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肝腎
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かんじん
ふりがな文庫
“
肝腎
(
かんじん
)” の例文
いいですか、あの死体を発見した二人の証人は口を
揃
(
そろ
)
えて、死体がまだ温かかったと言っているのですよ。この点が
肝腎
(
かんじん
)
なのです。
五階の窓:02 合作の二
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「どっこい、まだ顎なんか撫でるには早いよ。
肝腎
(
かんじん
)
の小僧に逢わずに来たのは大きな手落ちだ。八丁堀なんか、明日でもよかったんだ」
銭形平次捕物控:108 ガラッ八手柄話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが、人間の生命にかかわることだから
疎漏
(
そろう
)
のないようにやりたまえよ。何事も
辛抱
(
しんぼう
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だ。根気よく目的にむかって進みたまえ
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
彼女はその薄暗い中に
青貝
(
あおがい
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた古代の
楽器
(
がっき
)
や古代の
屏風
(
びょうぶ
)
を発見した。が、
肝腎
(
かんじん
)
の
篤介
(
あつすけ
)
の姿は
生憎
(
あいにく
)
この部屋には見当らなかった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とうとう、二人は引っ組んで、四つになり、
諸仆
(
もろだお
)
れになり、さんざん肉闘して、
肝腎
(
かんじん
)
な錦の袍もために、ズタズタに引裂いてしまった。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
その代りよく気を付けて長く使い込んだ鍋は大層丈夫になって容易に剥げる事がありません。最初の使い込み方が何より
肝腎
(
かんじん
)
です。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
草餅
(
くさもち
)
が出来た。
蓬
(
よもぎ
)
は昨日鶴子が夏やと
田圃
(
たんぼ
)
に往って
摘
(
つ
)
んだのである。東京の草餅は、
染料
(
せんりょう
)
を使うから、色は美しいが、
肝腎
(
かんじん
)
の香が
薄
(
うす
)
い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
肝腎
(
かんじん
)
の「人格を完備した男女」を作る事を忘れ、人格を尊重し合うべき事を
息子
(
むすこ
)
のため娘のために教えて置かぬ罪に帰せねばなりません。
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と反問するが
肝腎
(
かんじん
)
である。
臆病
(
おくびょう
)
なる僕に一大興奮剤となった教訓は
沙翁
(
さおう
)
の Be just and fear not の一言である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「
済
(
す
)
まないのは、お
前
(
まえ
)
さんよりこっちのこと、
折角
(
せっかく
)
眠
(
ねむ
)
いところを、
早起
(
はやお
)
きをさせて、わざわざ
来
(
き
)
てもらいながら、
肝腎
(
かんじん
)
のおせんが。——」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
土下座とか云って
地面
(
じべた
)
へ坐って、ピタリと頭を下げて、
肝腎
(
かんじん
)
の
駕籠
(
かご
)
が通る時にはどんな顔の人がいるのかまるで物色する事ができなかった。
文芸と道徳
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは、むす子の生活に便利なよう、母親としての心遣いには相違なかったが、しかし、
肝腎
(
かんじん
)
な目的は、かの女自身の心覚えのためだった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
折角、あの神尾喬之助の居場所を知らせに来た者が、その
肝腎
(
かんじん
)
の場所を言わないうちに
呼吸
(
いき
)
が
絶
(
た
)
えてしまってはしようがない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
信一郎は、
肝腎
(
かんじん
)
な来意を云ってしまったので、ホッとしながら、彼は夫人が何う答えるかと、じっと相手の顔を見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また我々が首尾よく抜け出しさえすれば、明日とも言わず迎えの工夫をする、どっちにしても落着いて寝ていることが
肝腎
(
かんじん
)
じゃ
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
古い大福帳や証文や勘定書などがしみという虫に喰われており、
肝腎
(
かんじん
)
