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臆病
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おくびょう
ふりがな文庫
“
臆病
(
おくびょう
)” の例文
「つかまったってたかが殺されるだけじゃないの。あたし、殺されることなんかこわかないから、あなたみたいに
臆病
(
おくびょう
)
じゃないわ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
こう云う代助は無論
臆病
(
おくびょう
)
である。又臆病で
耻
(
は
)
ずかしいという気は
心
(
しん
)
から起らない。ある場合には臆病を
以
(
もっ
)
て自任したくなる位である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ははあ、何かこわいことがあると、ひとりでからだがふるえるからね。お前さんも、ことによったら、
臆病
(
おくびょう
)
のためかも知れないよ。」
気のいい火山弾
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
が、おれはいつも、承知しない。すると、あの女は、おれの事を
臆病
(
おくびょう
)
だと言って、ばかにする。おれはよくそれで、腹を立てた。………
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
考
(
かんが
)
え
深
(
ぶか
)
い、また
臆病
(
おくびょう
)
な
人
(
ひと
)
たちは、たとえその
準備
(
じゅんび
)
に
幾年
(
いくねん
)
費
(
つい
)
やされても十
分
(
ぶん
)
に
用意
(
ようい
)
をしてから、
遠
(
とお
)
い
幸福
(
こうふく
)
の
島
(
しま
)
に
渡
(
わた
)
ることを
相談
(
そうだん
)
しました。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
あるいは良きあるいは悪き多くの理由が、彼らの活動を妨げていた。ある人々にあっては、それは服従や
臆病
(
おくびょう
)
や習慣の力などであった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
院を
目
(
ま
)
のあたり見て罪の自責に苦しんだために逆上したのであろうが、それほど
臆病
(
おくびょう
)
な自分ではなかったはずであるがと悲しんだ。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
プリヘーリヤは甘ったるい感じがするほどではないまでも、感じやすい、
臆病
(
おくびょう
)
な、おとなしい
質
(
たち
)
だったが、それもある程度までである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
一つは
臆病
(
おくびょう
)
な本能からと、また一つには恋する者の注意深い本能からだった。「父親の注意」をひかない方がいい、と彼は思っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
蛮流幻術
(
ばんりゅうげんじゅつ
)
にたけて、きたいな
神変
(
しんぺん
)
をみせる呂宋兵衛も、
臆病
(
おくびょう
)
な生まれつきは
争
(
あらそ
)
えず、
語韻
(
ごいん
)
はふるえをおびて昌仙の顔をみまもっていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は、
臆病
(
おくびょう
)
な
獣物
(
けだもの
)
が、何ものかを避けるように飛びのいて、ふたたび、その忌まわしい場所に視線を向けようとはしなかったのである。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
どうせ現在お目に懸けた
臆病
(
おくびょう
)
です。それを弁解するんじゃないが、田圃だの、水浸しだの、と誇大に
妄想
(
もうぞう
)
した訳ではありません。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と反問するが
肝腎
(
かんじん
)
である。
臆病
(
おくびょう
)
なる僕に一大興奮剤となった教訓は
沙翁
(
さおう
)
の Be just and fear not の一言である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかし、神経質に人の気を兼ねて、好意を無にすまいと極度に気遣いするところは、世俗に
臆病
(
おくびょう
)
な芸術家らしいところがあった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
赤は顔つきからして神経的な
狐
(
きつね
)
のようなところがあったが、実際
臆病
(
おくびょう
)
かあるいは用心深くて、子供らしいところが少なかった。
子猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
葉子の
乳母
(
うば
)
は、どんな大きな船でも船は船だというようにひどく
臆病
(
おくびょう
)
そうな青い顔つきをして、サルンの入り口の戸の陰にたたずみながら
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「なにを
