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丹念
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たんねん
ふりがな文庫
“
丹念
(
たんねん
)” の例文
彼は又旅行案内を
開
(
ひら
)
いて、細かい数字を
丹念
(
たんねん
)
に調べ
出
(
だ
)
したが、少しも決定の
運
(
はこび
)
に
近寄
(
ちかよ
)
らないうちに、又三千代の方に
頭
(
あたま
)
が
滑
(
すべ
)
つて
行
(
い
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
箪笥
(
たんす
)
の上に
興録
(
こうろく
)
から受け取ったまま投げ捨てて置いた古藤の手紙を取り上げて、白い西洋封筒の一端を美しい指の
爪
(
つめ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に細く破り取って
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それは警戒を充分にして、この装置で
丹念
(
たんねん
)
に赤外線男を探しあてようというのです。深山さんに白丘さんと、お二人に来て貰って取付けました。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ええ、ええ、それは申すまでもございません。へえ、毎朝お蔵から出して台へ並べる時に、手前自身で
紅絹
(
もみ
)
の
布
(
きれ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に拭きますんで、へえ。」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
俊助
(
しゅんすけ
)
はこう云う図書館の窓際の席に腰を下して、さっきから細かい活字の上に
丹念
(
たんねん
)
な眼を
曝
(
さら
)
していた。彼は色の浅黒い、体格のがっしりした青年だった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
その一個の
月明石
(
ムーン・ストン
)
の首掛けへ一日の祈念を凝らし、それから、長い時間を費やして、
丹念
(
たんねん
)
に鼻眼鏡をみがく。
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
私は自分の「美しい村」のノオトとして
悪戯
(
いたずら
)
半分に
色鉛筆
(
いろえんぴつ
)
でもって
丹念
(
たんねん
)
に描いた、その村の手製の地図を、彼女の前に
拡
(
ひろ
)
げながら、その地図の上に万年筆で
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼女は、彼の首のまわりへタオルを
捲
(
ま
)
きつけ、母親の
手際
(
てぎわ
)
と
丹念
(
たんねん
)
さとを示す。一方の手で髪の毛を押し分け、もう一方の手で軽く
櫛
(
くし
)
を取り上げる。彼女は、捜す。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
母が十七八の時に手写したと云う琴唄の
稽古本
(
けいこぼん
)
を見たことがあるが、それは半紙を四つ折りにしたものへ横に唄の詞を
列
(
つら
)
ね、
行間
(
ぎょうかん
)
に琴の
譜
(
ふ
)
を
朱
(
しゅ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に書き入れてある
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
白粉刷毛
(
おしろいばけ
)
を
持
(
も
)
ったおせんの
手
(
て
)
は、
名匠
(
めいしょう
)
が
毛描
(
けが
)
きでもするように、その
上
(
うえ
)
を
丹念
(
たんねん
)
になぞって
行
(
い
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
こうして
丹念
(
たんねん
)
につくったご
馳走
(
ちそう
)
を、同じ血へ浸したわらづとの中に入れた。それを持ってカランポーの谷を一
巡
(
じゅん
)
し、一
粁
(
キロ
)
おきぐらいに一つとずつを草のあいだへおいてきた。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
あの
嘴
(
くちばし
)
で
丹念
(
たんねん
)
に、
這奴
(
しやつ
)
我
(
わ
)
が
胸
(
むね
)
、
我
(
わ
)
が
腹
(
はら
)
の
毛
(
け
)
を
殘
(
のこ
)
りなく
毮
(
むし
)
り
取
(
と
)
つて、
赤裸
(
あかはだか
)
にした
處
(
ところ
)
を、いきみをくれて、ぬぺらと
出
(
だ
)
して、
葉隱
(
はがく
)
れに……へたばる
人間
(
にんげん
)
をぎろりと
睨
(
にら
)
んで、
噴飯
(
ふきだ
)
す
由
(
よし
)
。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
まず着物をはがし、襦袢から着物、帯にいたるまで
丹念
(
たんねん
)
に調べて見たが、そこにはなんの不思議もなかった。背中に書いてある『
抱茗荷
(
だきみょうが
)
の説』とは、結局
相剋
(
そうこく
)
する双生児の伝説に違いない。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
いねが生きている時は、寝たままでも、その要所要所を
丹念
(
たんねん
)
に見てくれた。そして先生にほめられたところは念を入れて先生と同じようにほめてくれた。だが男親には、けんざきが何やら判らない。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
石の上に白髪かきたれ描く
蓮
(
はちす
)
丹念
(
たんねん
)
なれどそこばくの金
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
裁縫
(
しごと
)
をするそばの火鉢で、
丹念
(
たんねん
)
に煮物をする。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
