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渡世
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とせい
ふりがな文庫
“
渡世
(
とせい
)” の例文
『夜蕎麦売とは、変った
渡世
(
とせい
)
をしているな。おれも、
彼
(
あ
)
の日が、生涯の
岐
(
わか
)
れ道になって、とうとう、つまらない刀鍛冶に成っている』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
右の如く平安を好むの人情は、世界中に通用してたがうことなく、各国の交際も
人々
(
にんにん
)
の
渡世
(
とせい
)
も、その目的、平安にあらざるはなし。
教育の目的
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それに
引
(
ひき
)
かえてこういう貧しい裏町に昔ながらの貧しい
渡世
(
とせい
)
をしている年寄を見ると同情と悲哀とに加えてまた尊敬の念を禁じ得ない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
目科は
宛
(
あたか
)
も足を
渡世
(
とせい
)
の
資本
(
もとで
)
にせる人なる
乎
(
か
)
と怪しまるゝほど達者に走り余は
辛
(
かろ
)
うじて其後に続くのみにて
喘
(
あえ
)
ぎ/\ロデオン
街
(
まち
)
に達せし頃
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
それをまた仲間のうちに語り伝えて、彼らの執念の深さを人に感ぜしめ、
暗々裡
(
あんあんり
)
に
渡世
(
とせい
)
の地を
為
(
な
)
したらしい形跡もあるのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
おれは、代々、
僅少
(
わずか
)
な
扶持
(
ふち
)
をもらって、生きている
為
(
ため
)
に、人間らしい根性をなくしてしまった、侍という
渡世
(
とせい
)
が、つくづく
厭
(
いや
)
になったんだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
世間の
噂
(
うわさ
)
が私の耳にも入ります。人もあろうに、
小博奕
(
こばくち
)
を
渡世
(
とせい
)
にしている、安やくざと
懇
(
ねんご
)
ろになっては、娘の一生も台なしでございましょう。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見る時は不便心が
彌増
(
いやま
)
し
施
(
ほど
)
こすことの
好
(
すき
)
なる故
儲
(
まう
)
けの無も
道理
(
ことわり
)
なり依て六右衞門も心配なし
寧
(
いつ
)
そ我弟が
渡世
(
とせい
)
の
先買
(
さきがひ
)
となり
恥
(
はぢ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
もと豊国国貞の風を慕って、浮世絵師の
渡世
(
とせい
)
をして居たゞけに、刺青師に堕落してからの清吉にもさすが
畫工
(
えかき
)
らしい良心と、鋭感とが残って居た。
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかもその怪しからぬと思うような職業を
渡世
(
とせい
)
にしている奴は我々よりはよっぽどえらい生活をしているのがあります。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
両親
(
りょうしん
)
のない
自分
(
じぶん
)
は、ついに、こんな
渡世
(
とせい
)
にまで
身
(
み
)
を
落
(
お
)
としましたが、いつも、
鳥
(
とり
)
を
捕
(
つか
)
まえたときの
呼吸
(
こきゅう
)
ひとつで、どんな
危
(
あぶ
)
ない
芸当
(
げいとう
)
も、やってのけるのであります。
二人の軽業師
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「床屋が
渡世
(
とせい
)
の新吉と申す者でござります。髪床は人の寄り場所、したがって世間のことを少々——」
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しがねえ
渡世
(
とせい
)
こそしているが、あんたのお繩を最後に、立派に十手を返上して——頭を丸めやす。へえ、坊主になって、一生あなた様の
後生
(
ごしょう
)
をおとむらい申しやす。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
盆栽にしても
然
(
そ
)
うですよ。お年寄には好いものを高く押っ付けます。それで忰にも
能
(
よ
)
く教えてありますが、御隠居さんをおびき出すことですよ、植木屋
渡世
(
とせい
)
の呼吸はね
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
半次郎 これが堅気の瓦屋なら、逃げ隠れもしよう、だがヤクザ
渡世
(
とせい
)
の泥沼へ、足を入れた男としては、奴等と
白刃
(
しらは
)
をブッつけなくちゃ、男じゃあねえと人にいわれる。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
それにやることも当世とはだいぶ趣が違っていたし、それを
渡世
(
とせい
)
にしていた人の数も、いまに比べるとぐっと少なかったようだから、なにやら
箔
(
はく
)
がつくというものである。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「ほかにもいろいろの
渡世
(
とせい
)
がありんしょう。喧嘩商売、よしなんし。あぶのうおざんす」
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その
