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遽
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にわか
ふりがな文庫
“
遽
(
にわか
)” の例文
屋外
(
そと
)
の方では
遽
(
にわか
)
に
蛙
(
かわず
)
の鳴出す声が聞えた。岸本は子供等の顔を眺めながら、旅の空では
殆
(
ほと
)
んど聞かれなかった蛙の声に耳を澄ました。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「もう一度、お目にかかりたいとて、御主君には
遽
(
にわか
)
に私に命じてお後を慕わせました。急いで、安土までお戻り下さいますまいか」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最近
遽
(
にわか
)
に勃興したかの感ある新感覚派なるものの感覚に関しても、時にはまた多くの場合、此の狭小なる認識者がその狭小の故を以って
新感覚論:感覚活動と感覚的作物に対する非難への逆説
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
今まで愉快であったカナリヤの声が
遽
(
にわか
)
にうるさくなって、それがために朝々寐起きの
労
(
つか
)
れたる頭脳を攪乱せられるようになった。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
物おほくいはぬ人の
習
(
ならい
)
とて、
遽
(
にわか
)
に
出
(
いだ
)
ししこと葉と共に、顔さと
赤
(
あか
)
めしが、はや先に立ちて
誘
(
いざな
)
ふに、われは
訝
(
いぶか
)
りつつも随ひ行きぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
南へ続く二見ヶ浦とても決して荒い海ではありませんけれど、二見ヶ浦を一足廻って、神崎の鼻へ出ると
遽
(
にわか
)
に波が荒くなります。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然るに今回図らずも、其の欠陥が著しく現はれたので、
遽
(
にわか
)
に騒ぎ出し、足元から鳥が立つた如くに、急に理科研究の奨励を唱へ出したのである。
理科教育の根底
(新字旧仮名)
/
丘浅次郎
(著)
想うに麓の大森林を失って劒岳の
孱顔
(
さんがん
)
は、階老の侶を先立てて
遽
(
にわか
)
に憔悴した人のように、金剛不壊の額にも幾条か
崢嶸
(
そうこう
)
の皺が増したことであろう。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
帝
勃然
(
ぼつぜん
)
として声を大にして曰く、汝いずくんぞ
能
(
よ
)
く
遽
(
にわか
)
に死するを得んや、たとえ死するとも、独り九族を顧みざるやと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お島はこの家が
遽
(
にわか
)
に居心がわるくなって来たように思えた。取返しのつかぬ
破滅
(
はめ
)
に
陥
(
お
)
ちて来たようにも考えられた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
自分
(
じぶん
)
もかく
枷
(
かせ
)
を
箝
(
は
)
められて、
同
(
おな
)
じ
姿
(
すがた
)
に
泥濘
(
ぬかるみ
)
の
中
(
なか
)
を
引
(
ひ
)
かれて、
獄
(
ごく
)
に
入
(
いれ
)
られはせぬかと、
遽
(
にわか
)
に
思
(
おも
)
われて
慄然
(
ぞっ
)
とした。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
今日ここに言うべき必要あるは、そのかつて劇場に
来
(
きた
)
り
看
(
み
)
る事の何故に
罕
(
まれ
)
であったかという事よりも、今
遽
(
にわか
)
に来り看る事の何故頻繁になったかにあるであろう。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
用向きの
繁劇
(
はんげき
)
なるがために、三日父子の間に言葉を交えざるは珍しきことにあらず。たまたまその言を聞けば、
遽
(
にわか
)
に子供の挙動を
皮相
(
ひそう
)
してこれを
叱咤
(
しった
)
するに過ぎず。
教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
遽
(
にわか
)
に天気が狂ったのである。太吉は外を眺めて
崖端
(
がけっぱた
)
に立っている一本の
榛
(
はん
)
の木の
頂
(
いただき
)
に目を止めていた。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これらの場合を通常「末期養子」といい、また時としては「
遽
(
にわか
)
養子」もしくは「急養子」ともいうた。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
精進の気
遽
(
にわか
)
に高まり、岡本市太郎氏夫妻から最少限度の生活費を十ヵ月間恩借。すべてを勉強に打込む。傍らストリンドベリイの「死の舞踊」を翻訳し、洛陽堂から出版。
山本有三氏の境地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると
