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梳
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ふりがな文庫
“
梳
(
す
)” の例文
金色の髪は、
耳朶
(
みみたぶ
)
を掠めて頬を流れ、丸い玉のような肩に崩れ落ちた。それを左の手でそっと
梳
(
す
)
き、また右の手でゆっくりと梳いた。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お婆さんはまずブラシで、メリーの頭から、頸、肩、背、腰、
肢
(
あし
)
という順に丹念にマッサージをして、それから
金櫛
(
かなぐし
)
で丁寧に
梳
(
す
)
いた。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そうして、櫛で
梳
(
す
)
くと、はじめは少し、二度目は一つかみほどの、もつれ毛がからみ落ちて、そうした跡は、光りもせぬ不気味な白地。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「すこし髪がくずれましたのね、私が、
梳
(
す
)
いてあげましょうか」と、鏡台から取出した櫛を
抓
(
つま
)
んで、甘えるように、背なかへ寄る。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その中で最も風変りな二つの流行は、襟足を剃ることと
梳
(
す
)
きまき毛をブラ下げることである。これは
流石
(
さすが
)
の福岡でもまだ行われていない。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
▼ もっと見る
さんざん考えた揚句、湯へ行くので持っていた
黄楊
(
つげ
)
の
梳
(
す
)
き
櫛
(
ぐし
)
に、自分の毛を五六本抜いて巻きつけ、万兵衛の
袂
(
たもと
)
にそっと入れた。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
のちの日のことをはかなんで病床にいる姿には、またもない品よさが備わり、白の衣服を着て、頭は
梳
(
す
)
くこともしないでいるのであるが
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ローウッドの生徒はどうしてあんなに靜かで
質素
(
しつそ
)
なのでせう。髮を耳の後へ
梳
(
す
)
き上げて、長い前掛をして、
麻布
(
あさぬの
)
のポケットのついた着物を
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私の頭の
雲脂
(
ふけ
)
を落したり、
梳
(
す
)
いたりしてくれた上に、「少しお頭を拝借させて下さい」と、水油を少し附けて、
丸髷
(
まるまげ
)
に結ってくれました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
柔かい髪をぴったりと横幅のひろい額の上に
梳
(
す
)
きつけて、黒ぶちのロイド眼鏡をかけているのだが、その髪と眼鏡と上唇のうすい表情とが
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
静かに少しずつ恢復へ向っているような
兆
(
きざし
)
も見えた。柔かい陽ざしが竹の若葉にゆらぐ真昼、彼女は縁側に坐って女中に髪を
梳
(
す
)
かせていた。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
九時過にそつと寄つて戸から覗くと桃色の寢衣を着た二十四五の婦人が腰を掛けて金髮を
梳
(
す
)
いて居た。夜明の光で見た通りの美しい人である。
巴里まで
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
私が朝日の昇るよりも早く、ウラスマルの家を驚かした時、彼れは既に髪を
梳
(
す
)
き終へ、石油厨炉で一個の鶏卵をゆでてゐた。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
化粧や着付けは、向うへいってからする、ということで、髪だけ結いあげたが、潮水につかったのだから、
梳
(
す
)
くだけでも相当な手間であった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
毛を
梳
(
す
)
かるる際しばしばその脚の端蹄の
後
(
うしろ
)
ちょうど人の腕にあたる処へその絆に付けた
木丸
(
きだま
)
を
挟
(
はさ
)
み、後向きに強く
抛
(
な
)
げて馬卒に
中
(
あ
)
てたものあり
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
余所
(
よそ
)
の障子を張ってやりの筆法で
芸妓
(
げいしゃ
)
の
用達
(
ようたし
)
から
傭婆
(
やといばば
)
の
手助
(
てだすけ
)
までする上に、
隙
(
ひま
)
な時は長火鉢の前で飼猫の毛を
梳
(
す
)
いている。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「オ父ちゃん、じっとしとおいや」と櫛で頭の毛を
梳
(
す
)
かれると先生は「ああこそばいこそばい」と笑っていられるようなことも眼に残っています。
昔のことなど
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
その以前から、イースト・エンド全体にわたって