翌朝
(
よくちょう
)
、思いたった大石先生は、
岬
(
みさき
)
の村へ船で出かけた。
船頭
(
せんどう
)
は小ツルの父親とおなじく、
渡
(
わた
)
し舟をしたり、車をひいたりするのが
渡世
(
とせい
)
の、一本松の村のチリリンヤであった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「へえ、
私
(
わつし
)
は深川の
六間堀
(
ろくけんぼり
)
で、これでも越後屋重吉と云ふ小間物
渡世
(
とせい
)
でござりやす。」
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
乱世には士は命を的にして働き、農は汗を流し耕作を
掙
(
かせ
)
ぎ
歩役
(
ぶやく
)
を勤め、工はそれぞれ加役に用いられ、商人は武具の外に
調
(
ととの
)
うる物なく、その時に至りて
渡世
(
とせい
)
なく
如何
(
いか
)
よう致し候心得か。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
文「ふうむ、聞けば
旅商人
(
たびあきんど
)
ということじゃが、
渡世
(
とせい
)
は
何
(
なん
)
だか知っておるか」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
パパには
鋸楽師
(
のこがくし
)
のおいぼれを連れて行くことを云い出した。おいぼれとただ呼ばれる老人は
鋸
(
のこぎり
)
を曲げながら
弾
(
ひ
)
いていろいろなメロディを出す一つの芸を
渡世
(
とせい
)
として
場末
(
ばすえ
)
のキャフェを
廻
(
まわ
)
っていた。
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
テレビジョンに犯人が現れた。なアんだ。これあ同じ
渡世
(
とせい
)
の競争相手のヤーロの奴じゃないか。オヤ
真青
(
まっさお
)
になって、四十番街を歩いているぞ。よオし、無線電話で交番を呼び出せ……ナニ出たって。
一九五〇年の殺人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
聞合せけるに神田三河町二丁目にて
彼質
(
かのしち
)
兩替
渡世
(
とせい
)
伊勢屋五兵衞方にて子供を
抱
(
かゝ
)
へたきよしを聞込早々頼み入れ吉日を
撰
(
えら
)
んで奉公にぞ
遣
(
つか
)
はしける
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
活力節減の方で例を引いてお話をしますと、人力車を
挽
(
ひ
)
いて
渡世
(
とせい
)
にするか、または自動車のハンドルを握って暮すかの競争になったのであります。
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弱りましたな、御都合は百も二百も御尤でございますが、手前のほうも、
渡世
(
とせい
)
でして、そうはお待ちができません。
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども要するに、それはみんな身過ぎ世過ぎである。川竹の憂き身をかこつ
哥沢
(
うたざわ
)
の糸より細き筆の
命毛
(
いのちげ
)
を
渡世
(
とせい
)
にする是非なさ……オット大変忘れたり。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
阪急
(
はんきゅう
)
の方が開けたり新国道が出来たりしてから、年々さびれつゝあるので、こんなところでいつ迄荒物屋
渡世
(
とせい
)
をしてゐても思はしい訳はないのだけれど
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「安ばくちと押借りと、女たらしを
渡世
(
とせい
)
にして居る
屑
(
くづ
)
のやうな男ですが、そんな野郎に限つて男つ振りは好い」
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
仕官もまた営業
渡世
(
とせい
)
の一種なれども、俸給の他に位階勲章をあたうるは、その労力の大小にかかわらず、あたかも日本国中の人物を排列してその
段等
(
だんとう
)
を区別するものにして
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
搏
(
う
)
つわ、飲むわ——
博徒
(
ばくと
)
の仲間にはいって、人殺し兇状を重ね、とうとうほんものの泥棒
渡世
(
とせい
)
をかせいで、
伝馬町
(
てんまちょう
)
の大牢でも顔を売り、
遂
(
つい
)
に、
三宅島
(
みやけじま
)
に送られ、そこを破ってからは
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
気のあらい大工の
渡世
(
とせい
)
には少しおとなし過ぎるとも思われたが、その弱々しいのがいよいよ親方夫婦の不憫を増して、
兄弟子
(
あにでし
)
にも
朋輩
(
ほうばい
)
にも憎まれずに、肩揚げの取れるまで無事に勤めていた。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お
小納戸頭取
(
こなんどとうどり
)
の重職すらいただく身が、漁師
渡世
(
とせい
)
の者よりこれほどまでにののしられて、上の御政道相立つと思うか! よこしまの恋に心がくらみ、御恩寵うくる妹に不義しかけさせるさえあるに
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
...
言
(
いい
)
なさるものじゃありませんよ)(なあに、かまやしないよ、わしは、若いとき井戸掘りで
渡世
(
とせい
)
していたんだから)(だって、あまり名誉な仕事でもないわ)(そんなことはない。第一、お前もわしが井戸掘り
稼業
(
かぎょう
)
を ...
