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唇
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くち
ふりがな文庫
“
唇
(
くち
)” の例文
きらきらと光る眼で、富岡の
唇
(
くち
)
もとを睨みつけながら。——富岡は静かに蒲団を片寄せて、ゆき子の膝に両手をかけてうめくやうに
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
炎に似た夢は、袈裟の
睫毛
(
まつげ
)
をふさがせ、閉じたる
唇
(
くち
)
を、舌もてあけ、
袿
(
うちぎ
)
のみだれから白い
脛
(
はぎ
)
や、あらわな
乳
(
ち
)
のふくらみを見たりする。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かなりひと目を
惹
(
ひ
)
く顔だちで、むしろ美男といってもいいくらいであるが、眼つきや
唇
(
くち
)
もとになんとなく人を
蔑
(
さげす
)
むような色がある。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
父は子供をあやすように母の
唇
(
くち
)
に茶碗を押しつけ無理にも飲まそうとしたが、母はかぶりを振って固く
拒
(
こば
)
んで飲まなかったそうである。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
男も一息に、しかし幾らか
緩
(
ゆっ
)
くり加減に
飲
(
や
)
り、
不味
(
まず
)
そうに手の甲で
唇
(
くち
)
を拭いて、何か考え事でもするように、
洋酒
(
コップ
)
の底をいじくりながら
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
〽圓遊すててこ、談志の釜掘り、
遊三
(
ゆうざ
)
のよかちょろ、
市馬
(
いちば
)
の牡丹餅——今もこういう寄席の
竹枝
(
こうた
)
が、時おり、
児童
(
こども
)
の
唇
(
くち
)
にのぼる。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
ガラリと
格子
(
こうし
)
が開きました。銭形平次が帰って来たのです。
盃
(
さかずき
)
を膳へ置くかと思った八五郎の手は、意地汚くそのまま
唇
(
くち
)
へ——。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうすれば、鼻がどうの、
唇
(
くち
)
がどうのと附けたす世話は更にいらぬ。一遍に頭の天辺から足の爪先まですっかりそれと分ってしまうのだ!
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
こう云いながら彼は女の顔から体の
恰好
(
かっこう
)
に注意した。すこし受け
唇
(
くち
)
になった整った顔で、細かな髪の毛の多い頭を心持ち左にかしげていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「不味いかも知れん。」老人は
唇
(
くち
)
の
端
(
はた
)
に心持微笑を浮べた。「だが、
朕
(
わし
)
は愛国心で酒を飲むといふ事を知つとるからな。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
きっと
唇
(
くち
)
を結んで、いっしょう懸命なときにするまじめな顔をつくると、前かがみになって、熱くなって歩きはじめた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夫人は真っ黄と見えるような顔をして、締まりのない
唇
(
くち
)
をもぐもぐさせながら、体をあちらこちらへ揺すぶっていた。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
彼女はバグリオーニの解毒剤をその
唇
(
くち
)
にあてると、その瞬間にラッパチーニの姿が入り口から現われて、大理石の噴水の方へそろそろと歩いて来た。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
それに、この浪人の
唇
(
くち
)
から漏れた、河原者という一言がぐっと胸にこたえたので、
平謝
(
ひらあやま
)
りに謝るのもいまいましかったが、虫を押えて、一歩進み出た。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
その言葉を、あの可愛いい紅い
唇
(
くち
)
から、幾月聞かなかったことだろう。何十年も聞かなかったような気がする……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そしてその女の癖で
鮮
(
あざや
)
かな色した
唇
(
くち
)
を少し
歪
(
ゆが
)
めたようにして
眩
(
まぶ
)
しそうに
眸
(
ひとみ
)
をあげて
微笑
(
え
)
みかけながら黙っていた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
……うむ、お前の眼付きがいい。姦婦の眼付きそっくりだ。うむ、お前の
唇
(
くち
)
付きもいい。姦婦の唇付きそっくりだ
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのとき、やはり、心持ち
唇
(
くち
)
をあけてみていた、あなたの小さい黄色い顔が、ちらっとぼくの
網膜
(
もうまく
)
を
掠
(
かす
)
めました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
私は心安だてにこう言いながら、彼女のグラスにシャンパンを一杯に注いでやると、彼女はちょっとそれに
唇
(
くち
)
をつけて、わたしのほうに感謝の眼を向けた。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
私でさへ
彼
(
あ
)
の
唇
(
くち
)
を引ツ裂いてあげたい程に思ひましたもの、
貴嬢
(
あなたさま
)
能く御辛抱なされました——其れがマア、不審では御座いませぬか、一週間
経
(
た
)
つや経たずに
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
つまらない恨みはみな消えてしまった。彼も同じく喜び勇んでその手を握りしめ、それに
唇
(
くち
)
づけをした。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして、幽かに
唇
(
くち
)
を歪めて
微笑
(
ほほゑ
)
んで見た。其処にも此処にも、幽かに微笑んだ生徒の顔が見えた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「まあ、ひどい風だことねえ。」といって、泣いているかねちゃんを自分の傍に引き寄せて、
妾
(
あたし
)
の身体は濡れていてよ、と温かい
唇
(
くち
)
をかねちゃんの薔薇色の
頬辺
(
ほっぺた
)
にあてて
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼が五六年前に別れたうけ
唇
(
くち
)
の女房と、その女房と関係があつたと云ふ酒のみの法師とも、
屡
(
しばしば
)
彼等の話題になつた。その上、どうかすると、彼等は
甚
(
はなはだ
)
、
性質
(
たち
)
の悪い
悪戯
(
いたづら
)
さへする。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最初、
