けえ)” の例文
「馬鹿野郎、人の店賃の世話より、手前てめえの小借りでも返す工夫をしやがれ。二三百両ありゃ、角の酒屋の借りぐらいはけえせるだろう」
甚「カラうも云う事は子供でげすねえ、幾らア五拾両、けれども、エヽと、二拾両ばかりわっちが目の出た時けえして、三拾両あります」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのうちに屋根のックリけえった、破風造はふづくりのお化けみてえな台湾館が赤や青で塗り上って、聖路易セントルイスの博覧会がオッぱじまる事になりますと
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「悪いことと言ったって、お前、品の好い切下げ髪の奥様を捉まえてね、あの若いくせに狼藉ろうぜきをしようというんだからあきけえっちゃった」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、ぶちまけて言うが、お前は、死んだ人間ってものは死んでそれっきりのものと思うか、それとも、また生きけえって来るものと思うかね?
「お痛わしいお痛わしいと言いながら、手前の方が先に泣き出すなんて……阿呆めが! あきけえってものが言えねえ……」
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
稼ぐようなもんだ。——そして、きっとその間に、脇坂佐内の土蔵の中へ、千両だけはけえしてやるぜ。とっさんへの手向たむけだ。——じゃあ、あばよ
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
らそれほどでねえとおもつてたが三四日さんよつかよこつたきりでなあ、それでも今日等けふらはちつたあえゝやうだからこのぶんぢやすぐけえすかともおもつてんのよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おえねえ頓痴奇とんちきだ、坊主ぼうずけえりの田舎漢いなかものの癖に相場そうば天賽てんさいも気がつええ、あれでもやっぱり取られるつもりじゃあねえうち可笑おかしい。ハハハ、いいごうざらしだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
權三 (かんがへる。)いくら大岡樣がえらいと云つても、まさか死んだ者を生かしてけえしやあしめえ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
何んだと? てめえはそれじゃ、おれの恩をあだけえす気だな。よし、そんなら言って聞かせる事があらあ。一体、お由の屍骸を一番初めに見附けて来たなあ何処の何奴どいつだ。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「するてえと、知らずにひっくりけえっていたのが、結局けっくこっちの拾い物かもしれねえな」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其奴そいつア判ら無えがナ、今度ア今迄来た様な道庁の役人たア違うから、何とか目鼻はつけて呉れるだろう、何時も何時も胡麻化されちゃアけえるんだが、今度ア左様そうくめエ
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「その口ぶりじゃ、かかあの方はもう辛抱して還る気はねえんだね。そのはずさ、七八年も世間師をしていちゃ、旅人根性たびにんこんじょうは生涯抜けやしねえ、今さらとても土百姓にけえられるものか。」
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「おれらが保証人になって、今年は五十円だけ、そして来年も五十円だけ、そして再来年には全部けえさせるし、利子も相当につけさせるからって言ったんですが、おれらを信用しねえでがすよ」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「まったくだ。ひどい目に遭わせやがったな。おれ達を元へけえしてくれ」
大黒柱でえこくばしらもっけえして、土台石どでえいしから草あ生やしてくれっから!
