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吃
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ども
ふりがな文庫
“
吃
(
ども
)” の例文
「これは旦那、どうもあの」馬子は眼をまるくして
吃
(
ども
)
った、「——どうもその、とんでもねえこって、どうかひとつ、なにぶんとも」
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
梶子が夜叉のように叫ぶのに応じ、佐治平が動顛して
吃
(
ども
)
りながら答え、民弥が苦痛を顔に現わし、部屋中をグルグル歩き廻っている。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鬢
(
びん
)
はほつれ、眼は血走り、全身はわなわな
顫
(
ふる
)
えています。少女達は驚きながら
訳
(
わけ
)
を
訊
(
たず
)
ねると、女はあわてて
吃
(
ども
)
りながら言いました。
気の毒な奥様
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
柳吉はいささか
吃
(
ども
)
りで、物をいうとき上を向いてちょっと口をもぐもぐさせる、その
恰好
(
かっこう
)
がかねがね蝶子には
思慮
(
しりょ
)
あり気に見えていた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
オヤジは急に真ッ赤になり、せわしく鼻をこすり、
吃
(
ども
)
ったまゝカン/\に出て行った。——それで私たち第三分室は大声をあげた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
▼ もっと見る
電話をめったにかけない私は、あわてて番号を間違わせ、うまく言い当てたときに、交換手が出るときゅうに番号が
吃
(
ども
)
って言えなかった。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
『続開巻一笑』四に、
吃
(
ども
)
りに鶏の声を出さしむべく
賭
(
かけ
)
して穀一把を見せ、これは何ぞと問うと、穀々と答えたとあれば支那も英仏同前だ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
吃
(
ども
)
りながらそう云って、彼は
両掌
(
りょうて
)
で、顔を
蔽
(
おお
)
った。感きわまって子供のように泣きだした。おさえていたものを抑えきれなくなったのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
望の盡きた心と弱り果てた身體に似つかはしい聲で——
痛々
(
いた/\
)
しく細い
吃
(
ども
)
り勝ちの聲——で、私はもしや召使がお入用ではないかと訊ねた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私たちはその窓から電話やタイプライタアの
強請
(
ゆす
)
ったり
吃
(
ども
)
ったりする音の聞えてくる商館の間を何となくぶらぶらしてみたり
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「何も不足……不足はないけれど」ト
吃
(
ども
)
りながら、「アクーリナ」もまた震える手先をさしだして、「ただ何とか一ト言……」
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
その大工は鍵屋の出入の者で、私はそれまでにも二三度顔を見たことがあつた。米吉とか云つて、二十五六の
身長
(
せい
)
の低い少し
吃
(
ども
)
る男だつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
私が明かに不愉快な顔をして、口を
吃
(
ども
)
らしているのも気が付かず、Sは夢中で膝を乗り出して、ムキになって尋ねるのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
岸本は
微笑
(
ほほえ
)
みながら節子が書いたものを読みつづけた。丁度
吃
(
ども
)
った人の口から
泄
(
も
)
れる言葉のようにポツリポツリと物が言ってあったからで。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は、いつでも自分の文章をすべて暗記しているのだそうである。洋画家は、れいの眉をふるわせつつ、それはいいと
吃
(
ども
)
るようにして言った。
猿面冠者
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
咎
(
とが
)
めるように言うのに、私は「いや……」と
遮
(
さえぎ
)
り、
羞恥
(
しゅうち
)
で
真赤
(
まっか
)
になりながら「いや僕は、な、なにも……」と
吃
(
ども
)
って言った。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
吃
(
ども
)
って、
唾
(
つば
)
を飛ばしながら勧誘大いにつとめる由だが、共産党は驚かんですが、唾が顔にかかって汚くて困るです、と言う。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
吃
(
ども
)
り吃りそういったが、暫くじっと押黙ってから、今度はゲラゲラ笑いだした。そしてむやみと自分の頭を叩いて体を左右にゆすぶりながら
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
赭土の道に豆粒をまくように穴をあけてつきささるはげしい
雨脚
(
あまあし
)
を眺めながら、彦太郎は、ひょっくり、
吃
(
ども
)
りの天野久太郎のことを思い出し
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
江州の
戴
(
たい
)
院長へ宛てた手紙などが出てきたので、なにやらすこし不気味になり、ぼやっと考えこんでいたところだと、李立は
吃
(
ども
)
り吃り語った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
錦太郎は泣いておりました、苦渋の色が顔一面の筋肉を
痙攣
(
けいれん
)
させて、声のない
嗚咽
(
おえつ
)
が、ときどき激情の言葉を
吃
(
ども
)
らせます。
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
金一封を包んでそこに置いたまま、眼をパチパチさせて口を
吃
(
ども
)
らせている米友を見返りもしないで、お絹はさっさとこの場を立って行きました。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたしは少しく
吃
(
ども
)
りながら挨拶すると、彼も笑いながら会釈した。その顔は先夜と打って変って
頗
(
すこぶ
)
る晴れやかに見えた。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
トゥーサンとニコレットとはもう
喧嘩
(
けんか
)
をしました。ニコレットがトゥーサンの
吃
(
ども
)
りをからかったんです。でも何にもあなたには話してあげないわ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
新婚当時の私は、妻から言葉をかけられると、顔を赤くして、
吃
(
ども
)
りどもりそれに答えるような人間であったからだ。
秋草の顆
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
