綾錦あやにしき)” の例文
あくる日、髭そうろうの大尽は、かの五人の手下に言いふくめて、金銀綾錦あやにしきのたぐいの重宝をおびただしく持参させ、かの土塀の家につかわ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日本一にっぽんいちの無法な奴等やつら、かた/″\殿様のおとぎなればと言つて、綾錦あやにしきよそおいをさせ、白足袋しろたびまで穿かせた上、犠牲いけにえに上げたとやら。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのうちでも金襴きんらん羽二重はぶたえ縮緬ちりめん緞子どんす繻珍しゅちん綾錦あやにしき綸子りんず繻子しゅす、モミ、唐縮緬、白地薄絹、絹糸、絹打紐、その他銀塊、薬種等も多く輸入されます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
還って来た時には綾錦あやにしきの衣を着て、その上を海のおおうていた。脱がせて常の麻衣あさごろもに着かえさせると、たちまちにして前の衣裳いしょうが見えなくなったとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
十六人の射手いてが今そこから馬場の中へ乗り込む光景は、綾錦あやにしきに花を散らしたような美しさであります。その十六人は、いずれもみやびたるよろい直垂ひたたれを着ていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
烏帽子えぼし直垂ひたたれ伶人れいじん綾錦あやにしき水干すいかんに下げ髪の童子、紫衣しいの法主が練り出し、万歳楽まんざいらく延喜えんぎ楽を奏するとかいうことは、昔の風俗を保存するとしてはよろしいかもしれぬが
教育と迷信 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
後者は与えられた離れ離れの材料からそれによって合成されうべき可能の圏内に独創機能を働かせて建築を構成し綾錦あやにしきを織り成すものだとも言われないことはないのである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
家貧しければ身には一五三麻衣あさごろも青衿あをえりつけて、髪だもけづらず、くつだも穿かずてあれど、かほ一五四もちの夜の月のごと、めば花の一五五にほふがごと綾錦あやにしき一五六つつめる一五七京女﨟みやこぢよらうにもまさりたれとて
葛籠つづらにいつぱい綾錦あやにしき
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きくひとしく産後の血上り是もつゞきて翌朝よくあさ其若君の御跡したひ終にむなしく相果あひはてたりひとり殘りしばゝがかなしみ何にたとへん樣もなく扨も其後徳太郎樣には御運ごうん目出度めでたくましまし今の公方樣くばうさまとはならせ給ひたりされば娘のもち奉りて若君の今迄御無事にましまさば夫こそ天下樣の落胤おとしだねなれば此ばゝも綾錦あやにしき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
金銀か、珊瑚さんごか、綾錦あやにしきか——相当のものには相違ないと、お蘭どのもあんまり悪い気持はしないらしい。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中は広いのに、ただ狭い一枚襖いちまいぶすまを開けると、どうです。歓喜天の廚子ずしかと思う、綾錦あやにしきを積んだうずたかい夜具に、ふっくりとうずまって、暖かさに乗出して、仰向あおむけに寝ていたのが
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれどもその天井を見ると五色の金襴きんらんあるいは綾錦あやにしきの類をもっておおわれて居る。それから下には諸仏、諸菩薩及び妙王、金剛、薩埵サッタの類の像などが三百余りもあって皆金色こんじきの光を放って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ゆるにつれて、朦朧もうろうとして、白小袖しろこそでくれないはかま、また綾錦あやにしき振袖ふりそでの、貴女たち四五人の姿とともに、中に一人、雪にまがふ、うつくしき裸体の女があつたと思ふと、都鳥が一羽
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蜿蜒ゑんえんとして衣桁いかうに懸る処、恰も異体いたいにして奇紋きもんある一条の長蛇の如く、繻珍しゆちん、西陣、糸綿、綾織繻珍あやおりしゆちん綾錦あやにしき純子どんす琥珀こはく蝦夷錦えぞにしき唐繻子たうじゆす和繻子わじゆす南京繻子なんきんじゆす織姫繻子おりひめじゆすあり毛繻子けじゆすあり。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
俺もこの頃じゃ、大船一艘いっぱい綾錦あやにしきでないまでも、加賀絹、能登羽二重という処を、船も、びいどろにして、金魚じゃないが、あか、白、ひらひらとした処を、上海シャンハイあたりへ積出すほどの決心だ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かく可凄すさまじくもまた可恐おそろしき、大薩摩おほさつまたけなかばにくもつらぬく、大木たいぼくみきたかえだ綾錦あやにしきいとなみ、こゝにむすめきしが、もとよりところえらびたれば、こずゑましらつたふべからず、した谷川たにがはなり。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
娘が惚れた男に添わせりゃ、たとい味噌漉みそこしを提げたって、玉の冠をかぶったよりは嬉しがるのを知らねえのか。はたの目からはむしろと見えても、当人には綾錦あやにしきだ。亭主は、おい、親のものじゃねえんだよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで、綾錦あやにしきえつくとき祖父殿おんぢいどんげて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)