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やにわ
ふりがな文庫
“
矢庭
(
やにわ
)” の例文
礼子が立ちあがって頬をしかめそうになると、啓吉は、
矢庭
(
やにわ
)
にその五銭白銅を拾って、がらがらと格子を開けて戸外へ出て行った。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
はッと驚くと同時に、彼は幸いに這っていたので、
矢庭
(
やにわ
)
に敵の片足を取って引いて、倒れる所を
乗掛
(
のりかか
)
って
先
(
ま
)
ず
其
(
そ
)
の胸の上に片膝突いた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
果然
(
かぜん
)
、列車が興安駅に
著
(
つ
)
くか著かない
裡
(
うち
)
に、早くも警備軍の一隊がドヤドヤと車内に乱入すると、
矢庭
(
やにわ
)
に全員の自由を
拘束
(
こうそく
)
してしまった。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
直視するとこちらが石に化して
了
(
しま
)
ふから、盾の鏡に映る像を目標として近づき、
矢庭
(
やにわ
)
に剣を抜いて切り附くるとメヂューサの首は宙に飛んだ。
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
身体は全然隙だらけだし、足を踏まれると
矢庭
(
やにわ
)
に牙をむいたやうな顔をして怒つたりするけれども、あれは心ある人間の為すべき顔付ではない。
総理大臣が貰つた手紙の話
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
すると、島吉は
矢庭
(
やにわ
)
に鋭い眼をして女の子を
睨
(
にら
)
み込んだ。その眼は孤独で専制的な
酋長
(
しゅうちょう
)
の眼のように淋しく光っていた。
酋長
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ふらふら立ち上って、雨戸に近寄り、
矢庭
(
やにわ
)
にその手を、私の両手でひたと包み、しかも、心をこめて握りしめちゃった。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
誰もいない日中を狙って、そっと忍び込んで談判と見せかけ、
矢庭
(
やにわ
)
に沢屋を突き殺し、血だらけの匕首を拭いた手拭を日本橋の川の中へ捨てたのだ。
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
矢庭
(
やにわ
)
にその席を立った米友は、また屏風のところへ行って覗いて見ました。さきには右枕になっていた竜之助が、今度は左枕になって寝ていました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
町角を曲った所に、待ち構えていた一台の自動車、怪物の姿がその中へ消えたかと思うと、車は
矢庭
(
やにわ
)
に走り出した。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
井桁格子
(
いげたごうし
)
の浴衣に
鬱金木綿
(
うこんもめん
)
の手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
り。片袖で顔を蔽って象のそばから走り出そうとすると、
人気
(
ひとけ
)
のないはずの松の
根方
(
ねかた
)
から
矢庭
(
やにわ
)
に駈け出した一人。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「ちょっとちょっと。」と
間
(
あいだ
)
を頭を下げて、手を戴くように、前の車へ切符拝見と出かけそうに、行きかける、それをタゴールさんが、
矢庭
(
やにわ
)
に引っ捉えると
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
彼は不思議そうに大きな眼をあいて、しばらく部屋の中をじろじろ見回していましたが、やがて、金庫が眼にとまると、
矢庭
(
やにわ
)
にその方へ手をのばそうとしました。
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
矢庭
(
やにわ
)
に、穴の入口に顔を出した。大物です。四十貫もある巨熊です。私は、熊の額へ銃口を押しつけるようにして、引金を引いた。ところが、不運にも不発なのです。
熊狩名人
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
ぐいっと向き直ったが、おせきのぎらぎらする両眼に
打
(
ぶ
)
つかると、浩平は
矢庭
(
やにわ
)
にそっぽを向いた。
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
「まだ
雑言
(
ぞうごん
)
をやめ居らぬか。」と、恐ろしい
権幕
(
けんまく
)
で罵りながら、
矢庭
(
やにわ
)
に
沙門
(
しゃもん
)
へとびかかりました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
、お
前
(
まへ
)
に
鬼神
(
きじん
)
の
勇
(
ゆう
)
があればとて、あの
澤山
(
たくさん
)
の
猛獸
(
まうじう
)
と
鬪
(
たゝか
)
つて
何
(
なに
)
になる。』と
矢庭
(
やにわ
)
に
彼
(
かれ
)
の
肩先
(
かたさき
)
を
握
(
つか
)
んで
後
(
うしろ
)
へ
引戻
(
ひきもど
)
した。
此時
(
このとき
)
猛犬稻妻
(
