紅梅こうばい)” の例文
紅梅こうばいが美くしかつた。帰りに画室にお寄りしていろいろのを見せて貰つた。こんな部屋がしいなどゝ珈琲こーひを飲みながら思つて居た。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
庭には沈丁花ちんちょうげあまが日も夜もあふれる。梅は赤いがくになって、晩咲おそざき紅梅こうばいの蕾がふくれた。犬が母子おやこ芝生しばふにトチくるう。猫が小犬の様にまわる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
紅梅こうばい入りの薄葉うすように美しい手蹟で、忠助にかぎってそんな大それたことをするはずがないと、そのひとつことばかり、くりかえしくりかえし書いてあった。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と云い張り、幾ら留めてもかず遂に江戸町えどちょう一丁目辨天屋べんてんやの抱えと成って名を紅梅こうばいと改め、武士さむらいの行方を探すと云う亭主の敵討かたきうちの端緒でございます。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
風もないのに、紅梅こうばい白梅はくばいの花びらが、ばしの水に点々てんてんとちって、そのにおいがあやしいまでやみにゆらぐ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樹々きゞえだのこンのゆきも、ちら/\とゆびかげして、おほいなる紅日こうじつに、ゆきうすむらさきたもとく。なん憧憬あこがるゝひとぞ。うたをよみてえだ紅梅こうばいつぼみかんとするにあらず。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
椿つばき紅梅こうばいの花に降る春の雪はまた永遠に友禅模様の染色そめいろの如く絢爛けんらんたるべし。婦女の頭髪は焼鏝やきごてをもて殊更ことさらちぢらさざる限り、永遠に水櫛みずくしびんの美しさを誇るに適すべし。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
が、その石塔が建った時、二人の僧形そうぎょう紅梅こうばいの枝をげて、朝早く祥光院の門をくぐった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
最初、国経が御簾の蔭へ手をさし入れると、御簾のおもてが中からふくらんで盛り上って来、紫や紅梅こうばいや薄紅梅やさま/″\な色を重ねた袖口が、夜目よめにもしるくこぼれ出して来た。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かれはまた柘榴ざくろ柚子ゆず紅梅こうばい、……ずいぶん枯れてしまいましたね、かしわあんずかき、いたや、なぞはまるで見ちがえるように、枝にもこぶがついて大した木にふとっていますな、時時
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
七歳の時紅梅こうばいを御覧じて「梅の花紅脂べにのいろにぞ似たる哉阿古あこが顔にもぬるべかりけり」十一の春(斉衡二年)父君より月下梅げつかのうめといふだいを玉ひたる時即坐そくざに「月カヽヤクハハル、 ...
むかしおもへばしのぶおかかなしき上野うへの背面うしろ谷中や かのさとにかたばかりの枝折門しをりもんはるたちどまりて御覽ごらんぜよ、片枝かたえさしかきごしの紅梅こうばいいろゆかしとびあがれど、ゆるはかやぶきの軒端のきばばかり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みちのべにさゝ紅梅こうばいもいとし子が夢にほゝゑむくちかとぞ見る
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜はふけてくるほど、草にも花にもあまれて、あとはただばし紅梅こうばいが、築地ついじをめぐる水の上へ、ヒラ、ヒラと花びらくろく散りこぼれているばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
椿つばき紅梅こうばいの花に降る春の雪はまた永遠に友禅模様の染色そめいろの如く絢爛けんらんたるべし。婦女の頭髪は焼鏝やきごてをもて殊更ことさらちぢらさざる限り、永遠に水櫛みずくしびんの美しさを誇るに適すべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
七歳の時紅梅こうばいを御覧じて「梅の花紅脂べにのいろにぞ似たる哉阿古あこが顔にもぬるべかりけり」十一の春(斉衡二年)父君より月下梅げつかのうめといふだいを玉ひたる時即坐そくざに「月カヽヤクハハル、 ...
ご存じの楚蟹ずわえの方ですから、何でも茨を買って帰って——時々話して聞かせます——一寸いっすん幅の、ブツぎりで、雪間ゆきま紅梅こうばいという身どころをろうと、家内と徒党をして買ったのですが
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてこれは外題げだい心眼しんがんまうす心のといふお話でござりますが、物の色をで見ましても、たゞあかいのでは紅梅こうばい木瓜ぼけの花か薔薇ばら牡丹ぼたんわかりませんが、ハヽア早咲はやぎき牡丹ぼたんであるなと心で受けませんと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
紅梅こうばいの花をけたつぼ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
太鼓たいこに、道の紅梅こうばいは散りしき、ふえにふくらみだすさくらのつぼみ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、その小さなのを五、六本。園女そのじょの鼻紙の間に何とかいうすみれに恥よ。懐にして、もとの野道へ出ると、小鼓は響いて花菜はななまばゆい。影はいない。——彼処かしこに、路傍みちばたに咲き残った、紅梅こうばいか。いや桃だ。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紅梅こうばいに雪のふる日や茶のけいこ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
紅梅こうばいの花をけたつぼ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「大紋の紅のものの広袖ひろそで。裏はもみ紅梅こうばい銀摺ぎんずりの小袖をこそ賜われ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うすい紅梅こうばい、やぶつばき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
紅梅こうばいめぐって
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)