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詰
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なじ
ふりがな文庫
“
詰
(
なじ
)” の例文
西行が、再び瓢然として、その寒そうな姿を神護寺の門外に運び去った時、弟子たちは、かねての豪語にも似ぬ文覚の態度を
詰
(
なじ
)
った。
西行の眼
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
千登世は仕上の縫物に
火熨斗
(
ひのし
)
をかける手を休めて、目顏を嶮しくして圭一郎を
詰
(
なじ
)
つたが、直ぐ心細さうに
萎
(
しを
)
れた語氣で言葉を繼いだ。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
人々のゐる面前であるといふのに思はず色をなして
詰
(
なじ
)
つたりする、さういふ告白的な飾らざる態度が特別深い人生のわけもないだらう。
枯淡の風格を排す
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「雪ちやんは今何處にゐるの。居所ぐらゐ私に通知してゐたつていゝでせうに。」と
詰
(
なじ
)
ると、雪子は只笑つてばかりゐて答へなかつた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
鼻
蠢
(
うごめ
)
かして世話人は御者の
背
(
そびら
)
を指もて
撞
(
つ
)
きぬ。渠は
一言
(
いちごん
)
を発せず、世話人はすこぶる得意なりき。美人は戯るるがごとくに
詰
(
なじ
)
れり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「君は
何故
(
なぜ
)
、最後の一歩というところで追求を
弛
(
ゆる
)
めたのだ?」と熊城はさっそくに
詰
(
なじ
)
り掛ったが、意外にも、法水は爆笑を上げて
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
舞台から下りて控えの座へ戻ると、師匠はすっかり取乱した様子で
詰
(
なじ
)
った。「……あんなに
旨
(
うま
)
く行ったのに、なぜやめたのです」
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
必定予の留守に不貞を行うたのだと
詰
(
なじ
)
り懸ると、妻夫に向い短かくとまであって、上述ごとく一度潰し使われた本故、下文が欠けて居る。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
攻め
詰
(
なじ
)
って
漸
(
よう
)
よう訊いた事の仔細。それから山科の御坊に駈けつけて、お上人さまにお訴え申し、お上人さまともども急いで駈けつけたが
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
古作品はこの真理を如実に示してくれる。ある者はこう
詰
(
なじ
)
るかも知れぬ。民衆を指導する個人があって大衆の工藝が成り立つのであると。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かかる中にも葉石は、時々看守の目を
偸
(
ぬす
)
みて、
紙盤
(
しばん
)
にその意思を書き付け、これを妾に送り来りて妾に冷淡の挙動あるを
詰
(
なじ
)
るを例とせり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼はベッドの
傍
(
そば
)
を
往
(
い
)
ったり来たりしながら、葉子を
詰
(
なじ
)
った。葉子はそれについては、弁解がましいただの一言も口にしなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
老人は
呼吸
(
いき
)
を止めた。かれはすっかり知った。人々はかれが党類を作って、組んで手帳を
返
(
かえ
)
したものとかれを
詰
(
なじ
)
るのであった。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
彼の後に生まれたクリストの一人は遠いロオマの道の上に再生したクリストに「どこへ行く?」と
詰
(
なじ
)
られたことを伝へてゐる。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は悪鬼につかれたようになって、先生を診察台の上へねじ伏せると、かの私の生れついた美しい両脚を珠子づれに譲渡したことを
詰
(
なじ
)
った。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
漢代
(
かんだい
)
の
五物
(
ごぶつ
)
を蔵して
六漢道人
(
ろっかんどうじん
)
と号したので、人が
一物
(
いちぶつ
)
足らぬではないかと
詰
(
なじ
)
った時、今一つは漢学だと答えたという話がある。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
余事はともあれ、重病の主人を殆ど投げやりにして置くのは何事であるかと、吉次郎もおどろいて養母を
詰
(
なじ
)
ると、彼女の返事はかうであつた。
魚妖
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
阿賀妻は
詰
(
なじ
)
るようにそう云った。うっかりしていると、ぬッと頭をもたげる昔の切り口上であった。厳然と
睨
(
にら
)
みつけていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
東京で酒屋の小僧をしている息子が、ひょっこり行商からかえった母親を
詰
(
なじ
)
ると、彼女は吐き出したということであった。
沼畔小話集
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
「緑屋」で、お京から責め立てられ、「それでも男か」と
詰
(
なじ
)
られて、右腕に降り龍を彫ることだけは、約束したのである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それなのに、五十銭銀貨ひとつとは、なんだというふうに
詰
(
なじ
)
った。女というものはそういったらば、まけずに五円だすとでも思っている様子なので
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
如何にも他人の不都合を
詰
(
なじ
)
るような
口調
(
くちょう
)
で、原田と私を
睨
(
ね
)
めつけながら、自分の企てた計畫を堂々と攻撃した揚句、とうとう滅茶苦茶にして了った。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
閣下は、奇妙な一夜の出来事を逐一妻に語り聞かせて率直に返事を聞き取り、疑いを晴らそうとしなかった私の不注意を
詰
(
なじ
)
られる事で有りましょう。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
「
否
(
いな
)
しからず神の知力は無限なり、
故
(
ゆえ
)
に拷問を用いずして人に罪あるかなきかを知る、しかるに我れにのみ拷問を用うるは何ぞ」と
詰
(
なじ
)
ったのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
是
(
ここ
)
に至りて人
其
(
その
)
言の応を知りぬ。燕王今は
帝
(
てい
)
たり、宮人
内侍
(
ないじ
)
を
詰
(
なじ
)
りて、建文帝の所在を問いたもうに、皆
馬
(
ば
)
皇后の死したまえるところを指して
応
(
こた
)
