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喫
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きっ
ふりがな文庫
“
喫
(
きっ
)” の例文
生前の深山木の鋭い探偵眼に驚いていた私は、ここにその深山木以上の名探偵を発見して、更らに
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
しなければならなかった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
団飯
(
むすび
)
から
脚
(
あし
)
ごしらえの仕度まですっかりして後、叔母にも朝食をさせ、自分も十分に
喫
(
きっ
)
し、それから
隙
(
すき
)
を見て
飄然
(
ふい
)
と出てしまった。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
する時は必ず
大人
(
おとな
)
の真似をするされば彼女も自分は検校に愛せられていたのでかつて
己
(
おの
)
れの肉体に
痛棒
(
つうぼう
)
を
喫
(
きっ
)
したことはないが日頃の師匠の
流儀
(
りゅうぎ
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「これは思いがけない好物のお贈り物。わけて秀吉どののお志とあれば
風味
(
ふうみ
)
喫
(
きっ
)
すべしと存ずる。遠慮なく頂戴いたそう」
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど、それには
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けず、
街
(
まち
)
のカフェーへいって、
外国
(
がいこく
)
の
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだり、
紅茶
(
こうちゃ
)
を
喫
(
きっ
)
したりして、
終日
(
いちんち
)
ぼんやりと
暮
(
く
)
らすことが
多
(
おお
)
かったのでした。
銀のつえ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
帰途
勧工場
(
かんこうば
)
に入りて
筆紙墨
(
ひっしぼく
)
を買い
調
(
ととの
)
え、
薄暮
(
はくぼ
)
旅宿に帰りけるに、稲垣はあらずして、古井
独
(
ひと
)
り何か
憂悶
(
ゆうもん
)
の
体
(
てい
)
なりしが、妾の帰れるを見て、共に晩餐を
喫
(
きっ
)
しつつ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
台所では毎日緑青の
生
(
わ
)
いた有毒食物を
喫
(
きっ
)
しながら二百円も三百円も奮発して贅沢な
翫具
(
おもちゃ
)
を買うのだね。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
が、もしこの手紙を受け取ったとすれば、君は必ず僕の運命に
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
せずにはいられないであろう。第一に僕はチベットに住んでいる。第二に僕は
支那人
(
しなじん
)
になっている。
第四の夫から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その私の繰り返し繰り返し言った忠告が効を奏したのか、あるいは、かのシェパアドとの一戦にぶざまな
惨敗
(
ざんぱい
)
を
喫
(
きっ
)
したせいか、ポチは、卑屈なほど
柔弱
(
にゅうじゃく
)
な態度をとりはじめた。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
要塞のうえには、今もなお敵の決死隊のしるしらしい骸骨の旗が、へんぽんとして
飜
(
ひるがえ
)
っているのであった。命令しない戦闘に大勝利を博し、命令した戦闘に敗北を
喫
(
きっ
)
している。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
威
(
い
)
を
振
(
ふる
)
って
驀地
(
ばくち
)
に進めと
吼
(
ほ
)
えたのみである。このむさくろしき兵士らは仏光国師の
熱喝
(
ねっかつ
)
を
喫
(
きっ
)
した訳でもなかろうが驀地に進むと云う
禅機
(
ぜんき
)
において時宗と
古今
(
ここん
)
その
揆
(
き
)
を
一
(
いつ
)
にしている。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私もふだん人から年少に見られる方ではあるが、鳴尾君の飛び抜けた若さには
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
した。村木さんはまた私より二つ上の二十七であったが、私達が幼いせいか、ぐっと老けて見えた。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
礫
(
つぶて
)
のごとく身を躍らして、突如! 左膳をおそうと見せて一瞬に右転、たちまち周囲にひろがりかけていた助勢の一人を唐竹割り、武蔵太郎、柄もとふかく人血を
喫
(
きっ
)
して、
戞
(
か
)
ッ! と鳴った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
先年、二年あまりアメリカの研究所で仕事をして見て、日本と
較
(
くら
)
べてあまりにも研究能率の差があるのに、一驚を
喫
(
きっ
)
した。日本だったら、二十年かかる仕事が、アメリカでは二年で出来るのである。
線香の火
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
さすがに葛木は一驚を
喫
(
きっ
)
した。
余
(
あまり
)
の事である。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これには大塔ノ宮以下、一驚を
