引止ひきと)” の例文
きびすかへしてツト馳出はせいづればおたかはしつて無言むごん引止ひきとむるおびはし振拂ふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちは御尤ごもつともなれども暫時しばし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どれでも煙草たばこのやうにしつとりとした一しゆうるほひがあし引止ひきとめるやうなちからはなくて一へばすぐはひになつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とよ何分なにぶんよろしくと頼んでおたき引止ひきとめるのを辞退じたいしていへを出た。春の夕陽ゆふひは赤々と吾妻橋あづまばしむかうに傾いて、花見帰りの混雑を一層引立ひきたてゝ見せる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
下剃したぞり一人ひとりをおいてられたのでは、家業かぎょうさわるとおもったのであろう。一張羅ちょうら羽織はおりを、渋々しぶしぶ箪笥たんすからしてたおはなは、亭主ていしゅ伝吉でんきちそでをおさえて、無理むりにも引止ひきとめようとかおのぞんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
友人にことわって自分だけは帰ろうとしたが、友人が無理に引止ひきとめるので、仕方なしに、そのよいはまだ早かったが、三階の一番すみの部屋で、一人寝ていると、外もそろそろにぎやかになって来たようだが
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
芸者なんぞになつちやいけないと引止ひきとめたい。長吉ちやうきちは無理にも引止ひきとめねばならぬと決心したが、すぐそばから、自分はおいとに対しては到底たうていそれだけの威力ゐりよくのない事を思返おもひかへした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
町子まちこにはかにもののおそろしく、たちあがつて二あしあし母屋おもやかたかへらんとたりしが、引止ひきとめられるやうに立止たちどまつて、此度このたび狛犬こまいぬ臺石だいいしよりかゝり、もれ坐敷ざしきわさぎをはるかにいて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すこしでも余計よけい引止ひきとめようと、あせるばかりであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なん御覽ごらんじてなんとおうらみなさるべきにやぎしゆき邂逅かいごうふたつなき貞心ていしんうれしきぞとてホロリとしたまひしなみだかほいまさきのこるやうなりさりながらおもこゝろ幽冥ゆうめいさかひにまではつうずまじきにや無情つれなかなしく引止ひきとめられしいのち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きちさんは長吉ちやうきちそで引止ひきとめて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ながうとはまをしませぬまをしあげたきこと一通ひととほりとことばきれ/″\になみだみなぎりて引止ひきとむるかひなほそけれど懸命けんめいこゝろ蜘蛛くも千筋ちすぢ百筋もゝすぢちからなきちからはらひかねて五尺ごしやくなよ/\となれどわざ荒々あら/\しく退けてお人違ひとちがひならん其樣そのやうおほうけたまはるわたくしにはあらずいけはたよりおともせし車夫しやふみゝにはなんのことやら理由わけすこしもわかりませぬ車代しやだいたま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)