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桟
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さん
ふりがな文庫
“
桟
(
さん
)” の例文
旧字:
棧
キリリコロコロ、私はいつもこの雨戸の
桟
(
さん
)
に御厄介になっているもので御座います。キリリコロコロ、私のうちはここで御座います。
キキリツツリ
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
海若藍平
(著)
また掛け合い
噺
(
ばなし
)
になる。——黙って聴け。痣の熊吉は雨戸を外したり、
桟
(
さん
)
を切り取ったり、かなり器用なことをして忍び込むようだ。
銭形平次捕物控:124 唖娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
くるりと入口へ仕切られた背中になると、襖の
桟
(
さん
)
が
外
(
はず
)
れたように、その
縦縞
(
たてじま
)
が消えるが
疾
(
はや
)
いか、廊下を、ばた、ばた、ばた、どたんなり。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぼくがあの旧式な銭箱という物を横にして
桟
(
さん
)
の隙間から銀貨を棒か何かで掻き出そうとしているキワどい所を見つけて「あらっ……」と
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上の棚の裏側の
桟
(
さん
)
で手の甲を擦る様になる、それが桟の
角
(
かど
)
だったりすると、そこに溜った煤のために、こんな跡がつく訳なんです
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
美禰子の
傍
(
そば
)
を
擦
(
す
)
り
抜
(
ぬ
)
けて
上
(
うへ
)
へ出た。
馬尻
(
ばけつ
)
を
暗
(
くら
)
い縁側へ置いて戸を明ける。成程
桟
(
さん
)
の具合が
善
(
よ
)
く
分
(
わか
)
らない。そのうち美禰子も
上
(
あ
)
がつて
来
(
き
)
た。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
書巻の眼は
鞠
(
まり
)
のように飛んで、戸締りの
桟
(
さん
)
に向ったのは、その戸の外で、縁の近くに忍び寄った、外からの何者かの気配があるからです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
仕切られているところの襖の
桟
(
さん
)
の、隙間がかなりあいているので、隣りの部屋をのぞこうとしたら、十分のぞくことはできるのであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私はそこで、重い燃えるような頭を、支えかねる両手でかろうじて支え、両
肱
(
ひじ
)
を膝につき、両足先を椅子の
桟
(
さん
)
にかけていた。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
神秘めいてぼんやり白んでいるガラスの上に、窓の
桟
(
さん
)
がくっきりと
描
(
えが
)
き出されている。雷雨だな——とわたしは思った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
そこへは入口の戸の
桟
(
さん
)
を登って行けた。二階は太い
梁
(
はり
)
が二本、三尺くらい離れてあるだけだ。その上に枯れた偃松の束がたくさん並べて置いてある。
単独行
(新字新仮名)
/
加藤文太郎
(著)
跳びのいた栄三郎、横に流れた乾雲がバリバリッ! と音をたてて、障子の
桟
(
さん
)
を斬り破ったと見るや、長光を宙になびかせて左膳の頭上に突進した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
家中の畳の数や電燈の数は固よりのこと、障子の
格子
(
こうし
)
や
天井
(
てんじょう
)
の
桟
(
さん
)
まで数えている。数に兎角興味がある。この間銀座へ行く途中、電車に故障があった時
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
丈の低い小僧はそれでも
僧衣
(
ころも
)
を着て、
払子
(
ほっす
)
を持った。一行の
携
(
たずさ
)
えて来た提灯は
灯
(
ひ
)
をつけられたまま、人々の並んだ後ろの障子の
桟
(
さん
)
に引っかけられてある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ちょうど具合よく、あの男は
仔鹿
(
かよ
)
の
脂
(
あぶら
)
をうけて、右眼が利かないのですし、
桟
(
さん
)
の間から洩れる月の光が、紙帳の隅の、その所だけを刷いているのですから。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
障子の
桟
(
さん
)
にはべたッと
埃
(
ほこり
)
がへばりつき、天井には
蜘蛛
(
くも
)
の巣がいくつも、押入れには汚れ物がいっぱいあった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
桟
(
さん
)
は支柱に、しっかり縛りつけてある。我々の梯子は両側の部分に穴をあけるから、自然弱いものになる。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
