斑点はんてん)” の例文
旧字:斑點
なんとも言えないほどうれしかったことには、行になって並んでいる数字のようなものが、ところどころに斑点はんてんになって見えるんだね。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
ところどころ、樹のまわりには、黄色い斑点はんてんが、鷓鴣のようでもあり、また土くれのようでもあり、私の眼はすっかり迷ってしまう。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
世間の噂では、「ロボのくび金環かなわがついている。」とか、また、「かれのかたには悪魔あくま仲間なかまである印としてさかさ十字の斑点はんてんがある。」
いくらか張った彼の顎の右のところに、直径一センチぐらいのうす紫色の斑点はんてんができていた。その一つの斑点が磯崎の命を奪った。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼女の顔からは血が流れた。何かの消えないしるしのように、小さなあざのような黒い斑点はんてんが彼女の顔に残ったのも、またその際である。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
暗いスクリーンの上にいろいろの形をした光の斑点はんてんや線条が順次に現われて、それがいろいろ入り乱れた運動をするのであるが
踊る線条 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その時すでに暗灰色の花びらに黒褐色の斑点はんてんをすらまじへて、およそグロテスクを極めてゐたが、僕は敢然として防疫吏の前に
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
他のものは暗紅に紫黒と海老えび色の帯をまとって、ところどころ鳥糞ちょうふんににた白い斑点はんてんがついている。これは夕ばえの天の姿である。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
月光げつくわうそのなめらかなる葉のおもに落ちて、葉はながら碧玉へきぎよくあふぎれるが、其上そのうへにまた黒き斑点はんてんありてちら/\おどれり。李樹すもゝの影のうつれるなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
そのうちに、老人の指先には、白いたまがつまみあげられていた。卵大たまごだいではあるが、卵ではなく、一方に黒い斑点はんてんがついていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すでに、返り血の斑点はんてんを身に浴び、剣それ以外に何ものもない、無想境のしんに入った弦之丞は、仆れ重なった三個の死体に片足を踏まえて
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは葉が狭長きょうちょうだからである。山地向陽こうようの草中に野生し、オニユリのごとき丹赤色たんせきしょくの花が咲き、暗褐色あんかっしょく斑点はんてんがある。球根は食用によろしい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
七八寸位の小さなものであった。それを石膏せっこう型にとって岡野さんは帰朝される時持ちかえられたが、帰国後石膏に斑点はんてんが出たという通知があった。
自作肖像漫談 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
鮮やかな色の花々が上段を縁どって生え、その真ん中には、豊満な、珍しいほど大輪の、赤い斑点はんてんのある黄ダリヤが、今を盛りと咲き誇っていた。
爺は、この黒い、白い雪の斑点はんてんの付いた昆布のように凍えた合羽を後方うしろに取りけると、女の背には、乳飲児がおわされていた。これを見た老婆は
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また発疹はっしんや病的な赤い斑点はんてんなども見えていた。二、三人の者は、車の横木になわを結わえてそれをあぶみみたいに下にたらし、その上に足を休めていた。
と同時に、涼しく美しかった両のまなこは、さっと異様に輝きました。死骸しがいのいたるところに紫の斑点はんてんがはっきりと、浮かび上がっていたからです。
屋根にも四方にもむしろが張ってあるとは云うものの、莚と莚との合わせ目が隙間すきまだらけで、見物席に日光の斑点はんてんが出来
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
真っすぐに水に落したというが、死骸の首から肩へかけての斑点はんてんが変じゃないか——たぶん声をも立てずに、あっと言う間に死んでしまったことだろう
白眼の表面は、灰色の斑点はんてんで、殆どおおい尽され、黒目もそこひの様に溷濁こんだくして、虹彩こうさいがモヤモヤとぼやけて見えた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
正覚坊のことを、一名アオウミガメというのは、暗緑色で、暗黄色の斑点はんてんがあるからで、大きさも、形もよくにた海がめにアカウミガメというのがある。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
いつの間にやら殆ど全部むしばまれて、それに黄褐色おうかっしょくのきたならしい斑点はんてんがどっさり出来てしまっていることに、その朝、私は始めて気がついたのだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
一人の顔が小豆粒大あずきつぶだいに写っている写真である。よく気をつけて見ると、顔の形をなすものは大部分が黒くて、その一部に白い斑点はんてんがあるだけのものである。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
そうして木の葉の網目あみめる日光が金の斑点はんてんを地に落すあの白樺しらかばの林の逍遙しょうよう! 先生も其処に眠って居られる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さっきから、かの女のひとみ揶揄やゆするように陽の反射の斑点はんてんが、マントルピースの上の肖像画の肩のあたりにきろきろして、かの女の視線をうるさがらしていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
