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聊
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いささか
ふりがな文庫
“
聊
(
いささか
)” の例文
まづ第一に絹や紙へ、日本絵具をなすりつけて、よくこれ程油絵じみた効果を与へる事が出来たものだと、その点に
聊
(
いささか
)
敬意を表した。
西洋画のやうな日本画
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
尼は当時京都に集まる勤皇の志士から慈母のごとく慕われたが、自らは
聊
(
いささか
)
も表立つことはなく、あくまで女らしい床しさに終始した。
大田垣蓮月尼のこと
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
... 企て候
輩
(
ともがら
)
これあるに於ては、たとへ有司の人たりとも、
聊
(
いささか
)
用捨なく譴責仕り
度
(
た
)
き一統の
赤心
(
せきしん
)
に御座候」(朝廷への「浪士組」建白書)。
新撰組
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
縞の銀杏返の方のが
硝子台
(
がらすだい
)
の
煤
(
すす
)
けた
洋燈
(
ランプ
)
を持っています。ここで、
聊
(
いささか
)
でも作意があれば、青い蝋燭と言いたいのですが、
洋燈
(
ランプ
)
です。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
己はこれまで
謂
(
い
)
はば総ての人の同意を得て生きてゐた。己の周囲には己を援助して生を
聊
(
いささか
)
せしめてくれようと云ふ合意が成立してゐた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
▼ もっと見る
不幸な運命にたいする
聊
(
いささか
)
の不満も示さず、笑いながら先祖のことを話した。彼は見るも愉快なほどの
無頓着
(
むとんじゃく
)
な強健な快活さをそなえていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
次に北斎の描きたる題材の範囲の
浩洋
(
こうよう
)
複雑なるは
独
(
ひと
)
り泰西人のみならず、厳格なる日本の鑑賞家といへどもまた
聊
(
いささか
)
一驚せざるを得ざるべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
香以は今芸人等と対等の交際をする身の上になって、祝儀と云うものは出さぬが、これに
饗
(
きょう
)
する酒飯の価は
聊
(
いささか
)
の売文銭の
能
(
よ
)
く償う所ではなかった。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
翁は其出版を見て
聊
(
いささか
)
喜
(
よろこび
)
の言を
漏
(
も
)
らしたが、五月初旬には
愈
(
いよいよ
)
死を決したと見えて、
逗子
(
ずし
)
なる老父の
許
(
もと
)
と
粕谷
(
かすや
)
の其子の許へカタミの品々を送って来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
得たれば憂うる心は
聊
(
いささか
)
も無い、今は天国に行く喜びに溢れて、
基督
(
キリスト
)
の為に死ぬ時ぞ、これぞ我が勝利、我が幸福——
十字架観音
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
代表し以て一大凱旋祝賀会を開催し兼て軍人遺族を
慰藉
(
いしゃ
)
せんが為め熱誠
之
(
これ
)
を迎え
聊
(
いささか
)
感謝の
微衷
(
びちゅう
)
を表し
度
(
たく
)
就
(
つい
)
ては各位の御協賛を仰ぎ此盛典を挙行するの
幸
(
さいわい
)
を
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
老生の
演
(
の
)
べんとする所は、慶應義塾の由来に
就
(
つ
)
き、
言
(
げん
)
少しく自負に似て俗に
云
(
い
)
う
手前味噌
(
てまえみそ
)
の
嫌
(
きらい
)
なきに
非
(
あら
)
ざれども、事実は座中諸君の記憶に存する通り
聊
(
いささか
)
も
違
(
たが
)
うことなく
〔気品の泉源、智徳の模範〕
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
拙者
(
せっしゃ
)
性癖有
レ
時吸
レ
之、
若而人
(
じゃくじじん
)
欲
レ
停
レ
之未
レ
能、
聊
(
いささか
)
因循至
レ
今、唯
暫
(
しばらく
)
代
レ
酒当
レ
茶
而已歟
(
のみか
)
。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