一間一間、
丹念
(
たんねん
)
に
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離縁状と交換に磯五の手に証文の束が渡されると、磯五は、にやにやしながら、それを片ッ端から
丹念
(
たんねん
)
に破きはじめた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
此間
(
このあひだ
)
も
原
(
はら
)
の
御母
(
おつか
)
さんが
來
(
き
)
て、まあ
貴方
(
あなた
)
程
(
ほど
)
氣樂
(
きらく
)
な
方
(
かた
)
はない、
何時
(
いつ
)
來
(
き
)
て
見
(
み
)
ても
萬年青
(
おもと
)
の
葉
(
は
)
ばかり
丹念
(
たんねん
)
に
洗
(
あら
)
つてゐるつてね。
眞逆
(
まさか
)
左
(
さ
)
うでも
無
(
な
)
いんですけれども
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分は現在
蟇口
(
がまぐち
)
に二三円しかなかったから、不用の書物を二冊渡し、これを金に
換
(
か
)
え給えと云った。青年は書物を受け取ると、
丹念
(
たんねん
)
に
奥附
(
おくづけ
)
を
検
(
しら
)
べ出した。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その絵が決して
上手
(
じょうず
)
ではないこと、——ことに私が
丹念
(
たんねん
)
に描き過ぎた立派な口髭のために、
反
(
かえ
)
って変てこな顔になってしまっていることは、私自身も知っていた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして紙片の上には、むずかしい数字の式が、まるで
蟻
(
あり
)
の行列のように、
丹念
(
たんねん
)
に書き込んであった。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今
貼
(
は
)
りかえたばかりのような
汚
(
よご
)
れ目のないのが貼ってあって、ちょっとした小さな破れ目も花弁型の紙で
丹念
(
たんねん
)
に
塞
(
ふさ
)
いである。それが
澄
(
す
)
み切った秋の空気の中に、冷え冷えと白い。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
葉子は小さく舌打ちして、為替ごと手紙を引き裂こうとしたが、ふと思い返して、
丹念
(
たんねん
)
に墨をすりおろして一字一字考えて書いたような手紙だけずたずたに破いて
屑
(
くず
)
かごに突っ込んだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お高が、縁側へ古い手紙類を持ち出して、一応眼を通したのち、一つひとつ
丹念
(
たんねん
)
に破いているところへ、玄関に人声がして、国平が取り次ぎに出た。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
男は少し
反
(
そ
)
り身になりながら、チョッキのポケットから、紫の
打紐
(
うちひも
)
のついた大きなニッケルの懐中時計を出して、
丹念
(
たんねん
)
にそれと時間表の数字とを見くらべている。
父
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日
(
ひ
)
は大きな花の
上
(
うへ
)
に落ちてゐる。代助は
曲
(
こゞ
)
んで、花の
中
(
なか
)
を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。やがて、ひよろ長い雄
蕊
(
ずゐ
)
の
頂
(
いたゞ
)
きから、
花粉
(
くわふん
)
を取つて、
雌蕊
(
しずゐ
)
の
先
(
さき
)
へ持つて
来
(
き
)
て、
丹念
(
たんねん
)
に
塗
(
ぬ
)
り
付
(
つ
)
けた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
課長は、焼跡を
丹念
(
たんねん
)
に調べた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しまいに自分一人で食べると云って、千代子の手から匙を受け取った時、彼女はまた
丹念
(
たんねん
)
に匙の持ち方を教えた。宵子は
固
(
もと
)
より
極
(
きわ
)
めて短かい単語よりほかに発音できなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
父は気の毒にも
丹念
(
たんねん
)
に死と云うものを説明し出した。が、父の説明も少年の論理を
固守
(
こしゅ
)
する彼には少しも満足を与えなかった。なるほど彼に殺された蟻の走らないことだけは確かである。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かと思うと今度は
丹念
(
たんねん
)
に火鉢の灰をかきならしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その本は大分
丹念
(
たんねん
)
に使用したものと見えて
裏表
(
うらおもて
)
とも表紙が
千切
(
ちぎ
)
れていた。それを借りたときにも返した時にも、先生は哲学の方の素養もあるのかと考えて、
小供心
(
こどもごころ
)
に
羨
(
うらや
)
ましかった。
博士問題とマードック先生と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三階の窓から
見下
(
みおろ
)
すと、狭い通なので、門前の
路
(
みち
)
が細く
綺麗
(
きれい
)
に見えた。向側は立派な
高塀
(
たかべい
)
つづきで、その一つの
潜
(
くぐ
)
りの外へ
主人
(
あるじ
)
らしい人が出て、
如露
(
じょうろ
)
で
丹念
(
たんねん
)
に往来を
濡
(
ぬ
)
らしていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丹
常用漢字
中学
部首:⼂
4画
念
常用漢字
小4
部首:⼼
8画
“丹”で始まる語句
丹
丹波
丹精
丹塗
丹羽
丹前
丹田
丹生
丹青
丹頂