遽
(
にわか
)
に成が出て来て、
己
(
おのれ
)
の形になっている周の手を
執
(
と
)
って内へ入り、酒を出して話した。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
村の紙が直接戦争の役に立つのだという矜持とそして責任感が、
遽
(
にわか
)
に人々の胸を引き締めた。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
時間は長く吾等を山頂に止まることを許さない、下山の途に就くと同時に、暮色
遽
(
にわか
)
に身に迫るを覚えた。低い山から暗くなり初めて、果然太陽は浅間に近い山に落ちかかった。
武甲山に登る
(新字新仮名)
/
河井酔茗
(著)
いつぞや召使の婢が金子を
掠
(
かす
)
めて出奔せしに、お艶は
争
(
いか
)
で
遁
(
のが
)
すべきとて、直ちに
足留
(
あしどめ
)
の法といえるを修したりき、それかあらぬか件の婢は、脱走せし翌日より
遽
(
にわか
)
に足の
疾
(
やまい
)
起りて
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは好いが、新官制によって定めたとおり、父も
遽
(
にわか
)
に
大礼服
(
たいれいふく
)
というものを
誂
(
あつら
)
えて一着に及んだ。父には到底似合もせぬしろものである。御用商人の手で最上等に仕立てられた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
私が西洋へ行ったからといって、それ等のものが
遽
(
にわか
)
に改まるわけのものではあるまい。
え゛りと・え゛りたす
(新字新仮名)
/
辻潤
(著)
我国開国の次第より幕末外交の始末を記述して別に一編と
為
(
な
)
し、自伝の後に付するの計画にして、
既
(
すで
)
にその腹案も成りたりしに、昨年九月中、
遽
(
にわか
)
に大患に
罹
(
かか
)
りてその事を果すを得ず。
福翁自伝:01 〔慶應義塾の社中にては〕
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
宗利は
苛
(
いら
)
だち、遂には法もなにも無く打掛っていった。小次郎は避けきれずとみたか、
遽
(
にわか
)
に構えをたて直して向って来たが、そのとき彼の袋竹刀の尖が強たかに宗利の右の眼を突いた。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
縈繞
(
えいじょう
)
数
匝
(
そう
)
、
遽
(
にわか
)
にこれを解かしむ、血流数升、白これを
異
(
あやし
)
み、ついに紙帖中に封じ、衣箱内に
蔵
(
かく
)
す、一日客を送りて滻水に至る、出して諸客に示す、客曰く、
盍
(
なん
)
ぞ水を以てこれを試さざる
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
遽
(
にわか
)
の発作で、町内の医者も間に合わず、息を引取ってしまいましたが、水で頭を冷したので、枕も毛もぐっしょり濡れている外、どこにも異状はなかったので、
筍庵
(
たけのこあん
)
先生の見立ては卒中ということで
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
偶
(
たまたま
)
不平を以って鳴けば、
遽
(
にわか
)
に多言の
咎
(
とがめ
)
を獲、悔、
臍
(
ほぞ
)
を
噬
(
か
)
むも及ぶなし。尾を
揺
(
うご
)
かして憐を乞うを恥ず。今其罪名を責むるを蒙り、其状を
逼
(
せま
)
らる。伏して竜鱗を
批
(
う
)
ち竜頷を探る。
豈
(
あ
)
に敢て生を求めんや。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
魔風
遽
(
にわか
)
に
颯々
(
さつさつ
)
と
吹荒
(
ふきすさ
)
み、
瀑
(
たき
)
のごとくに
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と、
遽
(
にわか
)
に大規模な作戦を立て、
高師直
(
こうのもろなお
)
、
師泰
(
もろやす
)
を
総帥
(
そうすい
)
とする、二十余ヵ国の兵六万をもって、東条、赤坂の攻略に大挙さしむけた。
日本名婦伝:大楠公夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この日はかかる話を聞きしために、その時まで非常に苦しみつつあつたものが、
遽
(
にわか
)
に愉快になりて快き昼飯を食ふたのは近頃嬉しかつた。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
立派な教育のある
二人
(
ふたり
)
が、男は四十歳、女は二十九歳で、多く年を
閲
(
けみ
)
した友人関係を棄てて、
遽
(
にわか
)
に夫婦関係に
入
(
い
)
ったのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
上の方、矢立の杉のあたりからもまた
火影
(
ほかげ
)
がチラチラ、してみると自分はもう取捲かれているのだ。がんりきは
遽
(
にわか
)
に立ち上ってよろめきながら
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二本松義継の為に
遽
(
にわか
)
に父の輝宗が
攫
(
さら
)
