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被衣
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かつぎ
ふりがな文庫
“
被衣
(
かつぎ
)” の例文
練り絹の裾だけに、堂や塔や伽藍や、武器だの鳥獣だのの刺繍をしている、白の
被衣
(
かつぎ
)
めいた長い
布
(
きれ
)
を、頭からなだらかに冠っていた。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
服装は一様に黒ずくめで、バルクといって目だけ出して足の爪尖まで垂らした黒布の上から、ハバラという黒い
被衣
(
かつぎ
)
を掛けている。
七重文化の都市
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
玉藻は薄い
被衣
(
かつぎ
)
を深くかぶって、濡れた柳の葉にその細い肩のあたりを
弄
(
なぶ
)
らせながら立っていると、これも俄雨に追われたのであろう。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この美女たちがいずれも長い
裳裾
(
もすそ
)
を曳き、薄い
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
を微風に
嬲
(
なぶ
)
らせながら、
擦
(
す
)
れ違うとお互いに
淑
(
しと
)
やかな会釈を交わしつつ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一方の木立のなかに、ちらとうごく人影を見たので、お蝶は、仮面と顔とをヒラリと
被衣
(
かつぎ
)
にくるんで、風のごとく馳けだしました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
彼は既に陣中にある以上、女装をすることは却って不審を招く
基
(
もと
)
だと感じたので、
被
(
かぶ
)
っていた
被衣
(
かつぎ
)
を、小さく畳んで
懐
(
ふところ
)
に入れた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
トなだらかな、
薄紫
(
うすむらさき
)
の
崖
(
がけ
)
なりに、
桜
(
さくら
)
の
影
(
かげ
)
を
霞
(
かすみ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
、ふうわり
背中
(
せなか
)
から
裳
(
すそ
)
へ
落
(
おと
)
して、
鼓草
(
たんぽゝ
)
と
菫
(
すみれ
)
の
敷満
(
しきみ
)
ちた
巌
(
いは
)
を
前
(
まへ
)
に、
其
(
そ
)
の
美女
(
たをやめ
)
が
居
(
ゐ
)
たのである。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それからもう
一
(
ひと
)
つ
道中
(
どうちゅう
)
姿
(
すがた
)
に
無
(
な
)
くてはならないのが
被衣
(
かつぎ
)
……
私
(
わたくし
)
は
生前
(
せいぜん
)
の
好
(
この
)
みで、
白
(
しろ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
をつけることにしました。
履物
(
はきもの
)
は
厚
(
あつ
)
い
草履
(
ぞうり
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
また聖母の
被衣
(
かつぎ
)
の陰に隠そうとでもするかのように、彼を両手に抱き上げて聖像の方へ差し伸べたりしていた……すると、不意に乳母が駆けこんで来て
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
慌てて博士が抑えた、——と、いつ
何処
(
どこ
)
から現われたか、右手の闇の中に白い
被衣
(
かつぎ
)
を頭から被った亡霊のようなものが、ぼーっと幻の如く現われて来た。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
秋の末、木の葉がどこからともなく街道をころがって通るころから、春の
霞
(
かすみ
)
の薄く
被衣
(
かつぎ
)
のようにかかる二三月のころまでの山々の美しさは特別であった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
娘たちは緋羅紗の小袖にカバヤという広袖を
被衣
(
かつぎ
)
にし、刺繍のあるハンカチとグランの財布を袂に忍ばせる。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「それは私の
被衣
(
かつぎ
)
をその痩せ衰へた頭からとると、二つに引裂いて、床に投げつけて踏み
躙
(
にじ
)
つたのです。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
渦を巻く
猛火
(
みょうか
)
のなかを、白い
被衣
(
かつぎ
)
をかずかれた姫君が、
鼠
(
ねずみ
)
色の僧衣の
逞
(
たくま
)
しいお肩に乗せられて、御泉水のめぐりをめぐって
彼方
(
かなた
)
の闇にみるみるうちに消えてゆく
