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無惨
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むざん
ふりがな文庫
“
無惨
(
むざん
)” の例文
旧字:
無慘
蟻や蠅でさえ生きていられる世の中に、人間が食えなくなって生きていられないという世の中は、
無惨
(
むざん
)
なものといわねばなりません。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まして露の吹き散らされて
無惨
(
むざん
)
に乱れていく秋草を御覧になる宮は御病気にもおなりにならぬかと思われるほどの御心配をあそばされた。
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
思い掛けなくも両腕、両脚を
無惨
(
むざん
)
にすぱりと切り取られたお由の屍体は、全く裸体にされて半分小川の中へ浸されているのだ。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人格の
尊厳
(
そんげん
)
を第一位に置く
霊活不覊
(
れいかつふき
)
なる先生の心を
傷
(
いた
)
むるのは知れ切った事まで先生に
強
(
しい
)
られたのは、あまりと云えば
無惨
(
むざん
)
ではありますまいか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それで
総
(
すべ
)
てであった。つまり彼らは、それ以外に云うべき言葉を何一つ持ち合していなかった。
無惨
(
むざん
)
な立場に追いつめられていたというべきだろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
▼ もっと見る
このとき愛と悲しみにみちた心を
無惨
(
むざん
)
にも傷つける、あの騒ぎがはじまった。あれこれと指図する冷たい事務的な声。砂と砂利とにあたるシャベルの音。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「ナニ土牢の中にいる? いずれ鬼王丸の
命令
(
いいつ
)
けであろうが
無惨
(
むざん
)
のことを致しおるのう。……市之丞殿を盗み出したのも恐らくお前達の仕業であろうな?」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここでは野火に襲われて
無惨
(
むざん
)
な横死を遂げた旅人の話が何件ともなく云い伝えられているが、全くあの荒野で野火に囲まれたならば誰しも往生するのが当然であろう。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
けれども一面の水だから、せっかく水を抜いた足を、また
無惨
(
むざん
)
にも水の中へ落さなくっちゃならない。片足を揚げると、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のようにそのままで立っていたくなる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは落ちて来た
梁
(
はり
)
に腰を打たれて、一人の女が
無惨
(
むざん
)
にも悶え苦しんでいる画でございました。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「おお、あの少年が、陳君というボーイかい。
無惨
(
むざん
)
な屍骸となって横たわっているではないか」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
さしもに
堅固
(
けんご
)
な王子の立像も
無惨
(
むざん
)
な事には
礎
(
いしずえ
)
をはなれてころび落ちてしまいました。
燕と王子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その槍さきにかけられた
無惨
(
むざん
)
な
屍
(
かばね
)
は、いたずらに逃げ返す部将たちの
馬蹄
(
ばてい
)
を
妨
(
さまた
)
げた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
段々に喰べへらして
天秤
(
てんびん
)
まで売る仕義になれば、
表店
(
おもてだな
)
の
活計
(
くらし
)
たちがたく、月五十銭の裏屋に人目の恥を
厭
(
いと
)
ふべき身ならず、又時節が有らばとて引越しも
無惨
(
むざん
)
や車に乗するは病人ばかり
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
世に
無惨
(
むざん
)
なる話しは数々あれど本年七月五日の朝築地
字
(
あざな
)
海軍原の傍らなる川中に
投込
(
なげこみ
)
ありし死骸ほど無惨なる有様は稀なり
書
(
かく
)
さえも身の毛
逆立
(
よだ
)
つ翌六日府下の各新聞紙皆左の如く記したり
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
それが、今朝、
無惨
(
むざん
)
な死骸になって、自分の部屋の中に発見されたのでした。
銭形平次捕物控:121 土への愛着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
血につながる
叔父
(
おじ
)
甥
(
おい
)
の間柄として、そんな
無惨
(
むざん
)
な
光景
(
ありさま
)
