トップ
>
濠端
>
ほりばた
ふりがな文庫
“
濠端
(
ほりばた
)” の例文
それから
人力
(
じんりき
)
にゆられて夜ふけの
日比谷御門
(
ひびやごもん
)
をぬけ、暗いさびしい寒い練兵場わきの
濠端
(
ほりばた
)
を抜けて
中六番町
(
なかろくばんちょう
)
の住み家へ帰って行った。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
靄
(
もや
)
に包まれた柳並木の
濠端
(
ほりばた
)
に沿うて、ヘッド・ライトの明るい触角を立てながら、日比谷から桜田門、三宅坂の方へと上って行った。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
やがて、車が
九段
(
くだん
)
に近い淋しい
濠端
(
ほりばた
)
を走っていた時、われわれの姿なき眼は、前方の車上に、実に恐ろしい
椿事
(
ちんじ
)
を目撃したのである。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ちょうど、梨の木坂を降りきって、これから
濠端
(
ほりばた
)
へかかろうとするとき、
糸瓜仕立胡粉塗
(
へちまじたてごふんぬり
)
の象が、胸からホトホトと血を流しはじめた。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
さうして濕つぽい夜更けの風の吹いて來る暗い
濠端
(
ほりばた
)
の客の少い電車の中に互ひの肩と肩とを
凭
(
もた
)
せ合つて引つ返して來るのであつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
鶴見の家のあった方は、いわゆる三軒家の通りで、
濠端
(
ほりばた
)
の三宅侯の邸地からつづいて、その大部分は旗本の大名屋敷の跡であった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ラスコーリニコフはいきなりその足でソーニャの住まっている
濠端
(
ほりばた
)
の家をさして行った。それは緑色に塗った古い三階家であった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
濠端
(
ほりばた
)
の石置場には、お城の作事場に働いている者や往来の頻繁を当てこんで、何十軒といっていいほど、休み茶屋が、
葭簀
(
よしず
)
を張っている。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先生の処へ行こうと思って、
濠端
(
ほりばた
)
の電車に乗ったら、あの人も追い
駈
(
か
)
けて来たので、水道橋で降りててくてく
真砂町
(
まさごちょう
)
の方へ歩いて行ったの。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あまり近く
濠端
(
ほりばた
)
に進み過ぎていることと、それともう一つは、道中師風の若い奴が、従者にしてはイヤにやにさがっているのが気になります。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
五丁目と突き当つて、
濠端
(
ほりばた
)
の電車の交叉点に出た。和作は歩き過ぎを恐れて電車に乗つた。
寄寓
(
きぐう
)
してゐる家に帰れば丁度十時になると思つた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
濠端
(
ほりばた
)
の柳の下を急がず騒がずひいて行く老車夫の車が、ただ一台あるばかりの光景を想像して見ると、如何にのん気な悠長な画図であったかよ。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その夜も、彼はただ一人で、冷い
秋雨
(
あきさめ
)
にそぼ濡れながら、
明石町
(
あかしちょう
)
の
河岸
(
かし
)
から
新富町
(
しんとみちょう
)
の
濠端
(
ほりばた
)
へ向けてブラブラ歩いていた。
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
女は舊見附を越すと、あの松の生えた
濠端
(
ほりばた
)
の、暗い、寂しい道へ平氣で這入つて行くぢやあないか。君、考へて見給へ。
S中尉の話
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
一方は銭形平次と八五郎、赤羽橋有馬屋敷の角、お
濠端
(
ほりばた
)
の
葭簀張
(
よしずばり
)
の中に、
辰刻
(
いつつ
)
(午前八時)過ぎから眼を光らせました。
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
影のような女だったのだが、彼もまた女にとって影のような男にすぎなかったのだ。影と影はひっそりとした足どりで
濠端
(
ほりばた
)
に添う
鋪道
(
ほどう
)
を歩いていた。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
聞けば中央停車場から
濠端
(
ほりばた
)
の電車の停留場まで、
傘
(
かさ
)
もささずに歩いたのだそうだ。では
何故
(
なぜ
)
またそんな事をしたのだと云うと、——それが妙な話なのだ。
妙な話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
冬木刑事の同僚で先輩である
沖田
(
おきた
)
刑事はまるで元気のない
歩調