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
古びを帯びた
蘆屋釜
(
あしやがま
)
から鳴りを立てて白く湯気の立つのも、きれいにかきならされた灰の中に、堅そうな桜炭の火が白い
被衣
(
かつぎ
)
の下でほんのりと赤らんでいるのも
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
被衣
(
かつぎ
)
のような物を頭からすっぽりと着た
女姿
(
おんなすがた
)
の者が開けた雨戸の口に立っていた。六郎はもう腰を浮かしていた。そして、その曲物を手取りにしてやろうと思った。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
家にいる時でも、他人が見えると
几帳
(
きちょう
)
の蔭などに隠れたりする。外出の時は、
被衣
(
かつぎ
)
でもって面の見えないようにする。車に乗れば、簾で隠して人に見えないようにする。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それはその芽の生長をば小魚などに突っつかれて傷つかないように護る一種の
被衣
(
かつぎ
)
である。
洛北深泥池の蓴菜
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そんな調子で、いくらか息が
吐
(
つ
)
けるのは、雲や霧の
被衣
(
かつぎ
)
に包まれた時ぐらいのものだろう。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
白い
被衣
(
かつぎ
)
を被つたお桐の姿が先づ眼に入つた。彼はツカ/\と其側に進んで其白衣に手をかけて頭の方を少しまくつた。西向きに横に寝かしてあるお桐の横顔が薄黒く見えた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
被衣
(
かつぎ
)
のような、淡い、白いひろがりをば、淡く甘美なる
惝怳
(
しょうこう
)
の心と解いた。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
その風にあおられて、白い
被衣
(
かつぎ
)
をかぶったと見える女の立ち姿が……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
中には、もう、変化になり終られた岩井半四郎が、
被衣
(
かつぎ
)
を冠って、俯せになっております。これに、花四天がからみまして押戻しが出、そして、引っぱりの
見得
(
みえ
)
となって、幕になるので御座います。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
とかぶっていた
被衣
(
かつぎ
)
を脱いでみると、闇にもほの白い坊主頭である。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
被衣
(
かつぎ
)
のひまに
見入
(
みい
)
るれば、あな『
我
(
われ
)
』なりき
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
かの
新
(
にひ
)
やはら
被衣
(
かつぎ
)
瞰
(
み
)
るそれならねど、——
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
*
番紅花
(
さふらん
)
色の
被衣
(
かつぎ
)
着て、神と人とに光明を
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
船路
(
ふなぢ
)
間近
(
まぢか
)
き
藻
(
も
)
の
被衣
(
かつぎ
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
白馬
(
はくば
)
に抱く火の
被衣
(
かつぎ
)
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
被衣
(
かつぎ
)
かづいて
別後
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
その駕籠を護っているものといえば、
被衣
(
かつぎ
)
をかぶった四人の老女と、覆面姿の四人の若武士と、
脛
(
すね
)
を出した二人の駕籠
舁
(
か
)
きとである。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
うす物の
被衣
(
かつぎ
)
の上に檜木笠を深くした上﨟ふうの若い女が草ぶかい
庵
(
いおり
)
の前にたたずんで、低い優しい声で案内を求めた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さきに登子を乗せ、高氏もすぐ
鐙
(
あぶみ
)
を踏む。登子は、かいどりを
被衣
(
かつぎ
)
にした。
袿衣
(
うちぎ
)
なので、横乗りに、自然、鞍つぼの良人に甘えたような
姿態
(
しな
)
になる。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして首尾よく構えの外へ脱出すると、すぐその場で松明を捨て、五六丁走った後に
被衣
(
かつぎ
)
を
被
(
かぶ
)
って、見渡すかぎり
渺茫
(
びょうぼう
)
とした
月明
(
げつめい
)
