ひら)” の例文
いずくんぞ宇内うだいの形勢を洞察して武備主義を一変して生産主義となし、貴族社会を一変して平民社会となすの端緒をひらくを要せんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「そんな理解のない人が中学校長をしているのは教育上面白くない。縁談は兎に角として、国家のためにもうひらいてやる責任があるよ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
先覚者たちがこれを主張して我々国民の蒙をひらかれるのを聴く我々は、最も識別しやすいこの問題について、正当な批判を下し
婦人も参政権を要求す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
是においてか、我を知ることわがごとくなりし淑女、わが亂るゝ魂をしづめんとて、我の未だ問はざるさきに口をひらき 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あたかも何かしら重大な事を言い出す前のように、私の顔を凝視していたが、やがて、又、今までよりも一層慎しやかに口をひらいた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかも紙は封じてあって、まだひらかれていない。早速に啓いてみると、画像はもう成就していて、その風貌はさながら生けるが如くであった。
しかしこの女は今になつても、ああ云ふ無頼ぶらいな混血児を耶蘇基督だと思つてゐる。おれは一体この女の為に、蒙をひらいてやるべきであらうか。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、例を引き、因を説きもうひらく、大人の見識を表わすのには、南方氏の説話を聴聞することが少しばかりおくれたのである。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時代の変遷へんせんに会う毎に埋没まいぼつはいよいよ甚だしく、結句めいめいの迷いを散じもうひらくために、手近に見つかる知識をさえなくしてしまうのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
家に歸りて封をひらけば、内より先づ二三枚の紙出でたり。先づ取上げたる一枚は我手して鉛筆もてしるせる詩句なりき。
しかるに当時最勝を宮中法事の第一とし、天平九年冬十月最勝会を大極殿にひらく、その儀元日に同じというほどで(『元亨釈書』二の「釈道慈伝」)
次に、重大な蒙をひらいておきたいことがある。それは、竹針が鋼鉄針に比べて音が良いという誤れる認識である。
また、もうひらかれて、謙信のなして来た戦が、何を志し、何を意義しているものかを、初めてはっきりさとり得た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロシアの民衆が無智の惰眠をむさぼっていたころに、いわゆる、ブルジョアの知識階級の青年男女が、あらゆる困難を排して、民衆の蒙をひらくにつとめた。
広津氏に答う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
するとこれが一種の御手本になって村の若者が直ちにこれに悪化され、郷党の風俗崩壊の端をひらくのである。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
此の山は九四大徳だいとこひらき給うて、土石草木どせきさうもく九五れいなきはあらずと聞く。さるに九六玉川のながれには毒あり。人飲む時はたふるが故に、大師のよませ給ふ歌とて
シカシ例証として日本の作物を挙げて論じられた処は面白くも読みかつまたおかげで蒙をひらいた処もある。
しからざれば浄土がわれらの心の内にひらけてこないからである。われらはできるかぎりの清さを現実に少しも頓着せずして、想像力のおよぶかぎり描かねばならぬ。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この已来このかた秋稼しうかに至り風雨ついでしたがひて五穀豊かにみのれり。此れすなはち誠をあらはし願をひらくこと、霊貺りやうきやう答ふるが如し。すなはおそれ、載ち惶れて以てみづかやすみするとき無し。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ひらいてやりたいと思うのです、……幸福にしてやるために、払う犠牲は惜しいとは思いませんよ……
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
軽く見すぎているか、或は、病気に対する理解が薄いために、自宅で多少の雑用ぐらいはできると思い込んでいる場合、医師として、そのもうひらく義務はありませんか
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
今や第一号を発するに臨み、先づ吾儕社名の義を取る所の自由の説を述べて以て端をひらくといふ。
「それにしても無知は致し方がないなあ。誰かの手でおれの無知の蒙をひらいてもらいたい。」そういって歎息しているが、疑惑はのろわれてもなお執拗につきまとって離れない。
ここにおいてユダヤびと言いけるは、見よ、いかばかりか彼を愛するものぞ。その中なるもの言いけるは、盲者めしいの目をひらきたるこの人にして、彼を死なざらしむるあたわざりしや?
