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前刻
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さっき
ふりがな文庫
“
前刻
(
さっき
)” の例文
ですから
何日
(
いつか
)
の何時頃、
此処
(
ここ
)
で見たから、もう一度見たいといっても、そうは
行
(
ゆ
)
かぬ。川の
流
(
ながれ
)
は同じでも、今のは
前刻
(
さっき
)
の水ではない。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いたたまれないで、逃げだしたかも判らないよ、
前刻
(
さっき
)
居室
(
いま
)
で新聞かなんか読んでたが、いないのだよ」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ト日があたって
暖
(
あたた
)
たかそうな、
明
(
あかる
)
い
腰障子
(
こししょうじ
)
の内に、
前刻
(
さっき
)
から静かに水を
掻廻
(
かきまわ
)
す
気勢
(
けはい
)
がして居たが、ばったりといって、
下駄
(
げた
)
の音。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「隣の
室
(
へや
)
で、主人の云いつけで、帳面をあわしておりましたので、
前刻
(
さっき
)
からのお話を伺いましたが、それについて、ちょっと私から申しあげたいことがございまして」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
前刻
(
さっき
)
も前刻、絵馬の中に、白い女の
裸身
(
はだかみ
)
を仰向けにくくりつけ、膨れた腹を裂いています、
安達
(
あだち
)
ヶ原の
孤家
(
ひとつや
)
の、もの
凄
(
すご
)
いのを見ますとね。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「
前刻
(
さっき
)
の女のことだが、ほんとに知らないかい」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
清葉は
前刻
(
さっき
)
から見詰めた
扇子
(
おうぎ
)
で、お孝の魂が二階から抜けて落ちたように、気を取られて、驚いて、抱取る思いがしたのである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から響いていた、
鉄棒
(
かなぼう
)
の音が、ふッと
留
(
や
)
むと、さっさっと沈めた
鞋
(
わらじ
)
の響き。……夜廻りの威勢の可いのが、肩を並べてずっと寄った。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
断めのつくように、断めさして下さいッて、お願い申した、あの、お返事を、
夜
(
よ
)
の目も寝ないで待ッてますと、
前刻
(
さっき
)
下すったのが、あれ……ね。
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はまた、なぜだか、
前刻
(
さっき
)
いった——八田——紺屋の干場の近くに
家
(
うち
)
のあった、その男のような気がしたよ。小学校以来。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
明神の森が右の峰、左に、卵塔場を谷に見て、よく一人で、と思うばかり、
前刻
(
さっき
)
彳
(
たたず
)
んだ、田沢氏の墓はその谷の草がくれ。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
、多津吉のつれの女が、
外套
(
がいとう
)
を抱えたまま振返って、上を仰いだ処は、大造りな
手水鉢
(
ちょうずばち
)
を境にして、なお一つ
展
(
ひら
)
けた原の方なのである。——
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
前刻
(
さっき
)
友だちと浜へ出て見た、そういえば、沖合一里ばかりの処に、黒い波に
泡沫
(
あぶく
)
を立てて、
鮫
(
さめ
)
が腹を赤く出していた、小さな汽船がそれなんです。)
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はあ、いえ、それでございますがな。まあ、
御新造
(
ごしん
)
さん、お掛けなすって。旦那もどうぞ。いらっしゃいましたよ、つい今しがた、
前刻
(
さっき
)
の
旦那
(
かた
)
が。」
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの、
前刻
(
さっき
)
も申しましたように、不器用も通越した、調子はずれ、その上覚えが悪うござんして、長唄の宵や待ちの
三味線
(
さみせん
)
のテンもツンも分りません。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
耳の
傍
(
はた
)
で叫んで、——
前刻
(
さっき
)
から橋の際に腰を板に附いて
蹲
(
しゃが
)
んでいた、土方体の大男の、電車も橋も
掻退
(
かきの
)
けるがごとく、両手を振って駆出したのがある。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
吾
(
おれ
)
が聞いた時も、いひやうもあらうものを、敵情なんざ聞かうとも、見やうとも思はなかつたは、実に驚く。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
通されたのが
小座敷
(
こざしき
)
で、
前刻
(
さっき
)
言ったその四畳半。廊下を横へ
通口
(
かよいぐち
)
がちょっと隠れて、気の着かぬ処に
一室
(
ひとま
)
ある……
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
も山下のお寺の観世音の前で……お誓さん——女持の薄紫の扇を視ました。ああ、ここへお参りして拝んだ姿は、どんなに美しかろうと思いましたが。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
直ぐに
開
(
あ
)
きましたから、
頻
(
しきり
)
に
前刻
(
さっき
)
の、あの、えへん!えへん!
