屈竟くつきやう)” の例文
年少としわかくて屈竟くつきやうきやくは、身震みぶるひして、すつくとつて、内中うちぢうめるのもかないで、タン、ド、ドン!との、其處そこしとみけた。——
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
Kのをぢさんも不運に生れた一人で、こんな相談相手に選ばれるには屈竟くつきやうの人間であつた。をぢさんは無論喜んで引受けた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
戦の潮合しほあひを心得た将門は、くつわつらね馬を飛ばして突撃した。下野勢は散〻に駈散けちらされて遁迷ひ、余るところは屈竟くつきやうの者のみの三百余人となつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すべての霊性的生命は此処を辞して去るべし。人間を悉く木石の偶像とならしむるに屈竟くつきやうの社殿は、この狭屋なるべし。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
友信は穗の長さ二尺六寸餘、青貝の柄の長さ七尺五寸二分ある大身のやりくまの皮の杉なりのさやめたのを持たせ、屈竟くつきやうの若黨十五人を具して舟を守護した。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
兩人は是ぞ屈竟くつきやうの幸ひ此をりにこそ我々が望みを達せんと竊に悦び猶彼是と心を配りしが今宵こよひは是非共過さじと女房にも此事を話し其方は御裏門うらもんに待受て藤三郎樣の御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『そは時頼のぶんに過ぎたる仰せにて候ぞや。現在足助あすけ二郎重景など屈竟くつきやうの人々、少將殿の扈從こしようには候はずや。若年じやくねん未熟みじゆくの時頼、人にまさりし何ののうありて斯かる大任を御受け申すべき』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
夜店よみせのさかりにては、屈竟くつきやうわかものが、お祭騷まつりさわぎにてる。土地とち俳優やくしや白粉おしろいかほにてことあり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見て心中に點頭うなづき時分はよしと獨り微笑ほゝゑあたりを見廻せばかべに一筋の細引ほそびきを掛て有に是屈竟くつきやう取卸とりおろし前後も知らず寢入ねいりしばゝが首にまとひ難なくくゝり殺しかね認置みおきし二品をうばとり首に纒ひし細引ほそびき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんだ。なんだ。地震ぢしん火事くわじか、とさわぐと、うまだ、うまだ。なんだ、うまだ。ぬしのないうまだ。はなれうまか、そりや大變たいへんと、屈竟くつきやうなのまで、軒下のきしたへパツと退いた。はなうまには相違さうゐない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かたりければ夫こそ屈竟くつきやうの事なりとて兩人相談さうだんうへ同く十七年十月二十八日の夜あめは車軸を流し四邊あたり眞闇まつくらなれば是ぞ幸ひなりと兩人は黒裝束くろしやうぞくに目ばかり頭巾づきんにて島屋の店へ忍び入金箱かねばこに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
酒代さかてをしまぬ客人きやくじんなり、しか美人びじんせたれば、屈竟くつきやう壯佼わかものいさみをなし、曳々聲えい/\ごゑはせ、なはて畦道あぜみちむらみちみにんで、三みちに八九時間じかん正午しやうごといふのに、たうげふもと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝よくてうまだ薄暗うすぐらかつたが、七時しちじつたくるまが、はずむ酒手さかてもなかつたのに、午後ごご九時くじふのに、金澤かなざは町外まちはづれの茶店ちやみせいた。屈竟くつきやうわかをとこふでもなく年配ねんぱい車夫くるまやである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屈竟くつきやうなる壯佼わかものしたるが、くるまゆるやかに、蜘蛛手くもでもり下道したみちを、ひといへたづなやみつとおぼしく、此處こゝ彼處かしこ紫陽花あぢさゐけりとところかならず、一時ひとときばかりのあひだ六度むたび七度なゝたびであひぬ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)