金剛石ダイヤモンド)” の例文
炭素は非常に不思議なもので、木炭や煤は、いわゆる無定形であるが、同じ炭素でも、結晶になると、石墨になり、また金剛石ダイヤモンドにもなる。
画業二十年 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
そして娘はお母様から頂いた金剛石ダイヤモンド入りの指環を出して、これをお父様に上げて下さいと申しました。お医者は涙を流して感心しました。
正夢 (新字新仮名) / 夢野久作萠円(著)
ことに後者は独占的に世界の金剛石ダイヤモンド市場であるだけに、ダイヤモンド仲買人がホテル・アムステルダムの止宿者の大部分だった。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
金剛石ダイヤモンドがきらりとひらめいて、薄紅うすくれないそでのゆるる中から細いかいなが男のひざの方に落ちて来た。かろくあたったのは指先ばかりである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大きな金剛石ダイヤモンドの指輪をはめた白い嫋やかな指の間にウイスキー・ソーダのコップを持ちながら、少し反り身になって馬鹿騒ぎを眺めている。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
総髪を長く肩に掛け、オースチン師の献上物、西班牙イスパニア産の金剛石ダイヤモンドを黄金の鎖にからませて、うなじから胸へ垂らしたのさえ異国めいていて物凄い。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは此処では拆白党せきはくとうと云う、つまり無頼の少年団の一人が、金剛石ダイヤモンドの指環を奪う為に、蓮英と云う芸者を殺したのです。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな時、金剛石ダイヤモンドのような光りの尾を引いた流星達は、窓の外まで突ぬけそうな勢で、垂幕の端から端へと滑りました。
ようか月の晩 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
裸体に、かずいて、大旗の下を行く三人の姿は、神官の目に、に、紅玉ルビイ碧玉サファイヤ金剛石ダイヤモンド、真珠、珊瑚を星のごとくちりばめた羅綾らりょうのごとく見えたのである。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金剛石ダイヤモンドは——そのなかにはとても大きい立派なものもあったが——みんなで百十個あり、小さいのは一つもない。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
当つて砕けた白玉が、何ぞと人の知らぬ間に。露と消えたる身の果てを。金剛石ダイヤモンドの指輪と共に、とりとり人の噂しぬ。(『文芸倶楽部』一八九七年二月)
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
老若男女を選ばず、磨けばみがくほど、いよいよその光沢つやが出てきます。「金剛石こんごうせきも磨かずば」で、実をいうと私どもは互いにその金剛石ダイヤモンドを一つずつ所有しているのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
私が自分であなたのくび金剛石ダイヤモンドの頸飾をかけてあげますよ。それから額には環を。似合ひますよ——少くともこの額は自然が立派に貴族的につくつてゐますからね。ジエィン。
盗賊どもが宮廷の引見式で貴族たちの頸から金剛石ダイヤモンドの十字架を切り偸んだこともあった。
それは、女の乳房を、豪奢な王冠に変えたかのようで、中央の乳首には、夜光虫が巨大な金剛石ダイヤモンドとなって輝き、ぐるりの妊娠粒には、いちいち光るしずくが星をふりいているのだ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
空も地も金と金剛石ダイヤモンドをちりばめたやうに、夜だか昼間だか決して解らないやうに輝いて居りましたから私達は一瞬の間にいにしへのある国の歓楽の宮殿へ伴れて来られたのかとも思へました。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
羊の皮の手ざはりに金の箔押すわがこころ、思ひあがればある時は、紅玉ルビサフアイヤ、緑玉エメラルド金剛石ダイヤモンドをもちりばめむとする、何んといふかなしさぞや、るりいろ空に花咲かば忘れなぐさと思ふべし。
「わすれなぐさ」はしがき (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
改めてお嬢さんの金糸銀糸でぬいとりした衣裳いしょうや、指にかがや金剛石ダイヤモンド、金と教養にあかしみがきこんだミルク色のきずひとつない上品な顔をみると、ぼくはダンスは下手だし、その手をとるのもこわくなり
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「これは何という宝石? 金剛石ダイヤモンドですか?」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
金剛石ダイヤモンドや!」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
しかし炭素という元素は、非常な曲者であって、金剛石ダイヤモンドにもなれば、石墨グラファイトにもなり、普通の無定形な木炭のような炭にもなる。
硯と墨 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ある日この細君が例のごとくざるか何かをげて、西洋の豆腐とうふでも買うつもりで表へ出ると、ふと先年金剛石ダイヤモンドを拝借した婦人に出逢であいました。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
美留藻は紅矢の家を逃げ出しますと、先ず一番に仕立屋に行って着物を受け取りまして、だちんには一粒の大きな金剛石ダイヤモンドほうり出して来ました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「沙漠から掘り出した金剛石ダイヤモンド! 大負けに負けて七十銭じゃ! どうじゃなどうじゃな、いらんかな!」
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのが、ひとけて廊下らうか茶室ちやしつらしい其処そことほされたとき、すぐ子爵夫人ししやくふじんの、束髪そくはつかゞや金剛石ダイヤモンドとゝもに、しろ牡丹ぼたんごと半帕はんけちの、おほふて俯向うつむいてるのをた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
