金輪際こんりんざい)” の例文
ましてこの竹生島の周囲は、深いことに於て、竹生島そのものが金輪際こんりんざいから浮き出でているというのだから、始末の悪いことおびただしい。
「よし、こうなったら、やぶれかぶれ。おれはきさまをのろってやる。金輪際こんりんざいまで詛ってやる。今更、この期になってびくつくまいぞ」
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし、いったんおのれの位置の悲劇性を悟ったが最後、金輪際こんりんざい、正しく美しい生活を真面目まじめに続けていくことができないに違いない。
これはしょうが悪くて、客が立止って一度価を聞こうものなら、金輪際こんりんざい素通りの聞放しをさせない、たもとを握って客が値をつけるまで離さない。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
取舵とりかじだい‼」と叫ぶと見えしが、早くもともかた転行ころげゆき、疲れたる船子ふなこの握れるを奪いて、金輪際こんりんざいより生えたるごとくに突立つったちたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御老中は申すに及ばず、お側の衆からもいろ/\諫言かんげんを申上げたが、上樣日頃の御氣性で、一旦仰せ出された上は金輪際こんりんざい變替は遊ばされぬ。
しようとは思わぬ。御一統の企てについては、ほかから漏れたら知らぬこと、わしからは金輪際こんりんざい口外こうがいすまい。それだけは固く約束しておくよ
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
いいえ、当推量なもんですか。それでは、綺麗な斑のある片身を、なぜ、十四郎には金輪際こんりんざいとれぬ——と貴女は云ったのです?
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
酔って言うんじゃあ、ございませんが、おでんなんてものこそ、一流の店じゃあ、金輪際こんりんざい食えねえ、下司の味だと思いやすがね、何うですい?
下司味礼賛 (新字新仮名) / 古川緑波(著)
あっしのこの手裏剣わざと来た日にゃア、日の下開山、だれと立ちあったところで遅れをとるようなことア、金輪際こんりんざいげえせん。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは覚悟しなければならぬ。それにしても聖処女によって世に降誕した神の子基督の御顔を、金輪際こんりんざい拝し得られぬ苦しみは忍びようがなかった。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
またふみちやんの手は吸盤きふばんを持つてゐた。呼び込み窓へ近づいて來た男の手首を一度握ると、金輪際こんりんざい離れなかつた。男は泣き顏をしながら上つた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
買いかぶらせることには、役者衆の上手うわてだから、もう、二本差した男には、金輪際こんりんざい、惚れないことにきめたんですとさ
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みずから貧しくして、偽りに満ち、揺らめきて危うきを知る謙遜なる心が、豊かにして、まことに、金輪際こんりんざい動揺せざる絶対の実在を求むる無限の憧憬である。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ただ一眼ひとめ見たが最後! 見た人は彼女の魔力から金輪際こんりんざいのがるる事は出来ない。あの色はただの赤ではない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これを見なさい、この通り、おぬしは抜かずに済ましとる、そこで勝った——今日から土民どもはおぬしの前に手をつくよ、金輪際こんりんざいじゃま立ては致すまいよ」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
幾度繰り返しても只この中の一つ二つの言葉をかえるばかりだけれ共、どんな事がっても、「七十日」と「十円」を抜かす様な事は決して決して金輪際こんりんざい無いのである。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかし甲斐守の性質として、一旦いわぬといったからには、金輪際こんりんざい口を開かぬものと、諦めなければならなかった。そこで弓之助は一礼し、甲斐守の部屋を出ようとした。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なんだ。じゃ、君は、僕があれであることは金輪際こんりんざい許されないことだと思うのかい。」
おまけに幹事を引き受けたんだから今度こそは金輪際こんりんざい、ドンナ事があっても行くって仰言ったんですの。そうしたらまたきょうの騒ぎでしょう。あたし口惜くやしくて口惜しくて……
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鷓鴣は痙攣けいれんしたように、もがく。つばさをばたばたさせる。羽根を飛ばす。金輪際こんりんざいくたばりそうにもない。彼は、友達の一人ぐらい、もっと楽に、それこそ片手で締め殺せるだろうに。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
連れて行くときつと『一晩だけ竹を病院へ泊らして呉れ』と京子が言ひますやろが、それは金輪際こんりんざいいきまへんよつて、泣いても何うしても構はずに、引き離してほかへ泊つとくなはれ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
が、私は黙っていた。いくら論じたって彼らには金輪際こんりんざいわかりっこないことを知っているからだ——私は紳士的微笑とともにしずかに麺麭パンをむしりながら話題を転じただけだった。
もしこの赤ペンキを綺麗に落さんとほっせば、抛げつけたる当人の許を訪ねて、ペンキ消し液を乞いうけるに非ずんば、金輪際こんりんざい消えることなし。すなわちその際に、運転手の油をウンと絞るなり。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
毒をもって毒を制すで、それはいいとしても、ブルジョアが金を出すというのは、それが何か自分の利益になるのでなかったら、そうと分ってなかったら金輪際こんりんざい、そんなことはしないだろう。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