手を出そうかなと思う矢先へもって来て、急に黒い斑点はんてんが、晴夜せいや星宿せいしゅくのごとく、縦横に行列するんだから、少し辟易へきえきしてしまって、ぼんやり皿を見下みおろしていた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これも明暗の斑点はんてんの中に、とまをあちこち伝わっては、時々さも不思議そうに籠の下の男を眺めている。男はその度にほほみながら、葉巻を口へ運ぶ事もある。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
花を洩れ枝を洩れ、新酒の色をした日の光は、仮面の城主の仮面の上へも、その体へも斑点はんてんをつけた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
出発の日までにはいつものようにケロリトなおると思っていたのが、三日めごろから熱が急にたかくなって、手足から首へかけて紅い斑点はんてんがいっぱいにふき出してきた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
雨は三日まえからあがったままで、林の中の水をたっぷり吸った土には、木洩こも斑点はんてんになってゆらぎ、檜の若葉がせるほどつよく、しかし爽やかに匂っていた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
眼の前の薄黄色い光りの中で、無数の灰色の斑点はんてんがユラユラチラチラと明滅するのを感じていた。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馭者はたいてい幅のひろい福々しい顔をしているが、妙に赤い斑点はんてんがあって、飲み食いがさかんなために血液が皮膚の血管のひとつひとつに溢れているかのように見える。
駅馬車 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
くちばし浅緑あさみどり色、羽は暗褐色あんかっしょく淡褐色たんかっしょく斑点はんてん、長い足は美しい浅緑色をしていた。それをあらくつぶして、骨をトントンと音させてたたいた。それにすらかれは疲労つかれを覚えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その時傍の窓ガラスの面に、音もなく黒い斑点はんてんが出来た。つづいて二つ、三つ。翼を流れるものが、風向きの関係か何かで、粒のまま窓ガラスにまっすぐ飛んで来るらしい。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
建物疎開に行って遭難したのに、奇蹟きせき的に命拾いをした中学生の甥は、その後毛髪がすっかり抜け落ち次第に元気を失っていた。そして、四肢ししには小さな斑点はんてんが出来だした。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
どす黒い、斑点はんてんのある、への字形に反りかえった腕が、格ガラスの右端から現われて、今にも、ハンドルに手をかけようとするのです……おお、父はよみがえったのでした。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
胸は一面に目も当てられぬほどめちゃめちゃに砕けていた。右の方の肋骨ろっこつが二、三枚折れていて、左の方は心臓の真上に、黄味がかった黒い斑点はんてんが、大きく無気味に広がっていた。
ふと見るとその電燈の笠の内側に黒い斑点はんてんが見えた。それは壁虎やもりであった。壁虎はを見つけたのか首を出したがその首が五寸ぐらいも延びて見えた。彼はおやと思って足を止めた。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其の葉の隙から時々白く、殆ど銀の斑点はんてんの如く光って見える空。地上にも所々倒れた巨木が道を拒んでいる。攀上よじのぼり、垂下り、絡みつき、輪索わなを作る蔦葛つたかずら類の氾濫はんらんふさ状に盛上る蘭類。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「地上」は、こけむしたようなすすけた緑の斑点はんてんを、校舎の裏の赤土の上にひろげ、ところどころ地面に凸凹でこぼこの影をつくりながら、眼下から渋谷川のほうにかけて裸の空地をつづけている。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
写真は西洋のもので、いやにきらきら針のような斑点はんてんが光って見えるおそろしく古いものであった、光一はだまってそれを眺めた。ひとりの男とひとりの女が現われて肩に手をふれあった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
定雄は吹く度にだんだん上達する笛の面白さにしばらく楽んで歩いていると、清も両手の笛を替る替る吹き変えては、木のこずえからすべり流れる日光の斑点はんてんに顔を染めながら、のろのろとやって来た。
比叡 (新字新仮名) / 横光利一(著)
むらさきの枝に白い斑点はんてんがある。
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
ゆるやかに波を打つ地面には麦畑らしい斑点はんてんしまが見え、低い松林が見え、ポプラの並み木が見え、そして小高い丘の頂上には風車小屋があって
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
でっぷりとして、毛深くて、立派な毛皮にくるまって、栗色くりいろのからだには金色の斑点はんてんがあり、その眼は黒々としている。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
一片の干貝のような耳、青蝋あおろうを彫りくぼませたようなまぶたのあたり、そして、紙のカビみたいな斑点はんてんまでが、浮いてきた。
といったが、古谷局長も貝谷の指した妙な血の斑点はんてんがなんであるか、解くことができなかった。そのうちに、予定の十分間はいつの間にか経ってしまった。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
身につけているのは、穴のあいた麻布ばかりで、一片の毛織りの布もなかった。所々にはだがのぞいていて、そのどこにも青い斑点はんてんや黒い斑点が見えていた。
今ではポツポツそばかすのような斑点はんてんが出来、物によってはすっかり時代がついてしまって、まるで古めかしい画像のように朦朧もうろうとしたものもありましたけれど
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
プルートォは体のどこにも白い毛が一本もなかったが、この猫は、胸のところがほとんど一面に、ぼんやりした形ではあるが、大きな、白い斑点はんてんおおわれているのだ。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)