い去られた時、鉄砲を打掛けて其為に父も殺されたが義継をも殺して了った位のイラヒドイところのある政宗だ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
すると、
遽
(
にわか
)
に彼の周囲が音響を立て始め、投石のために窓の壊れた電車が血をつけたまま街の中から辷って来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
庭の柿の幹に
青蛙
(
あおがえる
)
の
啼声
(
なきごえ
)
がきこえて、
銀
(
しろがね
)
のような大粒の雨が
遽
(
にわか
)
に青々とした若葉に降りそそいだりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
とこう想い浮べましたら、
遽
(
にわか
)
に身の毛が
弥起
(
よだ
)
って、手も足も烈しく震えました。ふらふらとして其処へ
仆
(
たお
)
れそうにもなる。とても
躊躇
(
ためら
)
わずにはいられませんのでした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
古来女性の学問教育を
等閑
(
なおざり
)
に附して既に其習慣を成したることなれば、今日
遽
(
にわか
)
に之を起して遽に高尚の門に入れんとするも、言う可くして行わる可らざるの所望なれば
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それはいよいよ本題に
進入
(
はい
)
るに当って、まず作中の主人公となすべき婦人の性格を描写しようとして、わたしは
遽
(
にわか
)
にわが観察のなお熟していなかった事を知ったからである。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
馬からおろされた姫は向うに見える城あとの
樹立
(
こだち
)
をじっとながめていたが、
遽
(
にわか
)
に気をあららげて、腰に手をやって、「こんなものが今更何になる。
益
(
やく
)
にもたたぬものは邪魔になるばかりだ」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
両者共に其例があるので
遽
(
にわか
)
に断定することは許されない。
マル及ムレについて
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「あッ」お鳥も驚いて、
遽
(
にわか
)
に店口に飛出しました。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は
遽
(
にわか
)
に
上
(
のぼっ
)
て見ようと決心した。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
兵法だの、道だのと、口にするのも気恥かしくなって、くだらない人間ばかりに見えた世間が、急に広くなり恐ろしくなり、そして
遽
(
にわか
)
に
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠兵衛の家は、この二人の内いずれかの
裔
(
すえ
)
であるか、それとも外に一豊の弟があったか、ここに
遽
(
にわか
)
に
定
(
さだ
)
めることが出来ない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この時に、万字楼の表通りが
遽
(
にわか
)
に
噪
(
さわ
)
がしい人声であります。第三局の碁を打ちはじめようとした兵馬も、東雲も、新造も、その噪がしいので驚きました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのとき、
遽
(
にわか
)
に対岸の芒の原がざわめき立った。そうして、一斉に
水禽
(
みずどり
)
の群れが列を乱して空高く舞い上ると、間もなく、数千の鋒尖が芒の穂の中で輝き出した。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
今
遽
(
にわか
)
に関白に
楯突
(
たてつ
)
こうようはあるまいが、云わば秀吉は家来筋だ、秀吉に何事か有らば
吾
(
わ
)
が主人が手を天下に掛けようとしたとて不思議は無い、男たる者の当り前だ
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
余謹聴しつつ
徐
(
おもむろ
)
にその人を看るに紋付の羽織を着たり。侃々諤々の論未終らざるに余
遽
(
にわか
)
に問うて曰く貴兄の羽織には紋あり見る処
抱茗荷
(
だきみょうが
)
に似たり。抱茗荷は鍋島様の御紋なり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
庭にある大きな
青桐
(
あおぎり
)
の方から聞えて来る
蝉
(
せみ
)
の鳴声は、
遽
(
にわか
)
に子供の部屋をひっそりとさせた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
我国開国の次第より幕末外交の始末を記述して別に一編と
為
(
な
)
し、自伝の後に付するの計画にして、
既
(
すで
)
にその腹案も成りたりしに、昨年九月中、
遽
(
にわか
)
に大患に
罹
(
かか
)
りてその事を果すを得ず。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
遽
漢検1級
部首:⾡
17画
“遽”を含む語句
急遽
遽然
遽々然
其遽
大遽
遽伯玉
遽色
遽雨
遽驚