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窺
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のぞ
ふりがな文庫
“
窺
(
のぞ
)” の例文
顎から胸へかけて、
夥
(
おびただ
)
しく血を流し、いまはもう、目を逆釣らせてしまった、哀れな男の顔を
窺
(
のぞ
)
き込んで、菊之丞は涙をこぼした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
お勢が
開懸
(
あけか
)
けた障子に
掴
(
つか
)
まッて、出るでも無く出ないでもなく、唯
此方
(
こっち
)
へ背を向けて
立在
(
たたず
)
んだままで坐舗の
裏
(
うち
)
を
窺
(
のぞ
)
き込んでいる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
でも、そんな事があり得ようか、もう一度見直したいと思うが、もう次の間との境の扉も閉められたので、室内は
窺
(
のぞ
)
き見るよしもなかった。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
暫くの間、私はこのあたりに無言でせっせっと
鍬
(
くわ
)
を入れて来た自分の相棒の内生活を
窺
(
のぞ
)
く興味に
溢
(
あふ
)
れ、なお高次郎氏の歌集を読んでいった。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
さう言ふ若樣の——武藝や學問に縁のなささうな顏が、椽側の向うから
窺
(
のぞ
)
いて居るのが見えますが、これも押して訊くわけにも參りません。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
して藻西は今何をして居る番「私しは役目通り今まで彼れを
窺
(
のぞ
)
いて居ましたが、彼れ
疾
(
と
)
くに後悔を初めたと見え泣て居ますよ、 ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
私は豪華なその一册を自分自身の胸に抱き、疊の上に寢そべるやうにして、古ぼけた洋書のつまつてゐる最下段を
窺
(
のぞ
)
いた。
おばあさん
(旧字旧仮名)
/
ささきふさ
(著)
此處では先づ用意して行つた魚の腸(臭い程いゝの故、腐つてゐればなほよし)を海中に投じ、徐ろに其處等の岩や石の間を
窺
(
のぞ
)
いてゐるのです。
樹木とその葉:33 海辺八月
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
寝室の中には
燈
(
ともしび
)
の光がきらきらと輝いて、細君はまだ寝ずに
何人
(
なんぴと
)
かとくどくどと話していた。周は窓を
舐
(
な
)
めて
窺
(
のぞ
)
いてみた。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
隣の男は帰って往ったが、その夜友達と相談して
妓
(
げいしゃ
)
を
伴
(
つ
)
れて往って、垣に
梯
(
はしご
)
をかけて門の中に入れて扉をことことと叩かした。桑はちょっと
窺
(
のぞ
)
いて
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一枚開けた障子の
隙
(
すき
)
から、漆のような黒い水に、枯れ
蓮
(
はす
)
の茎や葉が一層くろぐろと水面に伏さっているのが
窺
(
のぞ
)
かれる。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
夏の事とて明け放した下座敷を
窺
(
のぞ
)
きながら、お千代が窓のそばへ
蹲踞
(
しゃが
)
んで足の爪を切っている姿を見るや、
否
(
いな
)
や、また例の
〆
(
しま
)
りのない
粗雑
(
ぞんざい
)
な調子で
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
中は
空
(
うつ
)
ろで、きれ仕立ですから、瓜の合せ目は直ぐ分りました。が、これは封のあるも同然。神の料のものなんです。参詣人が勝手には
窺
(
のぞ
)
けません。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見張りの眼を巧みに潜ってきた銀之丞が、閉め切った本堂の雨戸の隙間からチラチラ洩れる火影を
窺
(
のぞ
)
いてみると、正しく天下晴れての
袁彦道
(
ばくち
)
の真盛り。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「恐いね、女の外科手術なんざァ」泊まっている学生たちが手術室を
窺
(
のぞ
)
いて、そんな失敬なことをいっていた。
浅間山麓
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
小綺麗
(
こぎれい
)
なメリンスの
掛蒲団
(
かけぶとん
)
をかけて
置炬燵
(
おきごたつ
)
にあたりながら気慰みに
絽刺
(
ろさ
)
しをしていたところと見えて、右手にそれを持っている。私は窓の横から
窺
(
のぞ
)
きながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
何んだろうと
窺
(
のぞ
)
いて見るとお勝さんが、疑いを掛けたその裏長屋の泥棒猫を
捉
(
つか
)
まえて、コン畜生、々々といって力任せに
鼻面
(
はなづら
)
を板の
間
(
ま
)
へ
擵
(
こす
)
り附けております。
幕末維新懐古談:17 猫と鼠のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