唇
(
くち
)
の
周囲
(
ぐるり
)
がムズ痒いような気持で、サテは
少
(
ちっ
)
と中毒ったかナ……と思ううちに指の
尖端
(
さき
)
から不自由になって来ます。立とうにも腰が抜けているし、物云おうにも声が出ん。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
二日二晩酒に浸っていた松川との結婚の夜の
名残
(
なご
)
りらしかったが、彼女は多分草葉を連れて来た時もしたように、彼をその部屋に見るのが
面羞
(
おもは
)
ゆそうに、そっと寄って
唇
(
くち
)
づけをすると
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
泥水の色は毒薬を服した死人の
唇
(
くち
)
よりも、なお青黒く、気味悪い。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
唇
(
くち
)
うつしに
飯
(
いひ
)
食む文鳥の
嘴
(
はし
)
紅
(
あか
)
く与ふる
都度
(
つど
)
に啼き乞ひて
愛
(
かな
)
し
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
みちのべにさゝ
紅梅
(
こうばい
)
もいとし子が夢にほゝゑむ
唇
(
くち
)
かとぞ見る
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
手真似につれては、
唇
(
くち
)
も動かしてゐるのでしたが
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
すると貴君の
唇
(
くち
)
の
上
(
へ
)
の、
単純旋律
(
カヷチナ
)
やがて霧散する。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
睦言を耳に聞く力も失せつ、
唇
(
くち
)
さし寄せて
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「
眞
(
まこと
)
」の
唇
(
くち
)
はかしこみて「
望
(
のぞみ
)
」の
眼
(
まなこ
)
、
天
(
そら
)
仰
(
あふ
)
ぎ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
兄は
眞青
(
まつさを
)
の葱のさきしんと眺めて、
唇
(
くち
)
あてて
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
なにの愁ひをくれなゐの
唇
(
くち
)
もきよらに
故郷の花
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
かえでちょっと
唇
(
くち
)
をつけて下に置く。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
土器
(
かわらけ
)
は
唇
(
くち
)
かえし、
謎
(
なぞ
)
の言葉で——
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
ばく/″\
唇
(
くち
)
を動かした。
殴る
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
くさぶえを やさしき
唇
(
くち
)
へ
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
唇
(
くち
)
には京の
下
(
しも
)
町の
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
如何
(
いかが
)
あらんと、事の成行きを、息つまらせて見ていた側臣たちの眼は、期せずして、信長の顔いろとその
唇
(
くち
)
もとにあつめられていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ゆき子は怒りで
唇
(
くち
)
もきけなかつた。伊庭の
猛
(
たけだけ
)
々しい態度に吐き気が来た。なる事ならば、このまゝ消えてしまひたい気持ちだつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
やがて、とある四つ角へさしかかると、彼女は怪訝そうに立ちどまって、指を一本あげて
唇
(
くち
)
を半開きにしたまま、じっと聞き耳を
聳
(
た
)
てた。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
お藤は大したやつれもなく、母親に何かと
口説
(
くど
)
かれておりますが、美しい顔を
俯向
(
うつむ
)
けて
田螺
(
たにし
)
のごとく
唇
(
くち
)
を閉じている様子です。
銭形平次捕物控:039 赤い痣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
眉宇
(
びう
)
と
唇
(
くち
)
もとには不屈な性格があらわれている、……しずかに座った通胤は、そのするどい眼をあげてきっと父を見あげた。
城を守る者
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その
唇
(
くち
)
や手の動き具合よりみれば、彼女たちは確かに何か活気のある話をしているようであった。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
お宮は五円札を一枚やると
嬉
(
うれ
)
しさを押し包むように
唇
(
くち
)
をきゅっと引き締めて入口まで送って出た私の方を
格子戸
(
こうしど
)
を閉めながらさも思いを残してゆくような
嬌態
(
しな
)
を見せて
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
憂色、
面
(
おもて
)
に現然たる議長が何やらん
唇
(
くち
)
を開かんずる
刹那
(
せつな
)
「
否
(
ノー
)
ツ」と一声、巨鐘の如く席の中央より響きたり、
看
(
み
)
よ、菱川硬二郎は
夜叉
(
やしや
)
の如く口頭より
焔
(
ほのほ
)
を吐きつゝ突ツ起ちてあり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
と、言って、今は、まるで放心したように、目をみはり、
唇
(
くち
)
を開けて、うっとりと突ッ立ってしまった相手を眺めたが、急に、ぐっと編笠に
蔽
(
おお
)
われた顔を突き出して、
囁
(
ささや
)
くように——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
小さい
唇
(
くち
)
をとがらせ、「うち、つまらんわア、もう男のひとと、遊んではいけない言うて、
監督
(
かんとく
)
さんから説教されたわ。おんなじ船に乗ってて、口
利
(
き
)
いてもいかん、なんて、
阿呆
(
あほ
)
らしいわ」
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
“唇”の意味
《名詞》
(くちびる)口腔の前の境をなす上下2個の弁膜であって口を囲むもの。上唇、下唇の二つに分けられ、主として筋肉及び皮膚粘膜より構成される。
(出典:Wiktionary)
“唇”の解説
唇(くちびる、脣)とは、哺乳類の口の回りにある器官である。解剖学的には口唇(こうしん)という。
(出典:Wikipedia)
唇
常用漢字
中学
部首:⼝
10画
“唇”を含む語句
紅唇
接唇
朱唇
唇頭
唇辺
御唇
口唇
下唇
上唇
唇紅
欠唇
唇元
唇歯
兎唇
唇許
唇歯輔車
丹唇
読唇術
唇形
片唇
...