咳
(
せきばらい
)
をしながら——
酷
(
ひど
)
くなっておりますな——芝生を伝わって、
夥
(
おびただ
)
しい
白粉
(
おしろい
)
の花の中を、これへ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「大事おへん、
前刻
(
さっき
)
落ちたら、それなり、地獄え。上が清水様どすよって、今度は転んだかて成仏どす。」
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
近い処が、お前さんが
前刻
(
さっき
)
お話の、その黒百合というものだ、つい石滝とかの山を奥へ入るとあるッていうのに、そら、昔から人が
足蹈
(
あしぶみ
)
をしない処で、魔処だ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なお驚いたのは、
前刻
(
さっき
)
の爺さんが同じ処で、まだ
熟
(
じっ
)
と
南天燭
(
なんてん
)
の枝ぶりを見ていた事です。——一度宿へ帰って出直そうとそこまで引返したのですが、考えました。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あなた、私ね、
前刻
(
さっき
)
通りがかりに、一度拝んだんですよ。御利益はちっともない。ほほほ、誰がこの下で法界屋を唄わせたり、
刎
(
は
)
ねさせたりするものがありますか。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ほんに、谷底のようで
靄
(
もや
)
が深うおすな、
前刻
(
さっき
)
の
階子段
(
はしごだん
)
思出したら、目がくらくらとするようえ。」
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
藁すべで、
前刻
(
さっき
)
のような人形を九つ、お前さん、——そこで、その懐紙を、引裂いて、ちょっと
包
(
くる
)
めた分が、白くなるから、妙に三人の女に見えるじゃありませんか。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寄せたその
片褄
(
かたづま
)
が、ずるりと前下りに、
前刻
(
さっき
)
のままで、小袖幕の
綻
(
ほころ
)
びから一重桜が——芝居の花道の路之助のは、ただこれよりも緋が燃えた——誘う風にこぼるる風情。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
の
蓮根市
(
はすいち
)
の影法師が、旅装で、
白皙
(
はくせき
)
の紳士になり、且つ
指環
(
ゆびわ
)
を、
竈
(
かまど
)
の火に彩られて
顕
(
あら
)
われた。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
欠茶碗にもりつけた麦こがしを、しきりに
前刻
(
さっき
)
から、たばせた。が、
匙
(
さじ
)
は
附木
(
つけぎ
)
の
燃
(
もえ
)
さしである。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とそこで一つ腰を
屈
(
かが
)
めて、立直った束髪は、
前刻
(
さっき
)
から
風説
(
うわさ
)
のあった、河野の母親と云う
女性
(
にょしょう
)
。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……御堂の外格子——あの、
前刻
(
さっき
)
階
(
きざはし
)
から
差覗
(
さしのぞ
)
いた処はただ、黒髪の暗い
簾
(
すだれ
)
だったんですがな。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
見た
兎
(
う
)
の毛の雲じゃ、一雨来ようと思うた癖に、こりゃ心ない、荷が濡れよう、と爺どのは駆けて戻って、がッたり車を
曳出
(
ひきだ
)
しながら、村はずれの小店からまず声をかけて
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや、恐縮。ですが今日のは、こりゃ
逆上
(
のぼ
)
せますんですよ。
前刻
(
さっき
)
朝湯に参りました。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
路
(
みち
)
を廻るのも
億劫
(
おっくう
)
でならぬので、はじめて、ふらふらと前へ出て、元の本堂前の廻廊を廻って、欄干について、
前刻
(
さっき
)
来がけとは
勢
(
いきおい
)
が、からりとかわって、
中折
(
なかおれ
)
の
鍔
(
つば
)
も深く、
面
(
おもて
)
を伏せて
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
、奥様がお座敷にいらっしゃらない処へ入って、私、よっぽど
盗
(
と
)
ったんです。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から
幾度
(
いくたび
)
か、舌を
噛
(
か
)
んで、舌を噛んで死のうと思っても、三日、五日、一目も寝ぬせいか、一枚も欠けない歯が皆
