巡査おまわり)” の例文
『始めっからそうと分ってれば何でもなかったんですけれど——。一時は吃驚びっくりして、大騒ぎしたんですよ。巡査おまわりさんが来るやら——』
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
あくる朝早く駐在の巡査おまわりさんが来て調べたら、たわらを積んで行ったらしい車の輪のあとが、雨あがりの土にハッキリついていた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
巡査おまわりさんは、小僧こぞうさんのかおをのぞきこむようにして、なにかたずねていたが、少年しょうねん言葉ことばは、そばにいるものにさえきとれませんでした。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
巡査おまわりさんに咎められましたのは、親父おやじ今がはじめてで、はい、もうどうなりますることやらと、人心地ごこちもござりませなんだ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえば猛獣が雷鳴を怖れてそのたてがみの地に敷くばかり頭を垂れた時のように、「巡査おまわりが来た!」
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
巡査おまわりがまだ遠くの方からほこでもってそれを指し示しながら、「おい、何か落っこちたぞ、拾いたまえ!」と注意したので、イワン・ヤーコウレヴィッチはまたもや鼻を拾いあげて
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
この広い家に年のいかないもの二人きりであるが、そこは巡査おまわりさんも月に何度かしか回って来ないほどの山間やまあい片田舎かたいなかだけに長閑のんきなもので、二人は何の気も無く遊んでいるのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「何ですって。人殺しがあったと訴えているのに、巡査おまわりさんが、来られないんですか」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
只今ではそういう事は出来ません、直ぐに巡査おまわりがまいりまして、ハアこりゃア分署へ参れ、なんと申しますから中々出来ませんが、昔は大家たいけ程こういう事をされると困ったもので
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それでは、」と年上の方は恐る恐る言った、「巡査おまわりさんもこわくないんですか。」
いつ巡査おまわりに見つかるかしれない。そこで、俺はうまいことを考えてあったのだよ。隠し場所をね。……巡査だろうが刑事だろうが、こいつにはお気がつくまい。ホラ、君、見てごらん。
白昼夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
女の身体というものは、へえ油断がならねえ。あれで血の道でも起ってからに、万一もしもの事が有って見ろ。これが巡査おまわりさんの耳へへいったものならお前はまあどうする気だぞい——痴児たわけめ。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何度も巡査おまわりさんに捕まえられ、訊問じんもんされましたが、その都度うまく云い逃れました、友田さんのためにきわどい芸当も随分とやったものです、大方臭い飯を食うところだったのです、その後
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
さいはひの巡査おまわりさまにうちまでいたゞかば我々われ/\安心あんしん此通このとほりの子細しさい御座ござりますゆゑすぢをあら/\をりからの巡査じゆんさかたれば、職掌しよくしようがらいざおくらんとらるゝに、いゑ/\おくつてくださらずともかへります
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
帰りのおそくなる事をもお糸の方がかえって心配しなかった。知らない道に迷っても、お糸は行ける処まで行って御覧よ。巡査おまわりさんにきけば分るよといって、かえって面白そうにずんずん歩いた……。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あの巡査おまわりさんが途中まで行くから、一緒に行らっしゃい」
黒い驢馬と白い山羊 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
巡査おまわりの姿が、ずッと出た時、はじめて我に返ったか、どさくさ紛れに影が消えたそうですが、どこまで乱脈だか分りません。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
労働者ろうどうしゃは、少年しょうねんっているお菓子かしはいっているはこを、つとにんは、自転車じてんしゃを、そして、巡査おまわりさんは、小僧こぞうをだくようにして、つれていきました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は眼を皿のようにして、自分の前に立っている巡査おまわりの顔を見つめた。相手の厚ぼったい唇と頬の上にろうそくの灯がチラチラふるえていた。「ど、どうして見つかりましたか?」
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
の執念深いと申すのは恐しいもので、よく婦人が、嫉妬のために、ちらし髪で仲人の処へ駈けてく途中で、巡査おまわり出会でっくわしても、少しも巡査が目に入りませんから、突当るはずみに
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幸ひの巡査おまわりさまに家まで見て頂かば我々も安心、この通りの子細で御座りますゆゑと筋をあらあら折からの巡査に語れば、職掌がらいざ送らんと手を取らるるに、いゑいゑ送つて下さらずとも帰ります
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
起こして、六人ともつかまえさしてやるよ、巡査おまわりを呼んでやるよ。