臆病
(
おくびょう
)
なことをいいだすんだ。こんな素晴らしいチャンスを逃がすなんてえことが出来ると思うかい。引込んでいろ」
見えざる敵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
恋の場合には可なり
臆病
(
おくびょう
)
であった藤十郎は、あたかも別人のように、先刻の興奮は、丸きり嘘であったかのように、冷静に
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分で自分の
臆病
(
おくびょう
)
あざわらうようになるなんて、……それに、夫に内証で外の男愛したら悪いやろけど、女が女恋いするねんよってかめへん。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
安岡は、ふだん
臆病
(
おくびょう
)
そうに見える深谷が、グウグウ眠るのに腹を立てながら、十一時にもなれば眠りに陥ることができた。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
人は無智であるほど勇敢であり、智慧があるほど
臆病
(
おくびょう
)
である。——そしてこの分岐点から、実にドン・キホーテとハムレットが出来るのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そのままでゆけば何でもないのであったけれど……。千穂子は
臆病
(
おくびょう
)
であったために、ふっとした肉体の
誘惑
(
ゆうわく
)
を
避
(
さ
)
けることが出来なかったのだ……。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「いや、それは、他の諸君は……わけても隊長の近藤殿などは……土方殿などになると、近藤殿以上で。……ただ私だけが、
臆病
(
おくびょう
)
だったので……」
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
むしろ
臆病
(
おくびょう
)
なほうだし、君だって、レーニ、一思いにこっちのものになってくれそうにはほんとうに見えなかったからね
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
同じ商売の
臆病
(
おくびょう
)
な連中が一週間かかってもかき集めることのできないくらいの魚を、たった一日でとったものでした。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
平生
(
へいぜい
)
から、
臆病
(
おくびょう
)
ではあるが、早く始末をつけたほうがいいのだ。それに、今日は、なんとなく勇猛心が起こっている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「そうです。若様がたにかぎらず、この頃の青年はどうも
臆病
(
おくびょう
)
でいけません。胆力養成ということが必要です。これはいかがなものでしょうかな?」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
何に対しても無鉄砲で、
放胆
(
ほうたん
)
で、自分勝手だった私は、いつのまにか
臆病
(
おくびょう
)
になり、小胆になり、生きることのおそろしさに身の毛がよだつようである。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
しかし、それかと云って、どうして、自分のような少女の身で、こんなにふるえているような
臆病
(
おくびょう
)
さで、このことを人に知らせることなぞ出来ようか?
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
臆病
(
おくびょう
)
な彼の心は、次第に恥知らずになって、どうかすると卑小な見えのようなものも混ざって、引込みのつかないところまで釣りあげられてしまった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何という
臆病
(
おくびょう
)
な愛の使徒だろうと思った。私は何か言いたかった。けれど伊藤はもう立ち去ろうとしているような風だったので、私も仕方なく答えた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
いつのまか自分でも妙に失態をやったような気になった。
臆病
(
おくびょう
)
に
慚愧心
(
ざんきしん
)
が起こって、世間へ出るのが
厭
(
いや
)
で
堪
(
たま
)
らぬ。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
一歩渦巻にまき込まれてしまえば、
那落
(
ならく
)
までは一息。その途中に思索や反省や
低徊
(
ていかい
)
のひまはない。
臆病
(
おくびょう
)
な悟浄よ。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「いや、貴族は暗黒をいとうものだ、元来が
臆病
(
おくびょう
)
なんだからね。暗いと、こわくて
駄目
(
だめ
)
なんだ。
蝋燭
(
ろうそく
)
が無いかね。蝋燭をつけてくれたら、飲んでもいい。」
朝
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
わが
臆病
(
おくびょう
)
なる心は
憐憫
(
れんびん
)
の情に打ち勝たれて、余は覚えず