喫
(
きっ
)
して、夜討ちの出鼻をくじかれた。大誤算を生じたらしい。しょせん、正攻では
敵
(
かな
)
わぬことはわかりすぎている。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
部屋の中にいては気が附きませんけれど、暗い屋根裏から見ますと、その隙間が意外に大きいのに
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
します——稀には、節穴さえもあるのです。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
外の食物を
喫
(
きっ
)
しておればその中に多少の水分がありますから水を飲まないでも済みます。殊に疲労して
喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
いた時は水を何ほど飲んでもその渇きが止まりません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
少時
(
しばらく
)
三人が茶を
喫
(
きっ
)
している際でも、別に会話をはずませる如きことはせぬので、晩成先生はただ
僅
(
わずか
)
に、この寺が
昔時
(
むかし
)
は立派な寺であったこと、寺の庭のずっと先は
渓川
(
たにがわ
)
で
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
遂
(
つい
)
には病前よりも一層の肥満を来し、その当時の写真を見ては、一驚を
喫
(
きっ
)
するほどなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そうとはちっとも知らずに、食堂に入って飯を食っていると、突然この顔に
出食
(
でっく
)
わして
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
した。
固
(
もと
)
より犬の食堂じゃないんだけれども、犬の方で間違えて
這入
(
はい
)
って来たものと見える。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何かしらそこに
甘
(
あま
)
い満足を
喫
(
きっ
)
しているふうだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
桂木
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
して
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とにかく、上方でも武蔵野でも連敗は
喫
(
きっ
)
してきたが、なおそれくらいな意気はあった。また自信していい兵数もあった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
潤一青年は、あの宝石踊りの黒天使が、たった十分ほどのあいだに背広の男姿になって、自動車を運転してきたのを知ると、一驚を
喫
(
きっ
)
しないではいられなかった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
平生
(
へいぜい
)
食し習わぬ珍らしき物を
喫
(
きっ
)
して非常に
美味
(
よきあじ
)
を感ずる事あり。また以前好まざりし物を喫して
俄
(
にわか
)
にその味を好むようになる事あり。それらは食物が成分の不足を教えたるなり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
挨拶
(
あいさつ
)
終りて、ふと
傍
(
かたわ
)
らに一青年のあるに心付き、この人よ、船中にても
種々
(
いろいろ
)
親切に世話しくれたり、彼はそも
何人
(
なんぴと
)
なりやと
尋
(
たず
)
ねしに、そは
何
(
な
)
にをいう、弟
淳造
(
じゅんぞう
)
を忘れしかといわれて
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
し
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
その日はなお
種々
(
いろいろ
)
のものを
喫
(
きっ
)
したが、今
詳
(
くわ
)
しく思出すことは出来ない。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その辺りのたたずまいでは、今し方まで、家康の主従と、大徳寺の僧などが、そこで茶を
喫
(
きっ
)
していたらしく思える。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、その余りにも大胆な身のこなしに、
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
しないではいられませんでした。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これもやっぱり化学作用の一つで肉を食べた後に
菓物
(
くだもの
)
を
喫
(
きっ
)
すると消化を助けるぜ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
として彼は今日も、舶載の支那鉢に、ひと株の福寿草を移し植え、それを卓の
春蘭
(
しゅんらん
)
とならべて、みずから入れた茶を
喫
(
きっ
)
しながら、ひとり
閑
(
かん
)
を養っていた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
読者諸君は右の記事を読んで、事の意外に
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
せられたことであろう。物語はまだ始った
計
(
ばか
)
りだ。それに、主人公である筈の明智小五郎は死んでしまった。これはどうしたことだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分免許の政治家と名乗っている人が家では
