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ほっ
ふりがな文庫
“
吻
(
ほっ
)” の例文
抱いて通ったのか、
絡
(
もつ
)
れて飛んだのか、まるで
現
(
うつつ
)
で、ぐたりと肩に
凭
(
よ
)
っかかったまま、そうでしょう……引息を
吻
(
ほっ
)
と深く、木戸口で
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
初めて
吻
(
ほっ
)
として、嬢は深い深い溜息を
吐
(
つ
)
いた。一昨日伯爵夫人を追跡したことから、
已
(
や
)
むを得ず警察局員に手錠をかけてもらったこと。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さすがに甚太郎も
吻
(
ほっ
)
とした。身を屈め手を延ばし二つの死骸へ触って見た。一人は咽喉を貫かれ、一人は胸板を突き通されている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
混みあう階段や混濁したホームをくぐり抜けて、彼を乗せた電車が青々とした野づらに、出ると、窓から吹込んでくる風も
吻
(
ほっ
)
と
爽
(
さわ
)
やかになる。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「どなた!」と、まだ聞いたことのない卵のように円いなまめかしい声で呼ばれると、慌てて門へ
馳
(
か
)
け出しながら、
吻
(
ほっ
)
と
一
(
ひ
)
と
息
(
いき
)
つくのであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
「逃げたのか、取られたのか、いなくなってしまった」と、見えなくなった
顛末
(
てんまつ
)
を語って
吻
(
ほっ
)
と
嘆息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
文三は
吻
(
ほっ
)
と一息、寸善
尺魔
(
せきま
)
の世の習い、またもや御意の変らぬ内にと、
挨拶
(
あいさつ
)
も
匆々
(
そこそこ
)
に起ッて坐敷を立出で二三歩すると、
後
(
うしろ
)
の
方
(
かた
)
でお政がさも聞えよがしの
独語
(
ひとりごと
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
もう五時頃であろうか、様々な人達の
物凄
(
ものすご
)
い寝息と、蚊にせめられて、夜中私は眠れなかった。私はそっと上甲板に出ると、
吻
(
ほっ
)
と息をついた。美しい夜あけである。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
花弁
(
はなびら
)
が一輪ヒラ/\/\と舞込みましたのをお嬢さんが、斯う持った……
圓朝
(
わたくし
)
が
此様
(
こん
)
な手附をすると、
宿無
(
やどなし
)
が
虱
(
しらみ
)
でも取るようで
可笑
(
おかし
)
いが、お嬢さんは
吻
(
ほっ
)
と溜息をつき
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
やがて
吻
(
ほっ
)
という息を
吐
(
つ
)
いてみると、
蘇生
(
よみがえ
)
った様に
躯
(
からだ
)
が楽になって、女も
何時
(
いつ
)
しか、もう
其処
(
そこ
)
には居なかった、
洋燈
(
ランプ
)
も
矢張
(
やはり
)
もとの如く
点
(
つ
)
いていて、本が
枕許
(
まくらもと
)
にあるばかりだ。
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
大津は梅子の顔を横目で見て、「またその内」とばかり、すたこらと門を出て
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いた。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
吻
(
ほっ
)
と安心して、彼はさきほど出逢ったお化けのことを相手に話しだす。すると、相手は「これはこんな風なお化けだろう」という。見ると、相手はさっきのお化けとそっくりなのだ。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
髪の色こそ似ているが、
確
(
たしか
)
に人違いだ、我父では無い。市郎は
吻
(
ほっ
)
とした。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一あめ、さっと聞くおもい、なりも、ふりも、うっちゃった容子の
中
(
うち
)
に、争われぬ
手練
(
てだれ
)
が見えて、こっちは、
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いた。……
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
カ氏との用事も思いのほか早く済んでしまったので、何ということなしに私は
吻
(
ほっ
)
とした気持を感じて少年の
面
(
おもて
)
に目を移した。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それから母親は近所で氷の
塊
(
かたま
)
りを
頒
(
わ
)
けてもらって来た。氷があったので彼は
吻
(
ほっ
)
と救われたような気がした。氷は
硝子
(
ガラス
)
の器から妻の唇を潤おした。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
幸
(
さいわい
)
に赤児は、やぎ乳を
好
(
す
)
いた。みんなは
吻
(
ほっ
)
と一ト安堵をした。生れてからずッと腹をコワしていた赤児は、やっとすこしばかり腹の方がなおりかかった。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