おせんの
裸
(
はだか
)
を
窺
(
のぞ
)
こうッてえのは、まず
立派
(
りっぱ
)
な
智恵
(
ちえ
)
だがの。おのれを
忘
(
わす
)
れて
乗出
(
のりだ
)
した
挙句
(
あげく
)
、
垣根
(
かきね
)
へ
首
(
くび
)
を
突
(
つ
)
っ
込
(
こ
)
んだんじゃ、
折角
(
せっかく
)
の
趣向
(
しゅこう
)
も
台
(
だい
)
なしだろうじゃねえか
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
又
窺
(
のぞ
)
いて見ると、「聽えませんか、ゐないのですか」とをめいてるその前を、職人體の男と女學生とどこかの夫人が別々にじろ/\見返りながら通つて行く。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
あの二重眼鏡で世界を
窺
(
のぞ
)
くと、山も森も林も草も、凡ての緑色のものが、血の様に真赤に見えるね。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
店で帳合いをしていた新吉が、不意に「アア。」と溜息を吐いて、これもつまらなさそうな顔をして奥を
窺
(
のぞ
)
きに来る。お作は赤い顔をして、急いで鏡に被いをしてしまう。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
怨夢
(
えんむ
)
はすでに去ったるも、怨夢の去りし
牖
(
まど
)
の
孔
(
あな
)
より世界は白き視線を投げて彼が顔をさし
窺
(
のぞ
)
けり、力なげに戸をあくれば、天は大いなる空を開きて未明より罪人を捜しおり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
そんな風に言いながら、幾日も顔を見せなかった博士が、突然に私の部屋を
窺
(
のぞ
)
き込むのであった。私はぞっとする。私は驚異の眼を睜るだけで何も答えることが出来なかった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
勿論太陽を
窺
(
のぞ
)
く
目鏡
(
めがね
)
は光線を避ける為に黒く塗ってある、しかしそれですらも
眩
(
まぶ
)
しくて見ていることが出来ぬ。いわば肉眼で常の太陽を見る様なものだ、強いて見ていれば目が
潰
(
つぶ
)
れるのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
道々、雪のなかに立ちつくして煤硝子で
窺
(
のぞ
)
いている人にたくさん会う。電車のなかでも、みんなが機嫌よく半分虧けた赤い太陽を指差しながら話し合っている。いつもの喧嘩腰の騒ぎもない。
日食記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
藤八 (孫助と出入口を開けて、
窺
(
のぞ
)
く。共に忠太郎に好意を持っていない)
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
最初の裡こそ私は単なる好奇心を以て
窺
(
のぞ
)
いて居たのでありましたが、閣下よ、次の如き内儀の吐いた言葉を突如耳にして、ギクリと心臓の突き上げられる様な病的な驚愕を覚えたのであります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
え、あなた、と顔を
窺
(
のぞ
)
き込みぬ。人を
惹
(
ひ
)
く風情はさらなり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
窺
(
のぞ
)
いているのも知らないで
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
お勢は
大榎
(
おおえのき
)
の
根方
(
ねがた
)
の所で立止まり、
翳
(
さ
)
していた
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
をつぼめてズイと一通り
四辺
(
あたり
)
を
見亘
(
みわた
)
し、
嫣然
(
えんぜん
)
一笑しながら昇の顔を
窺
(
のぞ
)
き込んで、唐突に
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
兩人
(
ふたり
)
の病人を殘して夫婦とも何處へ行つたのだらうと一度昇りかけた
階子段
(
はしごだん
)
から降りて子供の寢てをる
室
(
へや
)
を
窺
(
のぞ
)
いて見ると
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
金の母親の出ていく時、庚娘は後にいて、そっとそれを
窺
(
のぞ
)
いていたが、一家の者が尽く溺れてしまったことを知ると、もう驚かなかった。ただ泣いて
庚娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
わたくしは踊子と共に舞台裏へ降りて、女たちが揃って足を
蹴
(
け
)
上げる芸当を、背景の間から
窺
(
のぞ
)
いて見ることもある。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
馬は陶の家の門口が市場のようにやかましいのを聞いて、へんに思って往って
窺
(
のぞ
)
いてみた。そこには
市
(
まち
)
の人が集まってきて菊の花を買うところであった。
黄英
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「僕は、お前とここで話しをしているねえ」柳沢はふざけたようにも一人の女の顔を
窺
(
