向直むきなほ)” の例文
ゆめからめたおもひで、あつぼつたかつたかほでた、ひざいて、判然はつきり向直むきなほつたときかれいままでの想像さうざうあまりなたはけさにまたひとりでわらつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
無法むはふ水夫等すゐふら叱付しかりつけてつた人相にんさうわる船長せんちやう帽子ぼうしを、その鳶糸たこいと跳飛はねとばしたので、船長せんちやう元來ぐわんらい非常ひじやう小八釜こやかましいをとこ眞赤まつかになつて此方こなた向直むきなほつたが
其時そのとき彼は三千代にあやしげな花瓶はないけの掃除をさして、自分で、大事さうに買つてはなけて、三千代にも、三千代のあににも、とこ向直むきなほつてながめさした事があつた。三千代はそれを覚えてゐたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あゝ、いとも、」といつて向直むきなほつて、おしな掻潛かいくゞつてたすきはづした。なゝめに袈裟けさになつて結目むすびめがすらりとさがる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『あのね、おくさんにめづらしいお客樣きやくさまが……。』とつたまゝわたくしはう向直むきなほ
莞爾につこりして、草鞋わらぢさき向直むきなほつた。けむり余波なごりえて、浮脂きら紅蓮ぐれんかぬ、みづ其方そなたながめながら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんなは、とると、それは、夥間なかまはなしくらしく、しやがんだなりに、くるりと此方こつち向直むきなほつた、おびひざも、くな/\とたゝまれさうなが、咽喉のどのあたりはしろかつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
向直むきなほつて、元二げんじかほをじろりとるやうにしてまねき、とかたちしやがんだが、何故なぜ無法むはふにくかつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
腰掛こしかけあがんで、つき硝子窓がらすまどに、ほねいて凍付いてついてたのが、あわてて、向直むきなほつて、爪探つまさぐりに下駄げたひろつて、外套ぐわいたうしたで、ずるりとゆるんだおびめると、えり引掻合ひつかきあはせるとき
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちや外套氏ぐわいたうしつた。……向直むきなほつてくちけたが、わらひもしないで落着おちついたかほして
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふ、まともに坂上さかがみたいして、向直むきなほつたけれども、俯向うつむいたなりでかほげぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もすそをすらりと駒下駄こまげた踏代ふみかへて向直むきなほると、なかむかうむきに、すつとした襟足えりあしで、毛筋けすぢとほつた水髮みづがみびんつや。とけさうなほそ黄金脚きんあしの、淺黄あさぎ翡翠ひすゐ照映てりはえてしろい……横顏よこがほ見返みかへつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小笠原氏をがさはらしは、くるり向直むきなほつて、挙手きよしゆをしさうないきほひで
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
向直むきなほらうとして、またゴツン。おほほほゝ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
婦人ふじんは、はつきりと向直むきなほつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雪枝ゆきえきつ向直むきなほつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)