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贅沢
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ぜいたく
ふりがな文庫
“
贅沢
(
ぜいたく
)” の例文
旧字:
贅澤
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の座布団に男女連れがかけていた。入って行った石川の方に振り向いた女の容貌や服装が、きわだって垢ぬけて
贅沢
(
ぜいたく
)
に見えた。
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
家の
惣菜
(
そうざい
)
なら不味くても好いが、
余所
(
よそ
)
へ喰べに行くのは
贅沢
(
ぜいたく
)
だから
選択
(
えりごの
)
みをするのが当然であるというのが緑雨の
食物
(
くいもの
)
哲学であった。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「三男坊のひやめしなもんですからね、こんな
贅沢
(
ぜいたく
)
な芸当は習わして貰えなかったんです、済みませんが
煎茶
(
せんちゃ
)
にして下さいませんか」
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金六が懐から出して見せたのはその頃では申分のない
贅沢
(
ぜいたく
)
とされた、黒
羅紗
(
ラシャ
)
の懐ろ煙草入、
銀延
(
ぎんのべ
)
の細い
煙管
(
きせる
)
まで添えてあったのです。
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼も亦相当の資産を
擁
(
よう
)
し、諸方の会社の株主となって、その配当
丈
(
だ
)
けで、充分
贅沢
(
ぜいたく
)
な暮しを立てている、謂わば一種の
遊民
(
ゆうみん
)
であった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
「御父さまはきっと
私達
(
わたしたち
)
が要らない
贅沢
(
ぜいたく
)
をして、むやみに御金をぱっぱっと
遣
(
つか
)
うようにでも思っていらっしゃるのよ。きっとそうよ」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すべてを所有してる時に社会を否定するのは、最上の
贅沢
(
ぜいたく
)
である。なぜなら、かくして社会に負うところのものを免れるからである。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
又、誕生日に百人以上の客を
招
(
よ
)
ぶのは
贅沢
(
ぜいたく
)
だという人もある。私は、そんなに沢山の客を招んだ覚えはない。向うで勝手に来るのだ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その優しい
贅沢
(
ぜいたく
)
の見栄は、貧しさをも一つの品位たらしめているこの穏和な厳格の家の中にあって、一種の子供らしい愛嬌であった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一方には無駄な
贅沢
(
ぜいたく
)
即ち酒道楽や女道楽に浪費する金銭を節し身分不相応の下駄や帽子に
外見
(
みえ
)
を張るような事を制して金銭を貯蓄し
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
十二時にならないと店を
開
(
あ
)
けない
贅沢
(
ぜいたく
)
な料理屋も
其処此処
(
そこここ
)
にある。芝居帰りの正装で上中流の
男女
(
なんによ
)
が夜食を食べに来るのだ
相
(
さう
)
である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そこで無為軍に美邸をかまえ、ずいぶん
贅沢
(
ぜいたく
)
な生活ぶりをやっているが、どうして、なおまだ内には野心
勃々
(
ぼつぼつ
)
たるものがあるらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そりや出来ない事もないが、——しかし温泉へ
行
(
ゆ
)
くなぞは
贅沢
(
ぜいたく
)
だな。僕はまだ
臍
(
ほぞ
)
の
緒
(
を
)
切つて以来、旅行らしい旅行はした事がない。」
塵労
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この殺風景な都会のまんなかで、こんな美しい
贅沢
(
ぜいたく
)
な植物を自由に見おろすことの出来る特権を得たのを、青年は喜んだのである。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
現実の生活のなかでは私のそんな考えなどは、病人の
贅沢
(
ぜいたく
)
にすぎなかった。私はこの春にも母とちょっとした衝突をしたことがあった。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
渓
(
たに
)
は狭い、信州上高地のように、湯に漬りながら雪の山を見るという
贅沢
(
ぜいたく
)
は出来ない、明日は七曲峠の上で白峰を見たいものだと思う。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
金持の連中もまた、
儲
(
もう
)
けたい奴は盛んに儲け、儲けた上に莫大の配当をしました。そうして、大ビラで
贅沢
(
ぜいたく
)
や
僭上
(
せんじょう
)
の限りを尽しました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
家にいての香以の生活は余り
贅沢
(
ぜいたく
)
ではなかった。料理は不断
南鍋町
(
みなみなべちょう
)
の伊勢勘から取った。
蒲焼
(
かばやき
)
が好で、尾張屋、喜多川が常に出入した。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この節、肉どころか、血どころか、
贅沢
(
ぜいたく
)
な目玉などはついに
賞翫
(
しょうがん
)
した
験
(
ためし
)
がない。
鳳凰
(
ほうおう
)
の
髄
(
ずい
)
、
麒麟
(
きりん
)
の
鰓
(
えら
)
さえ、世にも稀な珍味と聞く。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「だって、西洋人を女房に持つと、月千円はかかると云うぜ。君のような
贅沢
(
ぜいたく
)
な女が百円や百五十円でやって行けると思うのかい」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
六位の侍が侍従に出世! これじゃアおれ達ア浮かばれねえ! やろうぜオイ! たたっこわそうぜ! 運のいい
贅沢
(
ぜいたく
)
の野郎をよ!