もう
煤煙
(
ばいえん
)
がどこからか入って来て障子の
桟
(
さん
)
などを
汚
(
よご
)
す大阪の町々のことを考え、それらの町のどこか奥ふかく脈々と動いているであろう不屈の意志を感じ——すると
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
私は窓の
桟
(
さん
)
を力をこめて掴みながら、何ものにか襲いかかりたいような空しいさびしさを感じた。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
おれは小用をしに立って、
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
の
桟
(
さん
)
をはずして表に出る。暗さは暗し、農家のこととて
厠
(
かわや
)
は外に設けてある。ちょうど
雨滴落
(
あまだれお
)
ちのところで物に
躓
(
つまず
)
いて
仰向
(
あおむ
)
けに倒れたね。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
地は黒塗で、牡丹の
花弁
(
かべん
)
は朱、葉は緑、幹は黄、これに
金箔
(
きんぱく
)
をあしらいます。蓋には二つの
桟
(
さん
)
、胴には二段の
箍
(
たが
)
、その間に
線描
(
せんがき
)
の葉を散らします。作るのは盛岡であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かゝる
行装
(
ぎやうさう
)
にて
新婚
(
しんこん
)
の家にいたるゆゑ、その以前雪中の道を作り、雪にて山みちのやうなる所は雪を
石壇
(
いしだん
)
のやうにつくり、
或
(
あるひ
)
は雪にて
桟
(
さん
)
じきめく処を作りて見物のたよりとす。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
夜中に起きて、
秣
(
まぐさ
)
を一口食うんです。
角
(
つの
)
が飼棚の
桟
(
さん
)
にあたってことこというのが聞こえたりします。冬は、奴らの吐き出す息でからだが温まる。しかし、夏はよく外へ寝ました。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
などいって、
障子
(
しょうじ
)
の
桟
(
さん
)
へなど留まらせると、本当に、赤蜻蛉とバッタが陽気の加減で出て来ているように見える。老人は得意になって、そのままぶらり何処かへ出て行ってしまう。
幕末維新懐古談:41 蘆の葉のおもちゃのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
板は二つに割れるようになって、
其板
(
それ
)
に二つの
桟
(
さん
)
があってその桟をもって二つの板を合せて、そうしてそこへ錠を
卸
(
おろ
)
したもので、その板の上の紙にチベット語で罪状が記してある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
乱暴をするといってもせいぜい
障子
(
しょうじ
)
の
桟
(
さん
)
を壊すぐらいのことしか出来る筈がない。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
竹屋で売る竹よりも節が高くて、
桟
(
さん
)
をつけるに工合がよかった。考えて見ると、竹馬も長崎凧も、根っ木も、ブン/\も、私達子供の頃は皆自分の手で作った。小刀で手をよく切った。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
省三は
桟
(
さん
)
を打って滑らないようにしたその船板の上を
駒下駄
(
こまげた
)
で踏んでボートの方へおりて往った。船板はゆらゆらとしなえて動いた。ボートは赤いしごきのようなもので
繋
(
つな
)
いであった。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
幸子は一人
表
(
おもて
)
の
間
(
ま
)
の
格子
(
こうし
)
の
桟
(
さん
)
を両手で握ってごとごと
揺
(
ゆす
)
っていた。彼女は二つだ。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
床に
桟
(
さん
)
があって、脚の安定が危かったが、割れたままのガラス窓から吹きこむ縮みあがるような
隙間風
(
すきまかぜ
)
もなく、暗くても戸を閉ざしたら人いきれで暖かかったし、座席の設備がないかわりに
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
ある所では路が全く欠けてしまって、向うの崖からこちらの
崖
(
がけ
)
へ丸太を渡したり、
桟
(
さん
)
を打った板を
懸
(
か
)
けたり、それらの丸太や板を宙で
繋
(
つな
)
ぎ合わして、崖の横腹を
幾曲
(
いくまが
)
りも
迂廻
(
うかい
)
したりしている。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もう内
桟
(
さん
)
をおろしてしまったようで、あきませんでした。
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
静かに障子の
桟
(
さん
)
からおちたよ
冬に死す
(新字新仮名)
/
竹内浩三
(著)
こころの
桟
(
さん
)
に雪が積む
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
檻の中へ入れられた子熊は
