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絢爛
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けんらん
ふりがな文庫
“
絢爛
(
けんらん
)” の例文
三枝子は静枝が自分の前へ来るまで、
孔雀
(
くじゃく
)
のように着飾っている
絢爛
(
けんらん
)
な彼女の着物を観察した。それが三枝子には一つの驚異だった。
接吻を盗む女の話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
美しきものは命短しというをモットーとするように
豪奢
(
ごうしゃ
)
と
絢爛
(
けんらん
)
が極まると直ぐ色
褪
(
あ
)
せてあの世の星の色と清涼に消え流れて行きます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その
絢爛
(
けんらん
)
たる開花の時と
凋落
(
ちょうらく
)
との怖るべき距りに就て、すでにそれを中心にした特異な思考を本能的に所有していると考えられる。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
若し自然にあの
絢爛
(
けんらん
)
な多種多様があり、
独
(
ひと
)
り人間界にそれがなかったならば、宇宙の美と真とはその時に崩れるといってもいいだろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
聴衆の
通
(
つう
)
な人たちが休憩時間に廊下へ出て、その
絢爛
(
けんらん
)
たる演奏に眩惑されたまま、つい激賞する気になったのも無理のないことである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
▼ もっと見る
その人物は皆演劇の型より成れる一定の形式によりて誇張せられ、その彩色は殊更に
絢爛
(
けんらん
)
たらん事を務め全体の調子に注意する処なし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
伸子さん、
既
(
とう
)
に嵐と急迫の時代は去りましたよ。この館も再び
旧
(
もと
)
のとおりに、
絢爛
(
けんらん
)
たるラテン詩と
恋歌
(
マドリガーレ
)
の世界に帰ることでしょう。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
本来、女の酔っぱらいほど醜いものはないのに、これは醜いというよりはかえって、
絢爛
(
けんらん
)
にして、目を奪うという
体
(
てい
)
たらくです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
絢爛
(
けんらん
)
な色彩の古画の諸仏、
羅漢
(
らかん
)
、
比丘
(
びく
)
、
比丘尼
(
びくに
)
、
優婆塞
(
うばそく
)
、
優婆夷
(
うばい
)
、象、
獅子
(
しし
)
、
麒麟
(
きりん
)
などが四壁の紙幅の内から、ゆたかな光の中に泳ぎ出す。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これらの
絢爛
(
けんらん
)
たる
丹青
(
たんせい
)
のなみの中からわきおこる琴曲の音いろと、すべてがあまり美しくて、見る者はむしろ哀愁をおぼえるくらいだった。
日本婦道記:墨丸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは、紅や白に
絢爛
(
けんらん
)
と着飾った美しい乙女の群ではなく、秋の盛りの食卓にならんだ純オランダ田園風の大ご馳走であった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
絢爛
(
けんらん
)
たる才気と洗錬された趣味と該博な知識とを
有
(
も
)
った・
端倪
(
たんげい
)
すべからざる才人だった。しかも彼は何を為したか? 何事をもしなかった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
いや、あの
鼈甲牡丹
(
べっこうぼたん
)
のように、
絢爛
(
けんらん
)
華麗な文章丈を取っても、優に明治文学の代表者として、推す価値が十分だと思うのです。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
空はリキュール酒のようなあまさで、夜の街を覆うと、
絢爛
(
けんらん
)
な渦巻きがとおく去って、女の靴の
踵
(
かかと
)
が男の
弛緩
(
しかん
)
した神経をこつこつとたたいた。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
室内は、こんな貧弱な船に似合わず、
絢爛
(
けんらん
)
眼をうばう大した装飾がしてあって、まるで中国のお寺にいったような気がする。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
斯
(
か
)
くの如く天平期の日本芸術の美は
絢爛
(
けんらん
)
を極めているが言い得べくんばこれはすべて完成
綜合
(
そうごう
)
の美であって、真の意味での新らしい芽は無い。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
そして重いほど咲き満ちた糸桜が廻廊の杉戸へ
胡粉
(
ごふん
)
のように吹き散ってゆく
絢爛
(
