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刻
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とき
ふりがな文庫
“
刻
(
とき
)” の例文
「どこで落したかわかりませんが、一
刻
(
とき
)
ばかり前に気が付いて、あっちこっち探したが見えません。手拭がどうかしましたか、親分」
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれどそれが、いつも半日かわずか二タ
刻
(
とき
)
遅れだった。かくてついつい幾日かを釣られて歩き、徐寧はいやが上にも、
焦
(
いら
)
ついていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
骨折
(
ほねおり
)
が劇しかったので、なにか立派な芸術品でも仕上げたような満足を感じ、俺は懐手をしながら、一
刻
(
とき
)
ぼんやりと眺めておッた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
浪人に別れて帰った喜兵衛は、それから一
刻
(
とき
)
ほど過ぎてから再びこの河原に姿をあらわした。彼は覆面して身軽によそおっていた。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「皆さまがお立ちになって一
刻
(
とき
)
ばかりすると、もう治ったから
駕籠
(
かご
)
でゆけば追いつくだろうと仰しゃいまして、急にお立ちなされました」
雨の山吹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
丹七はあさ子の失恋に同情するよりも、「
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
参り」の真似をするわが子の心の怖ろしさに戦慄を禁ずることが出来なかった。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それからおよそ一
刻
(
とき
)
ほどののち、どうやら女らしい来客の足音を聞きつけると、むくりと起き上がりながら伝六に命じました。
右門捕物帖:07 村正騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
まず長くて四分の一
刻
(
とき
)
、これがギリギリでございます。その制限を
超過
(
こ
)
した時には、何か異状があったものと見て、捜索するのでございます。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして昼夜の差別もなく灯明が絶えなかつた。老主婦のたいは、百五十の石段を算えて、裏山の摩利支天堂に「
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
参り」の祈願をこめてゐた。
サクラの花びら
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
それは、一
刻
(
とき
)
だって、あなたのご
恩
(
おん
)
を
忘
(
わす
)
れはいたしません。けれど
私
(
わたし
)
たちだって、ただ
踊
(
おど
)
ったり、
笑
(
わら
)
ったり、
跳
(
は
)
ねたりしているのではありません。
葉と幹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その白蝋が解けて流れて、蝋受けの上にうずたかく溜っているのを見れば、よほど酒宴の
刻
(
とき
)
が移っているのであろう。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それと
刻
(
とき
)
を同じゅうして二羽の春の鶫が、津は津の矢に、和泉は和泉の矢がしらによって、射落されたのであった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
何
(
なん
)
と、
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
の
咒詛
(
のろい
)
の
女魔
(
にょま
)
は、一本
歯
(
ば
)
の
高下駄
(
たかげた
)
を
穿
(
は
)
くと言うに、
些
(
ち
)
ともの足りぬ。
床几
(
しょうぎ
)
に立たせろ、引上げい。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかも罪人は一
刻
(
とき
)
も早よう引っ捕えいと言う注文じゃから先ず、これ位、
困難
(
むずか
)
しい
探偵事件
(
しごと
)
はなかろうわい。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いま初めて私は私の心のなかに夜明けの
鶏
(
とり
)
が東天紅と
刻
(
とき
)
を告げているのがまざまざと感じられてきました。
初看板
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
隊一 ハハハハ、時に、一
刻
(
とき
)
ばかり前に貴公を訪ねて来た上郷村人足寄場の者だと言った変な男には会ったか? 居ないと言ったら結城の方へ追掛けて行ったが?