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すると私の推察通り、彼は
昔
(
むか
)
し寺町の郵便局の
傍
(
そば
)
に店を持って、今と同じように、散髪を
渡世
(
とせい
)
としていた事が解った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
渡世
(
とせい
)
になし居ると申されしなりと云ければ久兵衞は茲ぞ
付込處
(
つけこみどころ
)
なりと思ひ
然
(
さ
)
すれば其市之丞殿の家主の
名前
(
なまへ
)
又當時本人の名は何と申され候や紙屑買を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
水茶屋
渡世
(
とせい
)
の通例ですが、その頃、大岡亀次郎と、
同苗
(
どうみょう
)
市十郎と申す
従兄
(
いとこ
)
同士の遊び客が折々見えるうち、お袖は、その市十郎と、恋仲におち、いつしか
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子供の時から朝夕に母が
渡世
(
とせい
)
の
三味線
(
しゃみせん
)
を聴くのが大好きで、習わずして自然に
絃
(
いと
)
の調子を覚え、町を通る
流行唄
(
はやりうた
)
なぞは一度聴けば
直
(
す
)
ぐに記憶する位であった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「その信兵衞は腹の底からの町人ですが、飯田町といふ場所で、武家の客を相手にして、親代々質屋を
渡世
(
とせい
)
にして居たら、人間の性根はどんなことになると思ひます」
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ながねんのあいだもみりょうじを
渡世
(
とせい
)
にいたし、おわかいお女中さまがたをかずしれず手がけてまいりましたが、あれほどしなやかなからだのおかたをいろうたことがござりませぬ。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
松浦屋ともいわれた方が、役人や、
渡世
(
とせい
)
仲間や、悪番頭の悪だくみにはめられて、代々の御身代は奪い取られ、
如何
(
いか
)
に
密貿易
(
ぬけに
)
の罪をきたとはいえ、累代御恩の
子分
(
こぶん
)
児方
(
こかた
)
さえ、訪ねて来る者もない始末。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
久助は、さびしい裏町へお蝶を導いて、何を
渡世
(
とせい
)
にする家とも分らない一軒のしもたやの戸を開けて、顔を出したそこの
内儀
(
ないぎ
)
と小声で話しておりましたが
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子供の時から
朝夕
(
あさゆふ
)
に母が
渡世
(
とせい
)
の
三味線
(
しやみせん
)
を
聴
(
き
)
くのが大好きで、習はずして自然に
絃
(
いと
)
の
調子
(
てうし
)
を覚え、町を
通
(
とほ
)
る
流行唄
(
はやりうた
)
なぞは一度
聴
(
き
)
けば
直
(
す
)
ぐに
記憶
(
きおく
)
する
位
(
くらゐ
)
であつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その里というのは、無論私の記憶に残っているはずがないけれども、成人の
後
(
のち
)
聞いて見ると、何でも古道具の売買を
渡世
(
とせい
)
にしていた貧しい夫婦ものであったらしい。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんなところでいつ迄荒物屋
渡世
(
とせい
)
をしてゐても思はしい訳はないのだけれど、動くには此の店を売り
退
(
の
)
かなければならないし、さて売り退いても何処で何を始めようと云ふ成算がない。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「それに倉松は繩を拔けるのが
渡世
(
とせい
)
で、縛る方は得手ぢやなかつたんだ」
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「まアいいわ、手先や同心の内幕を聞くのも慰みだし、第一お
前
(
めえ
)
の
渡世
(
とせい
)
のためだ。ところで三次、今夜おれはいろは茶屋で泊まるから、こいつを乗せて先に帰ってくれないか」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寄席
(
よせ
)
、芝居。何に限らず興行物の楽屋には舞台へ出る芸人や、舞台の裏で働いている人たちを目あてにしてそれよりもまた更に
果敢
(
はかな
)
い
渡世
(
とせい
)
をしているものが大勢
出入
(
でいり
)
をしている。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は洋風の
指物
(
さしもの
)
を
渡世
(
とせい
)
にする男の店先に立って、しきりに
算盤
(
そろばん
)
を
弾
(
はじ
)
く主人と談判をした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんなところでいつ迄荒物屋
渡世
(
とせい
)
をしていても思わしい訳はないのだけれど、動くにはこの店を売り
退
(
の
)
かなければならないし、さて売り退いても何処で何を始めようと云う成算がない。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“渡世”の意味
《名詞》
渡世(とせい)
世渡り。
生業。なりわい。
(出典:Wiktionary)
渡
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
“渡世”で始まる語句
渡世人
渡世向
渡世看板