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疾
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と
ふりがな文庫
“
疾
(
と
)” の例文
「昼が夜になったり、春が夏になったり、若いものが年寄りになったり、するのと同じ事かな。それなら、おれも
疾
(
と
)
くに心得ている」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかしながらおそらく、アメリカ発見の結果生じた所の、金属の価値に対するあらゆる影響は、
疾
(
と
)
うに終ってしまっているであろう。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
お父様が古かね屋にでも
遣
(
や
)
っておしまいなさるお積で、
疾
(
と
)
うから蔵にしまってあったのを、引き出してお置になったのかも知れない。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
跡から
填合
(
うめあはせ
)
をいたせば宜しいのです。わたくしは
疾
(
と
)
うからあなたの所へ参詣しようと思つてゐました。それからお手紙も上げました。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
既に畑に到れば斥候ら高地に上って四望し、その他はすこぶる
疾
(
と
)
く糧を集め、
頬嚢
(
きょうのう
)
に溢るるばかり詰め込んだ後多くの穂を脇に
挟
(
はさ
)
む。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
▼ もっと見る
……後で、三郎兵衛ひとりが見えぬと
躁
(
さわ
)
ぎ立てれば、はや、ここのお座所さえ、安全ではございません。
疾
(
と
)
く、お立ち退きの御用意を
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
素
(
もと
)
より奥向きへは出入りを許されていなかったので、まだ桔梗の方の顔を見たこともなく、美人の噂は
疾
(
と
)
くより耳にしているものゝ
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お前の妻ノブ子の行為は
疾
(
と
)
くに察知していたところであるが、
余等
(
よら
)
は逆に彼女の手を利用し、虚偽の暗号電報を彼女に盗読せしめて
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
伝うるところによると、机竜之助なるものは、もはや
疾
(
と
)
うの昔に死んでいるそうだ。その生命は亡き者の数に入っているのだそうだ。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
朝日は既に東の山を離れ、
胡粉
(
こふん
)
の色に木立を掃いた
靄
(
もや
)
も、次第に淡く、小川の上を
掠
(
かす
)
めたものなどは、もう
疾
(
と
)
くに消えかけていた。
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と細君は十数年の同棲でもう
疾
(
と
)
うに対等の権利を獲得しているから、思ったことは何でも口に出す。時には意見めいたことまでも言う。
小問題大問題
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
文字の発明は
疾
(
と
)
くに人間世界から伝わって、彼らの世界にも知られておったが、総じて彼らの間には文字を
軽蔑
(
けいべつ
)
する習慣があった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
かく萬有の次第を立つる神の攝理は、いと
疾
(
と
)
くめぐる天をつゝむ一の天をば、常にその光によりてしづかならしむ 一二一—一二三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その友の一人なる壮年なりき、突然とし彼は
曰
(
い
)
えり、「佐太郎和主も来たり見よげに希代のものを捜し出せり、
疾
(
と
)
く疾く疾く来よ」
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
領主 (柩の
蓋
(
ふた
)
をはずし、死せる公子の姿を現わす、屍は白き花を以て飾られたり)この屍に罪を謝し、
疾
(
と
)
く月桂冠を取りはずせ!
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そウら見さっしゃい、印象派の表現派のとゴテ付いてるが、ゴークやセザンヌは
疾
(
と
)
っくに俺がやってる哩」とでも
脂下
(
やにさが
)
ってるだろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
もう
疾
(
と
)
うに故人になられましたが、この山林会あるいは農会等に非常に関係の深かった田中芳男先生には私も大変お世話になりました。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
もう
疾
(
と
)
っくにその素晴らしい馬車は通り過ぎて影も形も見えなくなってしまったのに、何時までもぼんやりと突っ立っているのである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
僕は
疾
(
と
)
うから御両君の家へ上らねばならんのだが、何を隠そう大失敗をやらかして一時は
殆
(
ほとん
)
ど死ぬかと思った。実はこういう
訳
(
わけ
)
さ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
札はどちらも
疾
(
と
)
つくに売り切れた。これまで度度難儀に逢つて来た市立劇場の座主は、妬ましげに此人気を見てゐる。いやはや。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
実際妻が
身体
(
からだ
)
を壊す迄働いて月々
纔
(
わづか
)
に
得
(
う
)
る参拾伍六円の収入が無かつたなら眞田の親子六人は
疾
(
と
)
くに養育院へでも送られて居たであらう。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
結婚の相手の令嬢も、
疾
(
と
)
っくに内定してある。令嬢フィニイはキルヒネツグ領のキルヒネツゲル伯爵夫人になるのが本望である。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
自分が今催促されて参入する
気忙
(
きぜわ
)
しさに、思慮分別の
暇
(
いとま
)
も無く、よしよし、さらば此の石帯を貸さんほどに
疾
(
と
)
く疾く
主人
(
あるじ
)
が
方
(
かた
)
にもて行け
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
櫻の花は
疾
(
と
)
うに散つてしまつた。桃の花も散つた。山吹も散つた。藤の花も色が褪せてしまつた。最う牡丹を見に行く人もない。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
夕方学校から帰ると、伯父さんの先生はもう
疾
(
と
)
うに役所から
退
(
ひ
)
けていて、私の帰りを待兼たように、後から後からと用を
吩咐
(
いいつけ
)
る。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
姫はかく我友をいたはりつゝ、血の色全く
失
(
う
)
せたる面を擧げて、我を凝視せり。媼は我臂を搖り動かして、
疾
(
と
)
く此場をと呼べり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
お雪は薄暗い
燈
(
ともしび
)
の影に、濡れしおれた髪を振って、
蒼白
(
あおじろ
)
い顔を上げた。理学士の耳にも正に滝太郎の声である、と思うも
疾
(
と
)
しや!