の数字のところが穴になっている。さあたいへん、困ったことになった。
虫喰い算大会
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
そういうつもりになって、色々のものをよく見ようとしたのではあるが、勿論
肝腎
(
かんじん
)
な線がそう簡単に見えるはずはなかった。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
入蔵間道を発見する方法 ここで私は一番
肝腎
(
かんじん
)
な仕事は何かと言えばまずどこからチベットへ入ればよいかということです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
肝腎
(
かんじん
)
の当人が何と云うか、反応を見るのも一つの方法であるかも知れない、と、又そう思い直したので、或る日神戸へ買い物に出ようとして
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
第一、文字暗号ではないのだから、
肝腎
(
かんじん
)
の
秘密ABC
(
キイ・ウァード
)
を発見するのに必要な資料が、これにはてんで与えられていないのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
半次郎 江戸にいるという噂だけで、居所が知れねえのだ、それに
肝腎
(
かんじん
)
の名前だって、哥児はうろ憶えなんだ。尋ね探しても、判るかどうだか。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
例えば甲の社員の提言を容れて直ぐ実行してくれと命じたものを乙の社員の意見でクルリと飜えして
肝腎
(
かんじん
)
の提言者に通告もしないでやめてしまう。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
こう彼が肚を決めてのは、どうやら他にもっと
肝腎
(
かんじん
)
な理由があってのことらしい——もっと真剣で、切実な問題が……。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
庸三はそのころまだ歌舞伎劇に多少の愛着をもっていただけに、
肝腎
(
かんじん
)
の葉子が一緒にいないのが何となく心寂しかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
おかん 兄弟が相棒で
御神輿
(
おみこし
)
でもかつぎに出るのかえ。(土間を見返りてあざ笑ふ。)
肝腎
(
かんじん
)
のかつぐ物があるかよ。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
肝腎
(
かんじん
)
の先生は亡くなる、焼跡を捜しても鍔は出ず、元も子もすっから勘左衛門、今思っても惜しくってならねえ」
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自由な音律に任せて、小曲の形を採るのがほんとうだと思う。而も短歌の形を基準としておいて、自由に流れる拍子を把握するのが、
肝腎
(
かんじん
)
だと考える。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
肝腎
(
かんじん
)
な働き手の高自身さえ着のみ着のままだったが、それをまた祖母は、世間の手前、余り汚い風をしていては困ると、口うるさく
叱言
(
こごと
)
を言っていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
肝腎
(
かんじん
)
の
張本
(
ちょうほん
)
を逃がしてしまうからさ。やッつける時には、一網打尽じゃ。今はまず、奴等の罠にはまったと見せかけ、油断をさせておけばいいのじゃ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
喧嘩
(
けんか
)
はおよし。
肝腎
(
かんじん
)
なことは、家族の一人に、ブルタスがいるってこった。
家
(
うち
)
には現にいるんだ。にんじんのお蔭で、あたしたちは肩身が広いわけだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
爰
(
ここ
)
に隣からの
火貰
(
ひもら
)
いという交際が結ばれ、また家々では
炉
(
ろ
)
の火を留めるということが、
肝腎
(
かんじん
)
な主婦若嫁の職務となり、さらに翌朝はその火を
掻起
(
かきおこ
)
して
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「こんなところに置いちゃいかん! すぐばれてしまうじゃないか。これをかくしておくことが
肝腎
(
かんじん
)
なんじゃ。」
窃む女
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
親を養わんならん
肝腎
(
かんじん
)
の娘が病気も病気もそんな病気になってしもうてどうしようもなりまへんもんどすさかい。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
肝腎
(
かんじん
)
なことは、ねえ、望んだり生きたりするのに飽きないことだ。その他のことは私たちの知ったことじゃない。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この上は
肝腎
(
かんじん
)
