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田螺
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たにし
ふりがな文庫
“
田螺
(
たにし
)” の例文
福松は
田螺
(
たにし
)
のやうに口を
噤
(
つぐ
)
みます。二十四といふにしては若々しく、泳ぎの名人といふよりは、手踊の一つもやりさうな人柄です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
汲みあげられた畑の泥の中には、小鮒がぴちぴち動き、隅の方の泥のよどんだところには、もう
田螺
(
たにし
)
がそろそろと這い出していた。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それは今でも明記して居る人が有らうが、「たんたん、たん/\、田の中で……」といふ謡で、「おッかあも……
田螺
(
たにし
)
も呆れて蓋をする」
震は亨る
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
しばらくして川底の哲学者、
田螺
(
たにし
)
犬儒先生、自分の住まいを身体にひっつけたままノロリノロリと虜になった市長のところにやって来た。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
先祖以来、
田螺
(
たにし
)
を
突
(
つッ
)
つくに
練
(
きた
)
えた口も、さて、がっくりと参ったわ。お
庇
(
かげ
)
で舌の根が
弛
(
ゆる
)
んだ。
癪
(
しゃく
)
だがよ、振放して
素飛
(
すっと
)
ばいたまでの事だ。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
蝸牛
(
かたつむり
)
も、
田螺
(
たにし
)
も食うかと思えば、果実の類はまた最も好むところで、木に
攀
(
よ
)
じ上ることの技能を兼ねているのはその故である。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「それも、
質
(
ただ
)
しましたところ、馬込の木賃に泊るので、晩の飯の菜に、
田螺
(
たにし
)
を
採
(
と
)
っているのだ——という返辞にござりました」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主婦の清江は板の間の入口で、明るみの方を向いて坐り、
田螺
(
たにし
)
を針でほぜくっている。参右衛門は朝から憂鬱そうに寝室に入って寝てしまう。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
時が来ると、
田螺
(
たにし
)
も鳴く事を知つてゐる連歌師は、目つかちの殿様が歌を
咏
(
よ
)
むといつても格別不思議には思はなかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自然薯でも、
田螺
(
たにし
)
でも、
鰌
(
どじょう
)
でも、終始
他人
(
ひと
)
の山林田畑からとって来ては金に
換
(
か
)
え、
飯
(
めし
)
に換え、酒に換える。門松すら
剪
(
き
)
って売ると云う評判がある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
田螺
(
たにし
)
のように
蠢
(
うご
)
めいていたほかの連中もどこにも出現せぬ様子だ。いよいよいけない。もう出るか知らん、五秒過ぎた。まだか知らん、十秒立った。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
麗
(
うらら
)
かな
春
(
はる
)
の
日永
(
ひなが
)
を、
穴
(
あな
)
から
這
(
は
)
ひだした
田螺
(
たにし
)
がたんぼで
晝寢
(
ひるね
)
をしてゐました。それを
鴉
(
からす
)
がみつけてやつて
來
(
き
)
ました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
「いや、それが、なにも言わない。……口を締めた
田螺
(
たにし
)
同様でな、毎度のことながら、手がつけられない」
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
主として鳥追いだがその
序
(
ついで
)
に
追却
(
ついきゃく
)
しようとしたものに、
田螺
(
たにし
)
蝼蛄
(
けら
)
から家々の口争い、女房の小鍋食いまで追払えといっている。陸中
紫波
(
しわ
)
郡の小正月の豆蒔きには
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と
善
(
よ
)
い人だけに
逆
(
のぼ
)
せ上り、ずぶ濡れたるまゝ栄町の宅へ帰り、何うやら斯うやら身体を洗い、着物を着替えたが、
袂
(
たもと
)
から
鰌
(
どじょう
)
が飛出したり、髷の間から
田螺
(
たにし
)
が
落
(
おっこ
)
ちたり致しました。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今日中
誰
(
たれ
)
もお前を殺さない処を見ると、きっと
田螺
(
たにし
)
か何かで飼って置くつもりだらうから、今までのやうに
温和
(
おとな
)
しくして、決して人に
逆
(
さから
)
ふな、とな。
斯
(
か
)