を横目で眺めてすましているわけにもゆくまいから、ひとつ、ふんぱつして、この
度
(
たび
)
にかぎり、手前があなたのいのちを助けてあげます。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
獄裡
(
ごくり
)
に長くつながれたとはいえ、それを囚人あつかいにし、出獄してから後も、囚人であった事を売物
見世物
(
みせもの
)
のようにして、舞台にさらしたり、
寄席
(
よせ
)
に出したりしたのはあんまり
無惨
(
むざん
)
すぎる。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
けれど勢ひ
已
(
や
)
むを得ないと云ふことになつたもんですから、
然
(
しか
)
らば坑夫等を
無惨
(
むざん
)
の失敗に終らしめてはならぬと云ふので、最も困難な兵糧方に廻つたのです、だから彼が
教唆
(
けうさ
)
したと云ふのは
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして、
風
(
かぜ
)
は
建物
(
たてもの
)
の
無惨
(
むざん
)
な
傷口
(
きずぐち
)
をなで、
雨
(
あめ
)
は
土
(
つち
)
の
深手
(
ふかで
)
を
静
(
しず
)
かに
洗
(
あら
)
ったのです。そのうち、ところどころ
新
(
あたら
)
しい
家
(
いえ
)
が
建
(
た
)
ちはじめ、
人々
(
ひとびと
)
の
手
(
て
)
によって、
植
(
う
)
えられた
木立
(
こだち
)
は、ふたたび
林
(
はやし
)
となりました。
春はよみがえる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
無惨
(
むざん
)
の
状
(
さま
)
に、ふつと
掻消
(
かきけ
)
した
如
(
ごと
)
く
美
(
うるは
)
しいものは
消
(
き
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
無惨
(
むざん
)
ではないか。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
桶狭間
(
おけはざま
)
で泰然としていた信長、たとえ一
目
(
もく
)
なり二目なり置いていたとはいえ、そう
無惨
(
むざん
)
な敗れを取るようなこともなかったろうと思う
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
正午の頃までは、裏の
櫟林
(
くぬぎばやし
)
で
吠
(
ほ
)
えたりして居た。何時の間に甲州街道に遊びに往って
無惨
(
むざん
)
の
最後
(
さいご
)
を
遂
(
と
)
げたのか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
次第に燃えさかってくる一帯の火災は、
無惨
(
むざん
)
にも血と泥とにまみれた青年の腹部を、あかあかと照しだした。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
生憎
(
あいにく
)
作家の頭の方が亀の甲より軟らかであったものだから、禿はめちゃめちゃに砕けて有名なるイスキラスはここに
無惨
(
むざん
)
の最後を遂げた。それはそうと、
解
(
げ
)
しかねるのは鷲の了見である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いわんや、二階には佐原屋の
無惨
(
むざん
)
な死体がそのままに置かれてある。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三日か四日の間を置いて、町の
端
(
はず
)
れに
無惨
(
むざん
)
にも人が斬られていました。その斬り方は鮮やかというよりも
酷烈
(
こくれつ
)
なるものであります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
刑事たちは、
折角
(
せっかく
)
探し求めていた
横浜
(
はま
)
ギャングの一人、赤ブイの仙太が、遂に
無惨
(
むざん
)
な死体となって発見されたので、只もう残念でたまらないという風に見えた。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
朝になってまた顔を洗って、茶の間へ来ると、妻が鼠の噛った
鰹節
(
かつぶし
)
を、
膳
(
ぜん
)
の前へ出して、
昨夜
(
ゆうべ
)
のはこれですよと説明した。自分ははあなるほどと、一晩中
無惨
(
むざん
)
にやられた鰹節を眺めていた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それを今、あのお嬢様と比べて見れば、自分の方が確かに
幸福者
(
しあわせもの
)
であると言われて、なるほどそうかと思わねばならないことほど
無惨
(
むざん
)
に感じたのであります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
メリー号の実際の指揮者であるクーパー事務長は、
無惨
(
むざん
)
にも今や
水母
(
くらげ
)
に目鼻をつけたような怪物に手どり足どりにされ、
舷側
(
げんそく
)
をこえていずれにか連れられていく。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
濃
(
こまやか
)
に刻んだ
七子
(
ななこ
)
は
無惨
(
むざん
)
に
潰
(
つぶ
)
