)” の例文
ついに伯牙はくがという琴の名手が現われた。ぎょしがたい馬をしずめようとする人のごとく、彼はやさしく琴をし、静かに弦をたたいた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
胡麻塩の頤髯を悠々とし、威厳のある声音こわねで急所々々を、ピタピタ抑えてまくし立てた様子は、爽快と云ってよいほどであった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その間、南条と五十嵐は、関守の案内を待たず、無遠慮に、庭をめぐり、碑面をし、塔の文字を読もうとしたりなどしています。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、歯をくいしばり、腕をし、また、慷慨こうがいの気を新たにして、式終るや、万歳の声しばし止まず、ために、天雲もひらけるばかりであった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一日、聖上せいじやう親臨しんりんして負傷者をし、恩言おんげんたまふ、此より兵士負傷者とならんことを願ふ。是に由つて之を觀れば、兵をぎよするも亦情に外ならざるなり。
油じみた蒲団掻巻かいまきに包まれて、枕頭の坤竜をしながら、かれはいくたび眠られぬ夜の涙を叱ったことであろうか。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
当の家康の家来共が流言の渦にむせびながら腕をし、いつ夜襲の主命下るか、猿めを退治て、あとはこつちの天下だと小狸共の胸算用で憶測最も逞しい。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
州の南門、黄柏路こうはくろというところにたん六、詹七という兄弟があって、きぬを売るのを渡世としていた。
戦争中国内の有様ありさまさっすれば所在しょざい不平士族ふへいしぞくは日夜、けんして官軍のいきおい、利ならずと見るときは蹶起けっきただちに政府にこうせんとし、すでにその用意ようい着手ちゃくしゅしたるものもあり。
のち永楽七年に至りて自殺す。安等をうしないてより、南軍おおいに衰う。黄子澄こうしちょう霊壁れいへきの敗を聞き、胸をして大慟たいどうして曰く、大事去る、吾輩わがはい万死、国を誤るの罪をつぐなうに足らずと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もしあれが続いていたら、自分でいうのもおかしいが、世界に出しても恥しくなくまた一面日本の誇りにもなるものが出来たろうと、今でも腕をして残念に思っている次第である。
五ツの座敷ブチ抜きたる大筵席だいえんせきは既に入り乱れて盃盤はいばん狼藉らうぜき、歌ふもあればねるもあり、腕をして高論するもの、を擁して喃語なんごするもの、彼方かなたに調子外れの浄瑠璃じやうるりに合はして
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
女像によざうにして、もし、弓矢ゆみやり、刀剣とうけんすとせむか、いや、こし踏張ふんばり、片膝かたひざおしはだけて身搆みがまへてるやうにて姿すがたはなはだとゝのはず、はうまことならば、ゆかしさはなかる。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
偖主人の鬼一殿は何処におはすぞと見てあれば、大玄関の真中に、大礼服のよそほひ美々しく、左手ゆんで剣𣠽けんぱを握り、右に胡麻塩ごましほ長髯ちようせんし、いかめしき顔して、眼鏡を光らしつゝたゝずみたまふが
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
殿上に桐火桶きりびおけすだれを隔てて世俗に対したのでは俳人芭蕉は大成されなかったに相違ない。連歌と俳諧の分水嶺ぶんすいれいに立った宗祇そうぎがまた行脚あんぎゃの人であったことも意味の深い事実である。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
賢良方正の士を挙げてこれをたすけ、一片の私心なく半点の我欲なく、清きこと水のごとく、なおきこと矢のごとく、己が心を推して人に及ぼし、民をするに情愛を主とし、饑饉ききんには米を給し
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と一座を見廻して、静かに白髯はくぜんしながら口を切った。
半化け又平 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
惲南田うんなんでんひげしながら、念を押すように王石谷を見た。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
撫骸歎菲才 ほねして菲才を歎ず。
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
しながら無念そうに身を震わせた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
石をかたわらにある百合ゆりを剪る
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
偉大なる殿堂の広※ひだせよ
傾ける殿堂 (新字旧仮名) / 上里春生(著)
そしてやおら身を起すと、船のへさきに立って、江の水に三杯の酒をそそぎ、水神を祭って、剣をしながら、諸大将へさらに感慨をもらした。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
栄三郎は強い決意を眉宇びうに示して、ひそかに武蔵太郎をしつつ夜盗やとうのごとく鈴川の邸内へ忍びこんだのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
するとオースチン師は雪より白い房のようなひげしながら、おごそかの口調で云うのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この女像にして、もし、弓矢を取り、刀剣をすとせんか、いや、腰を踏張ふんばり、片膝おしはだけて身構えているようにて姿甚だととのわず。この方がまことならば、床しさは半ばせ去る。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
諸子のためこの事を講ぜんには、藩王たるものは、上は天子を尊み、下は百姓ひゃくせいし、国家の藩輔はんぽとなりて、天下の公法をみだす無かれと言うべきなり、かくの如くなれば則ち太子たるものは
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こういって、坊主も、先生も、女給も、めかけも腕をしているのである。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あるいはおどしあるいはし、恩威ともに行なわれてその向かうところを示すことあらば、小民もらず知らずして上の命に従い、盗賊、人殺しの沙汰もなく、国内安穏に治まることあるべけれども
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
剣をして起つような気概もありました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
篠田はおもむろに其背をしつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
秋晴やあるは先祖の墓を
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
張飛は、頬髯ほおひげしながら、ひき退った。一夜の功労も一言で失してしまった形である。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がらになくいささか心細くなって暗々然と隻腕に乾雲をさざるを得なかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
したのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「徳川殿に従う三河衆は、尾濃の将士に笑わるるなと、各〻、腕をしておるそうな。われわれとても同様、三河武士におくれては名折れだ。末代にかけて恥かしい。しっかりやろうぞ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、これへ来る前にったばかりの髯痕ひげあとして、初めて、笑った。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬春堂は起き上がって、あわてて行儀を直し、天神髯てんじんひげしながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉用は、さっきから、ひげして、そばで聞いていたが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
官兵衛は、悪い方の片膝をして
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)