テイラアは、南阿産の金剛石ダイヤモンドを巴里の市場へ捌きに来た者で、仕上げカットしたダイヤや、まだカットしない砿石いしやらを、石ころか何ぞのように無造作に紙に包んで身体中のポケットに押し込んでいた。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
(左の胸の)金剛石ダイヤモンドの蝶だの、大粒の真珠の首飾りだの、右の手だけに二つ嵌めた宝石入りの指環だのを見ながら、いくら新橋の芸者でも、これ程燦然さんぜんと着飾ったのは、一人もあるまいと感心した。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うしても、ありや萬里ばんり長城ちやうじやう向側むかふがはにゐるべき人物じんぶつですよ。さうしてゴビの沙漠さばくなか金剛石ダイヤモンドでもさがしてゐればいんです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから帽子屋へ参りまして上等の帽子を、矢張り正午ひる迄の約束であつらえまして、その飾りにと云って、ここへも大きな金剛石ダイヤモンドを一粒渡しました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
また金剛石ダイヤモンドのような純粋な結晶にもなり得るもので、その成因の差は温度と特に圧力とによって決まるものである。
露伴先生と科学 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
我儘もしなによりまさ。金剛石ダイヤモンド黄金鎖きんぐさりならめかけの身じゃ、我儘という申立てにもなりませんがね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう云ったのは夫人であって、夫人の前の卓の上には、金剛石ダイヤモンドを鏤めた巨大の耳飾が一つだけ、燦然と置かれてあるのであった。そして夫人と相対あいたいして、一人の支那人が腰かけていた。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
がねには金剛石ダイヤモンドがついている。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしが悪う御座いました。堪忍して下さい。もうこれからけつして貴婦人にならうとは思ひませぬ。金剛石ダイヤモンド貴方あなたわたしあひだを割く悪魔でした。」
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
さんたる金剛石ダイヤモンドがぎらりと痛く、小野さんの眼に飛び込んで来る。小野さんは竹箆しっぺいでぴしゃりと頬辺ほおぺたたたかれた。同時に頭の底で見られたと云う音がする。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると、すぐ眼の前の大気の中にちかちかと金剛石ダイヤモンドの粉を撒いたように、氷晶が光っているのに気がついた。
雪後記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
日のかッと当る時は、まばゆいばかり、金剛石ダイヤモンド指環ゆびわから白光びゃっこうを射出す事さえあるじゃありませんか。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
但し材料しなものや飾りは出来るだけ派手な上等のものにして、ぼたんにはこれを附けるようにと云いながら、髪毛かみのけの中から大粒の金剛石ダイヤモンドを十二三粒取り出して渡しました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
話せないとすれば土中にある金剛石ダイヤモンドの日を受けて光らぬと同じ事で、せっかくの智識も無用の長物となる。これはだ、やめようかしらんと上り口でたたずんで見た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
額のきずは、その烏帽子に、金剛石ダイヤモンドを飾ったような光がす……おお、天晴あっぱれなお婿はん。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし馬鈴薯ポテトー金剛石ダイヤモンドより大切になったら、人間はもう駄目であると、代助は平生から考えていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてお医者が来ると禿紳士は、うち中のものを皆遠ざけて、若い乞食の死骸を見せて、極く内緒でこの死骸をズタズタに切って、金剛石ダイヤモンドの指環を探してくれと頼みました。
正夢 (新字新仮名) / 夢野久作萠円(著)
侍女こしもとは千人だ。女郎蜘蛛が蛇に乗っちゃ、ぞろぞろぞろぞろみんな衣裳を持って来ると、すっと巻いて、袖を開く。すそを浮かすと、紅玉ルビイに乳が透き、緑玉エメラルドももが映る、金剛石ダイヤモンドに肩が輝く。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし馬鈴薯ポテトー金剛石ダイヤモンドより大切になつたら、人間にんげんはもう駄目であると、代助は平生から考へてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
或る仕立屋のお神さんが往来で素敵も無い大きな金剛石ダイヤモンド入りの指環を拾ひました。
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
乱れがみをむしりつつ、手で、砕けよ、とハタと舷を打つと……時のせた指は細くなって、右の手の四つの指環は明星になぞらえた金剛石ダイヤモンドのをはじめ、紅玉ルビイも、緑宝玉エメラルドも、スルリと抜けて
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最後に金剛石ダイヤモンドとかルビーとか何か宝石を身に着けなければ夜会へは出ませんよと断然申します。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乱れがみをむしりつゝ、手で、砕けよ、とハタとふなばたを打つと……時のせた指は細く成つて、右の手のつの指環は明星になぞらへた金剛石ダイヤモンドのをはじめ、紅玉ルビイも、緑宝玉エメラルドも、スルリと抜けて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おれは何でもこれは福の神に違いないと思っていて行って見ると、この街の真中の四辻に来て神様は、地面じべたの上を指してそのまま消えてしまった。見るとそこには金剛石ダイヤモンドめた金の指環ゆびわが……
正夢 (新字新仮名) / 夢野久作萠円(著)
向後ちゝいかりに触れて、万一金銭きんせん上の関係が絶えるとすれば、かれいやでも金剛石ダイヤモンドを放り出して、馬鈴薯ポテトーかぢり付かなければならない。さうして其つぐなひには自然の愛が残る丈である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)