瓦斯燈がすとう)” の例文
新字:瓦斯灯
モウ五六間も門口の瓦斯燈がすとうから離れて居るので、よくは見えなかつたが、それは何か美しい模様のある淡紅色ときいろ手巾はんけちであつた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
皚々がい/\たる雪夜せつやけいかはりはなけれど大通おほどほりは流石さすが人足ひとあしえずゆき瓦斯燈がすとうひか皎々かう/\として、はだへをさす寒氣かんきへがたければにや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うへへ五ほんめの、ひとのこつた瓦斯燈がすとうところに、あやしいものの姿すがたえる……それは、すべ人間にんげんかげる、かげつかむ、影法師かげぼふしくらものぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忌々いま/\しさうに頭をふつて、急に急足いそぎあし愛宕町あたごちやうくらい狭い路地ろぢをぐる/\まはつてやつ格子戸かうしどの小さな二階屋かいやに「小川」と薄暗い瓦斯燈がすとうけてあるのを発見めつけた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人間はだ皆寝ているんだろう。家も木も往来もボンヤリと見える。此奴こいつ等も寝ているんだろう。瓦斯燈がすとうさえ淋しそうに黄色く光っている。何人だれも乃公がこんな高い処にいるとは思うまい。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ネワ河水を鉄管にて引きたる上水あり。瓦斯燈がすとうの装置あり。その完全なる物に至つては門衛をも家主いへぬしの支辨にて雇ひ入れあるにあらずや。吾人は最期に読者の注意を乞はんと欲する一事あり。
六日目には少々いやになって、七日目にはもう休もうかと思った。そこへ行くと山嵐は頑固がんこなものだ。よいから十二時すぎまでは眼を障子へつけて、角屋の丸ぼやの瓦斯燈がすとうの下をにらめっきりである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奴さんもひじを張って女を迎えようとしたが、思い返してへやの外へ出た、女は追って来てドアをぴしりと締めたさ、へやの出口には、蒼白あおじろ瓦斯燈がすとうの光があって、その光の中に僕の顔が浮き出ていたが
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
濠端ほりばたえた瓦斯燈がすとう
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
づか/\、の、……其處そこの五だいめの瓦斯燈がすとうところまで小砂利こざりつてまゐりますと、道理もつともことなん仔細しさいもありませぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
物思ものおもがほ若者わかものえりのあたりいやりとしてハツと振拂ふりはらへば半面はんめん瓦斯燈がすとうひかり蒼白あをじろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
外は星夜ほしづくよで風の無い静かな晩である。左へまがれば公園脇の電車道、銀之助は右に折れてお濠辺ほりばた通行ひとゞほりのない方を選んだ。ふと気が着いて自家じたくから二三丁先の或家あるいへ瓦斯燈がすとうで時計を見ると八時すぎである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
瓦斯燈がすとうがほんのりともれて、あしらつた一本ひともと青柳あをやぎが、すそいて、姿すがたきそつてて、うただいしてあつたのをおぼえてる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おお気味が悪るいと首を縮めながら、四五軒先の瓦斯燈がすとうの下を大黒傘肩にして少しうつむいてゐるらしくとぼとぼと歩む信如の後かげ、何時までも、何時までも、何時までも見送るに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……片側かたかはならべて崖添がけぞひに、およそ一けんおきぐらゐに、なかめて、一二三堂ひふみだうふ、界隈かいわい活動寫眞くわつどうしやしんてた、道路安全だうろあんぜん瓦斯燈がすとうがすく/\ある。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おゝ氣味きみるいとくびちゞめながら、四五けんさき瓦斯燈がすとうした大黒傘だいこくがさかたにしてすこしうつむいてるらしくとぼ/\とあゆ信如しんにようしろかげ、何時いつまでも、何時いつまでも、何時いつまでも、見送みおくるに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「もっと町の方へ引越して、軒へ瓦斯燈がすとうでもけるだよ、兄哥あにやもそれだから稼ぐんだ。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御待合歌枕おんまちあいうたまくら磨硝子すりがらす瓦斯燈がすとうおぼろの半身、せなかに御神燈のあかりを受けて、道行合羽みちゆきがっぱの色くッきりと鮮明あざやかに、格子戸の外へずッと出ると突然いきなり柳の樹の下で、新しい紺蛇の目の傘を、肩をすぼめて両手で開く。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)