紅色べにいろ)” の例文
八のふかくしながら、せたまつろう眼先めさきを、ちらとかすめたのは、うぐいすふんをいれて使つかうという、近頃ちかごろはやりの紅色べにいろ糠袋ぬかぶくろだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「どうなさったのですか?」と、そばにいていた、うす紅色べにいろをしたなでしこのはなが、はじらうようにあたまをかしげてたずねました。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんのッて、ひらひらと来る紅色べにいろの葉から、すぐに吸いつけるように煙草たばこを吹かした。が、何分にも鋳掛屋じゃあおさまりませんな。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
扉は全面に陰っているので、今まではわからなかったが、今かの女が近寄ってみると、ぽちぽちと紅色べにいろの新芽が、無数に蔦のつるから生えていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
板高く結った島田髷、それに懸けられた金奴きんやっこ、頸細く肩低く、腰の辺りは煙っていた。紅色べにいろ勝った振り袖が、ばったりと地へ垂れそうであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
叔父さんのうちには祖先伝来の宝として、天竺徳兵衛てんじくとくべえ暹羅シャムから持ってきたという大きな紅色べにいろのダイヤモンドがあります。
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
やまざくらのように緑色みどりいろ若葉わかばをもつもの、がきおほいかなめもちのように紅色べにいろのうつくしい若芽わかめをもつものもあり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
紅色べにいろに塗った太い車の輪が自分の足に触れたかと思うほどきわどく回った。と思うと、喞筒は一直線に坂をけ上がった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細いもの、太くてずんぐりしたもの、稜角りようかくが顕著なもの、色が白茶けたもの、少し紅色べにいろを帯びたもの、芳香の強いもの、形や味は、まつたく千差万別である。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
まあ! どんなことになっていたと思って? とてもひどいことになっちゃったのよ! あんなにいいにおいがして、あんなにとりどりのきれいな紅色べにいろをしていた美しい薔薇が
そのほお紅色べにいろや、瘠方やせかたさっするにかれにはもう肺病はいびょう初期しょきざしているのであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
裏の畑にでもできたらしい紅色べにいろした新鮮な水蜜桃すゐみつたうが、盆の上に転つてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
花蓋片かがいへんの中央紅色べにいろの深いものはベニスジユリととな珍重ちんちょうせられるが、これは園芸的の品である。ハクオウというのは、花蓋片かがいへんが白くて斑点はんてんなく中央に黄筋きすじの通っているもので、これも園芸品である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
うす紅色べにいろ
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
にわには、はげいとうや、しおんのような、秋草あきくさみだれていました。なかにも、うす紅色べにいろのコスモスのはながみごとでした。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
気疾きばやなのががらりと開けると、中は真赤まっか紅色べにいろさっと透通るように光って、一畳ばかり丸くこう、畳の目が一ツ一ツ見えるようだッたてこッてす。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
読者諸君は、塚原俊夫君の取り扱った「紅色べにいろダイヤ」事件というのを記憶していてくださるだろうと思います。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
紅色べにいろの火光、ここらあたりまでポッと明るい。相青眼の二本のつるぎ、その中でキラキラと輝いている。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この手拭が湯にそまった上へ、赤いしまが流れ出したのでちょっと見ると紅色べにいろに見える。おれはこの手拭を行きも帰りも、汽車に乗ってもあるいても、常にぶら下げている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其頬そのほゝ紅色べにいろや、瘠方やせかたさつするにかれにはもう肺病はいびやう初期しよきざしてゐるのであらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
停車場には、日光帰りとみえる、紅色べにいろをした西洋人の姿などが見えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
にわ垣根かきねのところには、コスモスのはなが、しろ、うす紅色べにいろと、いろいろにうつくしくいていました。あかとんぼが、まったり、びたったりしています。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
途中で見た上阪のぼりざかの中途に、ばりばりと月にてた廻縁まわりえん総硝子そうがらす紅色べにいろの屋号の電燈が怪しき流星のごとき光を放つ。峰から見透みとおしに高い四階は落着かない。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしに、ちょっとしてくんなさい。」といって、むすめたちは、うつくしい、うす紅色べにいろ水色みずいろ模様もようのついたがさをりて、よろこんで、それをさしてみました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
くもしろやまあをく、かぜのやうに、みづのやうに、さつあをく、さつしろえるばかりで、黒髪くろかみみどり山椿やまつばき一輪いちりん紅色べにいろをしたつままがふやうないろさへ、がゝりは全然まるでない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれは、じっとをこらして、うす紅色べにいろそらから、二のはとが、いまにもぽつんとくろてんのようにあらわれて、こちらへかけてきて、だんだんおおきくなるようながしたのです。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
今しがた小雨こさめが降って、お天気が上ると、お前様めえさま、雨よりは大きい紅色べにいろの露がぽったりぽったりする、あの桃の木の下のとこさ、背戸口せどぐちから御新姐ごしんぞが、紫色の蝙蝠傘こうもりがささして出てござって
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あのえだはなくのは、いつのことか。」と、ちらちらとゆきに、そとをながめながらおもったのが、はや、くっきりとえだ全体ぜんたいにうす紅色べにいろびて、さんごじゅるようながするのです。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
石竹色せきちくいろ──石竹せきちくはないろ。うすい紅色べにいろ。ピンク。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、うす紅色べにいろをしたはなは、いいました。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)