大阪おおさか)” の例文
諭吉ゆきちは、そのおとうさんのすえっとして大阪おおさかまれました。いちばんうえにいさんの三之助さんのすけで、そのしたに三にんのねえさんがありました。
針屋はりやへやってくれるん。そして十八になったら大阪おおさか奉公ほうこうにいって、月給みんな、じぶんの着物買うん。うちのお母さんもそうしたん
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
日本では、大阪おおさかなり神戸こうべなりからちょっと四国へ渡るにも、船に乗れば、私たちは必ず船員から姓名、住所、年齢等をきかれる。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
あるおとこは、一にちのうちに、五えんばかりもうけました。あるおとこはこの一週間しゅうかんうちに、東京とうきょうから、大阪おおさかほうまでまわってきました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
京の祇園会ぎおんえ大阪おおさか天満てんま祭りは今日どうなっているか知らないが、東京の祭礼は実際においてほろびてしまった。しょせん再興はおぼつかない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
函館にあったことがまたいつ東京大阪おおさかにないとも限らぬ。考え得らるべき最悪の条件の組み合わせがあすにも突発しないとは限らないからである。
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
摂津せっつ大阪おおさかにある四天王寺してんのうじ大和やまと奈良ならちか法隆寺ほうりゅうじなどは、みな太子たいしのおてになったふるふるいおてらでございます。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ハハハ……、だから帰る途中大阪おおさかで、事件の最初からの新聞をすっかり揃えて貰って、汽車の中で読み耽って来たのさ
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おとうさんなぞが若かった時分は、大阪おおさかから京へ上るというと、いつもあの三十石で、すしのごと詰められたもンじゃ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
やはり浦上の山里村やまざとむらに、おぎんと云う童女が住んでいた。おぎんの父母ちちはは大阪おおさかから、はるばる長崎へ流浪るろうして来た。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大阪おおさか城の残党や、天草あまくさのキリシタン宗徒で、いのちのつづくかぎり、逃げまわっている者もずいぶんあることだろう
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
煤煙ばいえん臥床ふしどに熟睡していたグレート大阪おおさかが、ある寒い冬の朝を迎えて間もないころ、突如として或る区画に住む市民たちの鼻を刺戟した淡いいやな臭気こそ
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
元文げんぶん三年十一月二十三日の事である。大阪おおさかで、船乗り業桂屋太郎兵衛かつらやたろべえというものを、木津川口きづがわぐちで三日間さらした上、斬罪ざんざいに処すると、高札こうさつに書いて立てられた。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
芸者が来ると、蝶子はしかし、ありったけの芸を出し切って一座をさらい、土地の芸者から「大阪おおさかの芸者衆にはかなわんわ」と言われて、わずかに心がなぐさまった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
大阪おおさか俳優中村福円なかむらふくえん以前もと住居すまいは、鰻谷うなぎだにひがしちょうであったが、弟子の琴之助ことのすけが肺病にかかり余程の重態なれど、頼母たのもしい親族も無く難義なんぎすると聞き自宅へ引取ひきとりやりしが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
金八が或時大阪おおさかくだった。その途中深草ふかくさを通ると、道に一軒の古道具屋があった。そこは商買の事で、ちょっと一眼見渡すと、時代蒔絵じだいまきえの結構なあぶみがチラリと眼についた。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次に静岡しずおか、次に浜松はままつ、それからさらに大阪おおさか神戸こうべ京都きょうと金沢かなざわ長野ながのとまわって、最後さいご甲府市こうふしへ来たときは、秋もぎ、冬もし、春も通りぬけて、ふたたび夏が来ていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
蒲団の上に足をのばしながら、何か近頃この街で珍らしくかわった話は無いか? 私が問うと、老按摩あんま皺首しわくび突出つんだして至って小声に……一週間前にしかもこの宿で大阪おおさか商家あきゅうどの若者が
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
まもなく、かれはゆうべの夢を実行して、京から大阪おおさか、大阪から奈良ならの空へと遊びまわっている。町も村も橋も河も、まるで箱庭はこにわのような下界げかいの地面がみるみるながれめぐってゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仮令たとえ江戸えどいく千のおんながいようともうちの太夫たゆうにばかりは、あしさきへもらせることではないと、三年前ねんまえ婚礼早々こんれいそうそう大阪おおさかってときから、はらそこには、てこでもうごかぬつよこころがきまっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「尾の道の町に、何か力があっとじゃろ、大阪おおさかまでも行かいでよかった」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
憶出おもいだせばこの琴はまだわたしが先生の塾にった時分何時いつぞや大阪おおさかに催された演奏会に、師の君につれられて行く時、父君ちちぎみわたしの初舞台のいわいにと買いたまわれたものだ、数千すせん人の聴客をもって満たされた
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
復一は関西での金魚の飼育地で有名な奈良なら大阪おおさか府県下を視察に廻った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これから大阪おおさかまであるこうというのです。それでもふねよりははやく大阪おおさかにつくことがわかったので、ふねからおろしてもらったのでした。
この物語は、最初余が、大正五年九月十一日より同年十二月二十六日にわたり、断続して大阪おおさか朝日新聞に載せてもらったそのままのものである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
君は大阪おおさかにいて何も知らないけれど、君のあの御見舞の言葉は、偶然とは思われぬ程、恐ろしく適切であったのだ。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
島へ渡ったのは、たぶん大阪おおさか高知こうち間飛行の話の時に思い浮かべた瀬戸内海せとないかいの島が素因をなしているかと思われる。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪おおさかへ回されることであった。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
諭吉ゆきちは、おかあさんに、京都きょうと大阪おおさかなどを、ゆっくり見物けんぶつさせて、よろこばせてあげようとおもっていただけに、がっかりしました。
箱根はこねからこっちは、本当に始めてなんです。大阪おおさかで教育を受けて、これまであちらで働いていたものですから」
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
前々日A研究所の食堂で雑談の際に今度政府で新計画の航空路のうわさが出て、大阪おおさかから高知こうちまでたった一時間五十五分で行かれるというような事を話し合った。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば去月(十一月)十九日発のルーター電報を見ると(同二十日の『大阪おおさか朝日新聞』掲載)
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
近ごろ大阪おおさか医科大学病理学教室の淡河おうご博士が「黒焼き」の効能に関する本格的な研究に着手し、ある黒焼きを家兎いえうさぎに与えると血液の塩基度が増し諸機能が活発になるが
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大阪おおさかの方に少し心当りが出来たものですから、主人は昨夜ゆうべ用もないのにあちらの支店へ出かけますし、私は私で、今朝からこうして知り合いという知り合いを尋ね歩いているのですよ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今度の大阪おおさか高知こうち県東部の災害は台風による高潮のためにその惨禍を倍加したようである。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
借り手は大阪おおさかから来た人で、怪しい噂を少しも知りませんでしたし、ビルディングの事務所にしては、少しでも室料のかせぎになることですから、何も云わないで、貸してしまったのです。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうして東京、横浜よこはま沼津ぬまづ静岡しずおか浜松はままつ名古屋なごや大阪おおさか神戸こうべ岡山おかやま広島ひろしまから福岡ふくおかへんまで一度に襲われたら、その時はいったいわが日本の国はどういうことになるであろう。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)