う云って教へて来たらよからう。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その日の夕方思い付いて字引でみのむしというのを引いてみると、この虫の別名として「
木螺
(
ぼくら
)
」というのがあった。なるほど這って行く様子はいかにも
田螺
(
たにし
)
かあるいは
寄居虫
(
やどかり
)
に似ている。
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
水車のわきの小川には、いつも
目高魚
(
めだか
)
や、
泥鰌
(
どぢやう
)
や、
田螺
(
たにし
)
や、
小蟹
(
こがに
)
や、
海老
(
えび
)
の子などがゐました。私たちはそれを捕つてバケツに入れ、カーン/\の鳴るまで、のんきにそこで遊ぶのでした。
先生と生徒
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
蕎麦に
田螺
(
たにし
)
、心太に生玉子、蟹に胡瓜も食べ合せ悪しきもの、
家鴨
(
あひる
)
の玉子ととろろを併せ食えば
面色
(
めんしょく
)
たちどころに変じて死すと云う。蛸と黒鯛は血を荒すが故に女子の禁物とするものなり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
向こうの田に
田螺
(
たにし
)
を掘っているのであろう、二、三人の女が泥の中に足を突っ込んで腰をかがめている、その光景とその事情とが何だか離すことのできない一つの事実のように考えられて
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
には
與吉
(
よきち
)
を
背負
(
せお
)
つて
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
を
歩
(
ある
)
いて
竹
(
たけ
)
の
竿
(
さを
)
で
作
(
つく
)
つた
鍵
(
かぎ
)
の
手
(
て
)
で
枯枝
(
かれえだ
)
を
採
(
と
)
つては
麁朶
(
そだ
)
を
束
(
たば
)
ねるのが
務
(
つとめ
)
であつた。おつぎは
麥藁
(
むぎわら
)
で
田螺
(
たにし
)
のやうな
形
(
かたち
)
に
捻
(
よぢ
)
れた
籠
(
かご
)
を
作
(
つく
)
つてそれを
與吉
(
よきち
)
へ
持
(
も
)
たせた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
白日光耀
(
はくじつこうよう
)
の下で、形もない鰌の、日のこぼれの、
藻屑
(
もくず
)
の、ころころ
田螺
(
たにし
)
の、たまには跳ね
蝦
(
えび
)
の
立鬚
(
たてひげ
)
まで掬おうとして、笊をかろく、足をあげ、手で鼻をつまみ、振りすて、サッとまた笊を、空へ
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
諏訪
(
すは
)
のうみの
田螺
(
たにし
)
を食へばみちのくに
稚
(
をさな
)
かりし日おもほゆるかも
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
おれには 遠くの
田螺
(
たにし
)
の鳴声まで かの女の歌声にきこえ
あきらめろと云うが
(新字新仮名)
/
竹内浩三
(著)
どうも、僕の前世は田圃の蛙か
田螺
(
たにし
)
であったらしい。
雨の日
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
田螺
(
たにし
)
七五・七七 一九・一〇 〇・五五 四・五九
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「お前さんの大好物の、
田螺
(
たにし
)
の
味噌
(
みそ
)
あへだけど。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「少し手がかりがついた。
田螺
(
たにし
)
だよ、あれは」
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
田螺
(
たにし
)
鳴き亀鳴く頃は草若み 同
俳句上の京と江戸
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
田螺
(
たにし
)
を拾つて喰つてゐると
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
福松は
田螺
(
たにし
)
のように口を
噤
(
つぐ
)
みます。二十四というにしては若々しく、泳ぎの名人というよりは、手踊の一つもやりそうな人柄です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
先祖以来、
田螺
(
たにし
)
を
突
(
つっ
)
つくに
錬
(
きた
)
へた口も、さて、がつくりと参つたわ。お
庇
(
かげ
)
で
舌
(
した
)
の根が
弛
(
ゆる
)
んだ。
癪
(
しゃく
)
だがよ、
振放
(
ふりはな
)
して
素飛
(
すっと
)
ばいたまでの事だ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
なお、
田螺
(
たにし
)
を
妙
(
い
)
りつけて旅先で用うれば水あたりのうれいがない。笠の下へ桃の葉をしいてかぶれば日射病にかからない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
めだかを瓶の中に飼うたり、
田螺
(