輾転
(
てんてん
)
として、烈しく悲鳴を立てました。その時ずかずかと
走
(
は
)
せ寄った米友は、大八車の
桟
(
さん
)
を後ろから引っぱって
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三四郎は
要目垣
(
かなめがき
)
のあいだに見える
桟
(
さん
)
をはずそうとして、ふと、庭の中の話し声を耳にした。話は野々宮と美禰子のあいだに起こりつつある。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「夜中にそっと忍んで来て、主人を殺した上、何かうまい工夫で障子を締め、外から
桟
(
さん
)
をおろして、そっと引揚げたかも知れないじゃないか」
銭形平次捕物控:130 仏敵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
がたっと、障子の
桟
(
さん
)
がつよく鳴った。又四郎は立つやいな、勢いよく、そこを開けた。そして一足跳びに縁をこえ、外の闇に突っ立っていた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
件
(
くだん
)
の
泉水
(
せんすい
)
を隔てて寝床の
裾
(
すそ
)
に立つて居るのが、
一間
(
いっけん
)
真蒼
(
まっさお
)
になつて、
桟
(
さん
)
も数へらるゝばかり、黒みを帯びた、動かぬ、どんよりした光がさして居た。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いきなり
扉
(
とびら
)
の
桟
(
さん
)
に足をかけると、なんなくそれを乗り越して、建物の入口らしい箇所へ駈けつけ、そこのドアを叩いた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すぐ前に、
桟
(
さん
)
のほそい障子を
閉
(
た
)
てきった小部屋がひとつ、何かをのんでいるように妙にシンと静まり返っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見ると、その雨戸の
桟
(
さん
)
の上に小さい小さい虫が一匹、洋服を着て眼鏡を掛けて、揺れ椅子に腰をかけて書物を読んでいます。今の音は虫が揺れ椅子をゆする音でした。
キキリツツリ
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
海若藍平
(著)
その光景を
桟
(
さん
)
窓越しに眺めている滝人には、いささかもそうした物凄い遊戯が感じられず、まったくその数瞬間は、緊張とも亢奮とも、なんともつかぬ不安の極点にあった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
蛇は二人の正面になった柾の方へにょろにょろと
這
(
は
)
っていた。定七は蛇の方を見い見い
斜
(
ななめ
)
に往って表庭と入口の境になった板塀の方へ往って、そこにある
耳門
(
くぐり
)
の
桟
(
さん
)
を
啓
(
あ
)
けて出て往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
眩暈ナラ大概二三分間デ平常ニ復スルノダガ、イツマデタッテモ物ガ二重ニ見エルノデアル。障子ノ
桟
(
さん
)
、便所ヤ風呂場ノタイルノ
目地
(
めじ
)
、ソレラガスベテ二重ニ見エ、カツ少シズツ
歪
(
ゆが
)
ンデ見エル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
其所
(
そこ
)
で、父は、とある荷物の中から、一つの網戸を引っぱり出し、それを床店の屋根に掛けました。そうして、私の尻を押すようにして、私を屋根に
上
(
のぼ
)
らせました(戸の
桟
(
さん
)
を足場にして
攀
(
よ
)
じ上る)
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そこで両人は再び協力し、誰がトランクを天井の
桟
(
さん
)
に釘をうってそれへ引掛けたかを怪しみながら、机に椅子を積み重ね、箒や
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
やノックバットまで持ちだしてそのトランクを下ろそうと試みた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ヘエー、内から
桟
(
さん
)
をおろしてあるはずですが、不思議に雨戸が一枚開いていたそうです。戸を閉め忘れるなどということのない御主人ですが」
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
水入
(
みずいれ
)
も
餌壺
(
えつぼ
)
も
引繰返
(
ひっくりかえ
)
っている。
粟
(
あわ
)
は一面に縁側に散らばっている。留り木は抜け出している。文鳥はしのびやかに鳥籠の
桟
(
さん
)
にかじりついていた。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ジリジリと瓦の
桟
(
さん
)
に足の指をかけて詰め寄ると、かれは、四囲の
叫喚
(
きょうかん
)
も耳になく、八方の御用提灯も目にないものの如く
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桟
常用漢字
中学
部首:⽊
10画
“桟”を含む語句
桟道
桟橋
桟敷
客桟
唐桟
唐桟柄
桟留
桟俵法師
桟木
唐桟縞
古渡唐桟
桟敷裏
桟俵
桟齴
木桟
聾桟敷
桟留縞
桟蓋
土間桟敷
小桟橋
...