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
病気になって全く床を離れぬようになってからは外に楽みがないので、食物の事が一番
贅沢
(
ぜいたく
)
になり、終には菓物も毎日食うようになった。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
したがって他の動物には金貸し、地主、資本家などのごとき、懐手をしながら
贅沢
(
ぜいたく
)
に暮らす階級は決して見いだすことはできぬ。
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
さような人物になると座席など決して
贅沢
(
ぜいたく
)
はいわない。いつも鯛でいえばお
頭
(
かしら
)
の
尖端
(
せんたん
)
か、
尻尾
(
しっぽ
)
の後端へ
噛
(
か
)
じりついて眺めている。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
言わば息子をあすこに置いとくことは、息子に離れてる
辛
(
つら
)
い気持ちとやりとりの私達の命がけの
贅沢
(
ぜいたく
)
なんですよ。…………てね。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
裏からいえば、
贅沢
(
ぜいたく
)
な高価なわずかより出来ないものは民藝品とはならないわけです。作者も著名な個人ではなく、無名の職人たちです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし
今日
(
こんにち
)
の
所
(
ところ
)
では
病院
(
びょういん
)
は、
確
(
たしか
)
に
市
(
し
)
の
資力
(
ちから
)
以上
(
いじょう
)
の
贅沢
(
ぜいたく
)
に
為
(
な
)
っているので、
余計
(
よけい
)
な
建物
(
たてもの
)
、
余計
(
よけい
)
な
役
(
やく
)
などで
随分
(
ずいぶん
)
費用
(
ひよう
)
も
多
(
おお
)
く
費
(
つか
)
っているのです。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
どこもかしこも、
金
(
きん
)
や、大理石や、
水晶
(
すいしょう
)
や、絹や、
灯火
(
ともしび
)
や、ダイヤモンドや、花や、お
香
(
こう
)
や、あらんかぎりの
贅沢
(
ぜいたく
)
なもので、いっぱいなの
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
また
如何
(
いか
)
に母親が深い慈愛を彼にもつてゐるかと云ふことを語つてゐるやうな、
贅沢
(
ぜいたく
)
でも華美でもないが、どこか奥ゆかしい風をしてゐた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
由来塩原という処、金持共が
贅沢
(
ぜいたく
)
に夏の暑さを避けに来る土地ゆえ、街路には至る処ハイカラ男女共が手を連ねてノサ張りまわりつつあり。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
まだ馬車もなく電車は無論のこと、
人力
(
じんりき
)
に乗るなど
贅沢
(
ぜいたく
)
な
生計
(
くらし
)
ではないので、てくてく四谷から、何か重そうなものを背負わされて戻った。
幕末維新懐古談:54 好き狆のモデルを得たはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それが得意で
贅沢
(
ぜいたく
)
な生活をして、初めからの貴族に負けないふうでいる家の娘と、そんなのはどちらへ属させたらいいのだろう
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そんなことすら長い年月の間、非常な
贅沢
(
ぜいたく
)
な願いのように考えられていた。でも、白足袋ぐらいのことは
叶
(
かな
)
えられる時が来た。
足袋
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こんな
贅沢
(
ぜいたく
)
は出来るわけがないし、また失礼ながらあまり裕福とは見受けられない黄村先生のお茶会には、こんな饗応の一つも期待出来ず
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
標本棚、外科器械棚などが如何にも
贅沢
(
ぜいたく
)
に並び、
其他
(
そのた
)
、人間が入れそうなタンクのような訳のわからぬ装置が二つも三つも置かれてあった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ウィルスン君」と部屋の主人は、体をかがめて、珍しい毛皮のすばらしく