天保時代
(
てんぽうじだい
)
の台所で野蛮風の食物を
喫
(
きっ
)
して、外へ出ると
待合
(
まちあい
)
で酒を飲んで芸者を引張るという
有様
(
ありさま
)
ではどうして一国の文明を進められましょう。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
したようだった。——が、それはまだ宵のくちのことで、——あわてて彼もその本陣を三条北の河原から
悲田院址
(
ひでんいんあと
)
へかけて押しすすめていた。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかるにこの消化吸収という事が一問題で、同じように料理した食物を
喫
(
きっ
)
しても人の体質や境遇によって
大
(
おおい
)
に吸収消化の度を
異
(
こと
)
にしましょうが平生どういう風に心掛けたらいいでしょうか。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
精神分析学の書物を一冊でも読めば、幽囚された慾望というものが、どんなに恐しい力を持っているかに
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
するだろう。おれは、以前そんな事に興味を持って少しばかり読んだことがある。
疑惑
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いや彼の床几はどこにしろ、彼もまたその伝令には、
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
したことにちがいない。武将は柵門へ引っ返して来た。そして高氏をいんぎんに迎え入れた。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は今の
世人
(
せじん
)
を見るのに用がなくして手車へ乗る人が沢山あります。衛生上から申しても車へ乗るより足で歩いた方が運動になりましょう。運動をして食物を
喫
(
きっ
)
すれば味も好し、消化吸収も
速
(
すみやか
)
です。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
七時半より七時四十分まで、女中に茶菓を命じ、風月の
最中
(
もなか
)
を二箇、お茶を三碗
喫
(
きっ
)
した。七時四十分より
上厠
(
じょうし
)
約五分にして、部屋へ戻った。それより九時十分頃まで、
編物
(
あみもの
)
をしながら物思いに
耽
(
ふけ
)
った。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
平左衛門は、
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
したが、つぶさに見れば、防禦工事はまだ半ばで、
衝
(
つ
)
けば、案外、
脆
(
もろ
)
いかと思われた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼自身の大身代に
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
しないではいられませんでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
中川は一皿を
喫
(
きっ
)
しおわりて再び説明を始めたり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
東野勝って西野に一敗を
喫
(
きっ
)
すれば、きのうの
田楽狭間
(
でんがくはざま
)
はむしろ笑うべき
一朝
(
いっちょう
)
の
夢花醒散
(
むかせいさん
)
となってしまう。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
毛利家の水軍の一将、浦兵部丞が敢行した姫路襲撃は、その上陸には成功したが、戦には惨敗を
喫
(
きっ
)
した。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凝
(
じっ
)
と、ひとりで、茶を
喫
(
きっ
)
しているうちに、安兵衛は、何かうっすらと、郡兵衛の用向が感じられて来た。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
織田の群臣が
一驚
(
いっきょう
)
を
喫
(
きっ
)
したのは、この
会盟
(
かいめい
)
が行われたすぐ翌日、元康は、今川領の
上
(
かみ
)
ノ
郷
(
ごう
)
の城を攻め、城主の
鵜殿長照
(
うどのながてる
)
を斬って、もう陣頭の人となっていたことであった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど秀吉の気持は、唐突を知って、ほんの
小憩
(
しょうけい
)
を求めに立ち寄ったに過ぎないのであるから、従者の弁当を
調
(
ととの
)
えさせ、自分も湯漬の馳走になって、一碗の茶を
喫
(
きっ
)
し終ると
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「わしも因縁の奇なるに一驚を
喫
(
きっ
)
した。しかし、こういう物が世上にもれているとすれば、あの方のことも悠長に構えてはおられない。これは当家に取ってもいい刺戟じゃ」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平家は一見、その組織も士気も早、末期のものとは見えるが——と云って、一挙になどと
見縊
(
みくび
)
ったら、存外な惨敗を
喫
(
きっ
)
するかもしれない。
尠
(
すく
)
なくも彼には数十年の集積がある。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喫
常用漢字
中学
部首:⼝
12画
“喫”を含む語句
喫驚
喫茶店
喫煙室
喫飯
喫了
黄泉戸喫
喫茶
一喫
喫茶室
満喫
喫烟
滿喫
召喫
喫煙珈琲店
喫掛
喫茶館
喫付
飲喫
面喫
着衣喫飯
...