戸外を歩いていると
吻
(
ほっ
)
とする。どの往来も打水がしてある。今日は逢初の縁日だと、とある八百屋の店先きで人が話しあっている。バナナがうまそうだし、西瓜も出ている。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そのお勢の後姿を見送ッて文三は
吻
(
ほっ
)
と
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いて
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と言って彼は
吻
(
ほっ
)
と
嘆息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
き
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お誓は榎の根に、今度は
吻
(
ほっ
)
として憩った、それと
差
(
さし
)
むかいに、小県は、より低い処に腰を置いて、片足を前に、くつろぐ
状
(
さま
)
して
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて、先生は彼から二三番前の者にあてると、瞬間
吻
(
ほっ
)
としたような顔つきになる。先生は彼の気持は知っているのだ。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
当分家へ来ることは遠慮してもらわなければならぬと
咄嗟
(
とっさ
)
に決心していた胸の
閊
(
つか
)
えが跡形もなく消え失せて、私は電話口を抑えて
吻
(
ほっ
)
と深い溜息を
洩
(
も
)
らした。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
吻
(
ほっ
)
とする人生を得たいために、時には厭なこともやりかねない。このままな無頓着ではいられない。私にだって、そんな馬鹿馬鹿しい程の時がめぐって来るのだろうか……。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「わたくしも先刻から二階にどうも足音がしているような気がして、冴えて、ねむれないんですよ、そしたらあなたがまだ起きていらっしゃるんですもの、それでやっと
吻
(
ほっ
)
としたのですが……」
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と少し
言
(
ことば
)
が和らいで来たので、主税は
吻
(
ほっ
)
と
呼吸
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
いて、はじめて持扱った三世相を
懐中
(
ふところ
)
へ始末をすると、
壱岐殿坂
(
いきどのざか
)
の
下口
(
おりぐち
)
で、急な不意打。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ハイ」と秘書は困ったようにモジモジしていたが、それっきりまた私が頬杖を突いているのを見ると
吻
(
ほっ
)
としたように、書類を抱えて出て行ってしまったのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
淋しそうな女だが、とにかくああして帰って行く場所はあるのかと、何となしに彼は
吻
(
ほっ
)
とした。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
あそこまで見せなければならないこともないのに、フイに人目に立たないほどの
厭気
(
いやけ
)
で、唾を吐いた。が、すぐにその顔は毒のない、よく芸人にみるうすばかめいた微笑にかえられたので
吻
(
ほっ
)
とした。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
(同妻。)の
手巾
(
ハンケチ
)
の端を、湯呑に落して
素湯
(
さゆ
)
を
注
(
つ
)
いだ、が、なにも言わず、かぶりと飲むと、茶碗酒が得意の意気や、
吻
(
ほっ
)
と小さな息をした。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
久しぶりで重荷を下ろしたようにハシャイでいるカ氏の様子を見ると私も
他人事
(
ひとごと
)
ならず
吻
(
ほっ
)
とした。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
座蒲団
(
ざぶとん
)
も拾った。縁側の畳をはねくり返してみると、持逃げ用の
雑嚢
(
ざつのう
)
が出て来た。私は
吻
(
ほっ
)
としてそのカバンを肩にかけた。隣の製薬会社の倉庫から赤い小さな
焔
(
ほのお
)
の姿が見えだした。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
紅も散らない唇から、すぐに、
吻
(
ほっ
)
と息が出ようと、誰も皆思ったのが、
一呼吸
(
ひといき
)
の間もなしにバッタリと胴の間へ、島田を崩して倒れたんです。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
増×寺様でも快くお引受け下さいまして、
懇
(
ねんごろ
)
に
回向
(
えこう
)
をしておくから、もう何にも心配せずに安心してお帰りと仰せて下さいましたので、はじめて私どもも
吻
(
ほっ
)
といたしました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
結局、順一の
肝煎
(
きもいり
)
で、田舎へ一軒、家を借りることが出来た。が、荷を運ぶ馬車はすぐには
傭
(
やと
)
えなかった。田舎へ家が見つかったとなると、清二は
吻
(
ほっ
)
として、荷造に忙殺されていた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