軽躁惰弱
(
けいそうだじゃく
)
の輩は、その鉤意を察せず、只その甘言に精神を惑溺せられて、清僧の特操を変じて、己が勝手に泥著して、中心の醜拙を現わして、
聊
(
いささか
)
も廉恥の心なく、大切なる本師釈尊の厳規を破り
洪川禅師のことども
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
之に
順
(
したが
)
うも
未
(
いま
)
だ其
生
(
せい
)
を必せず、之に
逆
(
さから
)
うも未だ其死を必せず、
相
(
あい
)
逢
(
あ
)
う
賀蘭山前
(
がらんさんぜん
)
、
聊
(
いささか
)
以
(
もっ
)
て
博戯
(
はくぎ
)
せん、吾何をか
懼
(
おそ
)
れんやと。太祖書を得て
慍
(
いか
)
ること甚だしく、
真
(
しん
)
に兵を加えんとするの意を起したるなり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
車屋や馬車の勇猛なのに、
聊
(
いささか
)
恐れをなしていた私は、こう云う晴れ晴れした景色を見ている内に、だんだん愉快な心もちになった。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたしの敢えて語らんと欲するのは、帝国劇場の女優を中介にして、わたしは
聊
(
いささか
)
現代の空気に触れようと
冀
(
こいねが
)
ったことである。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人の
衣服
(
きもの
)
にも、
手拭
(
てぬぐい
)
にも、
襷
(
たすき
)
にも、
前垂
(
まえだれ
)
にも、織っていたその
機
(
はた
)
の色にも、
聊
(
いささか
)
もこの色のなかっただけ、
一入
(
ひとしお
)
鮮麗
(
あざやか
)
に明瞭に、脳中に
描
(
えが
)
き
出
(
いだ
)
された。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
内外大小事となく善悪とも隠匿致し居り候事ども、
聊
(
いささか
)
憚りなく、筋々へ申し出づべく候。
新撰組
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
「僕もそう思う。只資格を
拵
(
こしら
)
えると云うだけだ。俗に
随
(
したが
)
って
聊
(
いささか
)
復
(
また
)
爾
(
しか
)
りだ」
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
是れも
聊
(
いささか
)
か
面当
(
つらあて
)
だと互に
笑
(
わらっ
)
て、朋友と
内々
(
ないない
)
の打合せは出来た。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
夫人の生前教えたるなるべし。先生は満足そうに微笑していれど、僕は
聊
(
いささか
)
センティメンタルになり、お嬢さんの顔を眺むるのみ。
北京日記抄
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見よ仏蘭西の美術は日本画の影響によりて
聊
(
いささか
)
も本来の面目を
傷
(
きずつ
)
けられたる事なきに反し、日本画は油画のために全くその精神を失ひしに非ずや。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
されども渠は
聊
(
いささか
)
も心に
疚
(
や
)
ましきことなかりけむ、
胸苦
(
むねぐる
)
しき
気振
(
けぶり
)
もなく、静に海野に
打向
(
うちむか
)
ひて
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
貞固のいうには、これは
聊
(
いささか
)
の金ではあるが、矢島氏の禄を受くる周禎が当然支出すべきもので、また優善の修行中その妻鉄をも周禎があずかるが
好
(
い
)
いといった。そしてこの二件を周禎に交渉した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
友だち だから、こんな事を云ひ出すのは、何だか一座の興を
殺
(
そ
)
ぐやうな気がして、
太夫
(
たいふ
)
の手前も、
聊
(
いささか
)
恐縮なんだがね。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたくしが
茲
(
ここ
)
に下谷叢話と題して下谷の家の旧事を記述しようと思立ったのは、これによって
聊
(
いささか
)
災禍の悲しみを慰めようとするの意に
他
(
ほか
)
ならない。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この
聊
(
いささか
)
の音にも驚きたる
状
(
さま
)
して、足を
爪立
(
つまだ