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
為
(
な
)
す事もあらねば、貫一は
疾
(
と
)
く
臥内
(
ふしど
)
に入りけるが、
僅
(
わづか
)
に
眊
(
まどろ
)
むと為れば
直
(
ぢき
)
に、
寤
(
さ
)
めて、そのままに
睡
(
ねむり
)
は
失
(
うす
)
るとともに、様々の事思ひゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それからだんだん聞きあわせると、当時の被害者は
疾
(
と
)
うに世を去ってしまって、その遺族のゆくえも判らないので、彼はいよいよ失望した。
春の修善寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「それにこの森はすっかりおれの森なんだからさっきのように勝手にわらびなんぞ取ることは
疾
(
と
)
うに差し止めてあるんだぞ。」
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
安養寺、言葉なく、「日頃のお馴染に
疾
(
と
)
く疾く首をはねられ候え」と云ったが、「汝は仔細ある者なれば先ず若者共のとりたる首を見せよ」
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
世界中どこへ行っても、いかなる形でか
亜米利加
(
アメリカ
)
がついてまわるのは
疾
(
と
)
うに覚悟のまえだが、この美国汽車
福特
(
フォウド
)
号にはちとおどろかされる。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
して藻西は今何をして居る番「私しは役目通り今まで彼れを
窺
(
のぞ
)
いて居ましたが、彼れ
疾
(
と
)
くに後悔を初めたと見え泣て居ますよ、 ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
『
打明
(
うちあ
)
けて
申
(
もう
)
しますとな、エウゲニイ、フェオドロイチもう
私
(
わたくし
)
は
疾
(
と
)
うからこんなことになりはせんかと
思
(
おも
)
っていましたのさ。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「その死刑囚も、もう
疾
(
と
)
うの昔、発狂し、自殺を遂げてしまいました」と云って、尾越は少時瞑目した。やがて言葉をつぎ
深夜の客
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
こう考えたからと言って自慢になるものではないが、
若
(
も
)
しかしたなら彼は
疾
(
と
)
うにあの郵便局へ
闖入
(
ちんにゅう
)
していたのかも知れない。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
平「ヘエ……おい、お前
私
(
わし
)
が迷惑するよ、冗談じゃアない、困るよ、
疾
(
と
)
うに金は届いてる
処
(
とこ
)
へ又百両持って来るてえのは
訝
(
おか
)
しいじゃアないか」
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そういう理由は大抵向うが有力だと感じてくれるからね。一体もう
疾
(
と
)
うから僕は
不確
(
ふたしか
)
な診断に悩まされて、我慢がし切れなくなっていたからね。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
しかもその多くのものは
疾
(
と
)
くの昔に家号を忘却し、または最初から家号がなくして、十数代も何村何兵衛で通っておった。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
どうだ、君には抜けなかろう。その抜ける者は
疾
(
と
)
くに刀を売て
仕舞
(
しまっ
)
たのに、抜けない者が飾て置くとは間違いではないか。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
子供を迎いに来たのだと言うと、「馬鹿! 今時分まで何して居るもんか、
疾
(
と
)
うに帰って了った。富来にも誰も村の者は居らんさかい帰れ帰れ。」
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
チチアネルロ
疾
(
と
)
うに、夜明前に——その時君等はまだ
寝
(
ね
)
ていたが——そっと門の外へ出て往った。青い
額
(
ひたい
)
へ愛の接吻、その脣へ
悋気
(
りんき
)
の言葉……。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
コスモは
疾
(
と
)
うに決心して、その決心を実行するはずであったが、彼はただ熱情に
捉
(
とら
)
えられて頭を悩み苦しめていたのである。彼は理論的に考えた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
解剖室に入るべき時間は
疾
(
と
)
うに來たのであるが、風早學士は何か調べることがあツて、
少時
(
しばらく
)
職員室にまご/\してゐた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
疾
(
と
)
くに目的を達して今頃は江戸に帰り、喜ぶ恩師の顔を見て、一家相伝の極意秘伝を
停滞
(
とどこおり
)
なく受けていなければ成らぬのが、意外な
支障
(
さわり
)
に
引掛
(
ひきかか
)
って
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
おツかアは
疾
(
と
)
くに大坂へ行ツちまつたとさ、何でも大坂から養生に来てた、金持の旦那に連れられて、行つたんだと。
磯馴松
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
そうでないにしても、夫がそんな事をしているのは、
疾
(
と
)
うから知っていて、別になんとも思わなかったかも知れない。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
疾
(
と
)
うから己の胸にはそれが分かつてゐた。己はロシアへ帰りたくて、始終樺太からシベリアを眺めてばかりゐるのだ。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
……江戸と長崎で二人が
殺
(
あや
)
められた以上、どッち道、利七も助かる筈はないと、
疾
(
と
)
ッくに覚悟を決めておりました。……これが利七でございますか。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
如
(
し
)
かず椽先の飛石に投げうつて昔に返る
粉
(
こ
)
な
微塵
(
みじん
)
、宿業全く終りて永く
三界
(
さんがい
)
の
輪廻
(
りんね
)
を免れんには。汝もし霊あらば庭下駄の片足を
穿
(
うが
)
ちて
疾
(
と
)
く西に帰れ。
土達磨を毀つ辞
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
疾
常用漢字
中学
部首:⽧
10画
“疾”を含む語句
疾風
疾病
疾走
病疾
口疾
疾患
疾駆
疾風迅雷
疾呼
痔疾
気疾
疾足
疾駈
瘧疾
疾苦
速疾
疫疾
癈疾
疾視
目疾
...