストフは憤って、歯をきしらせ足を踏み鳴らして、壁に拳固げんこをつきつけた。しかしメルキオルは雀躍こおどりしていた。
其の旨を御老中へ御沙汰に相成り、御老中からたゞちに町奉行へ伝達されましたから、筒井和泉守様は雀躍こおどりするまでに喜ばれ、十一月二十九日に長二郎を始め囚人めしゅうど玄石茂二作
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
手を拍って煖炉の前で雀躍こおどりして居る、是が多分は余が生まれて以来第一等の功徳であろう。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
これでもう空手からてで帰らないでも済む。犬が雀躍こおどりする。私も得々としてからだをゆすぶる。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
この評判を耳にして一人雀躍こおどりして喜んだのは、「玻璃窓はりまど」の郡上ぐじょう平八であった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だが、樫田武平は美事な成功に雀躍こおどりして、そのフィルムだけをはずすと、そのまま逃走しようと試みた。が、その時であった。由蔵は、別の目的を以て同じこの天井裏へ上って来たのである。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしはこんな物が続々発行されていることをちっとも知らなかったが、アストン氏は銀座の本屋で見付けて来たのである。わたしは雀躍こおどりするほどに喜んで、すぐにそれを借りて来て読み耽った。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
支倉はこの決定を受取ると文字通り雀躍こおどりして喜んだ。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それを聞くと、平次は雀躍こおどりして喜びました。
僕は、雀躍こおどりして叫んだ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
三人は互いに雀躍こおどりして、本所ほんじょ方面の初冬らしい空に登る太陽を迎えた。あかくはあるが、そうまぶしく輝かない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
足でなく、頭で雀躍こおどりしたのである。たちまち、法衣ころもを脱ぎ、手早く靴を投ると、いきおいよく沼へ入った。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ピラムが、外の空気が吸える嬉しさに、敷石の上で雀躍こおどりをしていると、バルジェは