細緻
(
さいち
)
な非常線が張られ、
櫛
(
くし
)
の歯を
梳
(
す
)
くような大捜査が行なわれていた。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
若いころ香水の朝風呂へ這入って金の
櫛
(
くし
)
で奴隷に髪を
梳
(
す
)
かせた史上の美女が、いま
皺
(
しわ
)
くちゃの渋紙に
白髪
(
しらが
)
を突っかぶって僕のまえによろめいてる。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
私は逢わない先から、フロールの笑顔が眼先にちらついて、母が
襟飾
(
ネクタイ
)
を結んだり
頭髪
(
かみ
)
を
梳
(
す
)
いてくれるのさえも待ち切れずに、戸外へ飛び出して行く。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
頭の毛のなかにも蚤が居るやうな気がした。それを
梳
(
す
)
かうとすると、
冷
(
ひや
)
りとしとつた生えるがままの毛髪は、堅く
櫛
(
くし
)
に
絡
(
から
)
んで、櫛は折れてしまつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
額
(
ひたい
)
から
鬢
(
びん
)
の辺へかけて、
梳
(
す
)
き
手
(
て
)
の力がはいるたびに、お民は目を細くして、これから長く
姑
(
しゅうとめ
)
として仕えなければならない人のするままに任せていた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「東京じゃもう、大抵毛捲きなんですがね。どうしましょうか。」髪結は油でごちごちした田舎の人の髪を、気味わるそうにほどいて
梳
(
す
)
きはじめた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
喜望峰のあちらからくる
巻雲
(
サアラス
)
が
榛
(
はりのき
)
の枝に
梳
(
す
)
かれ、丸いかげを落としながら飛行船の銀の腹が、その上を通りすぎる。
希臘十字
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
髪を綺麗に
梳
(
す
)
いて分けたボーイは野郎又来やがったなといった調子で、彼の方を上から下へとじろじろ眺めてから
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
そんなような心持でお雪ちゃんが神妙に髪結の座に直っていると、後ろへ廻ってお銀様は、
梳
(
す
)
き
手
(
て
)
のするように、
櫛
(
くし
)
を入れて、癖直しにかかりながら
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
店内には、強いびんつけ油のにおいがただよい、ときどき、
元結
(
もとゆい
)
をしめる、キュ、キュ、という音、髪を
梳
(
す
)
く櫛の、シュウ、シュウという音が聞える。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
毎朝夫を送り出してから髪に
櫛
(
くし
)
を入れる細君の手には、長い髪の毛が何本となく残った。彼女は
梳
(
す
)
くたびに櫛の歯に
絡
(
から
)
まるその抜毛を残り
惜気
(
おしげ
)
に眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分の髪を
梳
(
す
)
くのは夜中の三時半ごろで、それを終ると、
竈
(
かまど
)
に焚きつけ、朝食の仕度、見ていると眠る暇は三時間か多くて四時間である。驚くべき労働だ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼女は今まで小一時間も騒いでいたのは、
昼飯前
(
ちゅうはんまえ
)
に顔を洗ったり、髪を
梳
(
す
)
いたりするのがいやだったからだということも、けろりと忘れているようでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
水夫が覗きこんだとき、その巨大な動物はレスパネエ夫人の髪の毛(ちょうど
梳
(
す
)
いていたので解いてあった)
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「おい、目ッ吉、ここに頭髪が一本
梳
(
す
)
きこまれているが、これア古い時代のもんじゃねえ、昨日今日のもの」
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
頸
(
くび
)
すじが女のように白くたわわになり、
梳
(
す
)
き手の揺れをつたえるごとに、弥吉の手ごたえを重くした。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
少年の幽霊にも、自分の首を取って
案
(
つくえ
)
の上に置いているのがある。
膝
(
ひざ
)
の上に置いた自分の首の髪を
梳
(
す
)
いている幽霊は、お岩の髪梳きよりも一層ものすごいであろう。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そして洋服
箪笥
(
だんす
)
の蔭い
行
(
い
)
て、帯ほどいて、髪ばらばらにして、きれいに
梳
(
す
)
いて、はだかの上いそのシーツをちょうど観音さんのように頭からゆるやかにまといました。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
