服装ふくそう)” の例文
旧字:服裝
アーチの下には、ニシキもようの服装ふくそうをした番兵ばんぺいたちが、えの長いやりをかたわらにおいて、すわりこんで、サイコロあそびをしていました。
見合みあいとき良人おっと服装ふくそうでございますか——服装ふくそうはたしか狩衣かりぎぬはかま穿いて、おさだまりの大小だいしょう二腰ふたこし、そしてには中啓ちゅうけいってりました……。
同じ年ごろの僧侶そうりょと少年と六とをよりだし、服装ふくそうまでそれらしくかよわせて、わざとことごとしくらせたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしの父の服装ふくそうはいつも、とてもりゅうとして、独特の味があって、しかもさっぱりしたものだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ジャンは卜占者にふさわしいようなものものしい学者めいた服装ふくそうをし、目明めあきには見えないものが見え、目明きには考えられないものが考えられるとふれて回って
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わたしはさっそく一座いちざ服装ふくそうととのえて、できるだけりっぱな行列を作りながら、村へはいって行った。
そのうちに彼の一人が子路の服装ふくそうをじろじろ見廻みまわし、やあ、これが儒服というやつか? 随分ずいぶんみすぼらしいなりだな、と言った。長剣がこいしくはないかい、とも言った。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その人は白髯しろひげでやはり牧師らしい黒い服装ふくそうをしていましたが壇にのぼって重い調子で答えたのでした。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ほこりでよごれきったトーマスの服装ふくそうに、金貨の音はどう考えてもつかわしくなかったからだ。しかし、その船員せんいんは、すぐに前とおなじあけっぴろげな態度たいどになって
緊張の気分もやっとれた私は、どこの土地へ行っても起るその土地の好みの服装ふくそうとか美人とかいうのはどういう風のものであろうかと、いつもの好奇心こうきしんいて来た。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ぱたぱたと続いてかけつけた同じような服装ふくそうの人が五六人みな銃を手に握っている。この人たちのお蔭で、丁坊に喰いつこうと思って氷上に待っていた白熊が射殺いころされた。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
エーは、だんがって、待合室まちあいしつにはいると、がらんとして、人影ひとかげはなく、ただ一人ひとりくろ服装ふくそうをした外国がいこくのおばあさんが、ベンチにこしをおろして、したいて、なにかしていました。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとまたそこへ質素しつそくろ服装ふくそうをつけた、断髪だんはつのぎよろりとしたをしたわかいRこく婦人ふじんがやつてて、やゝ熟達じゆくたつした日本語にほんごはなしかけた。もつと大抵たいてい婦人ふじんくろ服装ふくそうした断髪だんはつであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
見れば、白木造しらきつくりのささやかな家の中に自分は寝ているのでした。枕もとには一人の気高けだかい人が座っていました。まっ白な服装ふくそうをし、頭に白布を巻いた、年齢としのほどはわからない人でした。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
おおかた、聞き伝えて、近在から寄り集まった移民のお百姓達ひゃくしょうたちでありましょう。質素な服装ふくそう、日に焼けた顔、その熱狂ぶりもはげしくて、彼等の朴訥ぼくとつな歓迎には、心打たれるものがありました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そうしてその服装ふくそうすこしも医者いしゃらしいところく、一つフロックコートを十ねん着続きつづけている。まれ猶太人ジウみせあたらしいふくってても、かれるとやはりしわだらけな古着ふるぎのようにえるので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一体現代の日本の男子の服装ふくそうは地味過ぎて居る。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
服装ふくそう筒袖式つつそでしき桃色ももいろ衣服きもの頭髪かみ左右さゆうけて、背部うしろほうでくるくるとまるめてるところは、ても御国風みくにふうよりは唐風からふうちかいもので
服装ふくそうをすっかりととのえおわり、からだがあたたまってくると、こんどは地下室ちかしつ食堂しょくどうにおりていって、そこに残っていたにくやパンやチーズを、いやというほどつめこんだんだ。
服装ふくそうはりっぱだがからだの小さい秀吉、床几から立っても五しゃくせいぜいしかあるまい。それでいて、こんな大きな城をつくって、まだじぶんの住居すまいにはせまいような顔をしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
証文しょうもん期限きげんが切れたあくる日——この金はこの季節きせつの花の売り上げでしはらわれるはずであったから——全身まっ黒な服装ふくそうをした一人の紳士しんしがうちへ来て、いんをおした紙をわたした。
わかおんなひとは、わかいりっぱな服装ふくそうをした紳士しんしといっしょにっていたのでした。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は財力もきるといっしょに白痴はくちのようになって行衛ゆくえ知れずになった。「赫耶姫かぐやひめ!」G氏は創造する金魚につけるはずのこの名を呼びながら、乞食こじきのような服装ふくそうをして蒼惶そうこうとして去った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
顔が無いので、服装ふくそうと持物とによって見分ける外はないのだが、革帯の目印とまさかりかざりとによってまぎれもない弟の屍体をたずね出した時、シャクはしばらくぼうっとしたままそのみじめな姿をながめていた。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
服装ふくそうはモダーンでいきませう。」
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
実地じっちってるとうまいたって穏和おとなしいもので、わたくしたいへん乗馬じょうばきになりました。乗馬袴じょうばはかま穿いて、すっかり服装ふくそうがかわり、白鉢巻しろはちまきをするのです。