の右肺部を檢査しようかと思つたが、粟粒がどの位廣く結成されたかを確めるために頭蓋骨を開いて腦膜を調べて見たくてたまらなくなつた。
実験室
(旧字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
ただ作家がこれを実行するかしないかの問題だけで、それをせずにはおれぬときだと思う事が、
肝腎
(
かんじん
)
だと思う。
純粋小説論
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
船の
修覆
(
しゅふく
)
の材料となし、獣類魚類さては木の実を捜して命を
繋
(
つな
)
ぐ工夫が
肝腎
(
かんじん
)
、ウム、向うに見えるは鳥なるべし
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その重要な人が決闘で傷つき、倒れ、
肝腎
(
かんじん
)
の戦場に出て、働かれぬやうなことがあつては、
甚
(
はなは
)
だ遺憾である。
風変りな決闘
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
さて学校も出来人間も大概
揃
(
そろ
)
ったが金がない。軍隊は戦争しようとするけれども、
肝腎
(
かんじん
)
の
兵站
(
へいたん
)
部がない様な
塩梅
(
あんばい
)
で、学校も財政のために非常に困ったのである。
東洋学人を懐う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
ここが
肝腎
(
かんじん
)
のところだと思いましたから、わざと暗い処に引っ込んで、よくよく様子を聞いてみますと、僕の両親が、何も云わずに、落ち付いて殺された事や
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そんな小さなことではうまく立ち廻るが、
肝腎
(
かんじん
)
なところで失敗するのだと、栄介は答えようとして止めた。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
だッて牢屋には
肝腎
(
かんじん
)
の藻西太郎が居るだろうじゃ無いか細「でも貴方、藻西に逢た所で別に利益は
無
(
なか
)
ッたでしょう、
夫
(
それ
)
よりは何故直に藻西太郎の宅へ行き
其
(
その
)
妻
(
さい
)
を ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
なんでもない顔の
垢
(
あか
)
や、着物の襟などを注意すると喜ぶくせに、
肝腎
(
かんじん
)
の心の病気を注意すると
怒
(
おこ
)
られるとは、全く人間というものは、ほんとうに変な
存在
(
もの
)
です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
思いっきりが
肝腎
(
かんじん
)
です! ほかに打つ手はありません、ほんとです。ないとなったら、ないのですから。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それもたしかに要求の一つではありますが、
肝腎
(
かんじん
)
の季ということを忘れていたのは残念な事であります。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ヂュリ
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れて
言
(
い
)
はれぬと
言
(
い
)
やる
程
(
ほど
)
なら、
息
(
いき
)
は
切
(
き
)
れてゐぬ
筈
(
はず
)
ぢゃ。
何
(
なん
)
のかのと
言譯
(
いひわけ
)
してゐやるのが
肝腎
(
かんじん
)
の
一言
(
ひとこと
)
より
長
(
なが
)
いわいの。これ、
吉
(
きつ
)
か、
凶
(
きょう
)
か?
速
(
はや
)
う
言
(
い
)
や。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
さて、これからがこの話の眼目にはいるのですが、考えてみると、話の枕に身を入れすぎて、もうこの先の
肝腎
(
かんじん
)
の部分を
詳
(
くわ
)
しく語りたい熱がなくなってしまいました。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ちょうどその時、担当の老看守の戻って来る気はいを感じ、太田はさり気なく窓の下を退きながら、
肝腎
(
かんじん
)
なことを聞くのを忘れていたことに気がついて
訊
(
たず
)
ねたのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
なる
程
(
ほど
)
、
彼等
(
かれら
)
が
信仰心
(
しんかうしん
)
を
以
(
もつ
)
て、
遠
(
とほ
)
く
此所
(
こゝ
)
まで
來
(
きた
)
りながら、
肝腎
(
かんじん
)
のお
穴
(
あな
)
には
接近
(
せつきん
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
勿論、本当の大阪落語を聴こうとする
肝腎
(
かんじん
)
の客が消滅しつつあることは重大な
淋
(
さび
)
しさである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
肝
常用漢字
中学
部首:⾁
7画
腎
常用漢字
中学
部首:⾁
12画
“肝腎”で始まる語句
肝腎要