トップ
>
踵
>
かかと
ふりがな文庫
“
踵
(
かかと
)” の例文
いつもは
見識
(
みし
)
らない場所へ来るとまっさきに立って駈け出すにもかかわらず、今夜はわたしの靴の
踵
(
かかと
)
にこすりついて来るのであった。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
と
背後
(
うしろ
)
から、
跫音
(
あしおと
)
を立てず
静
(
しずか
)
に来て、早や一方は窪地の蘆の、
片路
(
かたみち
)
の山の根を
摺違
(
すれちが
)
い、慎ましやかに前へ通る、すり
切
(
きれ
)
草履に
踵
(
かかと
)
の霜。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人はそのままいっしょに下宿へ帰った。
上靴
(
スリッパー
)
の
踵
(
かかと
)
を鳴らして
階段
(
はしごだん
)
を二つ
上
(
のぼ
)
り切った時、敬太郎は自分の部屋の障子を手早く開けて
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一塊の土の乾いた頂を
踵
(
かかと
)
でふみつぶして、その下の方に掘られてる谷間を埋める時には、一日を
無駄
(
むだ
)
には暮さなかったのだと考えた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
結局、犯人は霙の降りやんだ二時頃にはすでに堂内にいて、兇行を終えてから、地上に
踵
(
かかと
)
を触れず
遁
(
のが
)
れ去ったと観察するほかにない。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
漆
(
うるし
)
のような引き眉に毒々しい頬紅口紅をつけ、青地か紫色の綿紗に黒手袋、白絹模様入りの靴下に
白鞣
(
しろなめし
)
の靴の
踵
(
かかと
)
を思い切り高くして
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
踵
(
かかと
)
をつけて
爪先
(
つまさき
)
だけ開き、ぴったりそろえた両脚を前へ突き出しながら、黙って身動きもせずに、しゃんと椅子の上にすわっていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
穴の外に火を
焚
(
た
)
いて置くと、たけ六尺ほどで髪の長さは
踵
(
かかと
)
を隠すばかりなる女が
沢蟹
(
さわがに
)
を捕へて此火に
炙
(
あぶ
)
つて食ひ、又両人を見て笑った
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
両前を合せて赤い腰紐をぎゆうつとしめながら、一二歩歩いてみて少し短いのを、
踵
(
かかと
)
で後の
裾
(
すそ
)
を踏へてのばしながらにつこりした。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「大きな草鞋を突っかけて仕事をしたに違いない。足跡は大きいが、爪先と
踵
(
かかと
)
が反って柔かい土へ舟形にめりこんでいるでしょう」
銭形平次捕物控:041 三千両異変
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
幾年となく散りつもった木の葉はそのまま土になって
柔
(
やわらか
)
に爪先をうずめ、
踵
(
かかと
)
は餌をねらう獣のそれのようにすこしの音もたてない。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
希臘の英雄アキレスは
踵
(
かかと
)
だけ不死身ではなかつたさうである。——即ちアキレスを知る為にはアキレスの踵を知らなければならぬ。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
白い
踵
(
かかと
)
にからむ部屋着の裾にも雪の日の寒さは沁みて、去年の暮れに入れ替えたばかりの新しい畳は、馴れた素足にも冷たかった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
腕で
擲
(
なぐ
)
り、
踵
(
かかと
)
で叩き、泡を立てる。そして、流れのまん中で、
猛烈果敢
(
もうれつかかん
)
に、騒ぎ狂う波の群れを、岸めがけて追い散らすのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
と復一は呟きながら念のためプールの方へ赤土路をよろめく
跣足
(
はだし
)
の
踵
(
かかと
)
に寝まきの
裾
(
すそ
)
を貼り付かせ、少しだらだらと踏み下ろして行った。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だが、その槍の穂がくるより早く、弦之丞は刀の
柄
(
つか
)
をつかんだまま、
踵
(
かかと
)
を蹴って左へ跳び、同時に
鍔鳴
(
つばな
)
りさせて一刀を抜き払った。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岩から沁み出る清水の冷たさも加わって、
踵
(
かかと
)
がいちばんさきに
痺
(
しび
)
れるのが常であった。そこへは、川師仲間でも誰も潜ってゆかなかった。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