の中へ溶け込んで行った。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
島かと思う白帆に離れて、山の
端
(
は
)
の岬の形、にっと出た
端
(
はし
)
に、鶴の背に、緑の
被衣
(
かつぎ
)
させた風情の松がある。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
渦を巻く
猛火
(
みょうか
)
のなかを、白い
被衣
(
かつぎ
)
をかづかれた姫君が、
鼠
(
ねずみ
)
色の僧衣の
逞
(
たくま
)
しいお肩に乗せられて、御泉水のめぐりをめぐつて
彼方
(
かなた
)
の闇にみるみるうちに消えてゆく
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
燈
(
あかり
)
は化粧机の上に置いてあつて、床に這入る前に婚禮の
衣裳
(
いしやう
)
と
被衣
(
かつぎ
)
をかけておいた押入の扉は開け放しになつてゐました。そこで何かさら/\と云ふ音がするのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
初対面
(
しょたいめん
)
のこと
故
(
ゆえ
)
、
服装
(
ふくそう
)
なども
失礼
(
しつれい
)
にならぬよう、
日頃
(
ひごろ
)
好
(
この
)
みの
礼装
(
れいそう
)
に、
例
(
れい
)
の
被衣
(
かつぎ
)
を
羽織
(
はおり
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それは
被衣
(
かつぎ
)
のようなものを頭から
被
(
かぶ
)
った女房姿でございましたが、驚いたように内へお引込み遊ばされるとともに、唐戸をお締めになりました、それより他に怪しいことはございません
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
過ぎし日の
被衣
(
かつぎ
)
の
遺物
(
かたみ
)
、——靜やかに
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
面隱
(
おもがく
)
し、
目
(
ま
)
ぶかに
被衣
(
かつぎ
)
うちまとひ
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
光り耀く銀色の
被衣
(
かつぎ
)
に隱れ默然と
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
その時静かに襖が開いて
尼
(
あま
)
が一人はいって来た。黒い法衣に白い
被衣
(
かつぎ
)
。キリスト様とマリヤ様に仕えるそれは年寄りの尼であった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
美しく晴れた朝で、さわやかな秋風がうす物の
被衣
(
かつぎ
)
をそよそよと吹いて通った。澄んだ空は一日ましに高くなって、比叡も愛宕も秋の光りの中に沈んで見えた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
島
(
しま
)
かと
思
(
おも
)
ふ
白帆
(
しらほ
)
に
離
(
はな
)
れて、
山
(
やま
)
の
端
(
は
)
の
岬
(
みさき
)
の
形
(
かたち
)
、につと
出
(
で
)
た
端
(
はし
)
に、
鶴
(
つる
)
の
背
(
せ
)
に、
緑
(
みどり
)
の
被衣
(
かつぎ
)
させた
風情
(
ふぜい
)
の
松
(
まつ
)
がある。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そこに干し忘れてある
友禅
(
ゆうぜん
)
の小袖を見出すと、女は、それを取って黒髪の上から
被衣
(
かつぎ
)
のように
被
(
かぶ
)
りました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ですけど、やがてその人は、私の
被衣
(
かつぎ
)
を掛けてあるところから取つて、高く持上げながら長く見つめて、今度はそれを自分の頭の上に引かけて鏡の方を向いたのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
法師丸は、女が城を落ちて来たように思わせるために、
被衣
(
かつぎ
)
を頭へかざしていたが、そのうすものゝ影が真っ白な地上に
海月
(
くらげ
)
の如くふわ/\するのを視つめながら歩いた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
上様の
御傍
(
おそば
)
に変ったことがございますまいか、今ここを
見廻
(
みまわ
)
っておりますと、
被衣
(
かつぎ
)
を着た者が、ここの雨戸を開けて出ましたから、
二刀
(
ふたたち
)
突きましたが、突かれながら、あれなる被衣を落して
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
白がね
被衣
(
かつぎ
)
の靡きゆらに
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
被
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“被衣”で始まる語句
被衣姿
被衣兄姫