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
亥「それも仕方がねえが山のように線香だのなんだの、質にも置けねえ物を貰って、それもいがけえしに菓子と茶を附けなければならねえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
渡場わたしをかち渡りするは御法度ごはっとなんでア、何たるワザワグこったべえ、只じゃ済まねえべ、お関所破りと同罪なんでア、早うでんぐりけえりな
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこいらがだんだん薄暗くなって気が遠くなって行くようなアンバイで……そのまんま引っくりけえっちゃったらしいんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なに、心配はねえ。仕事のはけ口を見つけに行くのよ。けえって来たら、借金もけえすし、おっ母にも安心させるぜ」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「横っ面へ叩きつけたのは嘘だが、けえしたのは本当さ。それから仏様を見ると、首に絞め殺した跡が付いている」
俺あこの淋しい島でそんなことをすっかり考えて来たんで、今じゃまた信心深え男にけえってるんだ。もうラムなんか決してあんなにたくさん飲みやしねえ。
「そんぢやお内儀かみさんそれけえしてまたほかにもなんとかしたら冥利みやうりりいやうなこともりあんすめえな」かれなさけなげな内儀かみさんをちらりとていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「わしが出すんじゃなえ、わしはただ阿母さまから預かってるものを、けえすだけなんじゃ」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「だが、待った! 品物は与吉のものに相違あるめえが、けえすにゃおよばねえぞ小僧」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「まあお前が……まあけえして来たっちゅうけえ!」
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「テヘッ。呆れて物が云えねえ。咽喉のビクビクが可哀相なら、引っくりけえった鮟鱇あんこうなんか見ちゃいられねえや。勝手にしやがれだ。ケッ……」
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
此間こないだわしたくへ出やした時、あなたが可愛相かわいそうだと云って金をお恵み下され、早速さっそくお返し申そうと思いましたが、いまだにおけえし申す時節がまいりません
「エエ、このあまめ! よい程に、あしらっておけばつけ上がって、ふざけた真似まねをしやがると、俵括たわらぐくりにして船底へほうりこんでも、阿波へ突ッけえすからそう思え」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんでも先刻さつきはがや/\一ぺえるやうだつけがあつちぢやうめものあつて爺等ぢいらとつけえしとつたんべなあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
言って笑ってられやすが、ま、あっしの申し上げることが、根もねえ嘘かほんとうか、とっくりと一つ調べて御覧なせえやし。旦那あ、眼廻して引っ繰りけえってしまえなさるだから
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
素直にでんぐりけえって舟へ乗って渡って来てかんせ! 無茶あしねえものだべなア
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その仇を討った妹を縛れって言うなら俺は十手をお上へけえすよ
何でも手前てめえの懐にたんまりあるだろうから出せ、金を強奪ふんだく裸体はだかにするのだ、殺しゃアしねえが身体にきずを附けて三年あとの意趣をけえすのだ、さ金を出せ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いわなくッても、たたけえしてやろうと思っていたところだ。——それっ、持ってゆけ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ旦那は何にもお知りなさらねい。旦那こりゃ容易ならねえ話でやすぜ。旦那あ引っ繰りけえりなさるだから」とホセはうまく言い現せないで、身悶みもだえせんばかりの様子であった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
アトから聞いてみると揃いも揃ったステテコが二人つながって引っくりけえった。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あきけえるぜ」
長「金がほしいくれえなら、此の金を持ってやアしねえ、うぬのような義理も人情も知らねえ畜生の持った、けがらわしい金はらねえ、けえすから受取っておけ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時は生首か骨ぐらいは遺物かたみがわりにけえしてもくれよう
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「向うの店で又引っくりけえりゃしねえか」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そねえな必要もなえじゃろう、後で兄弟に金の負担でもかける気なら、取って置くかも知んなえが、そうでなけりゃ、死んだ後で、帳面ばかし眺めてたって、なんになる? 亡なった仏さまア、生きてけえるわけでもあるめえしさ……」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
開化になっても士族さんは士族さん、ことにこれだけの身代で、預ったものを預からないと云っては御名義にも係わりますから、旦那、けえしてって下せえな
狸が浮れて腹太鼓をたゝきやアがって夜が明けて戸を明けて見ると、三匹ぐれえ腹ア敲き破ってひっくりけえって居る
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
春見様はき此の向うにいて立派な御身代になっておいでなさるから、おとっさんがお預け申した金をけえしてお貰い申すがいゝじゃないかと云っても、若いお方ですから
音「能く掃除仕やすねえ、墓の間の草ア取って、まてえで向うへ出ようとする時にゃアよく向脛むこうずねッつけ、とびけえるようにいてえもんだが、わけえに能く掃除しなさるのう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前は此処から飛び込んで本当に死ぬんだから、此れを遣っちまうんだ、其の代り己は仕事をて、段々借金をけえして往ったとこが、三年かゝるか、五年掛るか知れねえが
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
悉皆すっかり借金をけえし切って又三年でも五年でも稼がなけりゃア、百両の金を持って、娘の身請をに往く事が出来ねえ、あゝんでもんでも娘を女郎じょうろにするのだ、仕方がねえ
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんたさまは何とハア御運のわりいお方だかえ、しかし今に勇助どんがけえって来たらとびけえるように悦びましょう、わしも附いて居やすから御心配ごしんぱえなさらねえでいらっしゃいましよ