(
あしどり
)
で、
半蔵門
(
はんぞうもん
)
から
三宅坂
(
みやけざか
)
のほうへ向いて寒い風に吹かれながら
濠端
(
ほりばた
)
をとぼとぼと歩いていた。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
伸子は包みを膝の上にのせ、開け放した窓から
濠端
(
ほりばた
)
の景色を眺めた。夏らしく、透き徹った明るい西空であった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
津守
(
つのかみ
)
を下りた時、日は暮れ掛かった。士官学校の前を真直に
濠端
(
ほりばた
)
へ出て、二三町来ると
砂土原町
(
さどはらちょう
)
へ曲がるべき所を、代助はわざと電車
路
(
みち
)
に付いて歩いた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雪枝
(
ゆきえ
)
は
老爺
(
ぢゞい
)
に
此
(
これ
)
を
語
(
かた
)
る
時
(
とき
)
、
濠端
(
ほりばた
)
の
草
(
くさ
)
に
胡座
(
あぐら
)
した
片膝
(
かたひざ
)
に、
握拳
(
にぎりこぶし
)
をぐい、と
支
(
つ
)
いて
腹
(
はら
)
に
波立
(
なみた
)
つまで
気兢
(
きほ
)
つて
言
(
い
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼等は
群
(
むらが
)
る自動車の
濤
(
なみ
)
を避けて、
濠端
(
ほりばた
)
の暗い並木道に肩を並べた。妙に犯すことの出来ない沈黙が二人を占めてゐた。明子が先にそれを破つて青年に言つた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
自動車が、
日比谷
(
ひびや
)
公園の傍のお
濠端
(
ほりばた
)
を走っている時だった。美奈子は、やっと思い切って母に訊いて見た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
徳川の家来に福島
何某
(
なにがし
)
という武士がありました。ある雨の夜でしたが、虎の門の
濠端
(
ほりばた
)
を歩いていました。
江戸の化物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
相撲取りなどが乗るにしては分にすぎた
駕籠
(
かご
)
が一丁、向こうの
濠端
(
ほりばた
)
に待ち受けていましてな、まえから話でもついていたものか、あごでしゃくってそれに乗ると
右門捕物帖:12 毒色のくちびる
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
夜ふけてから外へ出た事さえ
稀
(
まれ
)
だったので、この夜久しぶり静にふけ渡った
濠端
(
ほりばた
)
の景色を見てさえ、何とも知れず心の浮き立つ折から、時候も丁度五月の初めで
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ふうん」と宗春首を
傾
(
かし
)
げたが、呻くように呟いたものである。「何んだかまるで夢のようだ!
濠端
(
ほりばた
)
に立った一人の美人! それを見てから気が狂ったようだ。 ...
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのうち、
濠端
(
ほりばた
)
へ
出
(
で
)
ると、
車
(
くるま
)
の
数
(
かず
)
も
少
(
すく
)
なくなり、
柳
(
やなぎ
)
の
葉
(
は
)
が
風
(
かぜ
)
になびいていました。そしてガードの
下
(
した
)
に、さしかかると、
冷
(
つめ
)
たい
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いてきて、
躰
(
からだ
)
がひやりとしました。
隣村の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
町人達が、橋の上で、
濠端
(
ほりばた
)
で、話している真中を、徒歩で、馬上で、侍が行きかかっていた。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
銀の
襟飾り
(
ブローチ
)
だけは……あのスパセニアが、自動車の窓から投げ込んだ銀の
襟飾り
(
ブローチ
)
だけは、前の青葉通りのお
濠端
(
ほりばた
)
へ飛び出して、青く
澱
(
よど
)
んだ濠の中へ投げ込んでしまいました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そのころは左翼運動の
旺
(
さか
)
んな頃で、高木と私が歩いていると、
頻
(
しき
)
りに
訊問
(
じんもん
)
を受けた。ニコライ堂を背にして何遍となく警官と口論した鮮明な思い出もあり、公園の中や
神楽坂
(
かぐらざか
)
やお
濠端
(
ほりばた
)
等々。
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
半蔵門
(
はんざうもん
)
から
濠端
(
ほりばた
)
に沿つて、空と水にうつる灯が次第に闇を消して行くと
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そこで二人はまた、ぶらぶらと暗いお
濠端
(
ほりばた
)