「——あッ、巡査おまわりさんですね」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうでなくって、一人も乗客のりてが散らずに居りゃ、私達わっしだちだって関合かかりあいは抜けませんや。巡査おまわりが来て、一応しらべるなんぞッて事になりかねません。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女かのじょは、銀行ぎんこうまえへその巡査おまわりさんを案内あんないしました。このときは、すでに四、五にん小僧こぞうさんのまわりにっていました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
大丈夫でいじょうぶだよ、時々わしらが寒くって火を焚く事があるが、巡査おまわりがこれなんだ、其処そこで火を焚いて、消さないか、と云うから、へいあんまり寒うございますから火を焚いてあたって居りますが
ぼうは、きたみちわすれてしまったのだろう。無理むりもないことだ。なに、もうすこしいったら巡査おまわりさんがいるだろう。」
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
夜のあけ方には、派出所の巡査おまわり檀那寺だんなでら和尚おしょうまで立ち会わせるという狂い方でございまして。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それも燈火あかりがなくては水上の巡廻船にとがめられる恐れがありますから、漁師が夜網よあみなど打ちにまいるとき使う、巡査おまわりさんが持っていらっしゃる角燈かくとうのようなものまで注意して持ってきているから
「よし、よし、巡査おまわりさんのところへはつれてゆかない。おじいさんが、おうちへつれていってやるからくのじゃない。ほら、みんながわらっているぞ。」
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこへもやらぬ監禁同様という趣で、ひとまず檀那寺まで引き上げることになりましたが、証拠じょうこだと言い張って、嫁に衣服きものを着せることをきませんので、巡査おまわりさんが
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査おまわりさんはふしぎそうにおはるのかおていましたが、おはるが今朝けさからのはなしをしてきのどくでならないからといいますと、巡査おまわりさんもうなずきながら
朝の公園 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうしていくら稼いでもその日を越すことができにくうござりますから、自然なりなんぞも構うことはできませんので、つい、巡査おまわりさんに、はい、お手数をけるようにもなりまする
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おはるがおつかいにると、公園こうえんのそばで子供こどもたちが、いまルンペンらしいおとこが、たおれていたのを巡査おまわりさんがつれていったとはなしていたので、おはるは
朝の公園 (新字新仮名) / 小川未明(著)
迷惑や気の毒を勘酌しんしゃくして巾着切が出来るものか。真人間でない者に、おめえ、道理を説いたって、義理を言って聞かしたって、巡査おまわりほどにも恐くはねえから、言句もんくなしに往生するさ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おじいさんは、きゅうにかわいさをしました。また、巡査おまわりいて、した子供こどもておかしくなりました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつかお巡査おまわりさんの来なすった朝、覚悟が有って長棹ながざおに掛けてから門傍かどばたへも寄せつけない。それを怨んで、未練も有って、穴から出たり入ったり、ここいらつけ廻しているに違いない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査おまわりさんにとどけて、そのわるいことをしたやつしばってもらうんです。あなたは、なにかぬすまれたんですか。」
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一杯になる胸を掻破かきやぶりたいほど、私が案ずるよりあのの容体は一倍で、とうとう貴方、前後が分らず、厭なことを口走りまして、時々、それ巡査おまわりさんが捕まえる、きゃっといって刎起はねおきたり
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さむいのになにもたべないので、おなかがすいてたおれたんだって、巡査おまわりさんがいっていたよ。だから、にはしないだろう。」と、その子供こどもはこたえました。
朝の公園 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うしろ手にくくりあげると、細引を持ち出すのを、巡査おまわりしかりましたが、叱られるとなおたけり立って、たちまち、裁判所、村役場、派出所も村会も一所にして、姦通かんつうの告訴をすると、のぼせ上がるので
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あなたは、巡査おまわりさんにいってしばったほうがいいか、また堪忍かんにんしてやったほうがいいか、どちらがいいとおもいますか。」と、先生せんせいは、今度こんど反対はんたいにおみよにかえしました。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「私は巡査おまわりさんが見えたからそれで助かったと思いますよ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
交番の巡査おまわりさんに怒鳴られたって人なんでございますもの。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よう、巡査おまわりごとをしようよ、よう、可笑おかしくッてよ。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あら、巡査おまわりさんが来ましたよ」
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「厭ですよ、あれ、巡査おまわりさん。」
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査おまわりさんが真面目まじめな顔をして
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)