往々わう/\)” の例文
貝塚に於て發見はつけんさるる獸骨貝殼の中には往々わう/\黒焦くろこげに焦げたるもの有り。是等はおそらく獸肉ぢうにくなり貝肉なり燒きて食はれたる殘餘ならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
路地には往々わう/\江戸時代から伝承し来つた古い名称がある。即ち中橋なかばし狩野新道かのうじんみちと云ふが如き歴史的由緒あるものもすくなくない。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
(一)の神佛しんぶつはまとものものもあるが、異形いげうのものもおほい。そして神佛しんぶつ往々わう/\種々しゆ/″\變相へんさうするからこれわかつて正體しやうたい權化ごんげの二とすることが出來できる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
はう心配しんぱいして電報でんぱうまでけたのであるから其時そのとき返電へんでんをしてもらへば無益むえき心配しんぱいけつしてしません。一寸ちよつとしたことであるが日本にほん婦女子ふぢよしには往々わう/\斯樣かやう等閑なをざりおほいのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
わたくし時折ときをり種々いろ/\こと妄想まうざうしますが、往々わう/\幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこゑいたり、音樂おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしてゐるやうにおもはれるときります。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
するといふ大惡不道だいあくぶだうの曲者なりされば根が惡心のある者は如何にしても善心には成難なりがたきものと見え往々わう/\召捕めしとらるゝ盜人ぬすびとども入牢じゆらうの上御裁許にあひ追放つゐはう又は入墨或は遠島と夫々に御咎おとがめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
按ずるに、蛾蛾同韻ががどうゐん(五何反)なれば相通あひつうじて往々わう/\書見しよけんす。きやうきやうに作るすこぶ異体ゐていなり。
シリアを旅して往々わう/\穴のあきたる銀貨のツリを貰ふことあるは、此風習あるが為なり。
冬分ふゆぶん往々わう/\敦賀つるがからふねが、其處そこ金石かないはながら、端舟はしけ便べんがないために、五日いつか七日なぬかたゞよひつゝ、はて佐渡さどしま吹放ふきはなたれたり、思切おもひきつて、もとの敦賀つるが逆戻ぎやくもどりすることさへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
記録きろくあらはれたものもほとんく、弘仁年間こうにんねんかん藥師寺やくしじそう景戒けいかいあらはした「日本靈異記にほんれいいき」がもつとふるいものであらう。今昔物語こんじやくものがたりにも往々わう/\化物談ばけものだんる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
按ずるに、蛾蛾同韻ががどうゐん(五何反)なれば相通あひつうじて往々わう/\書見しよけんす。きやうきやうに作るすこぶ異体ゐていなり。
昔の名残には、ヘロデの建てし街の面影を見るべき花崗岩みかげいしの柱十数本、一丈五尺にして往々わう/\一石より成るもの、また山背さんはいの窪地に劇場の墟址あとあり。麦圃のくろ、橄欖の影に、断柱だんちう残礎ざんそ散在す。
それをまもつくのは至極しごく結構けつかうでありますが、如何いかにせん無味乾燥むみかんさうなる一ぺん規則きそくでは銘々めい/\好都合かうつがふわからず、他人たにんから命令めいれいされたことのやうにおもはれて、往々わう/\規則きそく忽諸こつしよにするのふうがある。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
文章ぶんしやう章句しやうくにおいても往々わう/\生硬せいかう惡譯あくやくがあつて、はなはだしきはなんことやらからぬのがある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
またたとへば、父母ふぼはととさま、ははさまんですこしもつかへなきのみならず、かへつ恩愛おんあいぜうこもるのに、なにくるしんでかパパさま、ママさまと、歐米おうべい模倣もはうさせてゐるものが往々わう/\ある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)