う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
敵も味方も
舷
(
ふなばた
)
をたたいて賞賛したこの
勲
(
いさおし
)
を聞き、泣くとはその意を得ぬと
詰
(
なじ
)
ったとき、某は暗然として答えて言った。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
少し
確
(
し
)
つかりしてゐるものなら、たとへ口へ出して詰責しないまでも、態度で
詰
(
なじ
)
れば大抵逃げて行くものなのです。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
そして、「
首領
(
キャプテン
)
★
」の資格で止れと命じた自分の仲間の商人に正体を見破られて
詰
(
なじ
)
られると、勇ましくその男の頭を
射貫
(
いぬ
)
いて馬を飛ばして逃げ去った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
それを問題にしないのはオランダの中立侵犯の証拠であると
詰
(
なじ
)
り、フェルスター課長に聞いて来るように要求した。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
如何
(
いか
)
に答へんとさへ惑へるに、
傍
(
かたはら
)
には貫一の益
詰
(
なじ
)
らんと待つよと思へば、身は
搾
(
しぼ
)
らるるやうに
迫来
(
せまりく
)
る息の
隙
(
ひま
)
を、得も
謂
(
い
)
はれず
冷
(
ひやや
)
かなる汗の流れ流れぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「うむ。志! 借金の証書を買ひ蒐めるのに、志があるのか。ハヽヽヽヽヽヽ。」父は、頭から嘲るやうに
詰
(
なじ
)
つた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
姿は見えないがひどく
詰
(
なじ
)
られながら、
頬桁
(
ほおげた
)
でも二つ三つ張り飛ばされているらしい。間もなく許されて出るや、彼は息せき切って飛んで来ながら叫んだ。
親方コブセ
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
私は顔一杯に弱々しい微笑を
湛
(
たた
)
へて、
詰
(
なじ
)
られでもしたやうな、兄の強い口調をはぐらかして
了
(
しま
)
はうと思つてゐた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
母は、いつもこう云って、凱旋してからこのかた、まえより
却
(
かえ
)
って、
頭脳
(
あたま
)
がボンヤリしたような父に
詰
(
なじ
)
りかけた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
また、いつぞやのように
夜半
(
よなか
)
までかかるのか。家臣は誰をつれて行くのか。——際限もなく訊き
詰
(
なじ
)
るのであった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わざわざ慎九郎の
後
(
うしろ
)
へきて、その
袖
(
そで
)
をひいて
詰
(
なじ
)
った、その顔つきは
蒼
(
あお
)
さが先ほどよりはよほど濃くなっていた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
いささか事志と違ったと見えて、勿論、真槍は同じ構えにつけたままだったが、老神官少々たじたじとなりながら鋭く言い
詰
(
なじ
)
ったのを、落付いたものです。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
先づ目に觸れたものから、溯つて朝日の記事一讀の後は、それにも一文を草して送り
詰
(
なじ
)
らうと思つたのである。
貝殻追放:002 新聞記者を憎むの記
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
監督に対してあらゆる質問を発しながら、帳簿の不備を
詰
(
なじ
)
って、自分で紙を取りあげて計算しなおしたりした。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
事は
五雑組
(
ござつそ
)
に
記
(
しる
)
して
枯骸
(
こがい
)
の
確論
(
かくろん
)
あれども、
釈氏
(
しやくし
)
を
詰
(
なじ
)
るに
似
(
に
)
たる
説
(
せつ
)
なればこゝに
贅
(
ぜい
)
せず。(○高僧伝に義存が㕝ありしかと覚しが、さのみはとて詳究せず。)
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
...
吐
(
つ
)
くに及ばぬじゃないか」と
詰
(
なじ
)
りますと「あなたはよく御承知ですな。実はこういう間道があってそこを通って来ました。その道はあまり人の通らない所です」
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
扠
(
さて
)
大寺は、道子が心を友田に移したのを
予
(
かね
)
て怒っていたが、それを
詰
(
なじ
)
ったのに対して素気なくはねつけられたために殺意を生じたのだという事になって居ります。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
詰
(
なじ
)
ったとて聞き入れるような彼ではなかったし、私としても説法するほどの自信を持っていなかった。
物を大切にする心
(新字新仮名)
/
種田山頭火
(著)
さる頃も或人の
戯
(
たわむれ
)
にわれを捉へて
詰
(
なじ
)
りたまひけるは今の世に小説家といふものほど
仕合
(
しあわ
)
せなるはなし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そこで十余人の川中島の百姓たちは、周章者を小突き廻して、こもごも百姓のいわれを
詰
(
なじ
)
りはじめる。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かの男は膝の上で拳骨を堅め、少し前へのしかかるようにして、
詰
(
なじ
)
るような口吻で後をつづけた。
誤診
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
するとラケルがリエーに息子のマンドレークを
呉
(
く
)
れといふ。リエーは、「私の夫を奪つた上にまた息子をも奪ふ気か」と
詰
(
なじ
)
ると、「その代り今夜は夫を帰さう」といふ。
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
その者共に、こうした違法の断罪手続きを
詰
(
なじ
)
り、それから、わしらの心事を、知らせたいのだ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
お政はじろりとその様子をみて、何を思ッてか、高く笑ッたばかりで、再び娘を
詰
(
なじ
)
らなかッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
五、六日
経
(
た
)
った
後
(
のち
)
、奥さんは突然私に向って、Kにあの事を話したかと聞くのです。私はまだ話さないと答えました。するとなぜ話さないのかと、奥さんが私を
詰
(
なじ
)
るのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
詰
常用漢字
中学
部首:⾔
13画
“詰”を含む語句
腸詰
引詰
詰問
行詰
重詰
詰寄
押詰
差詰
追詰
見詰
後詰
鑵詰
橋詰
大詰
壜詰
敷詰
鮨詰
詰合
問詰
相詰
...