けんらん
)
な眺めも今の心には何の慰めにもならない。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梶は場中の華形ばかりをよせ集めた
絢爛
(
けんらん
)
さに取り囲まれ、いつの間にか、各席の視線を吸いとっている自分が不思議だった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかもみな
彩色
(
さいしき
)
の新版であるから、いわゆる
千紫万紅
(
せんしばんこう
)
の
絢爛
(
けんらん
)
をきわめたもので、眼も
綾
(
あや
)
というのはまったく此の事であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
なにしろ
絢爛
(
けんらん
)
無双
(
ぶそう
)
だから、長篇でも短篇でも愉快だった。しかし評判の「マドモアゼル・モオパン」も西洋人のいうほどありがたくはなかった。
仏蘭西文学と僕
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その頭上に、七月の太陽が、カアッと一面に反射して、すべては
絢爛
(
けんらん
)
と光り
輝
(
かがや
)
き、明るさと
眩
(
まぶ
)
しさに息づいているのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そして別の人は和泉に父をもつ
猟夫
(
さつお
)
であった。衣裳のはやりと
絢爛
(
けんらん
)
を尽くした平安朝の夕々は、むしろ
藍
(
あい
)
ばんだというよりも濃い紫を溶き分けた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
律動
(
リズム
)
と
和声
(
ハーモニー
)
との珍しい発見物、
光沢
(
こうたく
)
のある柔らかい
精緻
(
せいち
)
な織物の配列、色彩の
絢爛
(
けんらん
)
、発明力と機智との不断の傾注、などを認めざるを得なかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
絢爛
(
けんらん
)
豪奢
(
ごうしゃ
)
に出来ているところの、この人形は穢い部屋の中に、高貴高価そのもののように、燦然として静もっていた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
絢爛
(
けんらん
)
な
薬玉
(
くすだま
)
を幾
条
(
すじ
)
も
聯
(
つら
)
ねたようです。城主たちの夫人、姫、奥女中などのには金銀珠玉を
鏤
(
ちりば
)
めたのも少くありません。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なにごともなかったような、
絢爛
(
けんらん
)
として頽廃的な浅草の雑沓。金五郎は、眼がちかちかし、
眩
(
まぶ
)
しくて仕方がなかった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
姉上、これでいくらかはこの都の持つ華麗さ、
絢爛
(
けんらん
)
さ、高雅さが貴女にも御想像がお付きになりましたでしょうか?
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
朝ぼらけの
靄
(
もや
)
の間にはいろいろの花の木がなお女王の心を春に
惹
(
ひ
)
きとどめようと
絢爛
(
けんらん
)
の美を競っていたし春の小鳥のさえずりも笛の声に劣らぬ気がして
源氏物語:41 御法
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
一生にたった一度より外は持てない親——彼の父親は最早この
絢爛
(
けんらん
)
な空気を呼吸してはいない——たった一人の片親である母親を養わなければならない。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
ある植物——
否
(
いな
)
、すべての植物の姿態が彼には不満であった。その
絢爛
(
けんらん
)
なることもあまりに強烈で、情熱的で、ほとんど不自然と思われるほどであった。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
しかしその途端、突然襖があき、いつもにまして
絢爛
(
けんらん
)
な装ひをした君香が入つて来るか否や、「貴方お
検
(
しら
)
べよ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
見られよ、あの苦心になる
絢爛
(
けんらん
)
な
柿右衛門
(
かきえもん
)
の
赤絵
(
あかえ
)
に対し、
明
(
みん
)
代の
下手
(
げて
)
な五彩は圧倒的
捷利
(
しょうり
)
を示すではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「ソレごろうじろ。かかる老骨では、
絢爛
(
けんらん
)
をきわめるかの護摩堂の人柱には、役だち申さぬ、アア助かった」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そして激烈な信仰や美しい
詩歌
(
しいか
)
や
絢爛
(
けんらん
)
たる美術は、すべてこの暗黒を土壌として生育しているようである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
絵の方とてもその通り、
雲谷
(
うんこく
)
、
