)” の例文
「ヘエ——じゃないよ、相手のり好みをしているうちに、月代さかやき光沢つやがよくなってよ、せっかくのいい男が薄汚くなるじゃないか」
どんな時であったか、女御の所へ殿上役人などがおおぜい来ていてりすぐったような人たちで音楽の遊びをしていたことがあった。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お父さまたちがっていらしたら、さっそく仕事にかかりましょうね。……(テーブルの上の書類を、いらだたしくり分けながら)
ふたりの協力によって、将監の家から没収して来た古手紙や覚え書らしいものが、老公の膝のまえに、おびただしく、り分けられていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく他国から来たもので、なんにも事情を知らないのであろうが、りにえってこんなところへはいるというのは皮肉すぎる。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのうちに、競馬のはじまる時刻が近づいて、国内からりすぐってうまやにつないである馬は、勇んでいななきながら引き出されました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
定次郎の実直といへば白井様でも大事の用には特にり上げて使ふ位で、力自慢に若者わかいものを怒らせるだけが悪い癖だと、老人達としよりだちが言つてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのうちに、会社からは田辺課長をはじめ山ノ井、小松などというりすぐりの用心棒が駈けつけた。総一郎はすこし生色をとりかえした。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
善「えりってくつわの紋付を買って来たのは何ういう訳だ、薩摩様の御紋所のようだなア、多助、何かそれがお前のうちの定紋か」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店のかみさんに、土産を買えと勧められて、何か嵩張かさばらないものをと、楊枝入ようじいれやら、煙草箱やらを、二つ三つり分けていた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「さあ、こんなものがそんなに欲しけりゃあいくらでも返してやる」と、山のような手紙の中から私の手紙をり分けて後向きにたたきつけた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
白い糸が山のように積んであると、そのそばでやとにんがしきりにそれをり分けている。反物たんものを入れる大きな戸棚も見える。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ピエエルは郵便をり分けた。そしてイソダン郵便局の消印のある一通をわしく選り出して別にした。しかしすぐに開けて読もうともしない。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
雑草の種子でも穀物でも、勝手に好みのものをり食いが出来るので、言わば小鳥は台所をあちらへ移しているのである。
故意こいにしても偶然にしても、とにかく仇討を延び延びにすることによって、そういう生半可なものをすぐり落された、もみぬかとをり分けられた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
喰い物のり好みをするのはまだしも、人間の脳髄なんぞが寄っても附けない鋭敏な天気予報までも、ハッキリと現わして見せるから痛快ではないか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
唐箕とうみが穀粒をり分くるように、不幸は生きんと欲する者を一方に置き、死せんと欲する者を他方に置く。愛よりもさらに強い恐るべき生の法則である。
月樵げっしょうの『不形画藪ふけいがそう』を得たるは嬉し。そのほか『鶯邨画譜おうそんがふ』『景文花鳥画譜』『公長略画』などり出し置く。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
老婢は早速八百屋へ走つて行つて、ころあひの小い西瓜をつて買つて来ました。父は私にどんな模様がいゝかと尋ねましたが、私は何でもいゝと云つて居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この戦いにまぎれて高倉宮は奈良へ逃げられたにちがいない、今なら間に合う、とりすぐった精兵四、五百騎を引きつれると馬に鞭をあて、鐙をけって疾駆した。
どの玩弄物おもちゃ欲しい、とわしが問うたでの、さきへ悦喜の雀躍こおどりじゃ、……這奴等しゃつら、騒ぐまい、まだ早い。殿たち名告なのらずば、やがて、ろう、選取よりどりに私がってろう!