贅沢
(
ぜいたく
)
な外套を足の下から取り上げながら、言った。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
金屏は
贅沢
(
ぜいたく
)
なものではあるけれども、その墨絵の松の古びているもとに冬籠りしている人は、よしありげになつかしい心持もするのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「そんな
贅沢
(
ぜいたく
)
なごとばり言って。昔なんか、蝙蝠だって、よっぽどいい人でねえど持たなかったんだ。贅沢ばり言って……」
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
理想的に言えば、美術館のような公共の享楽を目ざすものは、うんと
贅沢
(
ぜいたく
)
にしていいのである。私人の贅沢とはわけが違う。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
私は苦笑して
贅沢
(
ぜいたく
)
を言うなと無理に三等車へ押し込んでしまったが、車内にはいると同時に今度は私の方がてれてしまった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
少数のなまけ者共に有らゆる
贅沢
(
ぜいたく
)
をさせる為めに、自分の生活を美しくする一切のものを永久に見
棄
(
す
)
てなければならぬのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「
贅沢
(
ぜいたく
)
いうなよ。あの大渦巻に捲き込まれて、
独楽
(
こま
)
のように廻っている老博士たちのことを考えたら、贅沢は云われないぜ」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
私はそういう
贅沢
(
ぜいたく
)
を好まない。自分が耕した思想の菜園から得た収穫を、我が守り本尊の前に
捧
(
ささ
)
げて、ささやかながら収穫の祭りを祝いたい。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
私はもう、
極
(
きま
)
りがわるいの、買ってくれそうにないのと、そんな
贅沢
(
ぜいたく
)
な考えや、弱気におしひしがれている時ではなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
少しの地位を得るともうすっかりその光栄に酔うてしまって
贅沢
(
ぜいたく
)
をしようとするような亡国的人士は、諸君の力で
鞭韃
(
べんたつ
)
して行くべきであるのに
青年の天下
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
八十を越しても硫黄の熱は
燃
(
もえ
)
ていた。小さい机にしがみついたまま、
贅沢
(
ぜいたく
)
は身の毒になると、
蛍火
(
ほたるび
)
の火鉢に手をかざし、
毛布
(
ケット
)
を着て座っていた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
我れわれのような学生あがりの安月給取りには
贅沢
(
ぜいたく
)
過ぎるほどの副食物をもって満たされているので、わたしはこの鉄道に乗って往来するごとに
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
太抵は労働を避けて
些細
(
ささい
)
な物質的
贅沢
(
ぜいたく
)
の中に
遊惰
(
ゆうだ
)
な日送りをしようとすることが動機であるから、政府は世の社会改良家、教育者、慈善家と共に
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
眼立たないが、
贅沢
(
ぜいたく
)
至極な好みの衣裳で、気持のよさそうな博多の
単帯
(
ひとえおび
)
で、胴のあたりを
風情
(
ふぜい
)
ゆたかにしめあげていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこの茶屋の子供が同級生だったので尚更よく遊びに行ったわけだが、以前は彼処の茶屋は非常に
贅沢
(
ぜいたく
)
な所で、大奥の女中などが出入りしていた。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
贅
漢検1級
部首:⾙
18画
沢
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
“贅沢”で始まる語句
贅沢三昧
贅沢品
贅沢家
贅沢物
贅沢屋
贅沢事
贅沢者
贅沢薬
贅沢寿司
贅沢生計