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帰途
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かえり
ふりがな文庫
“
帰途
(
かえり
)” の例文
旧字:
歸途
実は昨年、ちょうど今頃……もう
七八日
(
ななようか
)
あとでした。……やっぱりお宅でお世話になって、その
帰途
(
かえり
)
がけ、大仁からの電車でしたよ。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君がはじめて来てくれたのは、二十四年だったかね。そうそう、君をおくった
帰途
(
かえり
)
に、巡査に
咎
(
とが
)
められたことがあったっけなあ。」
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その
帰途
(
かえり
)
、近所の町組詰所へ立ち寄って、異な物を銜えた宿無犬のことを聞き、もしやと思って急いで
帰宅
(
かえ
)
ってみると、案の定
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それから
町人
(
ちょうにん
)
の
家
(
いえ
)
よりの
帰途
(
かえり
)
、
郵便局
(
ゆうびんきょく
)
の
側
(
そば
)
で、
予
(
かね
)
て
懇意
(
こんい
)
な
一人
(
ひとり
)
の
警部
(
けいぶ
)
に
出遇
(
であ
)
ったが
警部
(
けいぶ
)
は
彼
(
かれ
)
に
握手
(
あくしゅ
)
して
数歩
(
すうほ
)
ばかり
共
(
とも
)
に
歩
(
ある
)
いた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「高崎のお
帰途
(
かえり
)
ですか」ちょっと千々岩の顔をながめ、少し声を低めて「時にお急ぎですか。でなけりゃ夜食でもごいっしょにやりましょう」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
その
帰途
(
かえり
)
に玉子と一緒に二人乗の俥に載せられたことを思出した。その俥の上でこの御殿山の通路を夢のように揺られて行ったことを思出した。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かくて黄金丸は、ひたすら
帰途
(
かえり
)
を急ぎしが、
路程
(
みちのほど
)
も近くはあらず、かつは途中にて狼藉せし、猿を
追駆
(
おいか
)
けなどせしほどに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
帰途
(
かえり
)
を案じていた作左衛門夫婦は、声に
愕
(
おどろ
)
いて出てみると、五平は肩先から鮮血を流して、
乱鬢
(
らんびん
)
のままへたばっていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは田圃の近道をば
田面
(
たのも
)
の風と蓮の花の薫りとに見残した
昨夜
(
ゆうべ
)
の夢を
託
(
たく
)
しつつ
曲輪
(
くるわ
)
からの
帰途
(
かえり
)
を急ぐ人たちであろう。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
即ち
五月
(
さつき
)
の初旬、所謂る降りみ降らずみ五月雨の晴間なき
夕
(
ゆうべ
)
、所用あって赤阪辺まで出向き、その
帰途
(
かえり
)
に
葵阪
(
あおいざか
)
へ差掛ると、生憎に雨は烈しくなった。
河童小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
帰途
(
かえり
)
には電車で
迂廻
(
まわりみち
)
して
肴町
(
さかなちょう
)
の川鉄に寄って鳥をたぺたりして加藤の家へ
土産
(
みやげ
)
など持って二人俥を連ねて戻って来た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その初めの日は
帰途
(
かえり
)
に
驟雨
(
しゅうう
)
に会い、あとの一日は朝から雨が横さまに降った。かれは授業時間の
間
(
あいだ
)
々を宿直室に休息せねばならぬほど
困憊
(
こんぱい
)
していた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
其れは明治三十九年露西亜の
帰途
(
かえり
)
だった。七月下旬、
莫斯科
(
もすくわ
)
を立って、イルクツクで東清鉄道の客車に乗換え、莫斯科を立って
十日目
(
とおかめ
)
にチタを過ぎた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
闇の間に走った中国筋は先ず九州を一周してから
帰途
(
かえり
)
にゆっくり拝見という寸法。団さんの設計は例によって無駄がない。今度はナカ/\の長道中だ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
これは渋川の車夫で、車に乗って来た処が、正直で能く働き、気の利いた男で、しまいには馴染になって、正直者だから次の間に居れ、
帰途
(
かえり
)
は又乗ると云う
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おまけに、
帰途
(
かえり
)
に花屋へ寄って、一ソヴェレンも出して素晴らしい花束を買ったり、女の好きそうな菓子を土産に持たしたり、ひたすら歓心を獲るに努めたとある。
消えた花婿
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
昼は賃仕事に肩の張るを休むる間なく、夜は
