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突
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つっ
ふりがな文庫
“
突
(
つっ
)” の例文
と、突然後からコートの背中を
突
(
つっ
)
つくものがあるので、
吃驚
(
びっくり
)
して振り返って見ると、見知らない一人の青年が笑いながら立っていた。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
そして、外側から錠前を卸すと、玄関へ走って行って、そこにあった
下駄
(
げた
)
を
突
(
つっ
)
かけ、車庫を開いて、自動車を動かす
支度
(
したく
)
を始めた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
柳島まで行くには及ばねえと
点頭
(
うなず
)
きながら、尻をはしょって麻裏草履を
突
(
つっ
)
かけ、幸兵衞夫婦の跡を追って
押上
(
おしあげ
)
の
方
(
かた
)
へ駈出しました。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
先祖以来、
田螺
(
たにし
)
を
突
(
つっ
)
つくに
錬
(
きた
)
へた口も、さて、がつくりと参つたわ。お
庇
(
かげ
)
で
舌
(
した
)
の根が
弛
(
ゆる
)
んだ。
癪
(
しゃく
)
だがよ、
振放
(
ふりはな
)
して
素飛
(
すっと
)
ばいたまでの事だ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのままじっとしてないで、縁先の下駄を
突
(
つっ
)
かけて、飛石づたいに菖蒲畑の傍まで来ましたら、
生垣
(
いけがき
)
を
潜
(
くぐ
)
って大きい犬が近寄って来ました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
▼ もっと見る
保吉はたちまち机に向うと、インク壺へペンを
突
(
つっ
)
こむが早いか、試験用紙のフウルス・カップへ一気に弔辞を書きはじめた。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最も甚しいのは親の
脛
(
すね
)
を
囓
(
かじ
)
っている学生や部屋住の身分で畳付の駒下駄を足の先へ
突
(
つっ
)
かけて歩くような不所存者もあります。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
自分はやむをえず、吸物を吸ったり、刺身を
突
(
つっ
)
ついたりした。下女が邪魔になるので、用があれば呼ぶからと云って下げた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御免を
蒙
(
こうむ
)
り
序
(
ついで
)
にモット手近いところで人間諸君の赤恥を
突
(
つっ
)
つき出して、是非とも一つ腹を立てさせて進ぜる事にしよう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
河原にての殺しの息込
隙
(
すき
)
なく、お俊の手を取つて花道を
駈
(
か
)
け込む
体
(
からだ
)
のこなしなど、
突
(
つっ
)
ころばしの妙を極めし出来なり。黒縮緬裾ぼかしの着附にて堀川に来る所も男前上々なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「あの二つ目の通を左へ曲って、広場を
突
(
つっ
)
きって行ったらしいよ」と亭主はすぐ答えた。
青玉の十字架
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
帰ると
溜息
(
ためいき
)
ついて曰く、全く田舎が
好
(
え
)
えナ、浅草なンか裏が狭くて、
雪隠
(
せっちん
)
に往っても
鼻
(
はな
)
ア
突
(
つっ
)
つく、田舎に
帰
(
けえ
)
ると
爽々
(
せいせい
)
するだ、親類のやつが百姓は
一日
(
いちにち
)
にいくら
儲
(
もう
)
かるってきくから
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
政元は
行水
(
ぎょうずい
)
を使った。あるべきはずの
浴衣
(
よくい
)
はなかった。小姓の
波〻伯部
(
ははかべ
)
は浴衣を取りに行った。月もない二十三日の夕風は
颯
(
さっ
)
と起った。
右筆
(
ゆうひつ
)
の戸倉二郎というものは
突
(
つっ
)
と跳り込んだ。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
龍介は眼ひとつ動かすのも見逃がすまいと、鋭く吾郎を睨みながら
突
(
つっ
)
こんだ。
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さまでの苦痛を
堪
(
こら
)
えたな。——あとでお澄の片頬に、畳の目が
鑢
(
やすり
)
のようについた。横顔で
突
(
つっ
)
ぷして歯をくいしばったのである。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お重も無言のままそれを
匙
(
スプーン
)
で
突
(
つっ
)
ついたが、自分から見ると、食べたくない物を
業腹
(
ごうはら
)
で食べているとしか思われなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この問題に限ってチョット
突
(
つっ
)
つくと直ぐに止め度もなくペラペラと
喋舌
(
しゃべ
)
り出しやがるんだ。どう見ても普通の
親娘
(
おやこ
)
じゃありません……と熱烈に主張するんだ
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
外へ出ると、ふてくされた日が一面に
霜
(
しも
)
どけの土を照らしている。その日の中を向こうへ
突
(
つっ
)
きって、休所へはいったら、誰かが
蕎麦饅頭
(
そばまんじゅう
)
を食えと言ってくれた。
葬儀記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たぶん彼女を
突
(
つっ
)
ついたら、何かしら
手
(
た
)
ぐり出す方法があるかも知れないという位の考えなのだろうが、今頃こんな人を、ほじくり出した処で、どうせ何も出やしないと思ったので