)
てつつ
熟
(
じっ
)
と見て、わなわなと身ぶるいするとともに、
足疾
(
あしばや
)
に
樹立
(
こだち
)
に
飛入
(
とびい
)
る。
間
(
ま
)
。——
懐紙
(
かいし
)
の
端
(
はし
)
乱れて、お沢の白き
胸
(
むな
)
さきより五寸
釘
(
くぎ
)
パラリと落つ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
予は以下にこの異本第三段を紹介して、
聊
(
いささか
)
巴毗弇の前に姿を現した、日本の Diabolus を
一瞥
(
いちべつ
)
しようと思う。
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
老羸
(
ろうるい
)
なほかくの如くにして
聊
(
いささか
)
時運に追随することを得たりとせんか、幸何ぞよくこれに
若
(
し
)
くものあらんや。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
何、何、愚僧が三度息を
吹掛
(
ふきか
)
け、あの
身体中
(
からだじゅう
)
まじなうた。
屑買
(
くずかい
)
が
明日
(
あす
)
が日、奉行の鼻毛を抜かうとも、
嚔
(
くさめ
)
をするばかりで、
一向
(
いっこう
)
に目は附けん。
其処
(
そこ
)
に
聊
(
いささか
)
も懸念はない。が、正直な気のいゝ屑屋だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
狭斜
(
けふしや
)
の
遊
(
いう
)
あるを疑はれしとて、「
家有縞衣待吾返
(
いへにかういありわがかへるをまつ
)
、
孤衾如水已三年
(
こきんみづのごとくすでにさんねん
)
」など云へる詩を作りしは、
聊
(
いささか
)
眉に唾すべきものなれど、
竹田
(
ちくでん
)
が同じく長崎より
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして
聊
(
いささか
)
たりとも荒涼寂寞の思を味い得たならば望外の幸であろうとなした。
百花園
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
看護員は実際その
衷情
(
ちゅうじょう
)
を語るなるべし、
聊
(
いささか
)
も
飾気
(
かざりけ
)
なく
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
従つて読者には、先生がドラマトウルギイを読んでゐると云ふ事が、
聊
(
いささか
)
、唐突の感を与へるかも知れない。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雨の夜のさびしさに書を読みて、書中の人を思ひ、風静なる日その墳墓をたづねて更にその
為人
(
ひととなり
)
を憶ふ。この心何事にも
喩
(
たと
)
へがたし。寒夜ひとり茶を煮る時の情味
聊
(
いささか
)
これに似たりともいはばいふべし。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
二十一、程なく小笠原少斎、紺糸の
具足
(
ぐそく
)
に
小薙刀
(
こなぎなた
)
を
提
(
ひつさ
)
げ、お次迄
御介錯
(
ごかいしやく
)
に参られ候。未だ抜け歯の痛み甚しく候よし、左の頬先
腫
(
は
)
れ上られ、武者ぶりも
聊
(
いささか
)
はかなげに見うけ候。
糸女覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唯、死に際して、
縷々
(
るる
)
予が呪ふ可き半生の秘密を告白したるは、亦以て卿等の為に
聊
(
いささか
)
自
(
みづか
)
ら
潔
(
いさぎよく
)
せんと欲するが為のみ。卿等にして若し憎む可くんば、即ち憎み、憐む可くんば、即ち憐め。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
牛商人が、
聊
(
いささか
)
、意外に思つた位、鋭い、
鴉
(
からす
)
のやうな声で、笑つたのである。
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
眉のうすい、うけ
唇
(
くち
)
の、高慢な顔を、仔細らしくしやくりながら、「さん
谷
(
や
)
土手下にぬしのない子がすててんある」と、そそるのだから、これには私ばかりか、太鼓たちも
聊
(
いささか
)
たじろいだらしい。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
聊
(
いささか
)
、不安になつて来たのである。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
聊
漢検1級
部首:⽿
11画
“聊”を含む語句
無聊
聊爾
聊斎志異
露聊
不聊
無聊至極
無聊頼
聊復爾
聊生
聊齋
鰥居無聊