するする
攀上
(
よじのぼ
)
って、長船のキラリとするのを死骸から抜取ると、
垂々
(
たらたら
)
と
湧
(
わ
)
く
血雫
(
ちしずく
)
を逆手に
除
(
と
)
り、山の
端
(
は
)
に腰を掛けたが、はじめて
吻
(
ほっ
)
と一息つく。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それでもやっと助かったなと人事ならず私も
吻
(
ほっ
)
としたが、ちょうどその時であった。
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
栄橋を渡ってしまうと、とにかく
吻
(
ほっ
)
として足どりも少し
緩
(
ゆる
)
くなる。鉄道の踏切を越え、
饒津
(
にぎつ
)
の堤に出ると、正三は背負っていた姪を叢に下ろす。川の水は
仄白
(
ほのじろ
)
く、杉の大木は黒い影を路に投げている。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
杖を
径
(
こみち
)
に
突立
(
つきた
)
て/\、
辿々
(
たどたど
)
しく
下闇
(
したやみ
)
を
蠢
(
うごめ
)
いて
下
(
お
)
りて、城の
方
(
かた
)
へ去るかと思へば、のろく
後退
(
あとじさり
)
をしながら、
茶店
(
ちゃみせ
)
に向つて、
吻
(
ほっ
)
と、
立直
(
たちなお
)
つて
一息
(
ひといき
)
吐
(
つ
)
く。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、やがて戻って来ると、用が済んで
吻
(
ほっ
)
としたといわんばかりの
面持
(
おももち
)
で膝掛けを引き寄せながら途端に彼女と眼が合った。にっこりと
靨
(
えくぼ
)
を刻んで、人を
逸
(
そら
)
さぬ調子で話しかけてくる。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
杖を
径
(
こみち
)
に突立て突立て、
辿々
(
たどたど
)
しく
下闇
(
したやみ
)
を
蠢
(
うごめ
)
いて下りて、城の
方
(
かた
)
へ去るかと思えば、のろく
後退
(
あとじさり
)
をしながら、茶店に向って、
吻
(
ほっ
)
と、立直って一息
吐
(
つ
)
く。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
後はもういかなる運命が襲い
蒐
(
かか
)
って来ようとも
厭
(
いと
)
わないのであったから、そう
怯々
(
びくびく
)
することもないのであったが、それでも昨夜の記事が出ていないということはさすがに私の心を
吻
(
ほっ
)
とさせた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
吻
(
ほっ
)
と一息つく間もない、
吹煽
(
ふきあお
)
らるる北海の荒浪が、どーん、どーんと、ただ
一処
(
ひとところ
)
のごとく打上げる。……歌麿の絵の
蜑
(
あま
)
でも、かくのごとくんば
溺
(
おぼ
)
れます。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
酔ってる処へ激しく動いたので、がっくり膝が抜けて
崩折
(
くずお
)
れようとして、わずかにこらへ、
掻挘
(
かいむし
)
るように壁に手を
縋
(
すが
)
って、顔を隠して
吻
(
ほっ
)
という息を
吐
(
つ
)
いた。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「大変でございますこと、」とお杉が思わず、さもいたわるように言ったのを聞くと、
吻
(
ほっ
)
とする
呼吸
(
いき
)
をついて
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「神月梓というんだよ。」といいながら手を向うへ
押遣
(
おしや
)
ったが、
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いて
俯向
(
うつむ
)
いた。学士はここで名乗った名が
太
(
いた
)
くも
汚
(
けが
)
れたように感じたのである。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吻
(
ほっ
)
と吹く酒の香を、横
状
(
ざま
)
に
反
(
そ
)
らしたのは、
目前
(
めさき
)
に
歴々
(
ありあり
)
とするお京の
向合
(
むきあ
)
った面影に、心遣いをしたのである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、
吻
(
ほっ
)
と今
呼吸
(
いき
)
をしたのはお蔦である。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銑吉は御堂の格子を入って、床の右横の
破欄間
(
やれらんま
)
にかかった、絵馬を
視
(
み
)
て、
吻
(
ほっ
)
と息を
吐
(
つ
)
きつつ
微笑
(
ほほえ
)
んだ。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もっともここに来る道で
谷中
(
やなか
)
から朝顔の鉢を配る荷車二三台に行逢ったばかりであるから、そのまま日傘を地の上へ投げるように置いて、お夏は
吻
(
ほっ
)
といきをついた。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“吻”の解説
吻(ふん、proboscis)とは、動物の体において、口あるいはその周辺が前方へ突出している部分を指す用語である。動物群によってその部位や役割はさまざまである。
(出典:Wikipedia)
吻
漢検準1級
部首:⼝
7画
“吻”を含む語句
接吻
口吻
吻合
吻々
吻々々々
吻々吻
吻喙
喉吻
尖吻熱舌
接吻泥棒
接吻禮
有吻類
脣吻
餓吻