大島氏はってといってなかなか許しませんので、経験がないということも、その経験を作ることによって、智識もひらけ、腕も上達するというもの、聞けば蝋作りというものは
彼らは『徒然草つれづれぐさ』の兼好けんこう法師に説かれないでも、僕位の年齢に達するまでには、出家悟道の大事を知って修業し、いつのまにか悟りをひらいて、あきらめの好い人間に変ってしまう。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
教育は即ち人に独立自尊の道を教へて之を躬行実践するの工風くふうひらくものなり。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
幕府の忌諱を怖れる要はない、先生の時代にもし憚らねばならなかったものなら、われらの時代においてその蒙をひらくべきだと思うのです、おそらく先生もこれに御異存はないと信じます
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こっちの心がこっちの心の内部でひらける燃えもする工合ですが、絵はやっぱりその芸術の特質で、眼の前がパーッと絵に向って開いて行って、こっちから入りこんで行って、散歩をして
初心者の蒙をひらくに自家の経験を以てした所に特色がある。二十九年中雑誌『世界之日本』に発表された「我が俳句」もほぼ同じ意味のものであるが、いささか抽象的に失する傾があった。
「俳諧大要」解説 (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ふと眼をひらくと、肌の温みに氷河の衣がいつかけている、また一瞬間、葛城、金剛、生駒、信貴山などいう大和河内あたりの同胞はらからが、人間に早く知られる、汚される、夭死わかじにをしてしまう
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
四十年前に、俳句を引摺ひきずって他の文芸のあとを追うことのみをもっぱらとした一派の人があったがために、私はそのもうひらこうと思って、俳句は自然をうたう詩であることを力説したのであった。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それは愛嬌あいきょうのないことばであった。広巳はそれに耳をやった。次のへやの障子が音もなくすうとひらいた。広巳は何人だれだろうと思って眼をやった。定七の顔とともに定七の一方の手が出てこっちを招いた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし若崎の何か勘ちがいをしたかんがえっているらしいもうひらいてやろうというような心切しんせつから出た言葉に添った態度だったので、いかにも教師くさくは見えたが、威張いばっているとは見えなかった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あの聖書の中に、汝等なんじら求めよ、さらば与えられん、尋ねよ、さらばわん、たたけよ、さらばひらかれんというところが御座いますね。もう少し前のあたりから、あの辺は私の好きなところで御座います。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
真理の名に於て私の蒙をひらけばよかったのである。
ヤミ論語 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ひらく。その忍心害理の言、なんぞ謬妄びゅうもうなるかな
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
第五講 ヨブ再び口をひら
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「実は僕達は世間のもうひらく為めに会をやっているんです。橘会、又の名袖の香組といって、養子又は女婿が会員です」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
白糸がたたずみたるは、その裏口の枝折しおり門の前なるが、いかにして忘れたりけむ、戸をさでありければ、渠がもたるるとともに戸はおのずから内にひらきて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また子よ、汝は肉體の重さのため再び下界に歸るべければ、口をひらけ、わが隱さゞる事を隱すなかれ。 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「言、未だをはらず。門たちまひらく。数人有り。一巨桶いちきよとうかうして出づ。一吏文書を執つてその後に随つて去る。衆即ち裸婦を擁して入る。賈もまた随つて入る。」
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
旅人これを顧みこたうれば、夜必ずその棲所とまりに至り人を傷つく、土人枕の中に蜈蚣むかでを養い、頭に当て臥し、声あるを覚ゆれば枕をひらくと蜈蚣く蛇に走り懸り
そうして少し慌てたように胴着から太い白金の懐中時計を出して見たが、落ち着いてそれを仕舞い込んで、最初の礼儀正しい紳士の態度に帰りつつ口をひらいた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寝られぬままに夢然かたりていふ。そもそも大師の四〇神化じんくわさう木も四一れいひらきて、四二八百やほとせあまりの今にいたりて、四三いよよあらたに、いよよたふとし。
ついでながらそのもうひらいておくが、女子が学問して生意気になるのは、まだまだ教育が足りないのか、しからずんば誤っているのであって、即ち教育の罪で学問の罪ではない。
夫婦共稼ぎと女子の学問 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
かくあるも道理なれ、甲比丹カピタンクックは、太平洋を航して、幾多の群島を発見せり。仏蘭西フランス安南アンナンに向い、その交渉のたんひらけり。露人は既に南下の勢に乗じて、樺太のなかばを占略せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
福沢先生その誣罔ふもうを弁じ、大いに論者の蒙をひらかんとて、教育論一篇を立案せられ、中上川なかみがわ先生これを筆記して、『時事新報』の社説に載録せられたるが、今これを重刊して一小冊子となし
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
盲者めしいの目をひらきたるこの人にして……能わざりしや?』という最後の一節では、彼女はちょっと声を落として、信ぜざる盲目のユダヤびとの疑惑と、非難と、中傷を伝え、また彼らが一分の後に
が、そのうちで、畏友野村光一氏の『レコード音楽読本』が最も優れたものであり、私の著書に影響するところ甚だ多く、蒙をひらかれることの少くなかったことを明記し、同氏に感謝の意を捧げる。