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つやにいいつけて反古紙ほごがみを集めた箱を自分の部屋へやに持ってさして、いつか読みもしないで破ってしまった木村からの手紙をり出そうとする自分を見いだしていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夫人が短檠たんけい灯影ほかげのもとにうつむいて、心に浮かび出る文句を口のうちであれかこれかとり分けているときの、深く考え込んだ表情を見るのが楽しみなのであった。
被告に不利な証人だけをりぬいて登場させる、弁護士にはなるべく口がけないようにするが
初冬の日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
議論にならなくっても、事実の上で、あたしの方が由雄さんに勝ってるんだから仕方がない。いろいろごのみをしたあげく、お嫁さんを貰った後でも、まだ選り好みを
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
エキセルシオール紙やウニベルサール紙、エル・コメルシオ紙、ラ・プレンサ紙やラ・ナシオン紙等のり抜き記者連中が会場へ乗り込んできたのは翌朝の九時頃であった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それから古ローマのネロ帝は荒淫傑出だったが、かつてそろいも揃って半男女ふたなりの馬ばかりり集めてその車を牽かしめ、異観に誇った(プリニウスの『博物志ヒストリア・ナチュラリス』十一巻百九章)
一体セルギウスは誰をでも草庵に入れる事にしてゐるが、いつもセルギウスに付けられてゐる僧と、日々にち/\僧院から草庵へ派遣する事になつてゐる当番の僧とで、人をり分る。
国々の珍しい切手ばかしをこのみをするのだが、池田氏のはそんな事には頓着なく、どんな有り触れた物でも構はない、手当り次第に集めるので、かうして掻き集めたのが
しかしこの名前はけっしてことさらり好んだものではなく、どうしてもこうよりほかに名前のつけようがなかった事情が、自然とそこに生じたからだと断言することができる。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
三人の暴徒が彼女らに手伝っていた。髪の毛が長くて頤鬚あごひげ口髭くちひげとのあるたくましい男どもで、リンネル女工のような手つきで布をり分けながら、彼女らをおびえさしていた。
しかし、味方は巧妙に舟を操って、あるいは水煙の中に隠れ、滝津瀬のようなとどろきを上げる、波濤はとうの谷底をり進んでは、軍船に近づくまで、いっこうに姿を現わさなかった。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
丹念にり分けて、しまったり出したりしているそばに座り込んで、これまでに見たこともない小片こぎれや袋物、古い押し絵、珊瑚球さんごじゅのような物を、不思議そうに選り出してはいじっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
こと更にらみて綾羅きらをかざり、一昨日出そろひしと聞く某の芝居、狂言も折から面白き新物の、これを見のがしてはと娘共の騷ぐに、見物は十五日、珍らしく家内中うちゞうとの觸れに成けり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今まで敵であった部落の土人が、五十人の壮丁をりすぐって従軍させたいと云い出したからで、ラシイヌはそれをすぐ許した。彼ら部落の土人どもはザンギバール人であるのであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
比較的景色の好い精神的と肉体的とを兼ねたこの健康地をらんだと云うばかりだけれ共、その生徒の中から此村に落される金ばかりは割合に労働なくて得られる金の唯一なものであった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わざとり抜いた高揚のために、過敏にされ貧しくされ疲らされた揚句、乱れてすさみ切って責め抜かれて、病み衰えてしまった自分の姿を眺めた——そして悔恨と郷愁とにむせび泣いた。
これはことごとく平田から来たのばかりである、捻紙を解いて調べ初めて、その中から四五本り出して、涙ながら読んで涙ながら巻き納めた。中には二度も三度も読み返した文もあッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
頃は何時いつなんめり、天正二十三年十一月、上杉弾正大弼だいひつ輝虎入道謙信に置かせられましては、越後春日城には留守居として長尾越前守景政を残し、りに選ったる精兵一万八千騎を引率なし
相馬の仇討 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
まだけがれを知らぬ清淨しやうじやう少女をとめり出して、稚兒ちごに立てねばならなかつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
警視庁からは、中村捜査係長のひきいるりすぐった警官隊五十人が出張して、博物館の表門、裏門、塀のまわり、館内の要所要所にがんばって、アリのはいいるすきまもない大警戒陣です。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
柳生やぎゅうの里から応援に江戸入りした高大之進こうだいのしんを隊長とする一団、大垣おおがき郎右衛門ろうえもん寺門一馬てらかどかずま喜田川頼母きたがわたのも駒井甚こまいじんろう井上近江いのうえおうみ清水粂之介しみずくめのすけら二十三名の柳門りゅうもんり抜きの剣手は、麻布本村町あざぶほんむらちょう
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
踊子らもりぬきと見えそれぞれに優劣の差のない、揃った清潔な感じがした。手穢てあかの染まぬ若い騎兵の襟首えりくびの白さにちらりとほの見える茎色のつやがあった。実に眼醒めざめるばかりの美しさだった。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それから余りり嫌いをせずに、飲物と食物くいものとを註文ちゅうもんした。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
影つけて日向る荷かつぎの肩かへにけりたぶつく水桶
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
要するに、彼はちっとも食べ物のり好みをしない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
り好みはなかった。野宿の心を決めていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
戸板裁縫女学校をらまれた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
好みは言はじ、りもせじ。
生活のうるほひ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
童女が感じのいい姿をして夫人の愛している竜胆りんどうや朝顔がほかの葉の中に混じってしまったのをり出していたわっていた。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)