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
「
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
詣
(
まい
)
りじゃないでしょうか。丑の刻詣りの人に道で行逢うと、祟りがあるっていいますから——」
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夕食後、いつものようにこの居間にこもって、見残した諸届け願書の類に眼を通し出してから、まださほど
刻
(
とき
)
が移ったとも思われないのに、
晩秋
(
ばんしゅう
)
の夜は早く
更
(
ふ
)
ける。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おまへの緑の髮の毛の波は、貝の
音
(
ね
)
が斧の
刻
(
とき
)
を
告
(
しら
)
せると、
眞紅
(
しんく
)
に
染
(
そ
)
まる。すぎ
來
(
こ
)
しかたを憶ひだして。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
義眞歸國之上同年十月朝鮮之譯官使對話仕候
刻
(
とき
)
、右被
二
仰出
一
之次第傳達爰に致り論談相濟ル
他計甚麽(竹島)雑誌
(旧字旧仮名)
/
松浦武四郎
(著)
裏の百姓家も植木師をかねていたので、おばあさんの
小屋
(
こいえ
)
の台所の方も、
雁来紅
(
はげいとう
)
、
天竺葵
(
あおい
)
、
鳳仙花
(
ほうせんか
)
、
矢車草
(
やぐるまそう
)
などが低い垣根越しに見えて、鶏の高く
刻
(
とき
)
をつくるのがきこえた。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
故ヲ以テ改メテ期ヲ
速
(
すみやか
)
ニセンコトヲ図ル。慈
大
(
おおい
)
ニ喜ビ陽ニ快キノ状ヲナス。然レドモ僅ニ
稀粥
(
きしゅく
)
ヲ通ズル
耳
(
のみ
)
。途ニ上ルノ日
復
(
ふたた
)
ビ慈顔ヲ奉ズルコト能ハザルヲ知リ、話シテ
刻
(
とき
)
ヲ移ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それは
時間
(
じかん
)
にすれば
恐
(
おそ
)
らく
漸
(
ようや
)
く一
刻
(
とき
)
位
(
ぐらい
)
の
短
(
みじ
)
かい
統一
(
とういつ
)
であったと
思
(
おも
)
いますが、
心
(
こころ
)
が
引緊
(
ひきしま
)
っている
故
(
せい
)
か、
私
(
わたくし
)
とすれば
前後
(
ぜんご
)
にない
位
(
くらい
)
のすぐれて
深
(
ふか
)
い
統一状態
(
とういつじょうたい
)
に
入
(
はい
)
ったのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
天地の間に生れたるこの身を
訝
(
いぶ
)
かりて、自殺を企てし事も幾回なりしか、是等の事、今や我が日頃無口の
唇頭
(
しんとう
)
を洩れて、この老知己に対する懺悔となり、
刻
(
とき
)
のうつるも知らで語りき。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
「まあ、何といふ怖ろしい人なんだらうね、お前さんは、現在
女房
(
かない
)
の叔母の骨を食べてしまふなんて、まるで鬼ぢやないか、もう/\こんな
家
(
うち
)
には一
刻
(
とき
)
の
間
(
ま
)
もじつとしては
居
(
を
)
られない。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
少年老い易し、麗人は
刻
(
とき
)
を千金の春夜に惜む。われらがわかき日の小詩はまさに涙を流して歌ふべし。瑠璃いろ空のかはたれにわすれなぐさの花咲かばまた、過ぎし夜のはかなき恋も忍ぶべし。
「わすれなぐさ」はしがき
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
隣の広間の床に
据
(
す
)
えてある置時計が次の
刻
(
とき
)
を打つまでには、きっと悟って見せる。悟った上で、今夜また
入室
(
にゅうしつ
)
する。そうして和尚の首と悟りと
引替
(
ひきかえ
)
にしてやる。悟らなければ、和尚の命が取れない。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
是時
(
このとき
)
われ思ふ、
大衆
(
たいしゆう
)
の
女人
(
によにん
)
を、恐ろしき
刻
(
とき
)
の近づくままに
母
(旧字旧仮名)
/
アダ・ネグリ
(著)
(指を一本出す)昼夜十二
刻
(
とき
)
ブッコ抜きだよ。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
その日博覧会に入りしばかりの
刻
(
とき
)
は
夏の夜の博覧会は、かなしからずや
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
「その昨夜鎌倉町の家を一
刻
(
とき
)
(二時間)もあけた相ぢや無いか。その間何處へ行つた。それを言はなきや、手前が主殺しの下手人だ」
銭形平次捕物控:275 五月人形
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あれから一
刻
(
とき
)
ばかりたって、お綱は、すきや
縮
(
ちぢみ
)
に
小柳
(
こやなぎ
)
の引っかけ帯、髪もぞんざい結びに巻きなおし、まるで別人のようになって
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……然しそれから一
刻
(
とき
)
も経ったであろうか、ちょうど牧二郎に昼の
薄粥
(
うすがゆ
)
を与えているところへ、息を切らして多助が戻って来た。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして二
刻
(
とき
)
も
経
(
た
)
った頃、嬉しそうな顔をして帰って来たが、部屋に備えてある筆墨を使って、紙の上へ何か書き出した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あそこは
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
参りをするところだとかなんだとか気味のわるいことをいっておりますが、どうしたことか
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
こうなっちゃ、一
刻
(
とき
)
も猶予はしていられないから、有り金をさらって逃げるとしよう。まだ仲間たちは気がついていないようだから、逃げるなら今のうちさ。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
隊一 ハハハハ、ときに、一
刻
(
とき
)
ばかり前に貴公を訪ねて来た上郷村人足寄場の者だといった変な男にはあったか? いないといったら結城の方へ追掛けて行ったが?