浴衣を貸してくれる、珍しくも裾は
踵
(
かかと
)
まである、人並より背の高い私は、貸浴衣の
丈
(
たけ
)
は膝までにきまったものと、今まで思っていたのだ。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
キャラコさんは、老人にも馬にも見えないように、後手で人参の束を地面へずりおとすと、靴の
踵
(
かかと
)
でそっと
溝
(
どぶ
)
の中へ押し落としてやった。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
黒衣婦人の靴の
踵
(
かかと
)
が調子をつけて床を蹴る。まさかありふれたモールス信号ではあるまい。だが、何かの信号には違いなかった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
寝間着の上に大島の羽織を
纒
(
まと
)
って、メリヤスのパッチの端を
無恰好
(
ぶかっこう
)
に素足の
踵
(
かかと
)
まで引っ張っている高夏は、庭先へ椅子を持ち出していた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ドサ貫は
踵
(
かかと
)
で敷石を蹴って「もしほんとだったら、——これからでも万一あんたがミーちゃんを誘惑するようなことをしたら、僕は……」
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
所々
剥
(
は
)
げた
蝋鞘
(
ろざや
)
の大小を見栄もなくグッタリと落とし差しにして、長く曳いた裾で
踵
(
かかと
)
を隠し泳ぐようにスースーと歩いて来る。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「こわいわねえ」と、お花は自分の足の指が、先きに立って歩いているお松の
踵
(
かかと
)
に障るように、食っ附いて歩きながら云った。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
僕のなかできこえる僕の雑音……。ライターが
毀
(
こわ
)
れてしまった。
石鹸
(
せっけん
)
がない。靴の
踵
(
かかと
)
がとれた。時計が狂った。書物が欲しい。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しかし、まもなく宇乃が出て来たとき、彼は
踵
(
かかと
)
が地につかぬほどふるえだし、殆んど恐怖におそわれたような眼つきになった。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
恐怖のために彼女は、両
肱
(
ひじ
)
を腰につけ、
踵
(
かかと
)
を
裾着
(
すそぎ
)
の下に引っ込ませ、できるだけ小さくちぢこまり、ようやく生きるだけの息をついていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
空はリキュール酒のようなあまさで、夜の街を覆うと、
絢爛
(
けんらん
)
な渦巻きがとおく去って、女の靴の
踵
(
かかと
)
が男の
弛緩
(
しかん
)
した神経をこつこつとたたいた。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
菊枝はすっかり沈んでしまって、細い山路をのぼる時から、父親の
踵
(
かかと
)
のあたりに視線を下ろしたきり、全く黙り続けていた。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
踵
(
かかと
)
の
上
(
あが
)
つた靴も
穿
(
は
)
かない
草履穿
(
ざうりばき
)
で
今日
(
けふ
)
も出たなら疲れはもつとひどかつたかも知れないと、
上
(
あが
)
り切つた
処
(
ところ
)
で立ち
留
(
どま
)
つて息を突きながら思つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
見るたびに葉子は生活に
汚
(
よご
)
れていた。
風呂
(
ふろ
)
へ入るとき化粧室で脱ぎすてるシミイズの汚れも目に立ったが、ストッキングの
踵
(
かかと
)
も薄切れていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夢中で知らずにいたが、屋根から逃げるときにでも一発うけたとみえて、左の
踵
(
かかと
)
からたらたらと血を噴いていたのである。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一足
(
いっそく
)
の
飛行靴
(
とびぐつ
)
とあの人は言ったよ! もし彼がうっかりそんなものを
履
(
は
)
こうものなら、彼の
踵
(
かかと
)
がぽいと頭よりも高く飛び上ってしまうだろうに。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
足の
踵
(
かかと
)
を離さないようにして歩いても、すりへらした駒下駄からはたえずハネがあがった。風が出て雨も横しぶきになって
袖
(
そで
)
もぬれてしまった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
そして両
踵
(
かかと
)
をつけ胸をやや
反
(
そ
)