に沿うて日比谷の方へ歩いた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
翌々日、相川は例の会社から家の方へ帰ろうとして、復たこの
濠端
(
ほりばた
)
を通った。日頃「腰弁街道」と名を付けたところへ出ると、方々の
官省
(
やくしょ
)
もひける頃で、風呂敷包を小脇に
擁
(
かか
)
えた連中がぞろぞろ通る。
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
車がお
濠端
(
ほりばた
)
へ来ると、輝雄が帽子を取ったのを合図に
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自動車は九段から
濠端
(
ほりばた
)
を抜けて、宮城の前に出た。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
濠端
(
ほりばた
)
を
半纒
(
はんてん
)
ひとりペンキ壺さげて過ぎゆく。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
お
濠端
(
ほりばた
)
。雨のような日光。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
よろよろとして、
濠端
(
ほりばた
)
に
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
明け方、大手先まで運び出した足場丸太だの、残りの材木だの石だの、また工具や
莚
(
むしろ
)
のような物は、一先ず山のように
濠端
(
ほりばた
)
に積んであった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
濠端
(
ほりばた
)
の柳の木に
凭
(
もた
)
れた宇津木兵馬は、どのぐらいの間、何事を考えていたか自分でもわからないが、突然大きな声をして
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、まもなく九段近くの
濠端
(
ほりばた
)
にさしかかったとき、明智の鋭い眼が、たちまち前方の路上に異様な物体を発見した。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
線路沿いの
濠端
(
ほりばた
)
には葉桜ばかりが残っていて、暗い客車の窓には若葉の影が流れた。お庄はもうそんな時節かと思って、初めてそこらを見廻した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
急に帆村は、私の腕をもいで、つかつかとお
濠端
(
ほりばた
)
まででると、前をまくって、シャーシャー音をたてて小便をした。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
角上
(
つのかみ
)
を
下
(
お
)
りた時、
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れ
掛
(
か
)
かつた。士官学校の
前
(
まへ
)
を
真直
(
まつすぐ
)
に
濠端
(
ほりばた
)
へ
出
(
で
)
て、二三町
来
(
く
)
ると
砂土原
(
さどはら
)
町へ
曲
(
ま
)
がるべき所を、代助はわざと電車
路
(
みち
)
に
付
(
つ
)
いて
歩
(
ある
)
いた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ソーニャが
濠端
(
ほりばた
)
へ出たとき、歩道には彼ら二人きりであった。彼はしさいに観察しているうち、彼女が物思いに沈んで、ぼんやりしているのに気がついた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「それはたいへんだが、……それならとにかく向こうの
濠端
(
ほりばた
)
を右へまっすぐに
神田橋
(
かんだばし
)
まで行って、そのへんでまたもう一ぺんよく聞いたほうがいいでしょう」
蒸発皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
貴女
(
あなた
)
の内へ遊びに
行
(
ゆ
)
くと、いつも帰りが遅くなって、日が暮れちゃ、あの
濠端
(
ほりばた
)
を通ったんですがね、石垣が
蒼
(
あお
)
く光って、
真黒
(
まっくろ
)
な水の上から、むらむらと白い煙が
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鷲
(
わし
)
掴みにしたキャラコの
手巾
(
ハンカチ
)
でやけに鼻面を引っこすり引っこすり、大幅に車寄の石段を踏み降りると、野暮な足音を舗道に響かせながらお
濠端
(
ほりばた
)
の方へ歩いて行く。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
十時を過ぎたお
濠端
(
ほりばた
)
の
闇
(
やみ
)
を、瑠璃子を乗せた自動車を先頭に、
美奈子
(
みなこ
)
を乗せた自動車を中に、召使達の乗った自動車を最後に、三台の自動車は、
瞬
(
またた
)
く裡に、
日比谷
(
ひびや
)
から
三宅坂
(
みやけざか
)
へ
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
濠
漢検準1級
部首:⽔
17画
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
“濠端”で始まる語句
濠端添