めい)” の例文
この点を尊重して大正十三年には源内に従五位を追贈せられたので、彼もまたこれによりて安んじてめいすることができるのでありましょう。
平賀源内 (新字新仮名) / 石原純(著)
渠等かれらが妄執めいせず、帰せず、陰々たる燈火に映じて動出うごきいださんばかりなる、ここ屠犬児の働場はたらきばにして、地獄は目前の庖廚ほうちゅうたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……たとえ今、敗るるとも、なに、惜しかろう。男子として、やる限りはやったと思う。——以て、みずからめいすことができる
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君の一生はまことに恵まれざる一生ではあつたが、今や二児は成人せり。君の使命は果たされたりといふべきか。以てめいすべし。弔詞終り——
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
悲しく、寂しい亡くなり方を、いかにも先生らしいと悲痛なものと思うが、老衰のはて静かにめい目されたのでもあろうか。
徹した個人主義 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいだうはこつたが、かれいまめいせずして、死骸むくろだいうへ横臥よこたはつてゐる。つてつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おう令息れいそく有名ゆうめい石本新六男いしもとしんろくだんがあり、新六男しんろくだん四男よなん地震學ぢしんがく有名ゆうめい巳四雄教授みしをきようじゆのあることは、李蹊りけいおうまたもつめいするにるといはれてもよいであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
おこたり、重大なる材料を流出させたる失敗をあがなうことを命ずる。忠勇なる『赤毛のゴリラ』よ。地下にめい……
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「四分の一ならってめいすべしさ。それに大学を卒業させて貰っている。苦情を言うのは少し慾だろうぜ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今度の踏み絵の調査においてじゃ、君の傑作がもしわれわれの不吉な想像を裏切らなかったら、君は自分の仕事の成功の証明に免じてめいしてくれなければならぬ。
その中には、死後永く冤罪えんざいをこうむり、地下にありてめいすることのできないものもありましょう。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
れはこゝろよめいすることが出來できると遺書ゐしよにもあつたとふではないか、れはいさぎよ此世このよおもつたので、おまへことあはせておもつたのでけつして未練みれんのこしてなかつたに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まず、しかしながら、武士と見られた、もってめいすべきでござる、船には一門、海賊に備えて砲が積んでありました、移民船が戦艦と見られた——か、これまた冥加みようが々々」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
地下にめいせしむるのてあいは二言目には女で食うといえど女で食うは禽語楼きんごろうのいわゆる実母散じつぼさん清婦湯せいふとう他は一度女に食われて後のことなり俊雄は冬吉の家へころげ込み白昼そこに大手を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
ジャボ(天狗)を相手に田楽でんがくを舞つた狂将の幽魂、今は全くめいすべしであらうか。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
頃日けいじつ誠ソノ旧居ヲ訪ヒ令愛芳樹女史ヲ見ル。女史遺稿若干首ヲ出シ、誠ニ示シテ曰ク、コレ先人易簀ノ前数日刪定さんていスル所ノ者ナリ。恨ムラクハイマダコレヲ刻スルニ及バズシテめいスト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貫一はいつはかの痛苦を忘るる手段として、いつはその妄執もうしゆうを散ずべき快心の事を買はんの目的をもて、かくは高利をむさぼれるなり。知らず彼がそのゆふべにしてめいせんとする快心の事とは何ぞ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかしこの全責任を負わされてはこれらの大家たちはおそらく泉下にめいする事ができまい。少なくも責任の半分以上は彼らのオーソリティに盲従した後進の学徒に帰せなければなるまい。
案内者 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
友吉風ともきちかぜ友吉風というので何ともない奴までオゾ毛をふるって蒲団ふとんを引っかぶっているという……実に滑稽なお話だが、とにかくソレくらい恐ろしかったんだね。友吉たるものもっめいすべしだろう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人間弱味がなければ滅多めったに恐がるものでない。幸徳らめいすべし。政府が君らを締め殺したその前後のあわてざまに、政府の、いな、君らがいわゆる権力階級のかなえの軽重は分明に暴露されてしもうた。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
客の他の一人ひとり、この蘭人や南蛮女も亦以てめいすべしですか。——おや!
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然るに寛保二年に正明が病んでまさに歿せんとする時、その子独美どくびわずかに九歳であった。正明は法を弟槙本坊詮応まきもとぼうせんおうに伝えて置いてめいした。そのうち独美は人と成って、詮応に学んで父祖の法を得た。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我は今無言なり、膝を折りて柱にもたれ、歯をみ、眼をめいしつゝあり。知覚我を離れんとす、死のはりは我がうしろに来りてをりうかゞへり。「死」は近づけり、然れどもこの時の死は、生よりもたのしきなり。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
病床にめいすむくむく死のぬく
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
曙覧地下にめいすべきなり。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ひとしゅうする白骨が累々るいるいとあるではないか。桃園の事はすでに終る。いまはめいして九泉に安んじて可なりである。かつ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいどうはこったが、かれいまだめいせずして、死骸むくろだいうえ横臥よこたわっている。ってつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この故に下関で朝鮮へお帰りかと訊くのは彼地あっちで成功しているという意味で、これも最大の敬意さ。土地相場でこれぐらい優遇を受ければ又以ってめいすべしじゃないか?
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このようにして忠敬の遺した仕事はいつまでも大きな意味をもって記憶されてゆくことを考えますと、はやく学問の道に志した彼もまた安んじてめいするに足りるのでありましょう。
伊能忠敬 (新字新仮名) / 石原純(著)
あれは快よくめいする事が出来ると遺書ゆゐしよにも有つたと言ふでは無いか、あれはいさぎよくこの世を思ひ切つたので、お前の事も合せて思ひ切つたので決して未練は残してゐなかつたに
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旭の光輝ひかりに照らされたる、人形の瞳は玲瓏れいろうと人を射て、右眼、得三の死体を見てめいするがごとく、左眼泰助を迎えて謝するがごとし。五体の玉は乱刃らんじんに砕けず左の肩わずかに微傷のこんあり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、鬼塚元帥は、しばらく目をめい
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まだそこらには、討死した信治のぶはるや森可成よしなり道家どうけ清十郎などの血も乾いておるまい。——めいせよ、忠烈なる亡魂ども、そちたちの鮮血を、あだにはせぬぞ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま眼を閉じて、三人の子を捨て、数万の将兵を救い、あわせて天下に益することができるなら——直家の子らは、よろこんで敵国の土にめいしてくれるにちがいない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとは夭死わかじにというかも知れないが、以て半兵衛重治は充分にめいすことができるというものである
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、足下を討たなければ、いつかかならず、この元春の首が、足下の手に掻き取られたろう。武門のならいである。かくなっては、御身も莞爾かんじとして、めいするほかはあるまい」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歿後三百年の後にもなおまだそういう有縁うえんがあったり、余風を慕って訪れる幾多の道友や知己を持つ武蔵は、それも彼が虚空こくうに遺した心業の威徳とはいえ、もってめいすべきではあるまいか。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、義仲もまた知己ありとめいすべきではあるまいか。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)