れてしまった。鎖だけはたしかである。ぐるぐると
両蓋
(
りょうぶた
)
の
縁
(
ふち
)
を巻いて、
黄金
(
こがね
)
の光を
五分
(
ごぶ
)
ごとに曲折する真中に、
柘榴珠
(
ざくろだま
)
が、へしゃげた蓋の
眼
(
まなこ
)
のごとく乗っている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しとやかな、恥を知ることの多い処女性の多分を認めるほど、かえって昨夜の変事が
無惨
(
むざん
)
でたまらない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
折角
(
せっかく
)
作った一台は、
無惨
(
むざん
)
にも赤外線男の破壊するところとなり、学士も助手の
白丘
(
しらおか
)
ダリアも大いに失望したが、その
筋
(
すじ
)
の希望もあって、二人は
更
(
さら
)
に設計をやり直し
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
芽を吹く今の幹なれば、通わぬ脈の枯れ
枝
(
え
)
の末に、
錐
(
きり
)
の力の
尖
(
とが
)
れるを
幸
(
さいわい
)
と、記憶の命を突き
透
(
とお
)
すは要なしと云わんよりむしろ
無惨
(
むざん
)
である。ジェーナスの神は二つの顔に、
後
(
うし
)
ろをも前をも見る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お美代はハッと胸を
衝
(
つ
)
かれたように思った。草叢を覗きこんでみると、そこには大きな葛の葉が白い葉裏を見せて
無惨
(
むざん
)
に飛びちっていた。しかし武夫の姿は見えなかった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
武士もまた、さすがにこの場の
無惨
(
むざん
)
な有様に、
悸
(
ぎょっ
)
として突立ったきりでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
捕われて遠き国に、行くほどもあらねば、この手にて君が墓を
掃
(
はら
)
い、この手にて
香
(
こう
)
を
焚
(
た
)
くべき折々の、
長
(
とこ
)
しえに尽きたりと思いたまえ。生ける時は、
莫耶
(
ばくや
)
も我らを
割
(
さ
)
き難きに、死こそ
無惨
(
むざん
)
なれ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手も足も全く見えない。人形の
壊
(
こわ
)
れたのにも、こんなにまで
無惨
(
むざん
)
な姿をしたものは無いだろう。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お絹の向っていた鏡台に手をかけると、
無惨
(
むざん
)
にそれをひっくり返してしまったから
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
崩れた岩石の間から、半分ばかり
無惨
(
むざん
)
な胴体をはみ出している機関車、飛び散っている車輪、根まで
露出
(
ろしゅつ
)
している大きな松の樹など、その惨状は筆にも紙にもつくせません。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昨夜、水車小屋から出て行方知れずになったという村の娘が一人、水車場より程遠からぬ流れの
叢
(
くさむら
)
の蔭に、見るも
無惨
(
むざん
)
に殺されて漂っていたのが発見されて、全村の人は
震駭
(
しんがい
)
しました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ああしかし
無惨
(
むざん
)
なことに、龍子の胸から下を
蔽
(
おお
)
った白い病衣のその
胸板
(
むないた
)
にあたる箇所には、蜂の巣のように孔があき、その底の方から静かに真紅な
血潮
(
ちしお
)
が湧きだしてくるのだった。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
行商体の男の有様こそ
無惨
(
むざん
)
なもので、面の全部を
腮
(
あご
)
から噛まれて、銀磨きの十手を
抛
(
ほう
)
り出してそこへ突んのめってしまったのを、ムクはそのまま噛捨てにして、クルリと身を転ずるや
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
釣台で運んで来たその女房の
無惨
(
むざん
)
な
亡骸
(
なきがら
)
を見た時もゲラゲラと笑いました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
十二三の悪太郎が、
無惨
(
むざん
)
にも、そのお河童さんを
一喝
(
いっかつ
)
して
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“無惨”の意味
《名詞》
(仏教)罪を犯しても心に恥じないこと。
残酷なこと。
不憫なこと。
(出典:Wiktionary)
“無惨”の解説
『無惨』(むざん)は、黒岩涙香が明治22年(1889年)に発表した短編小説。日本人初の創作推理小説とされる。
(出典:Wikipedia)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
惨
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“無惨”で始まる語句
無惨々々
無惨〻〻