O君は多少
吃
(
ども
)
りながら、杖で二三度右の脚を打つた。右の脚は義足だつたから、かんかん云つたのに違ひなかつた。
O君の新秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と野崎君は
憤
(
おこ
)
っていた。
尤
(
もっと
)
もこの男は学生時代から荒かった。
性急
(
せっかち
)
で
吃
(
ども
)
る癖があって、詰まると手の方が先に出る。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いくらか
吃
(
ども
)
るやうに、簡単な手短かな話振りで、身の上話らしいものをちつとも身の上話らしくない調子で洩した。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
「どう見ても、僕にはそうとしか思えない」と検事は何度も
吃
(
ども
)
りながら、
熊城
(
くましろ
)
に降矢木家の紋章を説明した後で
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
判事の論理整然たる
反駁
(
はんばく
)
におうて、教授はまったくとりつく島を失った。
額
(
ひたい
)
には油汗が一面ににじんでいる。やっとのことで
吃
(
ども
)
り吃り彼は言いつくろった。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
と、
吃
(
ども
)
り吃り身を震わせながら言うのを聴くと、編笠の中で、かすかな、乾いた笑いがきこえたようであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、やっきになっているけれど、彼はひどい
吃
(
ども
)
りなので、すぐ何倍も大きな高坂の声にかきけされてしまった。
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
航海に出てから一二日たつと、彼は、眼をとろんとさせ、頬を赤くし、口を
吃
(
ども
)
らせ、その他の酔っている徴候も示しながら、甲板へ出て来出したのである。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
相変らず話の
中
(
ちゆう
)
で
折折
(
をりをり
)
吃
(
ども
)
るのも有り余る感想が一時に出口に集まつて戸惑ひする様で
却
(
かへつ
)
て頓挫の快感を与へる。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼は、
吃
(
ども
)
りながら、そう云ってしまうと、泳ぐような手付で、並んだ
椅子
(
いす
)
の間を分けながら
扉
(
ドア
)
の方へ急いだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ビクトワールはベタリと椅子に腰をかけて、しばらくドキ付く心臓を静めていたが、ようやく
吃
(
ども
)
りながら
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
ニコオロよ、いかにしておん身は歸りし、これも聖母の
御惠
(
みめぐみ
)
にこそといひつゝ、女は窓に走り寄りぬ。その聲は猶
慄
(
わなゝ
)
けり。われは
吃
(
ども
)
りて、
恕
(
ゆる
)
し給へ君と叫びぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
戸部さんは
吃
(
ども
)
りで、
癇癪
(
かんしゃく
)
持ちで、気むずかしやね。いつまでたってもあなたの画は売れそうもないことね。けれどもあなたは強がりなくせに変に淋しい方ね。……
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
気性
(
きしょう
)
が単純で、むかっ腹がつよくて、かなり不良で、やせぎすで、背が高くて、しじゅう蒼み走った顔をしていて、すこし
吃
(
ども
)
りで、女なんど
洟
(
はな
)
もひっかけないで
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
余は
猶
(
な
)
お一語をも発し得ず
唯
(
た
)
だ「あ、あ、あれ、あれ」と
吃
(
ども
)
りつゝ
件
(
くだん
)
の
死体
(
しがい
)
に指さすのみ、目科は幾分か余の意を
暁
(
さと
)
りしにや
直様
(
すぐさま
)
死体
(
しがい
)
に
重
(
かさな
)
り掛り其両手を検め見て
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
女の権幕に怖れたのでしょうか、男は
吃
(
ども
)
るような口調で声まで少し震えを帯びて聞えました。
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「ただ貴方に一言お伺いしておきたいのは」と私は
吃
(
ども
)
り吃りもう一度首筋のあたりを拭いた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼は波打つ激情の余り
吃
(
ども
)
り出した。どうして彼はこんなにまで興奮しているのであろうか。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
憤りでブルブルと声を震わせ、
吃
(
ども
)
りながら、番頭の前へずり出して噛みつくように叫んだ。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
駄目
(
だめ
)
です。ぼくは
踊
(
おど
)
れないんですから」と消え入りそうな声で、
吃
(
ども
)
り吃りいいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「体温が恐らく三十八度五分位……」と、私は心の内でさえ、尚お
吃
(
ども
)
りながら
呟
(
つぶや
)
いた。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
それが
了
(
おわ
)
ると、
例
(
れい
)
の
大入道
(
おうにうどう
)
の
紳士
(
しんし
)
が、
吃
(
ども
)
りのやうな
覚束
(
おぼつか
)
ない
日本語
(
にほんご
)
で
翻訳
(
ほんやく
)
してくれた。
微笑の渦
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それに私は一両年前より
吃
(
ども
)
る癖がつき、尤も学校で講義をする時は得意で気の伸びているがためか、別に
差支
(
さしつかえ
)
もなかったが、人の家へ行ったり、人と遇って話をしたりする時には
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
ぼくはふだんの
吃
(
ども
)
りも場馴れない臆病さもまったく忘れて、酔ったようないい気持になって、聴衆のみんなと会話した、討論した。僕はあんな気持のいい演説会は生れて始めてだった。
新秩序の創造:評論の評論
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
「どうぞご勘弁なすってください、お客さま」と、ロバートは
吃
(
ども
)
りながら言った。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
吃
漢検準1級
部首:⼝
6画
“吃”を含む語句
吃驚
吃逆
泣吃逆
吃々
逆吃
吃水
吃度
口吃
吃音
吃又
吃水線
吃驚仰天
吃者
泣逆吃
咄吃
吃驚敗亡
目潰吃
吃飯
訥吃
吃竹
...