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
(つと起って妹の襟髪をとる。)人もあろうに、源氏方……しかも那須の一門に、
狎
(
な
)
れ馴染んだる憎い奴……。一
刻
(
とき
)
もここには置かれぬ。さあ出てゆきゃ、出て行こうぞ。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さればお付の乳母のお島どんも、一
刻
(
とき
)
も早ようお嬢さまを、何処かにお嫁に遣って下さい。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
また
一頻
(
ひとしき
)
り黙った
刻
(
とき
)
がつづいたが、町にはいるには惜しいくらいの愉しさを、きゅうに言葉でそれを表わさなければならぬものが感じられた。おなじ思いは筒井の心にもあった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
木々を吹きわたる夕風の音ばかり——
逢魔
(
おうま
)
が
刻
(
とき
)
のしずけさは深夜よりも骨身にしみる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
丑
(
うし
)
の
刻
(
とき
)
まいり」というのは、古い記録によると、嵯峨天皇の御時代からはじまる。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馬鹿な顔で、陽ざしを見あげているとき、すぐそばの
瑞雲寺
(
ずいうんじ
)
の
刻
(
とき
)
の鐘、ゴーン。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
羊毛のほかに、その
刻
(
とき
)
來ぬれば、命をだに
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
一
刻
(
とき
)
ほど經つて、どうやら落着きましたが、氣の毒なことに主人の幸右衞門と、義弟の與三郎は、たうとう息が絶えてしまつたのです。
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝である、
七宝寺
(
しっぽうじ
)
の山で、ごんごんと鐘が鳴りぬいた、
何日
(
いつ
)
もの
刻
(
とき
)
の鐘ではない、約束の三日目だ。吉報か、凶報かと村の人々は
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
刻
(
とき
)
が経ち、女は眠っていた。片腕で彼を抱き、片腕と片方の足は夜具の外へ投げだし、そうして、掛け夜具も胸まではいでいた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一旦下りとなり
砂走
(
すばし
)
りの中へでも踏み入ろうものなら一
刻
(
とき
)
の間に流砂と共に裾野まで一のしにのしたものである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お兄様がお帰り遊ばしましたほんの四半
刻
(
とき
)
程前に、お使いの方が探しがてら参られたのでござります」
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
どうぞこの事ばっかりは秘密にして、一
刻
(
とき
)
も早よう
御嬢様
(
シャンシャン
)
を蔵元屋の外へ出いて下さい。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“刻”の解説
刻(こく)は、漢字文化圏で使用される時間・時刻の単位である。様々な長さの「刻」があり、同じ時代の同じ地域でも、複数の「刻」が並用されていた。1日を何刻に分けるかが同じでも、定時法と不定時法の違いもある。
「刻」という名称は、漏刻(水時計)の刻み目に由来する。
(出典:Wikipedia)
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“刻”を含む語句
先刻
彫刻
前刻
丑刻
一刻
戌刻
亥刻
未刻
午刻
申刻
辰刻
刻々
寅刻
後刻
時刻
巳刻
即刻
刻下
彫刻物
子刻
...