らし何か言おうとしたが、その前に隊長は眼をしばたたきながら重々しく、むしろいたわるような口調で彼に言った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
仕事をするにも休むにも、日本人は足と脚との内側の上に坐る——というのは、脚を身体の下で曲げ、
踵
(
かかと
)
を離し、足の上部が畳に接するのである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
今の社会で口のあいた
靴
(
くつ
)
をはいて、油だらけの菜っ葉服を着て、足の
踵
(
かかと
)
のように堅い手の皮を持った、金をそのくせ持っていない、「海坊主」を
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
誰か——給仕かも知れない、甲板を行ったり、来たりしている靴の
踵
(
かかと
)
のコツ、コツという音がしていた。実際、そして、騒ぎは夜明けまで続いた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
紅味を帯びたすべっこい
踵
(
かかと
)
が二つ投げ出されたように畳にこぼれているのを、栄三郎は苦しそうに眺めて眼をそらした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
トオンを持たない画面には、指にひっかかる真綿の糸のようなものがふけ立っていたり、又はガラスの破片を踏んだ
踵
(
かかと
)
のような痛さがあるのである。
触覚の世界
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
忽
(
たちまち
)
見る詰襟白服の一紳士ステッキをズボンのかくしに
鉤
(
つる
)
して濶歩す。ステッキの尖
歩々
(
ほほ
)
靴の
踵
(
かかと
)
に当り敷石を打ちて響をなす事恰も
査公
(
さこう
)
の
佩剣
(
はいけん
)
の如し。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
まだ若い女が一人、ハイヒールの
踵
(
かかと
)
を鳴らしながら、ホテルのほうから舗道につづく
柵
(
さく
)
を抜けて、海岸公園に入った。
一人ぼっちのプレゼント
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
黒つぽいスーツに濃い茶色のオーヴァをぴつちり召して、帽子はかぶらず、かなり
踵
(
かかと
)
の高い靴をはいておいでです。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
これでまだ私が感ぜずに同じようなことを繰り返していようものなら、その次にはたちまち蔑み笑いを口許に
泛
(
うか
)
べて
踵
(
かかと
)
で床をコツコツとやる番であった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「ここに眼隠しの布があるし、ここに
秤
(
はかり
)
がある。だが、
踵
(
かかと
)
に翼が生えていて、飛んでいるんじゃありませんか?」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
小犬を連れたお婆さんにも、赤い花や桜の実の飾りのついた帽子を冠り
莫迦
(
ばか
)
に
踵
(
かかと
)
の
隆
(
たか
)
い靴を
穿
(
は
)
き人の眼につく風俗をしてその日の
糧
(
かて
)
を探し顔な婦人にも。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
抱いて井戸端へ立たせると、冷たいともいわず指先を上にむけて
踵
(
かかと
)
で立っていた。そんなことを考えれば、お母さんの胸には新たな思いも湧くのであった。
赤いステッキ
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
この両国の雑踏の間に、下駄脱しや、羽織脱しがあった。
踵
(
かかと
)
をちょっと突くものですから、足を上げて見ている間に、下駄をカッ払ったりする奴があった。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
これより
降
(
くだ
)
っては、
背皺
(
せじわ
)
よると
枕詞
(
まくらことば
)
の付く「スコッチ」の背広にゴリゴリするほどの牛の毛皮靴、そこで
踵
(
かかと
)
にお飾を
絶
(
たや
)
さぬところから
泥
(
どろ
)
に尾を
曳
(
ひ
)
く
亀甲洋袴
(
かめのこズボン
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
朝から晴渡った日だったが、
孫
(
そん
)
軍曹は、
憂欝
(
ゆううつ
)
な顔をして、長剣を靴の
踵
(
かかと
)
で
蹴
(
け
)
りながら、鉱区を見廻っていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
“踵(かかと)”の解説
かかと(踵)は、足の裏の最も後(背中側)の部分である。きびすとも言う。靴ではかかとの下の靴底を厚くするのが普通で、英語の heel からヒールとも言う。靴のこの部分を指してかかとと言うこともある。
(出典:Wikipedia)
踵
漢検1級
部首:⾜
16画
“踵”を含む語句
相踵
接踵
高踵靴
踵鉄
高踵
円踵
前踵部
対踵地
対踵的
後踵
膕踵
赤踵
踵摺
追踵