側
(
そば
)
に倚り、「何故に泣きたもうか。ところに
繋累
(
けいるい
)
なき
外人
(
よそびと
)
は、かえりて力を
借
(
か
)
し
易
(
やす
)
きこともあらん」
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
神谷は蘭子の
臆病
(
おくびょう
)
を
叱
(
しか
)
ったが、考えてみると、彼女をこのままこの家に置くのは、いかにも危険な話であった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大迫玄蕃、決して
臆病
(
おくびょう
)
な男ではない。が、思わず、声を
呑
(
の
)
んで、白けた眼が、うしろざまに床の間を
顧
(
かえり
)
みた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いや最初からお糸は長吉よりも強かった。長吉よりも
遥
(
はるか
)
に
臆病
(
おくびょう
)
ではなかった。お糸長吉と相々傘にかかれて皆なから囃された時でもお糸はびくともしなかった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
歌手に
小言
(
こごと
)
をいうことはおろか、その
出来栄
(
できばえ
)
を批評することさえ出来ないほど
臆病
(
おくびょう
)
で、「早く上演が済んでくれればよい——」とそればかり念ずる
有様
(
ありさま
)
であった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
仕事は甚しく
臆病
(
おくびょう
)
である。人はこれを丁寧という辞に置きかえる。しかしかかる丁寧さが美を保障すると思ったら間違いである。あの支那の
明
(
みん
)
の染附を想い浮べる。
北九州の窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
お残りは、広い教場へ二人だけ残されるのだ。机を積み重ねた上を渡ったりして二人は仲よく遊んだが、
臆病
(
おくびょう
)
だったあたしは、夕暮ぢかくなると悲しくなりだした。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
診察
(
しんさつ
)
の
時
(
とき
)
、
患者
(
かんじゃ
)
の
臆病
(
おくびょう
)
、
訳
(
わけ
)
の
解
(
わか
)
らぬこと、
代診
(
だいしん
)
の
傍
(
そば
)
にいること、
壁
(
かべ
)
に
懸
(
かか
)
ってる
画像
(
がぞう
)
、二十
年
(
ねん
)
以上
(
いじょう
)
も
相変
(
あいかわ
)
らずに
掛
(
か
)
けている
質問
(
しつもん
)
、これらは
院長
(
いんちょう
)
をして
少
(
すくな
)
からず
退屈
(
たいくつ
)
せしめて
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
次男
臆病
(
おくびょう
)
だよ。すずめみたいだよ。さっき表で見たらね、かあさん、すずめが花火のはじけるたびにとびたって、裏山の方へ逃げてったよ。もう村には、一わもいやしない。
病む子の祭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
私はその間も横目でこっそりと娘の方を
窺
(
うかが
)
いながら、自分の
臆病
(
おくびょう
)
な気持と闘っていた。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
己の死ぬるまでの日数がもう四
分
(
ぶ
)
一は立っているぞ。なに。こう言って話すのが義務だなんぞというのも、やっぱり
自
(
みずか
)
ら欺くので、己が
臆病
(
おくびょう
)
からこんな事をいうのかも知れないよ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
一番目の娘も二番目の娘も、森林を探検し得なかった
臆病
(
おくびょう
)
が露顕して真赤になった。
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
「むろん、あの
臆病
(
おくびょう
)
にそんなことができるはずはありませんがね」と母は笑った。
地球儀
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「ええ、わたしはこの通り
臆病
(
おくびょう
)
な小娘ですのよ」——すなほに
伏目
(
ふしめ
)
を作りながら、千恵は思ふぞんぶんHさんに
凱歌
(
がいか
)
を奏させてあげたのです。それがせめてものお礼ごころなのでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
自分が、
臆病
(
おくびょう
)
な一箇の旅人にふさわしいこの姿でいることを告げたかった。
朝のヨット
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
寒さと暗さとをおそれる
臆病
(
おくびょう
)
な花だけに、あどけなく可愛らしい花です。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
臆
常用漢字
中学
部首:⾁
17画
病
常用漢字
小3
部首:⽧
10画
“臆病”で始まる語句
臆病者
臆病風
臆病心
臆病口
臆病神
臆病窓
臆病蟲
臆病気
臆病犬
臆病癖