まるで誰か見ている人でもあるかのように——そんなことは金輪際こんりんざいないことがわかっているにかかわらず——跫音あしおとをしのばせて書棚の方へ近づいて行って、右側の書棚の下から二段目の棚から
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
まだかくしだてをするつもりか。あくまでかせたくないというなら、かずにませもしようけれど、そのかわりおいらはもうこのさき金輪際こんりんざい、おまえかないからそのつもりでいるがいい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆっくりかみしめると奥の方からうまさがわいてくる干パンであったが、こんなものにうきうきしている音枝に妙ないらだたしさを感じて、だれにもらったかなど、金輪際こんりんざいきくまいと思ったりした。
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
いかに政友会や中立がじたばたしても、金輪際こんりんざい、うだつの上るためしのないことは見えすいていますが、この際、思い切って民政党に入党してはどうでしょうか、あなたが民政党に入党してくれれば
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
再び女の心のあんなあツたかみに接する時は金輪際こんりんざいなからう。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
金輪際こんりんざい夜闇やあん根生ねおふ姿なり五重の塔は立てりけるかも
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
こればっかりは金輪際こんりんざいわかりっこないものだそうで、そうして、その苦労がわかってくると、なんだかんだと人のことをいえなくなってしまう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
よその人気の尻馬しりうまに乗って人真似をして、柳の下のどじょうねらうような真似は、お角さんには金輪際こんりんざいできないのですよ。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼女はこの場合無理にも二つのものをつないでみたくってたまらなかった。けれどもそれを繋ぎ合せる綱は、どこをどうさがしたって、金輪際こんりんざい出て来っこなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「笑はないよ、笑はないと言つたら、金輪際こんりんざい笑はないよ、俺は今、死んだお袋のことを考へてゐるんだ」
それは彼が寿童丸じゅどうまるとよばれた昔から持っている善信(親鸞)への呪詛じゅそと報復とを、今になっても金輪際こんりんざい捨てていない異常なねばり方と根気を見てもわかるのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たとえ山巡りのお役人さんでも、厭だと一度首を振ったら、金輪際こんりんざい諾かねえということだ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
鎌倉かまくらに行った時以来、自分のふところからもぎ放してしまって、金輪際こんりんざい忘れてしまおうと堅く心に契っていたその定子が……それはその場合葉子を全くみじめにしてしまった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
連れて歸ることは金輪際こんりんざいならん。嫁にすることが出けなんだら、娘にして貰うて下され。またあんたの方から他へ片付けようと、このまゝ此寺こゝで婆にして了はうと、それはあんたの勝手ぢや。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
彼は雪子を後から抱きすくめたまま、金輪際こんりんざいはなそうとはしなかった。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……たとひ、かうして、貴女あなたひろつてくださるのが、ちやんきまつた運命うんめいで、當人たうにんそれつてて、芝居しばゐをするで、たゞ遺失おとしたとおもふだけのことをしてろ、とはれても、可厭いやです。金輪際こんりんざい出來できません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これ以外は、俺が何を聞いても金輪際こんりんざい、口を割らなかった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
金輪際こんりんざい夜闇やあん根生ねおふ姿なり五重の塔は立てりけるかも
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お婆さんもテップの買い戻しだけは金輪際こんりんざいしなかった。
特別の御用金に金座から大奥お賄方まかないがたへ納めた分として一つ一つの小判の隅に、小さな桝目ますめの印が打ち出してあるのだから金輪際こんりんざい間違いっこない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
次第によっては、金輪際こんりんざいといえどもこの座を動かないことになるかも知れないとまで思い立った弁信が、僅か三日にして、かく白旗を掲げてしまいました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それでよし。——ところで、昨夜ゆうべのことを此處で打明けて話して見る氣はないか。——それはいやだといふのか。金輪際こんりんざい打ち明ける氣はないと言ふつもりだらう」
「これッ、今宵は、金輪際こんりんざい逃がさぬぞ、元と違って、今の玄蕃は、三界流浪の浪人、腕ずくでもそちを連れて他国へ走り、想いを遂げる覚悟で先頃からつけていたのじゃ!」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帆の自由である限りは金輪際こんりんざい船を顛覆てんぷくさせないだけの自信を持った人たちも、帆を奪い取られては途方に暮れないではいられなかった。船足のとまった船ではもうかじもきかない。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いかにジタバタもがこうと、もう金輪際こんりんざい遁がれっこはねえ! かごの鳥っていう奴さ! 捕虜だよ捕虜だよ妾達のね! それともお前さんの属している、水戸家の女忍び衆、鷺組に何か手段があり
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)