宿中
(
しゅくじゅう
)
の
旅籠屋
(
はたごや
)
廻
(
まわ
)
りて、元は
穢多
(
えた
)
かも知れぬ
客達
(
きゃくだち
)
にまで
嬲
(
なぶ
)
られながらの
花漬売
(
はなづけうり
)
、
帰途
(
かえり
)
は一日の苦労の
塊
(
かたま
)
り銅貨
幾箇
(
いくつ
)
を酒に
易
(
か
)
えて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
林は火曜日の午後五時、所用を帯びて銀行へいった
帰途
(
かえり
)
、チープサイドの喫茶店でお茶を飲んでいると、衝立の蔭にエリスともう一人見知らぬ男が席を占めているのを見た。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
丁度自分の畑の所まで来ると佐藤の
年嵩
(
としかさ
)
の子供が三人学校の
帰途
(
かえり
)
と見えて、荷物を
斜
(
はす
)
に背中に背負って、頭からぐっしょり濡れながら、
近路
(
ちかみち
)
するために畑の中を歩いていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
盆踊りの
後
(
あと
)
で
淫猥
(
いんわい
)
の実行が行われるから困ると非難する者もあるが、その実行は盆踊りの後に限った事ではない。芝居の
帰途
(
かえり
)
にもある。活動写真の戻りにもある。日々谷公園の散歩中にもある。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
伊之助の
帰途
(
かえり
)
を追っかけて、斬って捨てたのもこの
私
(
わし
)
だ。
後閑氏
(
こがうじ
)
ではない
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今日はその
帰途
(
かえり
)
である。
黄昏
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
三郎さんを突いたのは——
帰途
(
かえり
)
は杖にして
縋
(
すが
)
ろうと思って、ぽう、ぽっぽ。……いま、すぐ、玄関へ出ますわ、ごらんなさいまし。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学校の
帰途
(
かえり
)
に行く月浚いに、間にあうように新しく縫われた浴衣であるにしろ、それだけの過失で、英語は下げられてしまった。
旧聞日本橋:25 渡りきらぬ橋
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
帰途
(
かえり
)
に電車の中でも、勢いその事ばかりが考えられたが、此度のお宮に就いては、
悪戯
(
いたずら
)
じゃない
嫉妬
(
やきもち
)
だ。
洒落
(
しゃ
)
れた唯の悪戯は長田のしそうなことではない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
帰途
(
かえり
)
にも葡萄酒醸造所に寄って、ふたたび梅酒の御馳走になりました。アルコールがはいっていないのですから、わたしには口当りがたいそう
好
(
よ
)
いのです。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
湯島の方へ
用達
(
ようたし
)
に行った
帰途
(
かえり
)
を近江屋の前へ差しかかったのが、八丁堀に朱総を預る合点長屋の釘抜藤吉、いきなり横合から飛び出して
藍微塵
(
あいみじん
)
の袖を掴んだのは
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
門から玄関までの長い家へ行くと
帰途
(
かえり
)
には出て来てから屹度
反対
(
あべこべ
)
の方角へ向う。子供の時分の話だが、自分の学校が分らなくなって巡査に訊いたことさえあるんだからね
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
村の青年達が八幡様の鳥居を直した
帰途
(
かえり
)
に立寄って、廊下の壁の
大破
(
たいは
)
を片づけたり、地蔵様を
抱
(
だ
)
き起したりしてくれました。
後
(
あと
)
は前述の如く素人大工で済ませて置きます。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
片岡中将はその副官といずくかへ行ける
帰途
(
かえり
)
を、殊勝にも
清人
(
しんじん
)
のねらえるなりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
師の範宴の
帰途
(
かえり
)
を案じてさまよっている性善坊と
覚明
(
かくみょう
)
のふたりで
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
倉賀屋の
帰途
(
かえり
)
、平次はこんな事を言い出すのです。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
俊吉は、
外套
(
がいとう
)
も
無
(
な
)
しに、番傘で、
帰途
(
かえり
)
を急ぐ
中
(
うち
)
に、雪で
足許
(
あしもと
)
も
辿々
(
たどたど
)
しいに附けても、心も空も
真白
(
まっしろ
)
に
跣足
(
はだし
)
というのが身に染みる。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
松吉に別れて、半七はまっすぐに神田へ帰ろうと思ったが、自分はまだ一度もその現場を見とどけたことがないので、念のために
帰途
(
かえり
)
に市ヶ谷へ廻ることにした。