たにし
)
を釣ったりした六つ七つの時が恋しい。
鰌
(
どじょう
)
が土の底から首を出した。源五郎虫が水の中でキリキリ舞いをしている。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
「いたいよう。ごめんなさいよう」とあげる
田螺
(
たにし
)
の
悲鳴
(
ひめい
)
。それを
藪
(
やぶ
)
にゐた四十
雀
(
から
)
がききつけて
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
今日中
誰
(
たれ
)
もお前を殺さない処を見ると、きっと
田螺
(
たにし
)
か何かで
飼
(
か
)
って置くつもりだろうから、今までのように
温和
(
おとな
)
しくして、決して人に
逆
(
さから
)
うな、とな。
斯
(
こ
)
う云って教えて来たらよかろう。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
『
倭名鈔
(
わみょうしょう
)
』には都比(ツビ)に甲蠃子、または海蠃を
宛
(
あ
)
て、是を
螺類
(
つびるい
)
の総名のごとく解しているために、
田螺
(
たにし
)
のツブまたは
栄螺
(
さざえ
)
のツボ焼きなどと、結びつけて考えようとする人もあるが
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この胆吹山へ突入までの石田村の
田圃
(
たんぼ
)
の中で、
衣裳葛籠
(
いしょうつづら
)
を
這
(
は
)
い出して、
田螺
(
たにし
)
に驚いて蓋をさせたあの場を、どうして、どういうふうに
遁
(
のが
)
れ出して、この胆吹山まで転向突入するまでに立至ったのか
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
観音の甍ながめて帰るころ早や夕明る
田螺
(
たにし
)
がころころ
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
しのび
音
(
ね
)
も泥の中なる
田螺
(
たにし
)
哉
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
田螺
(
たにし
)
はお家を 負ひあるく
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
恐ろしい
饒舌
(
おしゃべり
)
に似ず、急に
田螺
(
たにし
)
のように黙りこんでしまいます。この上聴いたところで、もう大した収穫もありそうにも思われません。
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「こちらの殿様が、来いと仰っしゃるので、途中からお供して来た者でございます。
田圃
(
たんぼ
)
で採った
田螺
(
たにし
)
を煮て、それを菜に喰べようと思いますので」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと
紅
(
もみ
)
の
袴
(
はかま
)
のように見えたのも
稀有
(
けう
)
であった、が、その下ななめに、
草堤
(
くさどて
)
を、
田螺
(
たにし
)
が二つ並んで、
日中
(
ひなか
)
の
畝
(
あぜ
)
うつりをしているような人影を見おろすと
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蟹は穴の脇で
頻
(
しき
)
って土を食べている。
田螺
(
たにし
)
は泥の中深く埋って、犬儒派の哲学者のようにすましている。藻草も、岸辺の葦も沈黙のまま美しい線を空間に画いて立っている。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
うらがなし、
田螺
(
たにし
)
ころころ
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
田甫
(
たんぼ
)
の
田螺
(
たにし
)
は
朝おき雀
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
鴉
(
からす
)
と
田螺
(
たにし
)
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
お藤は大したやつれもなく、母親に何かと
口説
(
くど
)
かれておりますが、美しい顔を
俯向
(
うつむ
)
けて
田螺
(
たにし
)
のごとく
唇
(
くち
)
を閉じている様子です。
銭形平次捕物控:039 赤い痣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何だ、その女に対して、隠元、
田螺
(
たにし
)
の分際で、薄汚い。いろも、亭主も、心中も、殺すも、
活
(
いか
)
すもあるものか。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“田螺(タニシ)”の解説
タニシ(田螺、en: river snails)は、腹足綱 原始紐舌目 タニシ科 Viviparidae に分類される巻貝の総称。
南米と南極大陸を除く各大陸とその周辺地域の淡水に生息し、雌雄異体の卵胎生である。一般的に、殻口をぴったりと塞げる蓋を持つ。リンゴガイ科(スクミリンゴガイ等)と並び淡水生の巻貝としては大型の種を含む。
(出典:Wikipedia)
田
常用漢字
小1
部首:⽥
5画
螺
漢検準1級
部首:⾍
17画
“田螺”で始まる語句
田螺和
田螺合
田螺拾
田螺頭巾