まうけんいなづま
)
は、
一聲
(
いつせい
)
銃
(
するど
)
く
唸
(
うな
)
つて
立上
(
たちあが
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
私は、彼に、その人形によって、自分の手の不器用さを徹底的に知らせようとしたのであったが、彼は意識を取戻すと、
矢庭
(
やにわ
)
にその人形の首を
浚
(
さら
)
って逃出したのであった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
青年技師は、冷酷無情にも、そう命じると、数名の男は、
矢庭
(
やにわ
)
に僕の肩や、手をとった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
翅音
(
はおと
)
をたてて舞っている眼の先の
虻
(
あぶ
)
を眺めていたが、不図其奴が鼻の先に止まろうとすると、この永遠の木馬は、
矢庭
(
やにわ
)
に怖ろしい胴震いを挙げて後の二脚をもって激しく地面を蹴り
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
慶三は
矢庭
(
やにわ
)
に掛蒲団を剥ぎのけた後、眼を皿のようにして白い
敷布
(
シイツ
)
の上から何物かを捜し出そうとするらしく
稍
(
やや
)
暫く
瞳子
(
ひとみ
)
を据えた後、
頻
(
しきり
)
に鼻を
摺付
(
すりつ
)
けて物の
臭
(
におい
)
でもかぐような挙動をした。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二階を
睨
(
にら
)
めあげて、
苛々
(
いらいら
)
と目を
据
(
す
)
え
乍
(
なが
)
ら、思いかえし、思い直しては、また、歯を喰いしばっていたが、
矢庭
(
やにわ
)
に腰の
小刀
(
しょうとう
)
を抜いて、平七の手に押しつけると、
呻
(
うめ
)
くような声で新兵衛が言った。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
乗物町
(
のりものちょう
)
の師匠として聞えている笛の名人
豊住又七
(
とよずみまたしち
)
が、用達しの帰り、自宅の近くまで差しかかった時、手拭いで顔を包んだ屈強な男が一人
矢庭
(
やにわ
)
に陰から飛び出して来て、物をもいわずに又七を
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
古島さんが
呆然
(
ぼうぜん
)
としてその姿を見守つてゐると、とつぜん足もとまで
這
(
は
)
ふやうに寄つて来てゐた姉さまが、
矢庭
(
やにわ
)
に片手で古島さんの二の腕をつかみ、のこる手を背の低い古島さんの
顎
(
あご
)
へかけて
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
矢庭
(
やにわ
)
に何らの理由も必然性もなくくっつけ、変化と色彩とで読者を釣り歩いて行く感傷を用いるのであるが、しかし、何といっても、ここには自己身辺の経験事実をのみ書きつらねることはなく
純粋小説論
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
とある汚い
酒店
(
さかみせ
)
で流れの女を相手にして飲み酔っている一人の荒くれ男がいたが、丁度その時その店先を通りかかった呉羽之介を
指
(
ゆびさ
)
して傍の女が何やら
囁
(
ささや
)
くやいなや、
矢庭
(
やにわ
)
に血相変えて、店を飛出し
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
蝙蝠
(
かわほり
)
のような怪しい鳥が飛んで来て、蝋燭の火を
危
(
あやう
)
く消そうとしたのを、重太郎は
矢庭
(
やにわ
)
に
引握
(
ひっつか
)
んで
足下
(
あしもと
)
の岩に叩き付けた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そうして、えへへ、と実に卑しいお
追従
(
ついしょう
)
笑いをしたようです。本当に、仕事の邪魔どころか、私は目がくらんで
矢庭
(
やにわ
)
に
倒立
(
さかだ
)
ちでもしたい気持でした。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
自分は夜を迎へても未だ亢奮が持続してゐて、愈々おでん屋へ向つて走りでるといふ時には、又もや
矢庭
(
やにわ
)
にこみあげてきた感動で相当混乱したらしい。
盗まれた手紙の話
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
池上はこれ等を言い終ると、
矢庭
(
やにわ
)
にわたくしの手を取り、肘からの震えをわたくしの手首に伝えながら言いました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
するとお花、いきなりワッと泣き伏しでもするかと思いきや、どうしてどうして、宗三があっけに取られた事には
矢庭
(
やにわ
)
にクツクツと笑い出したのである。
接吻
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
矢庭
(
やにわ
)
に平次の身体を横抱きにしたガラッ八、有無を言わせず、真っ裸のまま、猛然と焔の中に突進したのです。
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
旦那様が目に入れても痛くない
筈
(
はず
)
のギンヤまで、
矢庭
(
やにわ
)
に退場を命ぜられるとは、このとき旦那様の胸に往来するよほどの不安があったものらしい。その不安とは?