梳
(
す
)
き油や
鬢付
(
びんつ
)
けの匂いだ。
元結
(
もっとい
)
を始終あつかっていることは、その指をみても知れる。善昌は三十二三だというのに、あの肉や肌の具合が、どうも四十以上の女らしい。
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ジナイーダが、
隣
(
となり
)
の部屋から姿を現わした。黒い服を着て、
髪
(
かみ
)
を
梳
(
す
)
きだして、青い顔をしている。彼女は無言のまま、わたしの手をとると、自分の部屋へ連れて行った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
女は肩に垂れかかる長い黄いろい髪を
梳
(
す
)
きはじめたが、私のほうへは眼もくれずに、耳を傾けるような、注意するような、待つような態度で、ドアの方を見つめていると
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
鬣
(
たてがみ
)
も
梳
(
す
)
くし、細い尻尾も編む。手で、また声で、機嫌をとる。眼を海綿で洗い、
蹄
(
ひづめ
)
に
蝋
(
ろう
)
を引く。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
僕は子供の時に頭髪を結うてもらった、八歳の頃までは髪を結ったのであるが、時々他人から髪を
梳
(
す
)
いてもらうと実に痛くて堪らない。その痛さ加減は今でも忘れられない。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
梳
(
す
)
いてください。どうぞ私の髪を梳いてください。そうすれば、わたしを
癒
(
なお
)
すことが出来るでしょう。わたしの頭を見てください。どんなに私は苦しいでしょう。わたしの髪を
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
お照が髪を
梳
(
す
)
いて抜毛を丸めて、無雑作に庭に投げ捨て、立ち上るところがありますけれど、あの一行半ばかりの描写で、お照さんの肉体も宿命も、自然に首肯出来ますので
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
渋い古大島の
袷
(
あわせ
)
に萎えた博多の伊達巻。髪は
梳
(
す
)
き上げて頭の頂天に形容のつき兼ねる
恰好
(
かっこう
)
にまるめてある。後れ毛が垂れないうちに途中で
蓬々
(
ぼうぼう
)
と
揉
(
も
)
み切れてかたまり合っている。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それはさておいてまず娘は何も知らずに今日は遊びに行けるというので大悦びで、頭の毛を洗い古い
櫛
(
くし
)
で頭の毛を非常によく
梳
(
す
)
いて居ると、時分を計らって
媒介人
(
なこうど
)
が出て来ます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
開けたとたんに、ぼくは
吃驚
(
びっくり
)
しました。内田さんがたった一人で、それもシュミイズ一枚で、
横坐
(
よこずわ
)
りになり、
髪
(
かみ
)
を
梳
(
す
)
いていたのです。
白粉
(
おしろい
)
と
香水
(
こうすい
)
の
匂
(
にお
)
いにむっとみちた部屋でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
縄を解き、
懐中
(
ふところ
)
より
櫛
(
くし
)
取り
出
(
いだ
)
して乱れ髪
梳
(
す
)
けと渡しながら冷え
凍
(
こお
)
りたる
肢体
(
からだ
)
を痛ましく、思わず
緊接
(
しっかり
)
抱
(
いだ
)
き寄せて、
嘸
(
さぞ
)
や柱に脊中がと片手に
摩
(
な
)
で
擦
(
さ
)
するを、女あきれて
兎角
(
とかく
)
の
詞
(
ことば
)
はなく
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
石鹸
(
せっけん
)
をつけ、
拭
(
ぬぐ
)
いをかけ、
髯
(
ひげ
)
を
剃
(
そ
)
り髪を
梳
(
す
)
き、
靴墨
(
くつずみ
)
をつけ、てかてかさし、みがき上げ、
刷毛
(
はけ
)
をかけ、外部だけきれいにし、一点のほこりもつけず、小石のように光らし、用心深く
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
五時近くたあちやんは私の髪を
梳
(
す
)
いて呉れたりして帰つた。後はまた寂しかつた。
日記より
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
と、亭主、印を見ながら女房に云っていると、髪を
梳
(
す
)
きながら眺めていた瀬川が
傾城買虎之巻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
郡司は女に一枚の
小袿
(
こうちぎ
)
を与えて、髪なども
梳
(
す
)
いて、よく化粧してくるようにと言いつけた。女は何んのことか分からなかったが、命ぜられたとおりの事をして、再び郡司の前に出ていった。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
梳
漢検1級
部首:⽊
11画
“梳”を含む語句
麻梳
櫛梳
梳手
梳櫛
梳場
梳櫳
髪梳
馬梳
梳髪
梳油
梳毛糸
梳毛一綛
梳毛
下梳
梳棉部
梳張
梳付
尼梳
刷梳