狩野
(
かのう
)
の
寂
(
さ
)
びもよかろう、時にはわれわれの筆のあとの、
絢爛
(
けんらん
)
華美の画風の
中
(
うち
)
にも、気品も雅致もあるのを知ってもよいと思うがな。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
地下室の豪華
絢爛
(
けんらん
)
さに比べると二階はさながらに廃屋みたような感じである。窓が多くて
無闇
(
むやみ
)
に明るいだけに、粗末な壁や、ホコリだらけの板張が一層浅ましい。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
浅草的な雰囲気とちがったものをあざやかに私たちに感じさせつつ、その
絢爛
(
けんらん
)
たる流れは、まっすぐ、田原町の電車、バス、地下鉄の停車場へと流れて行くのだ。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
絢爛
(
けんらん
)
の域を
超
(
こ
)
えて平淡に
入
(
い
)
るは自然の順序である。我らは
昔
(
むか
)
し赤ん坊と呼ばれて赤いべべを着せられた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
体を包む
絢爛
(
けんらん
)
な衣は、細い緻密な線と、陰影を現わす巧みなくま取りとで描かれているが、その衣の薄さや柔らかさに至るまで遺憾なく表現し得たといってよい。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
かつて
絢爛
(
けんらん
)
豪華な宮殿に、多くの侍女にかしずかれて過した人の住居とは、到底、信じられなかった。
現代語訳 平家物語:13 灌頂の巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
以上の話は、先生が大患以後、活力をとり戻され、それが異常な発展をとげて、
絢爛
(
けんらん
)
たる研究生活にはいられる転換期の四、五年間のことを主に書いたことになる。
寺田寅彦の追想
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
即ちこれを詩章の
竜葢帳
(
りようがいちよう
)
中に据ゑて、黒衣聖母の観あらしめ、
絢爛
(
けんらん
)
なること絵画の
如
(
ごと
)
き幻想と、整美なること
彫塑
(
ちようそ
)
に似たる夢思とを
恣
(
ほしいまま
)
にしてこれに生動の気を与ふ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
そんなに
絢爛
(
けんらん
)
たる面貌にくらべて、四肢の貧しさは、これまた驚くべきほどであった。身長五尺に満たないくらい、痩せた小さい両の掌は
蜥蜴
(
とかげ
)
のそれを思い出させた。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
前略、古来小区域に
跼蹐
(
きょくせき
)
して
陳套
(
ちんとう
)
を脱するあたわざりし桜花がいかに新鮮の空気に触れて
絢爛
(
けんらん
)
の美を現したるかは連日掲載の短歌を見し人の熟知するところなるべし。
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
ようやく安心して描き上げたのが
絢爛
(
けんらん
)
無比の満山紅葉の図、以上の諸大家さすがに名人肌であった。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
さう周圍が眞暗なため、
店頭
(
みせさき
)
に點けられた幾つもの電燈が驟雨のやうに浴せかける
絢爛
(
けんらん
)
は、周圍の何者にも奪はれることなく、
肆
(
ほしいまま
)
にも美しい眺めが照し出されてゐるのだ。
檸檬
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
絢爛
(
けんらん
)
たる歌舞伎の舞台に、『京鹿子娘道成寺』の所作事を演じつつある名代役者が、蛇体に変じるため、造りものの鐘にはいったまま、無人の内部で、何者かのために殺害され
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
彼は不様な格好で、這いつくばい、壁に鼻の頭をすりつけて、
辛棒
(
しんぼう
)
強く、小さな穴を覗き込むのだが、その向う側には、凡そ奇怪で
絢爛
(
けんらん
)
な、地獄の覗き絵がくりひろげられていた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
窓々のどつしりした
絢爛
(
けんらん
)
な模様の
緞子
(
どんす
)
のカーテンが明暗を調節した
瀟洒
(
せうしや
)
な離れの洋館で、花に疲れた一同は中央の真白き布をしたテエブルに集まつて、お茶を飲み、
点心
(
てんじん
)
をつまみ
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
院が良経と俊成・定家との一群の新傾向を
嘉
(
よみ
)
されたところに、『新古今』の大体の特色の生れるもとがあったが、一首一首を錦繍のように豪奢で
絢爛
(
けんらん
)
な歌ばかりで
揃
(
そろ
)
えられたのは
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
絢
漢検準1級
部首:⽷
12画
爛
漢検1級
部首:⽕
21画
“絢爛”で始まる語句
絢爛美衣
絢爛豪奢