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
セーニャが今度は後ろから、姉さんの首ったまにかじりつくと、
矢庭
(
やにわ
)
にその左の頬を持って行った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
見物人は蜘蛛の子を散らすように逃げだして、このまま捨て置けば幾人人間があやめられるか分からぬ危急の状景を示してきたので、小文吾は
矢庭
(
やにわ
)
に闘牛場へ飛び下りた。
越後の闘牛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
神尾主膳の眼にキラキラと黄色い色が見えたかと思うと、
矢庭
(
やにわ
)
にその突いていた槍を取り直し
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こう思うと巡査は、こいつ怪しい曲者とばかり、
矢庭
(
やにわ
)
に、その男に
躍
(
おど
)
りかかりました。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
文彦は
矢庭
(
やにわ
)
にライフル銃を取り上げて、装填しつつ立ち上り、東助をさし招いた。
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
盗人たちはそれには目もくれる
気色
(
けしき
)
もなく、
矢庭
(
やにわ
)
に一人が牛の
韁
(
はづな
)
を取って、往来のまん中へぴたりと車を止めるが早いか、四方から
白刃
(
しらは
)
の垣を造って、
犇々
(
ひしひし
)
とそのまわりを取り囲みますと
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
きくや
矢庭
(
やにわ
)
に立ち上ると、敢然として言った。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「生意気言うな!」末席の
小柄
(
こがら
)
の俳優、
伊勢良一
(
いせりょういち
)
らしい人が、
矢庭
(
やにわ
)
に怒鳴った。「君は僕たちを
軽蔑
(
けいべつ
)
しに来たのか?」
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「アア」娘は本当にびっくりしたらしく、サッと青ざめて、
矢庭
(
やにわ
)
に服のうしろの方から、小型のピストルを取出したかと思うと、震える手に彼を狙った。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
キクが庭内を逍遥の折、
矢庭
(
やにわ
)
に躍りかかった甚吉に首をしめられ手ゴメにされて身ごもったのでございます。
明治開化 安吾捕物:06 その五 万引家族
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
熱いのと痛いのとで眼が
眩
(
くら
)
んだ重蔵は、
衣兜
(
かくし
)
から
把出
(
とりだ
)
した
洋刃
(
ないふ
)
を閃かして、
矢庭
(
やにわ
)
に敵の
咽喉
(
のど
)
を
一抉
(
ひとえぐ
)
りにした。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
このときの男乞食の
周章
(
あわて
)
て方はありませんでした。
矢庭
(
やにわ
)
に女乞食をしょぴいて一目散に遁げ出しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
春松を放り出したガラッ八は、
矢庭
(
やにわ
)
に馬吉に組付くと、その胸倉を取ってねじ倒しました。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
愕くどころか、博士は、
矢庭
(
やにわ
)
に手をのばして、その大蜘蛛の
胴中
(
どうなか
)
をつかんだものである。
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのとき大原は
矢庭
(
やにわ
)
に立ち上って、いやなにおいのするものを
嗅
(
か
)
がせました。
謎の咬傷
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
物
(
もの
)
の
數
(
かず
)
にも
足
(
た
)
らぬ
海獸
(
かいじう
)
なれど、あれを
敵國
(
てきこく
)
の
艦隊
(
かんたい
)
に
譬
(
たと
)
ふれば
如何
(
いか
)
にと、
電光艇
(
でんくわうてい
)
は
矢庭
(
やにわ
)
に
三尖衝角
(
さんせんしようかく
)
を
運轉
(
うんてん
)
して、
疾風
(
しつぷう
)
電雷
(
でんらい
)
の
如
(
ごと
)
く
突進
(
とつしん
)
すれば、あはれ、
海
(
うみ
)
の
王
(
わう
)
なる
巨鯨
(
きよげい
)
の
五頭
(
ごとう
)
七頭
(
しちとう
)
は
微塵
(
みぢん
)
となつて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
宇治山田の米友が、
矢庭
(
やにわ
)
に飛び上ったのもそれと同時刻。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
矢
常用漢字
小2
部首:⽮
5画
庭
常用漢字
小3
部首:⼴
10画
“矢”で始まる語句
矢張
矢
矢鱈
矢立
矢絣
矢来
矢先
矢弾
矢筈
矢文