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
そこにあり合せた下駄を
突
(
つっ
)
かけて門の外へ出た。見張りの刑事は一寸法師の方へ行って誰もいない。彼等はもう暗くなり始めた町を、人通の少い方へ少い方へと、よろめきもつれて走った。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と妙に中川へ
突
(
つっ
)
かかる。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
又、此の屑屋が
興
(
きょう
)
がつた男で、
鉄砲笊
(
てっぽうざる
)
を
担
(
かつ
)
いだまゝ、落ちた
処
(
ところ
)
を
俯向
(
うつむ
)
いて、
篦鷺
(
へらさぎ
)
のやうに、竹の
箸
(
はし
)
で
其処等
(
そこら
)
を
突
(
つっ
)
つきながら、
胡乱々々
(
うろうろ
)
する。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
細君は
嬉
(
うれ
)
しそうに自分の
傍
(
そば
)
に
寐
(
ね
)
ている赤ん坊の顔を見た。そうして指の先で小さい
頬片
(
ほっぺた
)
を
突
(
つっ
)
ついて、あやし始めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その一つ向うのテエブルには、さっき二人と入れちがいにはいって来た、着流しの肥った男と、芸者らしい女とが、これは
海老
(
えび
)
のフライか何かを
突
(
つっ
)
ついてでもいるらしい。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は目の色を変えて、
突
(
つっ
)
かかる様に云うのだ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
つかつかと出て、まだ
雫
(
しずく
)
の
止
(
や
)
まぬ、びしょ
濡
(
ぬれ
)
の衣を振返って、
憂慮
(
きづかわし
)
げに土間に下りて、草履を
突
(
つっ
)
かけたが、
立淀
(
たちよど
)
んで、やがて、その手拭を取って
頬被
(
ほおかぶり
)
。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
道也先生は
火桶
(
ひおけ
)
のなかの
炭団
(
たどん
)
を
火箸
(
ひばし
)
の先で
突
(
つっ
)
つきながら「御前から見れば馬鹿馬鹿しいのさ」と云った。妻君はだまってしまう。ひゅうひゅうと
木枯
(
こがらし
)
が吹く。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はもうそう云った時には、
畦
(
うね
)
の土に指を
突
(
つっ
)
こんでいた。良平のびっくりした事はさっきより
烈
(
はげ
)
しいくらいだった。彼は百合の芽も忘れたように、いきなりその手を
抑
(
おさ
)
えつけた。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
車屋の挽子がね、お
前
(
め
)
さん、え、え、ええッて、人の悪いッたら、
聾
(
つんぼ
)
の真似をして、痘痕の極印を打った、
其奴
(
そいつ
)
の
鼻頭
(
はなづら
)
へ横のめりに耳を
突
(
つっ
)
かけたと思いねえ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ヴァイオリンを小脇に
抱
(
か
)
い込んで、
草履
(
ぞうり
)
を
突
(
つっ
)
かけたまま二三歩草の戸を出たが、まてしばし……」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それからまた腕を組んだまま、
突
(
つっ
)
けんどんにこう言い放ちました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蔵人は
咄嗟
(
とっさ
)
に
躱
(
かわ
)
して、横なぐれに
退
(
すさ
)
ったが、脚を揃えて、背中を持上げるとはたと
婆
(
ばば
)
に
突
(
つっ
)
かけた。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寝巻
(
ねまき
)
の下に重ねた
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の色が、薄い
羅紗製
(
らしゃせい
)
の
上靴
(
スリッパー
)
を
突
(
つっ
)
かけた
素足
(
すあし
)
の甲を
被
(
おお
)
っていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
牧野はお蓮の手を
突
(
つっ
)
つきながら、彼一人上機嫌に笑い
崩
(
くず
)
れた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
車は病院所在地の横田の方から、この田畝を越して、城の裏通りを走ったが、
突
(
つっ
)
かけ若竹座へは行くのでなく、やがて西草深へ
挽込
(
ひきこ
)
んで、
楫棒
(
かじぼう
)
は島山の門の、例の石橋の際に着く。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
細君は赤い
炭団
(
たどん
)
の、灰の皮を
剥
(
む
)
いて、
火箸
(
ひばし
)
の先で
突
(
つ
)
つき始めた。炭火なら
崩
(
くず
)
しても積む事が出来る。
突
(
つっ
)
ついた炭団は
壊
(
こわ
)
れたぎり、丸い元の姿には帰らぬ。細君はこの理を心得ているだろうか。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
馴
(
な
)
れて畳の
破
(
やぶれ
)
にも
突
(
つっ
)
かからず、台所は横づけで、長火鉢の前から手を
伸
(
のば
)
すとそのまま取れる
柄杓
(
ひしゃく
)
だから、並々と一杯、
突然
(
いきなり
)
天窓
(
あたま
)
から
打
(
ぶっ
)
かぶせる気、お勝がそんな家業でも、さすがに
婦人
(
おんな
)
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
“突”を含む語句
衝突
突立
突込
突掛
突出
打突
突然
突張
突切
突懸
唐突
突伏
突貫
突端
突放
突刺
突支棒
猪突
突入
頭突
...