のぞ
)
くように見ていった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
お作はこんもりした
杜松
(
ひば
)
の陰を脱けて、湯殿の横からコークス殻を敷いた水口へ出た。障子の蔭からそっと台所を
窺
(
のぞ
)
くと、誰もいなかったが、台所の模様はいくらか変っていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうだ、
姐
(
ねえ
)
さん。こいつァ
何
(
なに
)
も、あっしらばかりの
見得
(
みえ
)
じゃァごあんせんぜ。
春信
(
はるのぶ
)
さんの
絵
(
え
)
で
売
(
う
)
り
込
(
こ
)
むのも、
駕籠
(
かご
)
から
窺
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
せてやるのも、いずれは
世間
(
せけん
)
へのおんなじ
功徳
(
くどく
)
でげさァね。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
その考案は——詳しくは遠慮するが——頗る巧妙にされたもので、これならば金庫であることに相違なし、一点の疑いを起させる余地もないほど、叩いても
窺
(
のぞ
)
いても変ったところが少しもない。
奇術考案業
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
銃器室の窓から其の中を
窺
(
のぞ
)
いて見た、読者諸君よ、此の時の余の驚きは、仲々「驚き」など云う人間の言葉で盡され可き訳な者でない、毛髪悉く逆立った、其のまま身体が化石するかと疑った
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
お
窺
(
のぞ
)
きになれば見えます。今は暗うございますから、よくはお見えにならないでしょうが、これからお茄子でも胡瓜でもずいぶんたくさんなります、家族だけではとても喰いきれないほどで——
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
兄妹はメニュを
窺
(
のぞ
)
き込んで、やっと判読することが出来た。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
板の隙間から
窺
(
のぞ
)
いている光景で御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ト云いながら昇が
項垂
(
うなだ
)
れていた首を振揚げてジッとお勢の顔を
窺
(
のぞ
)
き込めば、お勢は
周章狼狽
(
どぎまぎ
)
してサッと顔を
※
(
あか
)
らめ、漸く聞えるか聞えぬ程の小声で
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
湯から出てそこ等を
窺
(
のぞ
)
いてみると座敷から廊下からすべてこの代赭色の鮮かな木の実で充満しているのであった。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
そして、後で何もなかったということを知ったので、母がそっといって
窺
(
のぞ
)
いて見た。やはり石ころが土の中に雑っているばかりであった。そこで母が返った。
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「私です、わたしです」と自分の名をいうと、母親はそうっと、五、六寸潜戸を
開
(
あ
)
けて、内から
胡散
(
うさん
)
そうに外を
窺
(
のぞ
)
いて見たが、そこには私が突っ立っているので
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
主人は不思議に思って、ある時そっと
窺
(
のぞ
)
いてみると、
室
(
へや
)
の中に胡はいなくて一疋の狐がいた。
胡氏
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
素見客
(
ひやかし
)
が五六人来合すのを待って、その人達の蔭に姿をかくし、溝の
此方
(
こなた
)
からお雪の家を
窺
(
のぞ
)
いて見ると、お雪は新形の髷を元のつぶしに結い直し、いつものように窓に坐っていた。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
下剃
(
したぞり
)
一人
(
ひとり
)
をおいて
出
(
で
)
られたのでは、
家業
(
かぎょう
)
に
障
(
さわ
)
ると
思
(
おも
)
ったのであろう。一
張羅
(
ちょうら
)
の
羽織
(
はおり
)
を、
渋々
(
しぶしぶ
)
箪笥
(
たんす
)
から
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たお
花
(
はな
)
は、
亭主
(
ていしゅ
)
の
伝吉
(
でんきち
)
の
袖
(
そで
)
をおさえて、
無理
(
むり
)
にも
引止
(
ひきと
)
めようと
顔
(
かお
)
を
窺
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
んだ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
弟の
窺
(
のぞ
)
いてゐるあたまの上から、脊の高い姉の顏も見えてゐた。
泡鳴五部作:01 発展
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
窺
漢検準1級
部首:⽳
16画
“窺”を含む語句
窺知
窺見
窺視
差窺
窺窬
窺伺
窺寄
窺得
窺測
窺覗
窺込
管窺
自能窺宋玉