憤然ふんぜん)” の例文
もつとも、あれでしどつちかが斷然だんぜんつよくでもなつたとしたら、おそらくすゝまぬ方は憤然ふんぜん町内をつてつたかも知れない。くは原、くは原!
平次は憤然ふんぜんとしました。如何に封建制度の惡政の下でも、一町内の家搜しは、岡つ引風情には許されるべきことではありません。
いたずらに、我説がせつ固持こじして、論争の陣を張っていた酒井忠次も石川数正も、かれが憤然ふんぜんと席を蹴ったすがたに、眼をみはって
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも憤然ふんぜんとしておおいいかり、さながら自分の愛人を侮辱ぶじょくされた時の騎士きしのごとく、するど反撃はんげきやりをふるってき当って行った。
小町 (憤然ふんぜんと)それをほんとうだと思ったのですか? 嘘ですよ。あなた! 少将は今でもあの人のところへ百夜通ももよがよいをしているくらいですもの。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「私ですか?」びっくりしたように見上げて娘は憤然ふんぜんとした顔になった。「私、お勤めです。今日は日曜日ですから、プールに泳ぎに行ったんです」
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
額からぽたぽたこぼれる血をぬぐい「覚えてなはれ」と捨台辞すてぜりふを残して憤然ふんぜんと座を立ちそれきり姿を見せなかった
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
山嵐が憤然ふんぜんとやって来て、いよいよ時機が来た、おれは例の計画を断行するつもりだと云うから、そうかそれじゃおれもやろうと、即座そくざに一味徒党に加盟した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれは、そうおもうと、憤然ふんぜんとして、すきをて、このサーカスだんからそうと苦心くしんしたのであります。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ちょいと何が有名なのさ。して頂戴ちょうだいよ。」と君江はわざとらしく憤然ふんぜんと椅子を立って、先刻さっきから打捨うちすてて置いた自動車商会の矢田さんの方へと行ってしまった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
興世王もこれには憤然ふんぜんとせざるを得なかつたが、根が負け嫌ひの、恐ろしいところの有る人とて、それならきさまも勝手にしろ、乃公おれも勝手にするといつた調子なのだらう
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
向島の小梅にいた頃、寒声かんごえを練るため、夜半物干台に出ておさらいをしていたところ裏隣りの家の窓が開いていきなり「気違い。」と怒鳴どなられた。勿論助ちゃんは憤然ふんぜんとした。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「僕が篠田の誣告ぶこくでもすると云ふんですか」と、吾妻は憤然ふんぜんとして浦和に詰め寄る
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
折角せっかくいい機嫌になった彼は、大使館に於けるこの押し問答によって、また憂鬱ゆううつを取り戻した。なんという頭の悪い、そして礼儀知らずの館員だろう。彼は憤然ふんぜん、大使館の門を後にした。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
掃除の手をつけようもない。女連は長い顔をして居る。彼は憤然ふんぜんとして竹箒押取り、下駄ばきのまゝゆかの上に飛び上り、ヤケに塵の雲を立てはじめた。女連も是非なく手拭てぬぐいかぶって、たすきをかけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
とら比較的ひかくてきおろか動物どうぶつで、憤然ふんぜんをどらして、鐵車てつしや前方ぜんぽうから飛付とびついたからたまらない、おそ旋廻圓鋸機せんくわいえんきよきのために、四肢しゝや、腹部ふくぶ引裂ひきさかれて、苦鳴くめいをあげて打斃うちたをれた。もつと狡猾こうくわつなるは猛狒ゴリラである。
が、ここまで黙って聴いていた青年は、憤然ふんぜんとして、立ち上った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
窓口にいた兵六さんは憤然ふんぜんとして
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
次郎は憤然ふんぜんとして答えた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
顧は憤然ふんぜんとしていった。
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
隱されたるやうなるべししかし此事屹度きつと九助が殺したると聞受難と申さるゝに兩人は憤然ふんぜんとなり否々いや/\相違御座りませんと云ふ大岡殿コリヤ九郎兵衞夫婦其方共がせがれや娘の殺されし所は何と云地所なるやと有に九郎兵衞はヘイ大井川おほゐがははし下伊呂村しもいろむら辨天堂べんてんだうの前なりと云ければ而てしも伊呂村辨天堂の前より水呑村迄は何程なるや又惣内夫婦は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
野々村主水もんどは、ぜひなげに、立ち上がった。何か、胸のいたむものが、部下たちのうえに、思いやられ、つい、憤然ふんぜんと、色になって、かれの顔をかすめていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぎがたにちてゐたのは、そのときて忘れたなはなのです。)をとこ血相けつそうへたままふと太刀たちきました。とおもふとくちかずに、憤然ふんぜんとわたしへびかかりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平次の話の突飛さに、萬七は憤然ふんぜんとして口をはさみました。
伯爵の顔は悄然しょうぜんたる顔から、憤然ふんぜんたる顔に移行した。
憤然ふんぜんとしてつめよる冬太郎へ
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
青年は憤然ふんぜんとしたらしかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
小寺政職おでらまさもともつよく叱った。で、憤然ふんぜんたるまま、末席の五、六名が唇をかんで、座に直ったのを見とどけると、官兵衛は初めて胸を正した。語気声色、常と変らない彼にかえっていった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神将 (憤然ふんぜんと)このほこらって往生おうじょうしろ! (使に飛びかかる)
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蛾次郎、口をとンがらかして、すこぶる威厳いげんを傷つけられたように、憤然ふんぜん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少将はほとんど、憤然ふんぜんと、青年の言葉をさえぎった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
憤然ふんぜんとして、そのくら部屋へやからかけだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)