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
玳瑁
(
たいまい
)
の櫛を出して問い詰めると、辰はすぐさま頭を掻いて、じつは誠に申訳ないが、年の暮れのある晩
稼業
(
しょうばい
)
の
帰途
(
かえり
)
に、
筋交
(
すじかい
)
御門の青山
下野守
(
しもつけのかみ
)
様の邸横で拾ったのだが
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
松屋から
帰途
(
かえり
)
に食傷横丁に入って、あすこの鳥料理に上った。私は
海鼠
(
なまこ
)
の
肴
(
さかな
)
で
飲
(
い
)
けぬ口ながら、ゆっくりした気持ちになって一ぱい飲みながら、お宮のために鳥を焼いてやって
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
田舎銀座の呉服町まで行って、
帰途
(
かえり
)
は参考の為めとあって電車に乗ったが、実は博多織だの博多絞だのが
動
(
やや
)
もすると田鶴子さんの足を止めるので、団さんが警戒したのだった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
煮焚
(
にたき
)
勿論
(
もちろん
)
、水ももろうてあるき、五丁もはなれた足場の悪い
品川堀
(
しながわぼり
)
まで
盥
(
たらい
)
をかゝえて洗濯に往っては腰を痛くし、それでも
帰途
(
かえり
)
には
蕗
(
ふき
)
の
薹
(
とう
)
なぞ見つけて、
摘
(
つ
)
んで来ることを忘れなかった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
帰途
(
かえり
)
は、めっかち
生芽
(
しょうが
)
とちぎ
箱
(
ばこ
)
がおみやげ、
太々餅
(
だいだいもち
)
も包まれている。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
帰途
(
かえり
)
に、一度、そちたちも
聴聞
(
ちょうもん
)
してゆくがよいと、いわれたがの
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はあ、つい先日佐世保に行って、今
帰途
(
かえり
)
です」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
帰途
(
かえり
)
は、
薄暮
(
くれがた
)
を、もみじより、花より、ただ落葉を鴨川へ渡したような——
団栗橋
(
どんぐりばし
)
——というのを渡って、もう一度清水へ上ったのです。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おじさんは
帰途
(
かえり
)
に本郷の友達の
家
(
うち
)
へ寄ると、友達は自分の
識
(
し
)
っている踊りの師匠の
大浚
(
おおさら
)
いが柳橋の或るところに開かれて、これから義理に顔出しをしなければならないから
半七捕物帳:01 お文の魂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
帰途
(
かえり
)
は夜と覚悟してか、まのぬけた
小田原提灯
(
おだわらちょうちん
)
が一つ
梶棒
(
かじぼう
)
の先にぶら下がっていた。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
翌朝、母親が手ずから着物を着せて、父親が
口上
(
こうじょう
)
を教えてくれた。嫁を貰う息子を未だ子供だと思っている。新太郎君は羽織袴に昨夜散髪の
帰途
(
かえり
)
大徳
(
だいとく
)
へ廻って特に
吟味
(
ぎんみ
)
して来たタスカン帽。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「ねえ行こうよ。そして
帰途
(
かえり
)
に何か食べよう」と、優しくいうと
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
奥さん、いずれ
帰途
(
かえり
)
には寄せて頂く。私は味噌汁が大好きです。
小菜
(
こな
)
を入れて食べさして
発
(
たた
)
せて下さい。時に、帰途はいつになろう。……
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
足の方が少しく楽になったので、わたしはまた例のおしゃべりを始めますと、案内者もこころよく相手になって、
帰途
(
かえり
)
にもいろいろの話をしてくれました。その中にこんな悲劇がありました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
四年スタートの
晩
(
おそ
)
い野口君がソロ/\肉迫して来た。同じ県で鉢合せをすることはなかったが、僕はいつも野口君の任地と東京の間に介在していたから、野口君は上京の
帰途
(
かえり
)
に必ず寄ってくれた。
首切り問答
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
……
店頭
(
みせさき
)
をすとすと離れ際に、「
帰途
(
かえり
)
に寄るよ。」はいささか珍だ。白い妾に対してだけに、河岸の
張見世
(
はりみせ
)
を
素見
(
すけん
)
の
台辞
(
せりふ
)
だ。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
帰
常用漢字
小2
部首:⼱
10画
途
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“帰”で始まる語句
帰
帰依
帰宅
帰路
帰趨
帰来
帰洛
帰京
帰還
帰省