弛
(
ゆる
)
んで、
噛切
(
かみき
)
るやくに立ちません。舌も縮んで
唇
(
くちびる
)
を、唇を噛むばかり。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正
(
まさ
)
に
前刻
(
さっき
)
の仔に違いない。…様子が、土から
僅
(
わず
)
か二尺ばかり。これより上へは立てないので、ここまで連れて来た
女親
(
おふくろ
)
が、わりのう預けて行ったものらしい……
敢
(
あえ
)
て預けて行ったと言いたい。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から——辻町は、演芸、映画、そんなものの楽屋に縁がある——ほんの少々だけれども、これは筋にして稼げると、
潜
(
ひそか
)
に悪心の
萌
(
きざ
)
したのが、この時、色も、
慾
(
よく
)
も何にもない、しみじみと
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
前刻
(
さっき
)
からの様子を
饒舌
(
しゃべ
)
って、ついでに
疑
(
うたがい
)
を解こうとしたが、
不可
(
いけ
)
ません。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そいつが、今です、
前刻
(
さっき
)
ですよ。そこから覗いて、「来たよ、花嫁。」……
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
残念ながら分らなかったというならまだも
恕
(
じょ
)
すべきであるに、先に将校に
検
(
しら
)
べられた時も、
前刻
(
さっき
)
吾
(
おれ
)
が聞いた時も、いいようもあろうものを、敵情なんざ聞こうとも、見ようとも思わなかったは
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学海施一雪紅楼夢——や
不可
(
いけね
)
え。あの
髯
(
ひげ
)
が白い
頸脚
(
えりあし
)
へ触るようだ。女教員渚の方は閑話休題として、
前刻
(
さっき
)
入って行った氷月の小座敷に
天狗
(
てんぐ
)
の面でも
掛
(
かか
)
っていやしないか、悪く
捻
(
ひね
)
って
払子
(
ほっす
)
なぞが。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつとなく、仏の
御名
(
みな
)
を唱えるのにも遠ざかって、
前刻
(
さっき
)
も、お前ね。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
電車の口から
颯
(
さっ
)
と打った網の
末
(
すそ
)
が一度、混雑の波に消えて、やがて、
向
(
むき
)
のかわった仲見世へ、手元を細くすらすらと手繰寄せられた
体
(
てい
)
に、
前刻
(
さっき
)
の女が、肩を落して、雪かと思う襟脚細く、
紺蛇目傘
(
こんじゃのめ
)
を
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
俯向
(
うつむ
)
いて
彳
(
たたず
)
んでまた御神燈を
覗
(
のぞ
)
いた。が、
前刻
(
さっき
)
の雨が降込んで閉めたのか、
框
(
かまち
)
の障子は引いてある。……そこに
切張
(
きりばり
)
の紙に目隠しされて、あの女が染次か、と思う、胸がドキドキして、また行過ぎる。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さて、こうたわいもない事を言っているうちに——
前刻
(
さっき
)
言った——仔どもが育って、ひとりだち、ひとり遊びが出来るようになると、胸毛の白いのばかりを残して、親雀は
何処
(
どこ
)
へ飛ぶのかいなくなる。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から
多時
(
しばらく
)
そうやっていたと見えて、ただしくしく泣く。
後
(
おく
)
れ毛が揺れるばかり。慰めていそうな貴婦人も、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、無言の処で、
仔細
(
しさい
)
は知れず……
花室
(
はなむろ
)
が夜風に冷えて、
咲凋
(
さきしお
)
れたという風情。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お品が片手にはしっかりと
前刻
(
さっき
)
の手紙を握って居る。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「まあ……
前刻
(
さっき
)
の、あの、小さな
児
(
こ
)
は?」
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「まあ……
前刻
(
さっき
)
の、あの、小さな
児
(
こ
)
は?」
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“前”で始まる語句
前
前後
前途
前方
前垂
前様
前栽
前屈
前掛
前兆